わかばちゃ〜ん?(デュ) はーい!(わ) 何が好き〜? ミルクココア(?)よりもあ・な・た!って何やらせてるんですかー!!/// ↓本文↓ ついにやってきた準決勝。 師匠と戦うのは2年前の大会ぶりだ。 一昨日の戦いで俺の実力も鈍っていないことがわかったし、万全の状態で戦える。 俺は内心とてもわくわくしていた。 「よおクアッド」 試合直前、ロビーで待機していると師匠と出会った。 師匠も同じく楽しみなのか、笑みを浮かべている。 「準備は万端か?」 「もちろんです」 もみじさんと戦うには師匠を突破しなくてはならない。それに俺も久しぶりに全力で戦ってみたい。 「そういや、復帰の理由はもみじと戦うためだってな」 「ええ…師匠を倒すほどの相手ですし、1位が空席のせいで2位止まりだなんて思われたら嫌ですからね」 「好戦的じゃないか。らしくないな」 「俺と同じレベルで戦えるのは師匠だけでしたから」 今日はどちらの試合も最高に楽しめそうだ。 「準決勝、もみじと戦うのはスパッタリーだ」 「…!」 「あいつも大会に出てたんだよ。なにせ5位だしな」 俺のワイヤーグラスはそのスパッタリーという人からもらったものだ。 スパッタリーさんは師匠の同期で幼馴染。師匠の家に居候としていたときよく会っていた。 引退する前は俺の家にもきてよく話していた。 「スパッタリーさんならどう転ぶかはわかりませんね」 「いや、もみじが勝つ」 師匠は言い切った。 「幼馴染のよしみでスパッタリーに賭けたいとこだが、私の直感はそう言ってるんだ」 「…そうですか」 師匠の直感はよくあたる。アビリティとかとは全くの無関係らしいので元々そういう何かを持っているのだろう。 とはいえスパッタリーさんのアビリティ的にも、勝ち筋がないとは言えないはずだ。 「おっと、そろそろ始まるぞ」 「今回も本気は出さないんですか」 「私の本気は相手が誰であろうとなにをしようと勝ってしまうからな」 師匠は昔からそう言って少し手を抜いていた。 実際一度本気を出されたことがあるが、予知の暇もなく瞬きした頃には勝負が決していた。 「必ず勝つなんて面白くない。だから楽しくやろうぜクアッド!」 「師匠のアビリティが気になって仕方ないですよ…」 準決勝のステージはスメーシーワールド。師匠はヴァリアブルローラーフォイル、俺はクアッドホッパーホワイトを装備。 師匠のアビリティは過去の戦いの記録から、指を鳴らした時自分や物を瞬間的に移動させたり発生させたりするものだとわかっている。 通常ならば動きを捉えることすら難しく、さらに師匠の異常な視野の広さと直感の鋭さ、起点の良さもあり、絶対に落とせない城のような存在になっているのだ。 試合開始の合図が出され、俺は右から回り込んで中央へ向かった。 マップ確認で師匠も同じく中央に向かっていることを確認し、警戒を緩めずに進んでいく。 「一旦アビリティか…」 予知を使おうとした時、周囲に円状にボムが置かれ、頭上から師匠が俺めがけてローラーを振りかぶっていた。 「逃げ場なしに加えて頭上からの攻撃…!」 爆風はイカロールで弾きローラーはスライドで躱す。 しかし距離を取る間もなく師匠は指を鳴らした。 すると今度は背後に現れてローラーを振ってきたがギリギリのところで回避した。 だがまたも間髪入れずに指を鳴らしてはボムで動きを制限してとどめを刺そうとしてくる。息をつく暇がない。 スライド途中に狙い撃ってみたが、全て素で躱された。 「化け物だなやっぱ…アビリティありなら本当に敵なしなんじゃ…」 「おら!考えてる暇なんかあんのか!」 次に指を鳴らした時、周囲にはボムと一緒にスミナガシートも張られていた。 予知を発動して左からの奇襲を避け、反撃を仕掛けたがすでに距離を取られていた。 スミナガシートが晴れた時師匠は少し離れた正面に立っていた。 「もうバテたか?まだ1分だぞ」 激しい戦いによって俺は段々と疲れてきていた。 「師匠はどうして息が切れていないんだ…体力が多いとかの問題じゃないんじゃ…」 その時俺はハッとして考え直した。 本気を出すと確実に勝利する。指を鳴らして発動。瞬間移動に見える動き。疲労がたまらない。 