本文↓ 今回三人称視点です 「世界一位による……蹂躙…!?」 「あのデンタルとホットっていうやつら、かなり手練れか……デュアルさん、我々は観客の避難を」 「あ、は、はい!」 観客たちは2人の誘導によって無事外に出流ことができている。 「も、もみじ、使う前に聞きたいんだけど、なにがあったの?」 「2回戦が早々に終わって、準決勝をしてたの……」 数分前―― 「世界一位と戦うのは初めて……いや洗脳されてる時に戦ったけど…」 試合が始まり、中央へ向かったが誰もいない。 それどころかステージにクアッドの気配を感じない。 「…?」 戸惑っていると背後から一筋の殺気を感じた。 驚いて避けたが腕に何かを掠めた。 見ると血がでている。 「な……」 「もみじ、すまんが加勢するぞ」 隣に師匠が現れた。 急なことにもみじは混乱している。 「えっ、あの、一体何が…」 「これを見ろ」 師匠が手にしていたのはさっき投げつけられたナイフ。 「なにが目的かは知らんがクアッドはお前を殺そうとしているらしい。試合なんてしている場合じゃない」 「く、クアッドさんが…?」 今度は正面と背後からナイフが飛んできたが師匠が指を鳴らすと両方弾かれた。 「姿が掴めないな……もみじ、ここは一時退却をしよう」 「は、はい」 今一度指を鳴らそうとしたその時。 クアッドは師匠を肩から背中あたりまで切り刻んでいた。 振り返った時にはもういない。 「!?そんな、聖域で感覚範囲が広がってるのに反応できなかった…!」 「あ、あいつの本気は怖いぞ……私同様、普段は80%くらいでしか戦わないからな……」 「ヴァリアブルさん、ひどい怪我を…」 「私は大丈夫だ。それよりも……」 話している中クアッドはもみじに狙いを定めていた。 「!」 もみじの首元に刃物が迫った。 かわそうとしたが致命傷を避けるので精一杯だった。 首から肩にかけて斬り傷ができる。 「こりゃ……150%くらいは出てんな」 「どうすれば……」 「私が指を鳴らそうとしたときに意味のわからない速度で攻撃してくる。どうにか隙を作るしかないな」 「もみじが作ります、師匠はそのうちにアビリティを発動させてください」 「死んだらおしまいだからな」 もみじは地面を蹴って走り出した。 「多分もみじを狙ってくるはずだから……」 案の定数本のナイフが飛んできたがもみじは全てかわした。 しかしその直後背後にクアッドが迫っていた。 「!?」 突き刺そうとする動きに対し冷静に横に回避し距離を取る。 初めてクアッドの姿を見ることができた。 「……中身が抜けてるみたい」 表情を変えずただ襲ってくる。感情も思考もないのだろう。 「……となると呪縛じゃないとだめかも…天翔」 もみじは上空へ飛んで様子を伺った。 しかしクアッドは同じ高さまで飛び斬りつけてきた。 回避したが軽く上にナイフを投げ、それを足場に戦うという異次元の身体能力で継戦してくる。 しかも足場にしたナイフは蹴って師匠の元へ飛ばされる。 攻撃、防御をこなしながらこんな芸当をやってのけるのだ。 「っていうか……それいくつ隠し持って…」 もみじは今度は攻めに出てみることにした。 ブキを捨てて落ちていたナイフを使って戦う。 だが近づけばもちろん相手の間合い。数回攻撃が体に掠った。 「触れれば勝ち…!」 一瞬、もみじの左手がクアッドに届きかけた。 「呪ば――」 だが直前で手にナイフを突き刺された。 それによってもみじは倒れナイフは地面まで貫通し、手に釘を打たれたような状態になってしまった。 「いっ…」 見上げるとクアッドが止めを刺そうとしている。 「隙、できたな」 刃がもみじの顔に届く瞬間、指を鳴らす音が聞こえもみじはその場から消えた。 さらにクアッドはとてつもない衝撃を受けたかのように吹き飛んだ。 「1発……ああいや、20発ほどおかえしだ」 そして再び指を鳴らした師匠はもみじと消えた。 クアッドは起き上がり今度はわかばのほうへ向かった。 「ごめん、すぐにいけなかったのは師匠の傷が深くて……」 「ううん、来てくれてありがとう」 もみじはうつむきなにか決したように言った。 「わかば、もみじは今怪我と体力的にそこまで動けない。だから多分……」 「いいよ。わたしは」 もみじは顔を上げた。 