アメリカ合衆国アイダボ州の山中 「いいか!施設に侵入し、アレンを回収してヘリで離脱する!ついでにデイライトの目的も探るぞ!」 悪路を走るピックアップトラックの中で、マクミランが叫んだ。 「アレンの居場所は⁉︎」 「わからん!しらみつぶしで探すんだ‼︎」 木々の奥に建物が見えた。あれが目標地点らしい。 「目標地点まであと200m!」 俺達の後方を走る廻嶺達に無線で伝える。 『OK!準備はできてる!マイク、そっちは?』 廻嶺の意気揚々とした声が聞こえてきた。 「できてるぜ。…なぁ廻嶺、本気であの案でいくのか?」 『もちろん!これが1番早い!』 「お前のその行動力は何処から来てるんだ…」 『昔からです。私達がデイライトから逃げ出す時もそうでした』 菁薇の反ば呆れた声が聞こえた。 『そろそろ着くはずだ!梓苑、準備して!』 『了解。……やっぱりVFCのよりも重いな…』 「頼むから俺らに当てないでくれよ…」 ハンドルを握る手が震えてくる。警備兵と門が見えてきた。 (やってやらぁ……!) 警備兵が撃ってきたが、お構いなしにアクセルを踏み込む。 (そろそろ来るか?) サイドミラーを覗き込むと、後ろのピックアップトラックに乗った梓苑がカールグスタフを構えていた。 『全員備えろ!』 直後、トラックの横スレスレを榴弾が通過した。榴弾はそのまま飛んでいき、門と警備兵を吹っ飛ばす。 『突っ込めぇぇぇぇ!!』 「クソがぁぁぁぁ!!」 「オールクリアだ!」 負傷兵にトドメを刺したマクミランが叫んだ。ようやく生きた心地が戻った気分だ。 「早くアレンを探さないと!遊無に何されてるか…」 廻嶺はさっきからずっとソワソワしている。アレンがよほど大事らしい……。 「いるとしだら独房棟のどこかのはずだ。そこに向かうぞ!」 零が言った、その時だった。 『死神ども!聞こえてるか?』 突然、どこからか聞き覚えのある声が聞こえた。 (ルーカスか?) 辺りを見渡すと、天井に監視カメラが設置されている。あれのマイクから流れているようだ。 「その声……ルーカス⁉︎なんで君がここに…」 『ちょっと潜ってただけだ!アレンもいるぜ!』 「アレンも⁉︎よかった…」 廻嶺が安堵の声を漏らした。 (アレンが…) こっそりと持ってきていたB.R.E.A.K.E.R.のシリンダーを確認する。不発弾はなさそうだ。 「…メッセージはお前からか」 『よし、合流地点を決m』 「ねぇルーカス!清仁見てない⁉︎」 廻嶺が叫んだ。 『………奴は死んだだろ』 「違う!生きてたんだ!…敵として、だけど」 それにしても、あれは本当に清仁なのか?本物ならデイライトに着くはずがない。だが……奴は廻嶺の顔を見た瞬間、抵抗をやめた。 (…そういや昔、デイライトの情報をハッキングした時に、MKウルトラ計画のファイルを見つけた事があったな……。CIAの洗脳計画の情報がなぜデイライト内に?) 「でも!何かの間違いなんだ、話せばきっt」 その時、射撃音と共に廻嶺の頭がふっ飛んだ。同時に、大量の鉛玉が飛んでくる。 「クソッ、コンタクト!」 廻嶺の襟首を掴んで遮蔽に滑り込む。 「助かったよ、マイク」 回復を終えた廻嶺がCZ BREN 3を構えた。 「もう弾切れには気付けるよな?」 「もちろん」 「よし、行け!援護する!」 廻嶺が飛び出すと同時に向こう側を確認する。……敵影が見えない。まさか。 「廻嶺!敵は見えるか⁉︎」 『見えてる!施設で戦ったのと同じ奴が2人!』 クソッ、またあのSF野郎か!今の装備はTHERDのだ、有効策がない。 「ここは狼達に任せろ!俺達は下がるぞ!」 廻嶺達に当たらないように援護射撃をしながら後退する。時々リコシェットする音が聞こえる以上、当たってはいるんだろう。だが、全て弾かれてる。 「これじゃキリがない!」 零の悲痛な叫びが聞こえたと同時に、何か鈍い音はした。見ると、奴の片腕がちぎれている。 「クソが……」 零の雰囲気が変わった。……これはまずい! 「零!抑えろ!!」 マクミランが叫んだが、聞こえていない。大剣を精製し、思いっきり振りかぶった。 「お返しだ、クソ野郎!!」 大剣が振り下ろされた直後、機械が壊れる様な音がした。同時に、縦に真っ二つになった敵兵が姿を現す。 「零!