僕は、ずっとこうして生きていくしかないのか…。 僕に名前は無い。名前と言えるようなものは、番号だけ。 No.0701という番号が刻まれた重い“首輪”を身につけて、 実験体にされる日々。 最初は、「こわいな」「苦しいな」といった気持ちだけ だった。 でももう12歳となると「逃げたい」「死にたい」といった気持ちでいっぱいになっていた。 僕は、“異能力者”と呼ばれる魔力を持った人間。 魔力なんてものを持っているから、研究所にずっと 閉じ込められている。 魔力なんて持っていなければ…と何度思ったことか。 “異能力者”には属性がある。 僕は今確認できている属性だけでなく、研究所が把握 していない属性魔力をも持っていた。 だから毎日訳もわからない薬を飲まされて、苦しむ羽目 になっているのだ。 ここにいる子供は両親を知らない。 なぜなら僕らは産まれた時から実験体だから、 “研究所が知る必要のないこと”として、僕らに伝えていないから。 両親がどこで何をしているのかも、名前さえも、そもそも 生きているのかすらもわからないし、知る手段もない。 両親に会いたいと思ったことは、1度も無かった。 ただ、両親に、親に、会うことができたらこう質問してみたい。『どうして僕を産んだの?』って。 親が僕が実験体になることを知っていていたのなら、 尚更だ。 この辛い日々から逃げる方法は死ぬか、ここから逃げる かのどちらか。 この日々から抜け出すために、死を選んだ子供もいた。 その度に研究所に負けるような気がして、嫌だった。 勝つ、負けるなどと言った言葉で表せるものではない ことは、分かっている。 でも、自分達よりは、研究所の大人たちがよっぽど優位 に立っていることは、紛れもない事実だ。 ある日、“逃げよう”と思った。 ここから逃げるのはおおよそ不可能。 でもなぜか、このどうしようもない“運命”に抗いたくなった。 生まれてきた時から実験体になることは決まっていたの だと思う。 だからこそその決まっていた“運命”に牙をむいて、 嘲笑ってやりたかった。 僕は今、おそらくだけど18歳。普通の人間…魔力を 持っておらず、幸せに過ごしている人間を見たことが ないから、推測でしかないけどそこらにいる18歳より 傷だらけでその傷は体だけでなく心にも及んでいると思う。 外の世界がどんな世界かも分からないけれど、外の世界 には僕のような実験体の子供の居場所はないかも知れないけれど、 ずっと苦しみながら研究所の言いなりになって生き延び るよりは、外の世界を夢見て殺される方が“マシ”だと思った。 正常な人間ならば、どちらもつらいことかも知れないが、 毎日苦しめられて生きているともうおおよそ人間らしい感情はなくなっていってしまった。 痛覚を感じなくすることもできるし、五感を強化したり、 五感をすこし使えなくなくすることもできるようになった。 いや…できるように“なってしまった”と言った方が 正しいのかもしれない。 もう今から逃げたって普通の人間のようにはどう 頑張ってもなれない。 でも、逃げたかった。この日々から逃げたいといった 単純な気持ちと、逃げてあいつらを絶望へと落として やりたい、という気持ちが半々だった。 研究所の大人にとって僕は、何も出来ない、言わば赤子のような存在。 そんな大事な赤子が突如いなくなってしまったら? 無力な、何も出来ないと思っていた存在が自力で脱出 したら? 奴らの顔を想像するだけで嘲笑が口から溢れでた。 なぜ他の子供たちが“死”を選んだのか…。 それはこの研究所から逃げるのは“ほぼ不可能”だから。 僕はその“ほぼ”に賭けたくなった。 打算はある。 この研究所では2ヶ月に一度“儀式”が行われれる。 “儀式”の日の夜は研究所から大人がいなくなる。 計画を実行に移すならば、そこしかない。 この夜を狙って逃走を試みた子供もいた。 でも、逃げられた子供を見たことが無い。 部屋…いや“牢”から出た時点で研究所の大人たちに 通達されるからだ。 なら、通達されても手の届かない場所に逃げればいい。 アイツらから教わった“アレ”を使って_。