「…なるほど。時間停止か」 「おおよそ当たりだな。厳密には時間操作だ」 「なら、勝ち方がわかりましたよ、師匠」 俺は師匠に向き合いブキを構え直した。 「そうか…じゃあ見せてくれクアッド!」 師匠が指を鳴らすと今までに見たことのない量のボムが現れた。 「回避できるように起爆タイミングはほんの少しズラしておいた。しのぎ切ってみせろ」 ものすごい爆発音が連続して鳴り響いた。 爆風に巻き込まれない範囲へと動き続ける。 予知をフル稼働して範囲を割り出し、最低限の動きで爆発から逃れる。 爆発が起きていた10秒ほどの間は、数十分に感じられるほどだった。 そして息を切らしながらなんとか避け切った。 「そろそろ勝たせてもらいます…」 「こっちのセリフだ」 師匠がローラーでとどめを刺しにくる時、必ず振りかぶった瞬間に時間停止を解除する。 つまり振り下ろすまでに少しの間猶予があるということ。 だが停止の合図は指を鳴らす動作で、予知には生物は映らない。 現れたボムの位置によってどこから狙ってくるかを割り出す。そして停止するまで動かず、停止を解除した瞬間その場所へ連射する。 いわば奇襲を逆手に取った逆奇襲ってことだ。 この作戦は一度しかチャンスがない。成功しなかった場合警戒されてボムと遠くからの攻撃のみになる可能性が高い。 だから確実に成功させなければならない。 「いくぞクアッド。私の全力受け取れ」 俺は予知を発動させた。が、そこに映るのは俺の予想していたものとは全く違うものだった。 俺の周囲、それだけでなく頭上や斜め方向からもボムが飛んできていたのだ。 今まではボムを俺の背後に置き正面や頭上からローラーの一撃を狙ってきていた。 だが今回は全ての場所にボムがあり予測ができない。 「……賭ける価値はあるな」 師匠が指を鳴らすと同時に、予知で見た光景が広がった。 そして俺は背後に迫っていた師匠を撃ち倒した。 「っ!!」 ボムはショクワンダーで離れて回避した。 「やっと決勝に進出か…」 試合終了の笛が鳴り俺はロビーに戻った。 「おいクアッドー!」 また師匠とロビーで会った。 「やるじゃないか、私のアビリティも、移動先も見破るなんてな!」 「師匠と同じく、直感を使ってみたんですよ」 「まあ最初お前が狙おうとしてたとことは少しズレてたし、まだ修行が必要だな」 直前で修正したのバレてたか。 「決勝の相手はもみじになった」 「…スパッタリーさんでも負けるんですね」 「いや、それがおかしくてな。開始1分経たず負けている」 「そこまで圧倒されるのは妙ですね」 スパッタリーさんのアビリティは反転。事象でなければ大抵のことは反転させられる。例えば、インクショットの方向、敵の左右感覚など。とても強力なものだ。 ただし発動条件はその対象を2秒間目視すること。師匠のように神出鬼没であったり、ジムのように透明だと相性が悪い。 「もみじの今までの戦いのリプレイを見返したんだが、スパッタリーの時だけ異変が起きていたんだ」 「異変…ですか?」 「ああ。おそらくもみじのアビリティだと思うんだが、試合開始後少し経った頃、スパッタリーが突然倒れたんだ」 「倒れたって…」 「体調に変化はなかったらしい。だが気をつけろ。とてつもなく嫌な予感がする」 スパッタリーさんを早期撃破し、アビリティなしとはいえ師匠も倒している時点でかなりの実力者なのは間違いない。 「面白くなってきましたね」 「つくづくらしくないな」 すると、俺の携帯が鳴った。 デュアルからの着信だ。 「デュアルから電話ですね」 「じゃ、私は帰って観戦でもするかな」 「またやりましょう」 師匠は振り返らず手を振って帰って行った。 俺は電話に出た。 「もしもしお兄ちゃん?決勝進出おめでとう!次はいよいよもみじちゃんだね!!」 「ああ。どうやらかなりの難敵みたいだし、気を抜かずにいくよ」 「クアッドさん頑張ってください!!」 「ありがとう。このあとすぐだから、2人ともじゃあな」 俺は電話を切り、会場へと向かった。 ――そこで俺の記憶は途絶えている。 ***** 目を覚ますと、そこは真っ白な病院の室内だった。 