能力は使うなとあれほど…」 マクミランが焦っている。 「デイライトに俺達の生存がバレるぞ!」 『うるせぇ!どうせ遊無には全部筒抜けだ!!』 「そうかもしれんが…クソッ」 狗肉の表情を浮かべ、無線機を掴んだ。 「各員!……Weapons free(自由交戦を許可)!!」 その瞬間、何かが潰れる音が聞こえた。音の方向を見ると、胴体だけがなくなった敵兵と、その前に佇む廻嶺。……残酷な事をしやがる。 「OK、全員ぶっ殺した。君達の用語で…オールクリア、だっけ?」 何事もなかったかの様に話しかけてくる。…やっぱりコイツは恐ろしい。 「そいつが清仁だったらどうするんだ?」 「清仁ならわかる。知り合ってから長いんだ。君達が生まれる何年も前からね」 「グロ…ヘルメットが血まみれだ……」 シェリーが渋い顔をして敵兵の首を持ち上げた。直後、“中身”がずり落ちてきた。 「スターウォーズかよ………ヒェッ⁉︎」 その顔を見た瞬間、シェリーは腰を抜かした。 「生首なら何度も見ただろ…」 「ちっ、ちがっ、あ、アレ……」 完全に萎縮した様子で生首を指差す。覗き込んでみると……。 「…おい、なんだよこれ…」 想像を遥かに超えていた。下部分は人間のままだが……。鼻から上にかけて、赤く光る大量の複眼がついている。上から被せられてるんじゃない。顔をくり抜いて、そこに移植されている。 「………おえっ…」 バラクラバをずらして下を向く。今日食った飯が全部逆流して飛び出してきた。もう何年もこの仕事をやってきたが…こんなのは初めてだ。 「…行こう、みんな」 珍しく、廻嶺が静かな声で言った。 「清仁を探すんだ…………アレンも」 ここが情報管理室か?扉を開け、中に入る。 「この中にデータが詰まってる筈だ、抜き取るぞ」 マクミランの指示で、全員が操作に取り掛かる。 「アレンの事はいい、ルーカスならここに連れてくるだろうからな。今はデイライトがEN粒子を拡散した理由だ」 奴はそう言っているが……俺には個人的に知りたい事がある。 [ファイル検索: アレクセイ・V・ライコフ] …ビンゴだ。 「…ねぇ、これ見て!」 キャサリンが画面を指差している。 「ZERO NUKE……何か関係あるハズ」 「可能性はある。抜き取るんだ」 ……足音が聞こえる。2人分。 「そっちは終わった?俺も知りたかったデータは取った」 廻嶺がそう言った直後、部屋のドアが開いた。そこにいたのは……。 「…アレン!ルーカス!」 廻嶺が叫んだ。負傷しているルーカスを、アレンが抱えている。 「よぉ...ひさしぶりだな...」 アレンが無理に笑いを浮かべて言うルーカスを椅子に座らせた。...これで万一の事があってもルーカスに被害は及ばない。俺はホルスターに手を伸ばした。 「…教えてくれ、アレクセイ」 ホルスターからB.R.E.A.L.E.R.を引き抜き、突きつける。 「お前は、何者なんだ?」 To Be Continued… ____________________ 第十一章 第十三章前編
注:使い方の欄を読み終えてから読むこと アメリカ合衆国アイダボ州 デイライトの研究施設 「Comrade Yumu. How is the condition of Alexei? (同志遊無。アレクセイの様子は)」 独房棟から、奴が歩いてきた。 「It hasn't changed. He's just looking down with empty eyes. (変わっていない。虚な目で下を見ているだけだ)」 「Got it. (なるほど…)」 「Dose in an hour. Put the key back in the lock, I have things to do. (1時間後に投薬を行う。鍵を戻しておけ、私はやる事がある)」 「Roger that. (了解)」 鍵を受け取り、向かう先は保管庫…じゃない。独房棟だ。 「...Comrade Yumu. Didn't you just leave a few minutes ago?(…同志遊無。先ほど出て行かれたばかりでは?)」 「I had some unfinished business. Let me in. (やり残した事があった。