「わたしの好きな人だから。わたしが止めたいの」 「……そうだね」 「別れの挨拶は済ませましたか」 デンタルは勝ち誇ったような笑みを浮かべている。 「今の状態で2人がクアッド、デンタル、ホットに勝てる確率は限りなく0に近い」 「そんな……じゃあ私たちも加勢を……」 「僕らが行って戦況が良くなる確率も同じだ」 「でもだからって黙って見てるなんて無理です……」 「…………おそらく2人はあれを使う。どの程度の力になるかはわからないが、足手纏いになるだけだ」 観客席にはスイーパーとデュアルの2人しかいない。 「もみじ、わたしずっとアビリティを使えなくて、何をやってももみじみたいに上手くいかなくて、羨ましかった」 「もみじも、世界一位の恋人で、いろんな友人がいるわかばが羨ましいよ」 「ずっと言えなかった。わたしが不甲斐なかったし、もみじが凄すぎたから」 2人は向き合った。 そして互いに右手の指を重ね合わせた。 「やっと言える。わたしが胸を張れる」 わかばは笑顔を見せた。 「あとは、お姉ちゃんに任せていいよ」 もみじは一筋の涙をこぼした。 その瞬間、強い光が2人を纏い、光がなくなる頃にはその姿は消えていた。 「……双子はどこに」 「まずは時間制限を作り出しているあなたから」 声がした直後、水面が凪ぐような静けさが訪れ、そしてホットが倒れる音のみが響いた。 デンタルが振り返るとそこには1人の女性が立っていた。 「……まさか双子が1人になった姿だとでもいうのですか」 「1人になったんじゃない。今でもここに2人でいますよ」 その女性は胸をおさえた。 「もみじ……傷、こんなに痛かったんだね」 「クアッドさん、やってしまいなさい」 クアッドはその場から消えた。次の瞬間その女性の背後に移動していた。 ナイフが届こうとするその瞬間。 「……」 女性はクアッドの動きを捉え的確に反撃を入れた。 クアッドは距離をとった。 「なるほど。やはり強くなっていますね」 「今のわたしなら、クアッドさんを超えられます」 「世界一位を超えるなど不可能です」 「できます、わたしともみじなら」 「どうやって?たかが一撃入れただけで調子に乗っているのですか」 「……この状態のわたしたちはおちば、とでも名乗りましょう。忠告です、時間が長引けばそれだけわたしたちに有利ですよ」 クアッドは立て続けにナイフを投げつけたが、おちばは動かない。 当たると思われたナイフは全ておちばの頬を掠めるだけとなった。 「可能性を増大させる、それがおちばのアビリティ」 「可能性を増大……何を言っているのかさっぱりですね」 その頃観客席のスイーパーは前代未聞のことに驚愕していた。 「ば、ばかな……まさかこれがおちばのアビリティだと…」 「どうしたんですか?」 「2人がクアッドたちに勝つ確率が上がり続けている……」 「まさか、事象の確率コントロール…?」 スイーパーはメガネを指でクイっと押し上げた。 「だとすれば、あの2人は確定した未来ですらも変えかねない…!」 「未来を…!?」 おちばはとても落ち着いていた。 「現在24%……この速度ならあと大体4分で100%ですね」 「……仕方ありませんね。まさかあなた方双子が奥の手を用意しているとは」 デンタルは前へ出た。 「私も参戦いたしましょう」 「……」 おちばは一歩下がり間合いを維持した。 「流石に警戒されますか……クアッドさん、隙を作りなさい」 クアッドはまたしても数本のナイフを放ったが、全ておちばの体を掠めるだけ。 さらに近づいて斬りつけるも、読まれているかのように防御される。 「あなたは……一体なんなのです…!世界一位を超えるなどあってはならない!!」 「現在52%……」 おちばはクアッドの腹部に強烈な肘打ちを入れた。 「ここまで可能性増大に時間がかかるのは初めてかも…」 クアッドに隙ができたその一瞬を逃さず、おちばはデンタルの背後へと移動した。 振り返る間も無くデンタルの首元を手刀で叩いた。 「制限時間ぎりぎり……間に合うかな……」 デンタルは気絶したがクアッドはまだ襲ってくる。 攻撃を冷静に見極め回避、防御をする。 だがなかなか首への攻撃が届かない。 もはや単純な暴力で気絶させるしかない。 「71%…!」 もうすぐで100%へと達する。 