※スパジャン着地前にスライドは原作ではできません() 本文↓ バンカラ大会予選当日。 ロビー前の広場はたくさんの人で賑わっていた。 「デュアル、わかばさん、二人が目立つと困るから、ここからは別行動で」 「わかった!」 今日は顔を隠したり変装したりはしていない。 これだけ大勢の中に出ればすぐ気づかれるだろう。 あと俺やってみたかったことあるんだよな。 「予選、誰が突破するんだろうね、楽しみだなあ」 「最前列のチケット取れてよかったよ!」 そうそうこういう会話の途中に。 俺は一歩前にでて言った。 「なかなか賑わってるみたいだな」 声に気づいて振り替えった人たちがざわめき始める。 「え!?」 「あの人ってまさか……」 「世界一位の…クアッド!?」 うんうんこういう反応を待ってたん…… 「クアッドじゃないか!!」 一際大きな声が聞こえた。 やっぱ会うよな。 「昨日ぶりですね、師匠」 「おう、お前出るんだったら昨日言えばいいのによ〜」 師匠の名前はヴァリアブル。俺より若干背が高いが女性。 とにかく声が大きいため謎の圧のようなものがある。 「昨日帰ってから急遽出ることにしたんですよ」 「急遽?なんでだ?」 「それは…」 俺が言いかけると、周りにいた人たちが驚いたような声を上げた。 「もしかして…」 人々の視線の先を見ると、周りと比べ背丈の小さな少女がいた。 容姿はなんとなくわかばさんに似ているが、雰囲気はまったく違う。 なんというか……感情が抜けているような感じだ。 「予選に参加するプレイヤーはこちらへどうぞー!観客の皆様はあちらへ……」 「師匠とも戦うことになりますね」 「決勝で、な」 すでに予選の結果など見えている。 予選は二回試合を行って16人まで減らすためのものだ。ここで落ちれば本選に進むことはできない。 本選はトーナメント形式だ。 「まあ予選だし、準備運動になるかはわからないが…」 「最速で終わらせます」 明日からの本選に備えてある程度休息を取っておきたい。 俺と師匠はロビーへと歩みを進めた。 予選はすぐに終わった。俺はロビー近くで待ち合わせていたわかばさんとデュアルの二人に合流した。 「お疲れ様~!余裕そうだったね」 「かっこよかったです!」 かっこよくはないと思うんだが… 「これでとりあえず本選出場だな」 「観客がお兄ちゃん見たときの反応すごかったね…唐突すぎたんじゃない?」 確かになんの前ぶりもなく復帰はやりすぎたかもしれない…… 「あ、一旦人に見つかる前に移動しようか」 「そうだね、わかばちゃんいこう」 わかばさんはぼーっとどこかを見ていた。 視線の先に目をやるとロビーからもみじさんがでてきていた。 「もみじさんと一緒にいく?」 「えっ…あ、いやその……」 わかばさんが今家にいる理由を忘れたわけではない。 妹と同じ家に住むとなればもう俺の家に住まわせる理由もないのだ。 「す、少し話してきます」 「わかった」 ……そういう言い回しをするということは、行く気はないのだろうか。 俺とデュアルはしばらく遠くから二人を眺めていた。 ただ、二人は普通の会話とか久しぶりに会った感じとかではなく、なんとなく口論にも見える。 「わかばちゃんなに話してるのかな……なんだか…」 デュアルもそれ以上はなにも言わなかった。 そしてもみじさんがわかばさんに背を向けて歩き出し、わかばさんはその場にしばらく立っていた。 「私ちょっと声かけてくる」 デュアルはわかばさんに駆け寄って声をかけた。 わかばさんはいつもと変わらない笑顔を見せてデュアルと戻ってきた。 「お待たせしました!」 「もういいの?」 「はい、もういいんです」 わかばさんは少しうつむき気味に言った。 「3時半か……」 「今日はもう帰ろ、お兄ちゃんも明日に備えて休むんでしょ」 デュアルは歩きだしながら言った。 「そうだな……わかばさんどこか行きたいところはある?」 「…クアッドさんの家に行きたいです」 姉妹の事情にこちらから突っ込むのはよくない。ここはそっとしておくべきだろう。 そう思いながら俺たちも歩き出した。 「じゃーん!!」 デュアルがテーブルに並べたのは大きなトンカツ。 それに副菜や味噌汁など次々に運ばれてくる。 