入れてくれ)」 警備員に声をかけ、中に入る。 (6 2 7……6 2 7……ここか) 鍵を開け、中に入る。 「………」 中には、椅子に拘束されたアレンがいた。一瞬だけこっちを見たが、すぐに視線を落とした。 「猿芝居はよせ、どーせ意識はハッキリしてんだろ?」 そう言って、奴の顔を覗き込んだその時、椅子の拘束具にヒビが入った。 「おっとぉ…」 直後、拘束具をぶち壊したアレンが飛びかかってきた。首を掴まれ、床に押し付けられる。 「ぐえ」 「わざわざ1人で何をしに来た?」 殺気のこもった目で睨みつけてくる。 「俺は俺の意思でここを出た。戻る気はない」 「落ち着けアレン…俺だよ」 そう言うと、俺は遊無の擬態を解いた。 「!……ルーカス…」 顔を変えるところを直接見せたのはひさしぶりだ。 「いい反応だ、廻嶺もそんな顔してたよ」 「お前…なんでここに」 「はっ、腐っても諜報員だ。お前が拉致られた事なんて15時間も前に聞いた。それから色々準備してたのさ。…ま、実を言えば先月から運良くここに潜入してただけなんだけどな。ここはデイライトの研究施設の中でも重要な場所だ、オイシイ情報がいっぱいある……お前なら知ってるだろうがな」 「………」 「安心しろよ、別にその件でどーこー言うつもりはねぇ。さて、逃げるぞ」 「簡単に言うな。ここの警備の厳重さは、それこそお前も知ってるだろ」 「俺は何もしてないと思ったか?」 そう言うと、俺はポケットから無線機を取り出した。 「お迎えなら呼んであるぜ」 「…S.O.E.T.か」 「狼共も一緒みたいだぜ」 持っていたバックから兵士の装備を出し、アレンに渡す。 「これ着とけ。ある程度は誤魔化せる」 「助かる」 「独房棟の出口は一箇所だけだ。通るには許可がいる…が、幸運にも見張りは1人だけだ。誰も見てない隙を狙って強行突破する。そこからは兵士に紛れつつ奴らとの合流を目指そう」 「わかった」 「他に聞きたいことは?」 「……脱出のためなら多少は手荒な事をするかもしれないが、構わないな」 「お好きにどうぞ」 着替え終わったアレンと一緒に独房を出る。…よし、誰にも見られてない。再び遊無に擬態する。 「出口は向こうだ」 遊無の擬態はなるべく早く解きたい。本人も同じ施設内にいるんだ、いつかはボロが出る。 「…部屋の中に1人」 「俺がやる」 警備室のドアを開ける。兵士は入った時と同じ奴だ。 「Are you done? (用は済んだのですか?)」 兵士が声をかけてきた。 「No...there is one more thing left. (いや…後一つ残っている)」 袖からナイフを取り出し、兵士の頭に突き刺した。そのまま深く押し込み、トドメを刺す。 「血まみれの装備で歩き回るつもりか?」 「いや」 兵士に触れ、擬態する。 「装備くらいなら擬態でどうにかなる」 「…なんでもありだな」 兵士を机の下に隠し、無事ロッカーを開けた。中に入っているのは…M7E1か? 「米軍の試作品がなんだってここに?」 「横流しされた物だろうな。デイライトは政府の中にもわんさかと紛れてる。どこにでもいるんだ」 「さすが、詳しいな」 マガジンを持てるだけポーチに入れる。これでドンパチにも対応できるはずだ。 「準備はできたか?」 「万全だ」 「よし、出るぞ」 ロックを解除し、独房棟の外に出た瞬間、どこからか爆発音が聞こえた。 『Intruder alert. Intruder alert. Immediately rush to Sector 1.(侵入者あり。侵入者あり。直ちにセクター1へ急行せよ)』 「廻嶺め、派手におっ始めやがって…」 まぁ、こっちがバレる確率は減った。これに紛れて逃げるとしよう。 「全く、何をしやがった?」 「後先考えずに正面から突っ込んだんだろう。元々そういう傾向があった」 「知った様な口聞きやがって」 「…見てきたからな」 急行していく兵士の列に紛れる。このまま廻嶺達のところへ向かう事もできるが、確実に誤射されるだろう。 「軍曹、何かいい案は?」 「…一旦直近の監視室に行こう。味方を探すぞ」 「わかった」 扉を蹴破り、部屋の中に入る。 「いるならセクター1周辺のはずだ、そこを重点的に探すぞ」 5分とたたないうちに、通路で足止めを喰らってる廻嶺達を見つけた。