そうなればクアッドに勝ち目はなくなり、何をしても勝つことができるようになる。 「でも勝つだけじゃだめなんだ……」 クアッドを元に戻さない限り、おそらくこのまま暴走し続けるだろう。 「なんとかしないと…!」 おちばはクアッドの放ったナイフを弾き顔面に軽く一撃を入れた。 体制が崩れたクアッドの腹部に渾身の力で蹴りを入れる。 クアッドは吹き飛ばされたが受け身をとって立ち上がった。 「……クアッドさん」 どんなに効果的だと思われる打撃を入れても立ち上がってくる。 諦めの悪さなどではない。おそらくそこまでのダメージではないのだろう。 「やっぱり強すぎます」 確率は97%。もうすぐ100%になる。 一撃一撃を入れるたびクアッドの動きがだんだんと鈍ってきた。 「これで…!」 よろけて隙ができたところにとどめの一撃を入れようとしたその時。 確率は100%に達された。 吹き飛ばされたクアッドは今度は起き上がらなかった。 「よ、よし……あとはクアッドさんに干渉しているアビリティを……」 その瞬間、強い光と共におちばは消滅し、わかばともみじが現れた。 2人とも疲弊しきっている様子だ。 「ふ、封緘」 デンタルのアビリティを封じたのだ。 と同時にクアッドが咳き込む声が聞こえてきた。 「クアッドさん…!」 わかばが走り寄って様子を伺う。 クアッドはゆっくり起き上がって身体中痛そうにしている。 「ここは…俺、どうして」 「良かった……本当に…」 わかばはクアッドに抱きついた。 クアッドは困惑している。 「わ、わかばさん?一体何が……」 そんなことお構いなしと言わんばかりに、目が覚めたホットはアビリティを使おうとしていた。 「せめて……片方だけでも…」 「空気読めよ。寝とけ」 同じく目が覚めた師匠がホットの頭を殴った。 「それよか、スクリューが重傷だ。もみじ、救急車を呼んでくれるか」 「あ、はい…!」 「クアッド、事情は後で話す。スクリューの手当てを手伝ってくれ」 「はい」 不幸中の幸いか、スクリューに刺さったナイフは止血の役割を果たしなんとか一命はとりとめた。 だが全員深手を負ったことに変わりはなかった。 「みんな、ごめん」 クアッドは頭を下げた。 スクリュー、師匠、もみじは入院となり、しばらく安静だそうだ。 「僕はいいよ。刺されたのはクアッドからの愛だと受け取っておく」 「それは勘弁してくれ」 「メンタルまで刺し殺す気?」 「それは置いておいて、みんなを傷つけたこと、許されることじゃないってわかってる。本当に申し訳ない」 わかばが前に出た。
8話 https://scratch.mit.edu/projects/1189495633/ 10話 https://scratch.mit.edu/projects/1198091144/ 本文下にあるよ ジャンル 二次創作 ラブコメ ファンタジー(?) よければ感想どうぞ そんなたいそうなこと書いてないけど設定、キャラ詳細、著作権に関してはこちら↓ https://scratch.mit.edu/projects/1186934416/ 考察、裏話はこちら↓ https://scratch.mit.edu/projects/1186934574/ わかばが前に出た。 「あ、あの、クアッドさん。もみじの時、クアッドさんは許しました。それを見ていたみんなが、許さないわけないですよ」 「面白いものも見れたしな」 「面白いもの?」 「わかばさんともみじさんの融合体……おちば、だったか。5分の制限ありきだがあそこまでの力を出すとは」 「あれはクールタイムが一日あるので……」 「そんなことより、お兄ちゃんがどこでナイフ投げを習得したのか知りたいんだけど」 「ああ、あれは師匠に教わったんだよ」 「え?私教わってないんだけど!?師匠どういうこと!?。」 「い、いやあ……まあなんというか……」 「まさかお兄ちゃんを贔屓してるなんてことないよね」 「あーなんか傷が痛くなってきたなーいたたたたー」 師匠は布団をかぶって寝たふりをした。 「あ!師匠ー!ずるいー!私にもー!!」 「デュアル、病室だぞ」 全員苦笑した。 デンタルとホットに関してだが、どちらも近づくことでアビリティを発動してくる危険性があるので厳重に拘束されている。 