ゆっくり起き上がると、俺が横になっていたベッドにもたれるようにしてデュアルが眠っていた。 「……待て、どういう状況だ」 決勝戦は?もみじは?そしてなぜ病院に… 「おいデュアル、つきっきりも良いがそろそろ……」 病室に師匠が入ってきた。 師匠は起き上がった俺を見るなり持っていた食べ物を落として唖然とした。 「クアッド……お前起きたのか…」 「え、ええ…あの、俺なんで病院に…?」 「デュアル、起きろ!クアッドが目を覚ましてるぞ!」 師匠はデュアルの肩をゆすって起こした。 「師匠…?えっ……お兄ちゃん!?」 「お、おう…」 「よかったー!!」 デュアルが思い切り抱きついてきた。 「待てデュアル、どういうことだ?決勝戦は…」 「えっ…?あ、そっかお兄ちゃん意識失ってたもんね」 「…なんかお前……雰囲気変わってないか?俺どれくらい意識を…」 「一年半」 「は?」 「一年半、意識を失ってたんだよ」 一年半…? いやそもそもなんで俺は意識を失ってる。 「状況が掴めてないって顔だな」 「師匠、なにが起きたんです?」 「……まさかとは思ったが、お前でも気づかないレベルとはな」 気づかない?なんの話だ。 「お前は決勝の試合準備中、後ろからもみじに刃物で刺されたことになってる」 「…え?」 刃物…?それにもみじが一体なんで… 「全国放送されてる中な。お前が気づかなかったんだ。周囲の観客も誰も気づかなかった」 「警察ももみじちゃんの行方を探したんだけど、いまだに見つかってないの」 「理解が追いつかない」 もみじに刺されて目覚めたら一年半後? 冗談だろ。 「なんでもみじは俺を…?」 「わからない。ただ、あえて全国放送の中を狙って、そのために大会に出たってことはわかってるみたい」 「それにどうやら、もみじはアビリティ複数持ちみたいだ」 「複数!?」 アビリティは本来1人につき1つのみ。複数持ちの事例はない。 1つでも便利なものが多いアビリティを複数となると… 「クアッドが刺された瞬間、私や移動系のアビリティのものは全員もみじに迫ったが、敵わなかったよ」 「師匠が敵わないって…どうしてですか」 「指を鳴らしても発動しなくなった。他の奴らもそうだ。誰もアビリティが使えなくなったんだよ」 「アビリティを封じるアビリティってことですか!?」 「多分な。それに遠方から援護しようとしたリッターたちも使えなくなったそうだ」 情報量が多すぎて頭がパンクしそうだ。 「それから、スパッタリーにあのあと聞いたんだが、倒れたのは視界が奪われたかららしい。目に映る光景が暗黒に差し替えられたみたいにな」 「ならアビリティの複数持ちは確定ですね…」 「今わかっているもみじのアビリティ保有数は6つだ」 少なくとも6つ…… 決勝がまともに行えていたとしても… 「そういえばわかばさんは…?」 「あ……えっと…」 デュアルは言いづらそうに言葉を詰まらせた。 「何かあったのか?」 「その…わかばちゃんはもみじちゃんがお兄ちゃん刺してるのを見て…ショックだったのかすごく落ち込んでて…」 …血を分けた双子の姉妹だしな。 「それで心を閉じちゃったって言うか…」 「心を……」 「だから、退院したら一回会って欲しいの」 「それはもちろんだ」 支えるって言った身だ。 こうしてデュアルと師匠に支えてもらってるけどな。 「とりあえず、お兄ちゃんのことお医者さんに伝えてくる」 「わかった」
3話 https://scratch.mit.edu/projects/1186934872/ 5話 https://scratch.mit.edu/projects/1187232666/ 本文下にあるよ ジャンル 二次創作 ラブコメ ファンタジー(?) よければ感想どうぞ そんなたいそうなこと書いてないけど設定、キャラ詳細、著作権に関してはこちら↓ https://scratch.mit.edu/projects/1186934416/ 考察、裏話はこちら↓ https://scratch.mit.edu/projects/1186934574/ とくに悪いところもなく、傷はとっくに治っていたみたいで翌日には退院できた。 