1933年、世界恐慌下のニューヨーク 私は内心震えていた、この映画が表に出るにはスポンサーからの支援が必要不可欠 だが... 「今はポ〇ノの一つでもないと流行らないよ?」 その言葉が突き刺さるように感じた 「なんですか!?脱げっていうんですか!?ふざけるんじゃない!!!!!」 気づけば、劇場の外で声を荒げていた。 「まぁ、間違いではない」とも思った。今の映画業界では、キングコングのような巨大な作品しか注目されない。 でも、他の映画もお色気を入れないと勝ち目がないのも事実だ。 それにしても、私はそれを受け入れることができなかった。プライドが、どうしても許さなかった。 「ど〜したら.....」 ベンチに腰掛け頭を抱え込み、頭の中で映画の案を巡らせていると 突如、耳をつんざくような爆発音が街に響き渡った。 その音の大きさに一瞬、息が止まる。驚きで顔を上げると、遠くの空が煙で覆われ、エンパイア・ステート・ビルディングが音を立てて崩れ落ちていくのが見えた。 その後、煙と瓦礫の中から現れたのは、ありえないほど巨大な怪物だった。 街並みを無情に踏みつけながら歩き、その足音が大地を震わせる。 どこか異様に歪んだ姿、目に見えるだけで恐怖が増幅されていく。 目の前に広がる光景が信じられなかった。頭の中で何度も言葉がぐるぐると回るが、どうしても現実と結びつかない。 目をこすっても、あの怪物の姿は消えることなく、確かにそこにあった。 気づいたら、カメラを手にしていた。 心の中では「逃げなければ」と叫んでいるのに、身体は動かない。 いや、動けないわけじゃない。 逃げるべきだと分かっているはずなのに、目の前の怪物をカメラに収めることが、私の体の奥深くで命じているようだった。 「これを撮らなければ、映画なんて二度と撮れない」。 その一心で、恐怖を感じながらもカメラを回し続ける。カメラの音が、爆発音にかき消されることなく、無機質に響く。私はその音の中で、恐ろしい現実から逃げられないことを感じ取っていた。怪物が歩を進めるたび、地面が揺れ、建物が崩れ落ちる。それでも私はただカメラを構え、レンズ越しにその壮絶な光景を収めることにしか意識を集中できなかった。心の中で、今この瞬間に自分が何をしているのか、何を成し遂げようとしているのか、全く理解できない。突然、怪物の目がこちらに向けられる。目が合ったその瞬間、全身に冷たい汗が流れ、息が止まりそうになった。 「逃げろ…」心の中で声が響くが、体は動かない。 その時、視界が一瞬ぼやけ、カメラのレンズを通して見える光景が歪んだ。恐怖と興奮が入り混じる中で、私はその怪物が実は映画のための演出に過ぎないのではないかという、理解不能な考えが浮かんできた。果たしてこれは、私が望んだ“リアル”な映画の一瞬なのだろうか。それとも、これは何か違う大きな何かの始まりなのだろうか? カメラの音が響き、私はその音に従ってカメラを回し続けた。 怪物の視線が鋭く私を捉え、息が詰まる。背後からは爆発音と瓦礫が崩れ落ちる音が鳴り響き、まるで地獄のような光景が広がっていた。そのとき、目の前に一人の女性が現れた。彼女は走ってきて、まるで私を探していたかのように目が合うと、すぐに声をかけてきた。 「逃げて!今すぐ!」 その声には確かな決意が込められていた。私は一瞬、何も言えなかったが、彼女が私の手を強く引いて、無理やり引きずるように走り始めた。足元は瓦礫と煙に覆われ、呼吸すら苦しくなる。目の前の怪物が私たちを狙っているのがわかる。だが、彼女は動じず、まるでこの恐怖の中で生きる術を知っているかのように冷静だった。 「私の後ろについてきて!絶対に離れちゃダメ!」 彼女の声に引き寄せられるように、私は彼女の後を必死に追いかけた。街を駆け抜けるたび、周りの光景が次々に崩れていくが、彼女はまるでそんなことを気にせず、ただ前を向いて走り続けていた。しばらく走ると、突然、彼女が立ち止まり、私を振り返る。 「この先に隠れる場所がある。そこに行けば、少しは安心できるはずです!」 その言葉を聞いて、私はわずかに希望を感じた。彼女が示した方向へ向かって走り続ける中、足元の瓦礫がさらに崩れ落ち、爆発音が耳をつんざくように響いたが、私たちはそれに屈せず、ただ一心に逃げることだけを考えた。 私は彼女と一緒に地下鉄に逃げ込んだ カメラには怪物が暴れる様子が収められていた 「自分の命よりも映画の方が大事?」 彼女の声に振り返ればジト目で見つめられていた 「あの状況で映画撮影なんて映画に狂わされてるんじゃない?」 反論しようとするが言葉に詰まる 映画のために全てを費やした私の姿は、「映画に狂わされた女」そのものだろう その言葉が心に突き刺さり、私は一瞬言葉を失った。地下鉄の冷たいコンクリート壁に背を預け、深い息をついた。彼女の目が厳しく、しかしどこか憂いを帯びていることに気づく。 「映画に狂わされた女。」その言葉が頭の中で繰り返される。恐ろしいほど現実感がない。街が崩壊し、怪物が歩き回り、私が今もカメラを手にしている。この現実の中で、映画のことしか考えていない自分が、あまりにも虚しく思えてきた。 「あなた、映画を撮るために何を失った?」彼女の問いかけに、私は答えを探すことなく、ただ無言で視線を下に落とした。 