俺はというと手伝おうとしたら「休め!」ときっぱり断られてしまったので、料理が運ばれてくる様を見ながら椅子に座っている。 「明日は勝つってことでトンカツにしてみたんだけどどう?」 「どうって言われても…ありがとうとしか……」 そんなの信じる人実在したのか。 わかばさんも皿を運ぶのを手伝っていた。 実際食べてみるとまあ美味しい。デュアルは料理の才能があるのか。5つ星だろこれ。 ……決してシスコンではない。 夕食を済ませ、制止するデュアルをふりきりながら後片付けをしたあと、俺は風呂に入ることにした。 「デュアル先風呂入るのか?」 「ううんいいよ別に」 「じゃあさっさと入って寝るか……」 俺は風呂に入ってシャワーを浴びた。 明日は師匠はもちろん、もみじさんやランキング上位の人たちと戦うことになる。 気は抜けない。 「はぁ…」 最近いろんな事がありすぎて思わずため息がでてしまった。 シャワーを止めてシャンプーを出そうとしたとき、ふと湯船のほうに目がいった。 「……えっ」 「は…はわわわ……」 そこには体を小さくしているわかばさんの姿があった。 見間違いかと一旦目をそらしてみたが、何度見てもわかばさんがいる。 「あ、あの…」 「ご、ごめん!!気づかなかったっていうか…ちょっと疲れてて……」 疲れてたとはいえ気づかないとかあるのか普通!? 「い、いえ…一応お互いタオル巻いてますし……ここはクアッドさんの家のお風呂なわけですし…な、なんというか合法というか……」 「ほんとごめん今すぐ出るから…」 「あっわたしが…!」 わかばさんは湯船からでて脱衣所にいこうとしたが、急に出たため目眩がしたのか足を滑らせてしまった。 「!?」 「危ない…」 受け止めようとした俺も地面が濡れていたせいか転んでしまった。 「いたた…わかばさん大丈夫…?」 目を開けるとわかばさんが俺を押し倒すような形になっていた。 「えっ…あっ…ご、ごめんなさい!!」 …そして運悪く扉が開いた。 「お兄ちゃーん、そういえばわかばちゃんが…………先に……」 デュアルは俺とわかばさんを見るなり扉をしめた。 「ごめーん!邪魔しちゃったね!わかばちゃんも私の部屋じゃなくてお兄ちゃんの部屋で寝てもいいよ!気づかなくてごめん!」 「待てデュアルこれは……」 言い終わる前にデュアルは行ってしまった。 「ごめんなさい…ふらついちゃって……」 「あぁうん、大丈夫だけど、とりあえずどいてほしいな…」 「あっ…は、はい……」 わかばさんは泣きそうな顔になりながら言った。 「ということがあっただけで、故意とかではなく…」 「なるほどね……じゃあわかばちゃんとお兄ちゃんは一緒のベッドで寝るということで」 そんな神妙な表情してなにがなるほどなんだよ。 「まてまてそれはお互いに困るし、お前今の話聞いてた?」 「え…?お兄ちゃんとわかばちゃんが一緒にお風呂に入ることにしたっていう話だっけ?」 だめだこれは。 わかばさんもなんか赤面して固まってるし。 「こりゃ今夜は休めないな…」 翌日。 昨夜の一件はなぜか三人同じベッドで寝ることで解決した。 俺はというと壁とデュアルに挟まれてまったく寝付けなかった… 「よっクアッド!ん?元気ないな、どうした?」 「昨夜色々ありましてね……」 「万全のお前と戦いたかったんだけどな、いけるか?」 「バトルに支障は出しませんよ」 「師匠だけにってな」 …この人もなんだかんだ疲れるな。 「師匠とは…勝ち進めば準決勝で当たるみたいですね」 「決勝で戦いたかったんだけどな…ま、バトルできるなら変わらないか」 もみじさんは決勝まで来ない限りは戦わない配置みたいだ。 これは師匠に勝つしかないみたいだな。 「そろそろ時間ですね、また会いましょう」 「途中で負けるなよ!」 俺は師匠と別れてロビーへ向かった。 バンカラ大会本選は全国放送されているので、デュアルとわかばさんは家で観戦している。 俺の一回戦の相手はランキング10位のプレイヤーだ。 「最初から飛ばすか」 ルールはいたってシンプル。 1対1でどちらかがやられたらやられたほうの負け。復活はできない。 ステージはランダムで制限時間はない。