意識がなかったのは倒れる時に追い討ちでもみじに蹴られ、頭の打ちどころが悪く脳にダメージがどうとか…… わかばさんは実家に戻っているようで、俺とデュアルは向かい、師匠は俺のことをスパッタリーさんや心配していた知り合いに伝えにいくようだ。 わかばさんの家の扉に鍵はかかっておらず、本人は部屋の中にいた。 デュアルは扉の前で呼びかけた。 「わかばちゃん!お兄ちゃん起きたよ!!」 …返事はない。 「わかばさん、入ってもいい?」 「やめてください…」 部屋の中から小さく呟くような声が聞こえた。 「今わたしきっと酷い顔をしています…見せたくありません」 俺とデュアルは顔を見合わせた。 「そんなことないよ!わかばちゃんの顔が酷いなんて思ったことないし、思うこともないよ!」 「…ごめんなさい。わたし嘘をついていたことがあるんです」 「嘘…?」 「わたしも…アビリティを複数持っています」 「!」 …いや、双子はアビリティを共有するようだし、不思議なことではない。 「わたしの持つアビリティの中に、運命操作というものがあります…」 響きが最強なんだけど。 「一度の使い捨てアビリティで、わたしがクアッドさんと出会ったのは、わたしが操作したからです」 「お兄ちゃんに……世界一位のプレイヤーに会う運命にしたの?」 「いえ、結ばれる運命です」 結ば……え……?なにそれかわいい。 「多分わたしが何を言っても大体のことをクアッドさんはかわいいとか思っていたはずです」 読心…? 「ん?待って、わかばちゃんが結ばれるように操作したってことは、お兄ちゃんのこと好きだったってこと?」 「…………そ、そうです…」 なんか照れてね。ほんとは元気なんじゃ。 「でも、もみじが操作しようとしたのはクアッドさんの死。わたしが操作したものと食い違うので、間が取られて重傷でしばらく意識を失っていたということです」 なるほど。どちらも叶わなくなったってことか… 「ならわかばさんは俺のことを守ってくれたんだ」 「……そういう問題では…」 「わかばさんが何に落ち込んでいるのか、俺はわからないんだけど…」 「怒ってないんですか…?」 怒る? 「なにを?」 「いや、お兄ちゃんはわかんないかもだけど、普通は好意を操作されるって気持ちのいいことじゃないよ」 「わかばさんのそのアビリティってもう効果切れてるんだよね」 「もみじと相殺されたので…切れてるはずです…」 「じゃあ怒ることはなにもないな」 「えっ?」 俺は部屋の扉を開けた。 なんだ。やっぱりかわいい顔してるじゃないか。 「わかばさん、好きだ。付き合ってほしい」 「……ふぇ…?」 「え……お、お兄ちゃん…?」 「一年半経ったってことはお互い成人してるし、なんなら結婚しとく?」 わかばさんは呆然としている。 デュアルも言葉を失っているようだ。ちょっと調子に乗りすぎたか。 「かわいいなとか好きだなとか、思わされたものじゃなくて、効果が切れた今もそう思ってるんだよ。だったら本心ってことだろ?」 「で、でも…」 俺はベッドで小さく座っているわかばさんの隣に座った。 「本心ってことは、わかばさんはなにも悪くないってことだよ」 「でも、アビリティを隠してたのは事実で…」 「そんなこと、俺や師匠だってしてた。関係ないよ」 俺はデュアルの方を見て言った。 「デュアル、どう思う?」 「どうって言われても……」 デュアルも俺が起きたり、その前から俺やわかばさんに気を遣っていたりしていっぱいいっぱいなのだろう。今の質問は俺の配慮が足りなかったか…… 「私は…わかばちゃんの味方として隣にいたいな……」 …やっぱ、デュアルは優しいな。 「俺はこれからもみじさんを探す」 「えっ?」 もみじさんが俺を殺そうとしたのはなぜなのか、それ以前になぜ俺が復帰すると予測できたのか。 「会って話がしたい」 「正気…?一度殺されかけた相手だよ?二度目がないって決まったわけじゃ…」 「だからこそだよ」 それに、わかばさんの妹だ。そんなことをする人とは思えない。 なにか裏がある気がした。 「わかばさんにも協力してもらえると嬉しい」 「わたしに…」 「無理にとは言わない。俺からの頼みだよ」 わかばさんは俯いた。 