私がこの映画にかけた情熱、すべての努力、もがき、妥協。それは一体、何のためだったのか。今、目の前にある恐怖の中で、私は自分が何を求め、何を失い、何を守ろうとしていたのかを見失っていた。 「映画は、私の命を救ってくれるかもしれない。そんな思い込みに、どれだけ自分を縛りつけてきたのか。」その一瞬、心の中で何かが弾けた気がした。 彼女が静かに私の顔を見つめる。その眼差しは、厳しくも温かかった。「私は、あなたが映画を作りたい気持ちを理解している。でも、この世界が壊れていく中で、そんなことは二の次だと思う。まず、あなた自身を守ることが大事じゃない?」 私はその言葉に応えられなかった。映画が、映画があったからこそ生きてきた自分。しかし、今の自分は、あまりにも脆弱で、現実と向き合うことを避けてきたことを感じていた。 一度、地面に落ちたカメラを拾い上げ、もう一度レンズを覗く。カメラ越しに見る世界は、まるで夢のように歪んでいて、怪物が歩いている様子さえも、今では何か映画の一部に思えてくる。だが、実際にはすぐ後ろで瓦礫が崩れ落ち、悲鳴が響き渡っている。私はもう、この狂気の中で映画を撮るべきではないのだ。 「うん…」私はつぶやいた。「でも、どうしても…」言葉が続かない。自分がどれだけ映画に執着していたか、今更ながらに気づかされた。 「今は逃げなきゃ。」彼女が手を伸ばし、私の肩を軽く叩く。「今は映画じゃなくて、生き延びることが大事。後で映画を撮ることなんて、いくらでもできる。でも、今ここで命を落とすわけにはいかないでしょう?」 その言葉に、私はやっと力を振り絞って頷いた。カメラを持ち続ける手が、少しずつ震えていた。 「地下に行く前に、もう一度確認しないと。」彼女が低く言うと、私は反射的にその言葉を飲み込んだ。地下鉄の入り口から、さらに遠くで爆発が続き、火花が飛び散る音が響いていた。私たちの足元には、いつ瓦礫が落ちてくるかわからないという恐怖があった。 だが、それでも私は彼女を信じて従った。逃げるべき時が来たのだ。そして、逃げる先に何が待っていようと、今は生き延びることが最優先だった。 地下鉄の入り口に到着したとき、私は再びカメラを手に取る。しかし、今はそれを撮影することが意味を持たないことを、ようやく感じていた。 「いい加減、カメラを置け。」彼女が小さな声で言った。 私はその言葉に、すぐには反応できなかったが、カメラを持つ手がだんだん重くなり、最終的にそれを地下鉄の壁に放り投げた。もう、映画にしがみつく必要はない。 彼女は一歩踏み出し、私を強く引き寄せるようにして地下鉄のトンネルへと進んだ。私たちは、瓦礫の雨が降り注ぐ中、ひたすら地下鉄の暗闇へと足を踏み入れた。その先に何が待っていようとも、今はただ生き延びることだけを考えて――。 その瞬間、私はようやく気づいた。映画という名の幻想から解放されることが、きっと新しい世界への第一歩だということに。 「こんな状況じゃ、電車なんて動いてない。歩くよ」 そう言うと彼女は線路に降りて 「ほら、早く」 私も線路へ降りる、不思議と体が軽く 飛べるのではないかと錯覚するほどだった 黙々と歩みを進める、何か話さなければいけないのはわかる だが、話す内容が思いつかない。昔からロスト・ワールドとか見てた映画好きに話しかける勇気などなかった 歩みを進めるうちに、ふと、空気が変わった気がした。 何か、重く、どんよりとした気配。 「――待って、なんだ?」 私は足を止め、周囲を見回す。辺りは薄暗く、線路の先に見える街の灯りもぼやけている。ただ、それだけ。 しかし、異様な静けさが耳をつんざくように広がっていた。 次の瞬間、何かが動いた。 私たちの足元、線路の脇にあった砂利が、まるで生き物のようにざわざわと動き始めたのだ。 目を凝らして見ると、無数の小さな影が、ひしめき合って這い回っているのがわかる。 それは、まるで――虫。いや、虫そのものではない。 巨大な足を持つ異形の、無数の生物。鋭い顎と複数の眼が、私たちをじっと見つめている。 「……や、やばい。」 彼女が声を上げた瞬間、その虫型の怪物たちが一斉に動き出した。 バッと飛び跳ねるように、群れが私たちに向かって突進してくる。 すさまじい音と共に、まるで空気ごと押し潰されるかのような勢いだ。 私は反射的に彼女の手を握り、引っ張る。 「走れ!」 言葉と同時に、足元に滑り込んでくる無数の足音が耳に突き刺さる。 振り返ることなく、ただただ前へと足を踏み出す。 しかし、振り返らなくてもわかる。どこまでも追いかけてくる、あの異様な存在たちが、じりじりと迫っているのだ。 「――あっ!」 彼女が足を滑らせ、地面に膝をついた。 その瞬間、ひときわ大きな黒い影が跳ね上がり、彼女に迫る。 私は一瞬、動けなくなった。恐怖に体がすくみ、足が止まる。 私は必死に彼女の手を引き、再び走り出す。 無数の足音が、どんどん迫ってくる。 振り返ると、空中に浮かぶように、無数の巨大な虫型の怪物たちが飛びながら追ってくるのが見えた。 そのうちの一匹が、私たちの前方で急旋回し、鋭い顎を大きく開いて唸る。 「あぁ!もう!」 私は彼女を抱えあげ、必死に走る 彼女は重くない、といえば嘘になるが映画の機材のほうが何倍も重い、この程度でへこたれはしない
かきかけ