過去には30分以上戦い続けた例もあるらしい。 「こんにちは、クアッドさん」 声をかけてきたのは対戦相手だ。 「僕はプライムといいます、戦えて光栄です」 「手加減はしないし、全盛期と比べてどうのとかもないからな」 「手加減は不要ですよ、実力で勝ちますので」 プライムは笑顔を見せている。 随分自信があるようだ。確か10位と言っていたが、前はこんなプレイヤーいなかったし登り詰めてきたんだろう。 アビリティがどんなものかは事前に調べておいた。 プライムのアビリティは「速度の操作」。自身または触れたものの速度を一時的に自在に操れるものだ。 出せる最速は音速と同じで、摩擦を無視できるらしい。 バトルのステージはユノハナ大渓谷だ。 俺たちは初期地点に立った。 俺のブキはクアッドホッパーホワイト、プライムのブキはプライムシューターだ。 「さて…どんなものか……」
1話 https://scratch.mit.edu/projects/1186934513/ 3話 https://scratch.mit.edu/projects/1186934872/ 本文下 ジャンル 二次創作 ラブコメ ファンタジー(?) よければ感想どうぞ キャラ詳細はこちら↓ https://scratch.mit.edu/projects/1186934416/ 考察はこちら↓ https://scratch.mit.edu/projects/1186934574/ 「さて…どんなものか……」 バトル開始の合図が出された。 まず中央に向かって…… 「!?」 頭上からインクが降ってきた。避けてあたりを見回す。 「今のを避けますか…口ほどではないようですね」 「…単純に頭上からの奇襲だけとは芸がないな、もっと面白い戦い方はできないのか?」 プライムは俺のいる場所から少しはなれた高台にいた。余裕そうな笑みを浮かべている。 「さて、ではこういうのはどうでしょう」 プライムは高速で移動しながら複数のラインマーカーを投げた。 それらはすべてものすごく低速で止まっているかのようだ。 「はたして避けきれますか?」 プライムが前に手を掲げると、ラインマーカーは一斉に動き始めた。 それぞれが反射しながらこちらへ向かってくる。 ただ… 「なるほどな」 「…すべてかわした!?」 このアビリティには一つ欠点がある。 速度を同時に操作する対象が多いほどそれは顕著に現れる。 イメージとしては、一台のラジコンを操作するのと、十台のラジコンを操作する差みたいなものだ。 「若干のタイムラグが生じるから、全部同時には速度を変えられない。だから今のラインマーカーも誤差の範囲だが順番に射出された」 「動体視力どうなってるんですか……それともあなたのアビリティか…」 「なに言ってるんだ?この程度ならアビリティを使わずとも見極められるだろ」 不意打ちならまだしも、集中していれば音速程度見逃すことはない。 「それに…」 俺は地面を蹴って一気に間合いを縮めた。 プライムは音速で背後にまわるが想定済みだ。 「自分が狙うときは、エイムを優先して通常の速度に戻るみたいだな」 プライムは何発かインクショットを放ったが、気にせずスライドで避け至近距離まで詰めた。 「くそっ…」 再び音速になり距離を取ろうとするプライムの動きを読む。 このレベルの相手なら力の入れ方とか呼吸、視線で大体の移動先はつかめる。 「そこか」 俺はその場所を狙って撃った。 「なっ!?」 想定外だったのかプライムはインクショットを浴びてやられた。 「言っとくが、お前、アビリティに頼りすぎだ」 まあ、もみじさんから言われないだけまだましだろうが。 アビリティ頼りでなにも考えず単純な動きしかしないのは宝の持ち腐れというやつだ。 それに一応俺なりのアドバイスのつもり。 そのとき、バトル終了を知らせる笛が鳴った。 「一回戦突破おめでとー!!」 「あ、ありがとな」 デュアルはバトルが終わるなり電話をかけてきた。 スピーカーにしていないのに鼓膜がはち切れそうだ。 「師匠も突破したらしいよ!」 「そうだろうな」 師匠はもみじさんに負ける前は公式戦241連勝だった。 本人は連勝とかは気にしていなかったみたいだけど。 