〜まえがき〜 このシリーズは、私が旅をしたけれども鉄旅にするのが面倒だったり、写真的に鉄旅ブログにあげれないもの、私の思い出などをあげていこうと思います。 また、些細の旅の記録として残したいものや、ふと思いついたことなんかを書き留めていくつもりです。 scratchの趣旨には反しますが、まぁベクターデフォルメの練習になると思って見逃してください() 第1回は、2024年の夏に北海道を訪れた時の記録です。 1駅目 どこまでも、平原 2024年の夏、私は親の運転するレンタカーで十勝平野を走っていた。いわゆる家族旅行である。この日は3日目で、今日の夕方には十勝帯広空港から東京に戻る。 どこまでも続く直線道路は50キロ制限。牧草地と防雪林と赤と黄の矢印だけの平原にこの速度はなんともじれったい。これが市街地になると、急に40キロ制限になるからそこで警察がネズミ取りをしていると親が教えてくれた。 レンタカーがターボ車だったので、親は信号が青になるなりフル加速をかましていく。座席に押し付けられるようなGが非日常感があっていい。 北海道は広く、じれったい割には意外と早く目的地に辿り着くのだから不思議だ。 1日目は札幌で北の雰囲気を感じ取り(自販機が死ぬほど少なかった)、2日目は十勝平野(上士幌なんかだ)と糠平を回った。旧十勝三股駅の駅前は本当に何もなく、バス停の待合室に掲げられていた「十勝三股時間」と書かれた時計の開き直りっぷりには苦笑した。 ポケモンGOをしようと親のスマホを開くと、こんな牧草地でも5Gが入ったりする。不思議なものだ。 2駅目 霧雨の降る幸福で 昼は士幌付近の道の駅でとり、午後は帯広以南を回るのだが、このあたりから天気が怪しくなってきた。霧雨が降り始め、さらに霧も立ち込めてきた。視程は100mあるかと言ったところだ。今は太平洋側で起こる濃霧という現象なのかもしれないと思っているが、当時は知る由もない。 この100mという数字は、あまりピンとこないかもしれない。だが、何もない牧草地となると話が違う。目の見える範囲に何もないのだ。恐ろしさが段違いなのである。不吉なBGMでもかけようものなら小心者の私には想像もしたくないようなことになるだろう。 親も同業者であるため、愛国駅と幸福駅に寄っていく。親は2回目だそうだ。親が車線を間違えて愛国から幸福を無駄に1往復したのだが、そのおかげで愛国の滞在時間は短めだった。 愛国の駅にはハチロクが停まっており、デジタルカメラのセピアモードがよく似合った。愛国の駅前は若干栄えているようだが、バスの時刻表を見ると末期の様相を呈していた。人口減は地方から被害を受ける。 改めて駅前を見るとシャッターを閉めた店が多く、短い視程と相まってまるでゴーストタウンのようであった。 雨が強まっていたので早々に撤収し、次の幸福に向かう。車内からは大正駅が見えた。 幸福に着く頃には雨も小降りになり、まさしく霧雨と言った風であった。駅に向けて飛び出すが、そこにはあっと息を飲む光景が広がっていた。 一瞬、2両のキハがこちらに向かってくる錯覚を覚える。近づき、車内を探索する。比喩ではない。国鉄の匂いがした。車内を歩き回り、バネの入ったシートに勢いよく腰を落とす。深く沈み込んでから跳ね戻る感覚が全身に広がる。溶けてしまいそうな、そんな感覚だ。 ふと奥を見ると、気まずそうに保守用車が保存されている。1枚写真を撮る。何気なくカメラのモニターを見ると寒気がした。 背景の霧が、とても恐ろしく感じられたのだ。多分あそこに行ったら最後、戻ってこられないと、本能が警鐘を鳴らす。 周りが何も見えない霧に、救いはない。北海道の雄大な大地の、裏の顔。大自然の美しさには、人喰い鬼のような恐ろしさがある。そこに、家族とキハがいることが救いだった。幸福駅の周辺に、民家は少ない。 駅舎には無数の切符や紙が貼られていた。これには流石 に圧倒される。 去り際、振り返ってキハの方を向く。 「おやじさん、キハはいい声で鳴くでしょ! 新幹線の笛も、北斗星の笛もいい声だけど、キハの笛は、聞いて泣かさるもね! わけもないけど、おれ聞いてて涙が出るんだわ。」鉄道員/浅田次郎 かの有名な鉄道員の名言だ。 そこにいたキハがエンジンを震わせて、灯を灯して、笛を鳴らしてくれればどんなに良かっただろう。だが、それは叶わない。ただ、そこにいるだけだ。 それでもキハには優しさがある。あのセリフは、「安心」を表していたのではないかと思っている。タラコ色のキハには、それだけの力がある。 雪の日も霧の日も、不安と恐ろしさを薙ぎ払ってやってくるキハ。その明かりと笛が、どんなに人の心に響いたかはわからない。ただ、一人の少年の心には確実に刻み込まれた。 鉄道は、安心を運ぶものなのかもしれない。 3駅目 霧雨を切り裂いて舞い降りる天使 空港近くの営業所でレンタカーを返し、レンタカー会社のハイエースで空港に行く。お土産を買い、展望デッキ(室内)へ向かう。はじめのうちは家族と話をしたりしていたが、到着予定時刻になっても飛行機は現れない。遅れているというアナウンスがあった。 5分…10分… どれほど長く待っただろうか。滑走路の彼方には霧の広がる大地。展望デッキには自分たちしかおらず。永久にここに閉じ込められてしまうのではと不安になる。 そこに、なんの前触れもなく飛行機が降りてきた。ボーイング737ネクストジェネレーション、水色と黄色に塗装されたそれは、私たちの目の前で接地し颯爽と横切っていった。その姿はさながら天使のようであった。しばらく後にゆっくりと機体が戻ってきた時の安心感は計り知れない。 主役は遅れて登場するものだと言ったら、定時運行に尽くしていらっしゃる方々にブチ殺されそうだが、それでも飛行機が来たのだ。これで帰れる。 安堵と北海道を離れる寂しさを胸に、飛行機に乗り込む。 離陸滑走のエンジンの甲高い音が耳につく。飛行機が地を離れたその時に、一つ息を吐いた。 737NGは何かと事故も多いと聞くが、無事に羽田に帰り着くことができた。私の耳は気圧変化(特に加圧)に敏感で着陸時は何かと苦しむことが多いのだが、今度ばかりは何事もなかった。 飛行機を降りながら思う。 安心を運ぶ仕事は、一つではないのだ、と。 駐車場に停めてあった親の車に乗り込んで家に帰る。親がフル加速をしてくれたが、Gはさほど感じなかった。 日常は、それでいいのだ。 〜あとがき〜 はい、最近物書きしかしなくなりましたね。ぶっちゃけパパッと書けるので投稿頻度の足しに今後も続くと思います。本文とまえ•あとがきで語尾が変わっているのはご了承ください。ベクターデフォルメも増やしていく予定ですので、よろしくお願いします。 なお、フォトコンは現在集計中です。しばらくお待ちください。 (いないと思うけど)オリジナル備忘録を作りたいという人がいればこのフォーマットはご自由にお使いください。
写真が手元になかったのでベクターデフォルメにしました。クレジットをすればデフォルメ車両は使って構いません。 デフォルメは「10分くらいでできる」「全部四角」をコンセプトにしています。備忘録のシリーズが増えたら車両も追加していく予定です。なお、窓は乗務員室窓以外は描かない方針です。