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・ 「さーて、仕事仕事〜」 上機嫌にフンフフンと鼻歌を歌っている天野。なんだお前、あんな反対してたくせに…と少し面白くなったが、それを言うと確定でぶん殴られるので俺は動きそうになる表情筋を必死に抑えて早歩きした。 「依頼…っつーと掲示板か?」 「まあそうでしょうね…行きましょうか」 テクテクとひとり歩いて行くので、俺は慌てて天野を追いかけた。街の人たちの好奇の視線が痛い。確かに、通行手形がないと入れない街に子供2人、しかもそれが男女ときた。誰だって驚いて見てしまうだろう。俺だって、そうする。…ただ、注目されすぎるのもなんだか不快で、俺は天野に聞こえない声量でため息をついた。 「あった、掲示板」 「お、貼ってあるじゃん、依頼。なになに…」 貼ってあったのはふたつの紙だった。それを読んでみると…「森にモンスターが出現しちまった、誰か腕の立つヤツは討伐してくれ」と書いてある。もうひとつは…「腕輪をなくしてしまったの。誰か探してくれない!?」……。 前者はともかく後者は自分でやれよ。と思わず突っ込みたくなった。仕事をもらえるのは至極嬉しいがいいのかこんな贅沢尽くして。いつか後悔するぞ……俺たちみたいに。 それはともかく最初の依頼は「自警団事務所」からだ。とりあえずまずそこにいって話を聞くことから始めよう。 すっかり空っぽになった袋に、俺は大きなため息をついた。 …今日は野宿だな。 * 「ごめんください…」 「…あ?んだガキが来るとこじゃねーぞここは」 「依頼をこなしにきたんですけど」 「はあ!?」 うるさっ。積まれた木箱の上にあぐらをかいて座っていたおっさんは吸っていたタバコを落とす勢いで叫んだ。 「てめえら、冗談ならさっさと帰りな」 「冗談じゃねえ。俺たちが生きて行くためには危険なこともこなさなきゃならねんだ」 「……ハッ、そーかよ……」 決意の固い俺を見て諦めたのか、乾いた笑いを出したおっさんは依頼について話し始めた。 「場所はここの近くの森、相手はでっけー蜂のモンスターさ。「ニードルビー」ってヤツだ。 俺たちじゃどうにもできねえから、なんとかしてくれや」 「蜂…それ以外に何か特徴は」 「あぁ? あーー…毒、毒の粘液を飛ばすんだ、針から」 「毒…」 「ちなみに針は希少価値が高えらしい、お前ら金に困ってんなら売れ」 「売る…その手があったか」 アドバイス…らしきことを言ったおっさんは、少しだけ眉尻を下げて「死ぬなよ」と言った。 * 早朝で暗かった空が真っ青に染まる頃。 「蜂って言うんだからやっぱトラップだよねーーー!」 俺たちはそこかしこにトラップを仕掛けていた。 天野によるとムシトリにはトラップが必須らしい。 街で買った蜂蜜をスポンジに染み込ませて吊るし、それを網で包む。その近くには一応目印を立てておいた。なぜなら、この森、普通に迷うからだ。ずっと同じ景色が続くとどこにいるかわからなくなってしまいがち。 「これくらいでよし」 「あ、いーのか」 うんうんと頷いている天野に拍子抜けする。こいつ、俺より楽しんでやがる…。「虫取りしてみたかったのよねーー」とにこにこ笑顔だったから余計なことは言わないでおいたけど。 機嫌のいい天野はスーパーレアだ。 「で、どうするんだ?この後は」 「とりあえず最初に仕掛けたトラップを見に行きましょうかね」 「霧灯了解」 ビシッと手のひらを頭の横に上げるとくすくすと天野が笑ってくれたので俺は上機嫌でトラップに向かった。 * チロチロと舌を出す化け物。そう、目の前にいるのは蛇だった。 「うわー失敗」 てへぺろと言ったふうに天野が舌を出す。こう言う時女の子ならキャーとかワーとか言うんじゃねーの…?と少しだけ引いたが、そもそもこいつに常識は通用しないだろう、と認識を改めることにした。 あの後俺たちはトラップにたどり着いた。 そこまでは良かったものの、トラップを確認しようとしたらあら不思議、モンスター…目の前の蛇のようなものが木の上から這い出てきたのだ。 「ハチミツにつられるのは蜂だけじゃないみたいだね」と呑気に笑っている天野に舌打ちしそうになったが、俺はそれを抑えてナイフを握った。 「こいつ…銀貨何枚で売れるかな…?」 素材が売れるのであれば、逃げると言う選択肢なんて最初からない。 (続かせてくれ)