逆に、連勝を止めたもみじさんのことは世間や師匠から注目されている。 俺がいなかった一年間は実質的な一位だったからな。 「もみじさんも突破してるか?」 「うん、そうみたい。このあともすぐ二回戦だし切るね?頑張って!」 「ああ」 電話を切ると、アナウンスが流れた。 ≪まもなく二回戦を開始します≫ 次の対戦相手は確か4位のはず。かなり気が抜けなくなってくる。 大体9位あたりからは、アビリティなしでもそれ以下の順位と戦える実力になってくる。 「そろそろアビリティ使わないときついかもな…」 4位はリッターという名前の女性プレイヤー。もみじさんのようにかなり早い速度で上位に上がってきたプレイヤーだ。 軽い物質を自在に動かすアビリティを持ち、その力を使って相手の視界に入らないところからインクを操作して狙い撃ってくる。 軽い物質の定義は曖昧だが有効範囲がかなり広く、地面に塗られたインクすら動かしてくるためかなり厄介だ。 ステージはタラポートショッピング。比較的平坦でリッターが得意とする地形。 初期地点に立って合図を待つ。 とにかく離れていてはこちらの攻撃は届かず、相手はほぼ射程無限と言っても過言ではないため、距離を詰めることが重要だ。 だがリッターのアビリティは動いているときでも使えるため、逃げながら攻撃もできる。 どうやって立ち回るか…… 考えているとバトル開始の合図が出た。 その直後にリッター4Kの狙撃音が聞こえた。 「どこから来る…」 後ろから空を切るような音が聞こえた。 俺はぎりぎりで避けたあと敵陣へ走った。 リッターの立ち回りは自陣から動かず狙撃をし続けることにある。 狙撃をするにつれて避けなければならないインクショットの数も増え、飛び散ったインクも活用してくるため不利になっていく。 つまりスピードが肝心。 何発か狙撃音が聞こえた。インクショットの数も増えてくる。 「アビリティ……使わせてもらう!」 俺のアビリティは「予知」。単純に指定された時間、場所の未来が見える。 時間は10秒後の未来までだが、場所はいったことのある場所であれば距離関係なく使える。 一秒後右後方と左前方斜め上、あとは正面か。 なぜかはわからないが未来には生物の姿は映っていない。そのため自分含めた人の場所と動きを把握し続ける必要がある。 すべてのインクショットを避けたが、次第にその数は増えていく。 ただ予知のおかげで避けながらの最短ルートを選んで躊躇なく進める。 なぜなら予知で見た未来は確定したものだから。 「狙撃音が止んだな…移動してるのか…?」 予知にはなにも映らない。 そのとき後ろからチャージ音が聞こえた。 「なに…」 「避けさせない」 予知では地面のインクを俺の周りに囲ませるように動かされている。 背後は水。まさに背水の陣だ。 これを避ける方法は一つしかない。 俺は水に向かって飛んだ。 元々いた場所の周囲にインクが張り巡らされる。 「自害とは…情けない」 「どうかな」 水に触れる寸前、俺はショクワンダーを発動させた。 そうすればもといた位置にスーパージャンプで戻ってこれる。一時的に攻撃を逃れられるのだ。 リッターは急いでブキを構えた。 「着地狩り…」 そう。着地位置は相手にもわかるし、着地したときは無防備だ。 本来は。 リッターは着地にあわせて狙撃をした。 しかし俺はスライドでかわした。 着地前、空中でスライドし着地地点から少しズレたところへ着地したのだ。 予知を発動したあと俺はリッターの背後にスプリンクラーを投げた。 リッターは地面のインクをスミナガシートのように壁状にして目眩ましを張った。 立て直す気だろう。 ただ… 「!?」 リッターはスプリンクラーの放つインクに触れた。 その音を逃さない。 目眩ましのインク越しに撃つ。 何発か当たった手応えはあったが、仕留めきることはできなかった。 目眩ましが消えたとき、リッターは再び姿を消していた。 距離を詰めての奇襲は想定外だったが、なんとか対処はできた。 やはり気は抜けない。 また狙撃音が聞こえはじめた。もうかなり遠くに移動したようだ。 「このままじゃ埒があかないな…」 一方… 俺がリッターと戦っているとき、師匠の戦いは別のステージで始まろうとしていた。 