…もうセクター1を抜けてやがる。 「さすが、群狼と死神は怖いねぇ」 「こいつらは…THERDの兵士か?」 「THERDの装備を着てるだけで、実際は廻嶺達だぜ」 「何故そんな事を」 「お前がここに連れてこられた頃だ、S.O.E.T.は施設の防衛に失敗したせいで権限を剥奪された。日本政府からの出頭命令も出てたんだが、サイモンとヴィクターがうまいことやってくれたみたいでな。ついでにSWMも回収して、THERDで匿ってるってわけだ」 映像はくっきり映ってる。あとは音声を拾って奴らの会話が聞ければいいんだが……。 「貸せ」 俺が戸惑っていると、アレンが手慣れた手つきでマイク機能をオンにした。 『……オールクリアだ!』 マクミランの声が聞こえてきた。今はアイツがリーダーか。 「ありがとよ」 「礼はいらない。外を見てくる」 『早くアレンを探さないと!遊無に何されてるか…』 廻嶺の焦った声が聞こえる。コイツにはあとでよーく説明しなきゃならんな。 『いるとしだら独房棟のどこかのはずだ。そこに向かうぞ!』 セクター1から独房棟までは一本道だ。途中のセクターで合流できるだろう。声を戻すために顔だけ擬態を解いた。 「死神ども!聞こえてるか?」 『その声……ルーカス⁉︎』 マイク達の前に廻嶺が反応した。突然カメラから俺の声が聞こえてきて驚いた様だ。 『なんで君がここに…』 「ちょっと潜ってただけだ!アレンもいるぜ!」 『アレンも⁉︎よかった…』 『…メッセージはお前からか』 マクミランが納得した顔で言った。 「よし、合流地点を決m」 『ねぇルーカス!清仁見てない⁉︎』 …清仁? 「………奴は死んだだろ」 『違う!生きてたんだ!…敵として、だけど』 「…だろうな」 『でも!何かの間違いなんだ、話せばきっt』 その時、廻嶺の頭から血飛沫が飛んだ。 『クソッ、コンタクト!』 マイクが叫ぶと同時に、カメラがオフラインになった。襲撃してきたやつに撃たれたんだろう。 「…奴と合流できるかは運次第になったな。まぁ、進んでりゃそのうち会えるだろ」 「進めれば、な」 突然、背後から懐かしい声が聞こえた。……噂をすれば、か。 「よぉ久しぶり。5年ぶりだな」 いつの間に入ってきやがった?俺の後ろで、デイライトの装備を着込んだ清仁がライフルを構えていた。 「武器を捨てて手を上げろ」 俺の声かけは聞こえていないらしい。………こんなこと言っても無駄かもしれんが。 「そんな事言うなって、清仁。いや、GHOSTと言うべきか?」 「…なぜ俺のコールサインを知っている」 あぁ、やっぱり無駄か。脳から綺麗さっぱり消されてやがる。 「似合ってるぜ。死んだも同然のお前にはぴったりの名前だ」 「好きに言え」 俺から武器を剥ぎ取り、床に組み伏せると、清仁は無線を繋いだ。 「GHOSTよりS.O.E.T.総員へ。ターゲット一名確保」 “S.O.E.T.”へ、か…。デイライトも残酷な事をしやがる。 「…ROACH、応答しろ。……ROACH!」 コールサインも同じ。信じ込ませてるみたいだな。 「所詮デイライトが作った粗悪品だ。負けて当然だね」 「っ……この野郎…!」 “仲間”を侮辱されて憤慨したんだろう。引き金に指をかけた。 「貴様の生死は問われていない、今すぐ殺してやる事もできるんだぞ……!」 「撃つな」 その時、1人のデイライト兵が清仁のライフルを掴んだ。 「コイツは使える」 そう言うと、兵士はヘルメットとバラクラバを脱ぎ捨てた。 「……ライコフ氏。何故ここに?」 (アレン…どう言う事だ?) 「お前達がコイツを探していると聞いてな。協力するふりをしてここまで誘き寄せた」 「…おい、フリってどう言う事だ」 アレンと目が合った。 (……クソが。そう言うことかよ) 「おいアレン!俺と一緒に戻るんじゃなかったのかよ⁉︎」 「……ルーカス。俺には使命がある」 「その使命は捨てたんだろ!?嘘ついたってのか!!」 「………」 「なんとか言いやがれ、ウォッカ野郎!!」 「コイツを黙らせろ」 「了解」 清仁はライフルを持ち替え、俺を銃床で殴りつけた。顔面を激痛が襲う。 「連れて行くぞ。俺が運ぶ」 そう言うと、アレンは俺を担ぎ上げた。 (あぁ〜、ツいてねぇ)