「ーーそこに、いたのは、1人の天使」 〜第一話 「出会い」〜 ーー「命は重いんだ」 ーー「命は神様からのプレゼントなのよ」 ーー「命は大切に最後まで使わなきゃ」 もう既に聞き飽きた、命に関する最高な名言。誰も彼も、たとえバカでも知っている当たり前の常識。 ……本当に? っふは、と乾いた自嘲を込めた息が口から漏れる。 「……本当に命が大切ならば、こんなもので消せる訳が無い。荒縄一本で釣れる命に、価値もクソもあるもんか」 言葉にしたら、これまで耐えてきた苦しみも辛さも馬鹿馬鹿しくなってきた。呼吸が一気に楽になって、体が軽く感じる。 あぁ、そうだ。 初めから終わりまで、燃えるゴミ以外の何にもなれないようなくだらない命。そんな物とは手早くお別れして、また新しい物に買い換えないと! 静寂に包まれた、薄暗い公園の隅に生えている、一本の木。その下で、僕は馴れた手つきで縄を木に掛けた。 何度も何度もシミュレーションして、何度も何度も死のうとして、何度も何度も失敗した。 おかげで、縄を結ぶ速さだけは一級品だ。 でも、今回は違う。コレはいつもの「死ぬフリ」なんかじゃない。正真正銘の終幕、終焉なんだ! 形良くできた、丁度頭一個分の丸い輪。 僕は、それにそっと頭を通すと、最後に肺に溜まっていた息を時間をかけて吐き出した。 さようなら、僕の人生。 勢いよく地を蹴る。 その瞬間、体中に衝撃が走った。 縄が食い込む。喉が詰まる。息が吸えない。肺が壊れる音がする。心臓が酸素を求めて暴れる。頭が、体が、本能が死を恐れている。生を求めて止まない。 苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい。 ……苦しいはずなのに、その苦しさがたまらない! 苦しさだけが、僕のすぐそばに死があることを実感 させてくれる。死への期待、興奮、熱情、魅了。 ……やっと、僕は死ねるんだ。 視界がどんどんぼやけていく。暗くなって、暗くなって、あっという間に見えなくなっていく。思考がぼんやりと、霞に覆われていく。その感覚に、身をまかせて、眼を閉じたその瞬間……。 物と物がぶつかり合う、破裂音にも似た大きな音。枷が外れ、あっという間に解けていく。一瞬の浮遊感と、強い衝撃。 あんなに近づいていた死が、体から、僕から、どんどん離れていく……。 全身がやっと見つけた酸素を欲して、ほとんど反射的に息を吸い込んだ。いきなり戻ってきた「生」の感覚に体が追いつかない。 ゴホッゴホッと、激しく何度も咳き込んだ。首に手を伸ばす。そこには、もう既に死は一欠片もなく、ただその跡だけが残っていた。 ……ようやく手にできた、死のチャンス。なのに、 誰かのせいで、そのチャンスを無下にされた。 僕は死を奪い去られたんだ! 抑えきれない苛立ちのままに、未だに苦しい体を無理やり起こす。そして、目の前に立つ人影を強く睨みつけた。 ーーそこに、いたのは、1人の天使。 サラサラの白髪のショートヘアに、ルビーのような 透き通った赤い眼。柳のように細い手足に、片手には 太い木の棒。 僕は思わず、その姿に見惚れてしまう。その眼を見つめていると、あんなに苛立っていた感情が吸い込まれるように、消えていく。 僕らは見つめ合ったまま、ただ時間だけが静かに過 ぎていった。 「……あの、大丈夫?」 初めに静寂を破ったのは、天使の方だった。 「……何となくこの場所に来てたら、人がいるのが見 えて、近づいてみたら、君が首を吊っていたから、助 けなきゃって思って……」 そう言って、彼は手に持った木の棒を揺らした。 ……そうか、僕はあの木の棒で枝を叩かれて、首を吊り損ねた訳だ。 「なんてことをしてくれた。ありがた迷惑だ。どうして、君は僕を助けた? 弁償してくれるのか?」 言いたいことはいくらでもある。 でも、一番はやっぱりコレだった。 「……君は何者?」 僕の言葉に天使は眼を少し見開いた後、口を閉じる。しばらく考えた後、優しく微笑んだ。 ラムネの中のビー玉のような透明な声で告げる。 「僕の名前は……ハク。君を助けに来た神様だよ」 next……
第二話…https://scratch.mit.edu/projects/1090041443 初小説です! まふまふさんの輪廻転生が元ネタとなっています。 温かい目で読んでくれると、嬉しいです…… 次回更新は来週の土曜を予定しています リクエスト by sawara385 元ネタ まふまふ「輪廻転生」 https://www.youtube.com/watch?v=vU3oF90WKpw ※解釈違いなどが合ったら、すみません。元ネタの曲もすごく良い曲なので、是非聴いてみてください! # ここまでスクロールしてくれた皆様へのメッセージ 是非、♡と⭐︎をしていってね! ……小説の感想などを聞かせてくれたら嬉しいな? (上目遣い)