ステージはナメロウ金属。 師匠のブキはヴァリアブルローラーフォイル。 相手はランキング9位。ジムという名前でジムワイパーヒューを使っている。 バトル開始と同時に両者とも飛び出して中央に向かう。 ジムのアビリティは透明化。自分や対象を透明にすることができる。 音に気をつけさえすればいないも同然になるのだ。 ジムは師匠を見つけるなりアビリティを使って音をたてないように近づいていく。 そして間合いに入ったところでブキを振るう。 「そこか!」 師匠は飛び退いて指を鳴らした。 と同時に周りにたくさんのキューバンボムが現れ、師匠は姿を消していた。 「な!?」 ジムはぎりぎりのところで避けたが、それによって位置がバレてしまった。 高台に移動していた師匠はローラーを振り下ろして攻撃をする。 ジムは射程外へ逃れ再び息を殺して師匠に近づいていく。 「めんどくさいアビリティだな…」 師匠のアビリティは公になっていない。 俺ももちろん知らない。おそらく知られることがデメリットになるアビリティなのだろう。 師匠はまた指を鳴らした。姿が消え、頭上から大量のボムが降ってくる。 ジムはボムのない場所を探して移動をしたが、跳ねたインクは飛び散ってジムの体につく。 ジムが透明化できるのは自分と自分の手で触れたものだけなので、飛び散ったインク全てに触れるしか透明になる方法はない。 だが師匠はそんな猶予など与えはしない。 「それじゃ透明も意味ないよな」 そう言って師匠が指を鳴らすと、ジムの目の前に現れた。 「なっ!?」 突然のことにジムは驚いたが、地面にポイズンミストを投げつけた。 だが着弾する前に師匠が再び指を鳴らすと、地面に投げたはずのポイズンミストは全く違う方向へ飛んでいった。 師匠は至近距離でブキを振り下ろしたが、ジムは飛び下がってタメ斬りを放つ。 師匠は横に避けてジムの背後にキューバンボムを投げた。 左右は壁で逃げられない。 「終わりだ!」 狭い通路での縦振りは見事命中し、師匠は勝ち進んだ。 俺とリッターとの戦いは15分に及んでいた。 ただ、攻撃を避ければ避けるほど疲労はたまってくる。 互いに動きが鈍りはじめていた。 「そろそろ終わらせないとな…」 俺はショクワンダーを使って一気に距離を詰めた。予知は常時発動している。 リッターは目眩ましのインクを張って逃走を図る。 だがショクワンダーの機動力ならインクを越えることなど造作もない。 スライドでさらに至近距離まで接近したが、トラップに行く手を阻まれる。 ショクワンダーの時間制限が来たとたん、リッターは呟きブキを構えた。 「私の勝ち」 スーパージャンプで着地地点に戻される直前、予知に映ったのは今まで撃ってきた全てのインクショット。 それらを遥か上空に待機させ、一気に着地地点とその周辺めがけて放とうというのだ。 「どうする…どうしたら避けられるんだ……」 降ってくるインクは100を超える量だ。認識することすら難しいだろう。 「仕方ない…最終手段だ」 スーパージャンプに移行した俺は、予知に映るインクのパターンを全て記憶しようとした。 スーパージャンプの時間は二秒弱。その間に100以上のインクの配置の暗記をするのだ。 最終手段といったが、平たく言えばごり押しだな。 「これなら避けられそうだ」 着地直前でパターンの記憶が完了し、スライドも駆使しながら避けていく。 疲れのせいかかすりそうにもなったが、なんとか凌ぎきった。 「まだ終わってない」 先ほどブキを構えていたリッターは俺に向けて狙撃をした。 避けようとしたが周囲にインクの目眩ましが発生した。 「面白い戦い方だ」 だが予知によってどこからどうくるかは掴めている。 インクショットも一つのみでリッターはその操作に集中しているようだ。 しかしくる場所がわかる以上目眩ましはリッターにとってただの邪魔でしかない。 「全部避けるなんて…」 「終いか」 俺は目眩ましのインクを突き抜けスライドで射程圏内まで距離を近づける。 「楽しかったよ」 反応が遅れたリッターは目眩ましを張るがもう意味はない。 目眩まし越しに射撃を決め、試合開始から20分、ようやく終了の合図がでた。