「クアッドさんは、わたしのことを好きって言ってくれました」 俯いたまま呟くようにして続けた。 「わたしも好きです。でも……わたしなんかが…」 「いいんだよ」 わかばさんは顔を上げた。 「正直、唐突すぎたなって思ってる。だからそれはまた今度改めて、ちゃんとした場でやらせてくれない?」 「クアッドさんは、本当にわたしでいいんですか…?」 「世界一位に、見る目がなくてたまるかよ」 俺は笑って見せた。 わかばさんの目には大粒の涙が浮かんでいる。 気持ちの整理がついていないんだろう。 「一つだけ…わがままをいいですか」 「いいよ」 「もう一回ちゃんとした場で、というのは嬉しいんですが…」 わかばさんは俺の手の上に自分の手を重ねた。 「あの……恋人には、今すぐなりたいです…」 「……もちろん」 俺はわかばさんの頭を優しく撫でた。 「あ、の、さ!!」 少し怒ったような声音でデュアルは言った。 「私のこと完全に空気にするのやめてほしかったなー」 「ごめんごめん……」 存在を忘れてたなんて言えない…一年半意識失ってた俺に毎日通っててくれたデュアルになんか…! 多分言ったらボッコボコにされるな。 デュアルはソファに寝転がった。 「まあ何はともあれ、2人ともおめでとう」 「あ、ああ……純粋なお祝いの言葉として受け取っておくよ」 「お兄ちゃんはわかばちゃんにさん付けだし、わかばちゃんは敬語とさん付けだしで全然距離遠いと思ってたのに……」 「あ、そういえばそうだな。やめるか」 デュアルは思いついたように声を上げた。 「そうだ!お兄ちゃんもこれからは、わかばちゃ〜んって呼びなよ!」 「いやいや…何が好き〜?じゃないんだからさ」 「わかばちゃんはお兄ちゃんのこと、ダーリンでもなんでも好きに呼んでいいよ!!」 「えっと…さん付けじゃだめなんですか…?呼び捨ては慣れなくて…」 「ダーリンさんでもいいよ」 誰だよ。 「というか、私にも敬語で話してるよねわかばちゃんって…」 「基本低く出るよな」 「そのほうがなんとなく自分に合っている気がして…もみじと話す時は、使わないんですけどね」 もみじさん、か…… 「今日はわかばちゃんの家に泊まってもいい?」 「全然大丈夫です!ただ、食材がないので夕食をどうするかですが…」 「外食でも行く?」 「そうですね……」 2人が話している最中、俺のスマホに通知が届いた。 内容を確認して俺は、一旦家を出ることにした。 「お久しぶりです、スパッタリーさん」 「クアッドくん、随分変わったね」 師匠に場所を教えてもらっていたみたいで、会いにきてくれたのだ。 話したいこともあるらしい。 「私も君の意識がない時、何回か行ったけど…妹さん、変わらず優しいね」 「スパッタリーさんも、昔と変わらず元気そうで…」 「復帰してくれたこと、あんなことが起きたから、喜んでいいのかわからないけど……」 確かに、復帰せず大会にも出なければ、もみじさんとの一件もなかっただろう。 「大会に出たことの後悔はしてませんよ。それよりも、話したいことがあるんじゃ…」 「君のことだからさ、きっともみじさんを探すんじゃないかって思って」 スパッタリーさんはバッグから資料を取り出した。 受け取って見てみるともみじさんの情報について詳しく書かれていた。 「知り合いにそういうのに通じてる……まあいわゆる情報屋がいてね、無理を通して調べてもらったの」 「情報屋……」 「クアッドくんのためって言ったら、すぐに協力してくれたよ。ファンなんじゃない?」 スパッタリーさんはそう言って小さく笑った。 資料には個人情報や生い立ち、アビリティなど詳しく書いてある。 「とてもありがたいです。なにもわかっていない状況だったので…」 「役に立ったなら嬉しいよ。あ、それとスクリューも心配してたみたいだから、連絡は取っておきなよ」 「スクリューが…」 スクリューは俺の幼馴染。師匠の家でお世話になっていた頃デュアルと3人でたまに遊んでいた。 「ゆっくり話したいところだけど、私はこの後予定があって」 「いえ、わざわざ渡しにきてもらってありがとうございます」 「うん、じゃあまたね」 スパッタリーさんはそう言って去って行った。