ひとまずデンタルのアビリティで消されていたクアッドの記憶は元通りになった。 ――…………を……して…―― 急にクアッドの頭の中に声が響いた。 (なんだこれ……記憶…?) ――クアッドを……して…―― (両親の声……なんて言って…) 「どうしたんですか?」 気がつくとわかばが心配そうに見上げている。 「い、いやなんでもないよ」 (デンタルに記憶をいじられたからか……?) 「それにしても、結局のところ見たかった戦いは全部見れてないよね」 「クアッドは1対2で負けた。わかばかもみじだけであれば勝つのはクアッドだと思うよ」 「わたしはスクリューさんに勝てませんでしたし……まだまだですね」 その時誰かがドタドタと足音を鳴らし、扉を開けて飛び入ってきた。 「ヴァリアブル…!」 「お、スパッタリーか。対面で会うのは久しぶりだな」 「ごめん!私が今回の元凶を作ったの!」 「スパッタリーさんそれは違います。俺が……」 「待てクアッド。2人とも落ち着いて。元凶、とはどういうことです?」 「クアッドくんが失踪する少し前……」 *** その夜、クアッドは駅前で考え事をしていた。 (ケルビンの言っていたことが正しければ、おそらくもう一年せず何かが起こる……) 「はあ……はぁ…」 路地から声が聞こえた。聞き覚えのあるものだ。 クアッドが路地をのぞいてみると、そこには負傷したスパッタリーがいた。 「スパッタリーさん!?」 「あ、クアッドくん…‥奇遇だね」 スパッタリーは路地の壁に持たれるように座り込んだ。 押さえている左肩からは血が滲んでいる。 「なにがあったんです」 「二人組に襲われちゃってね……逃げてきたんだ……」 「二人……」 ――2人、な。せいぜい頑張れ―― (まさか……) クアッドはすぐに救急車を呼んだ。 「その二人はどっちに」 「あんまり詳しくはわからないけど、あっちの方……そんなに遠くはないよ」 スパッタリーは路地奥を指差した。 「……こんな状況で一人にすること、許してください」 「待って、まさか行くの…?」 「例の事件と関係がある奴らだと思います」 スパッタリーはハッとした。 そしてクアッドは走り去っていった。 *** 「そして拠点と思わしき物を見つけて、無策で突っ込んだのか。お前らしくもない」 「ああ。冷静な判断をしていれば……」 「どうしてスパッタリーさんたちにはアビリティを使わなかったんでしょう…?」 「それぞれ寿命を削られたりクールタイムがある。強力だが気軽には使えないんだろう」 スパッタリーはうつむいた。 「私がクアッドくんに場所を教えたから……ううん、それ以前に襲われた時に対処できていれば…」 「スパッタリーさんは悪くない。俺が……」 「まあ待てお前ら」 師匠が口を挟んだ。 「悔やんでも仕方ねえ。それにどっちが悪いかなんて決めるもんでもねえだろ」 「……確かに」 スパッタリーは上を向いて大きく伸びをした。 「よし!ごめん!私ネガティブになってたね」 「ああ。お前はポジティブだけが取り柄だろ?」 「ヴァリアブルだって脳筋だけが取り柄でしょ〜!」 「いや脳筋は取り柄って言わねえだろ」 二人は笑い合った。 それを見て全員ほっとしたように安堵した表情になった。 そして、それからは特に何もなく、無事3人は退院することができたのだった。 それから数ヶ月後、ある日の夕食のとき。 「あ、クアッドさん、明日はもみじと遊びに行ってきますので留守にします!」 「わかった。楽しんでおいで」 現在は今まで通りクアッド、デュアル、わかばの3人で家にいる。 わかばともみじの関係は改善しつつあり、元の仲良し双子に戻っているようだ。 「どこいくの?今もみじちゃんは二人の家にいるんでしょ?ハイカラシティとか?」 「間をとってハイカラスクエアに行くことになりました!」 「ハイカラスクエアか。あそこは色んな店があるし楽しめそうだな」 「はい!お土産も買ってきますね!じゃあもみじと打ち合わせしてきますので!」 わかばは食べ終わるなり2階へ走っていった。 「お兄ちゃん、あの事件以来最近わかばちゃんと遊んでないけど、誘わなくていいの?」 「まあ……」 クアッドは何か考え事をしているようだ。 「距離が遠くなってる感じはしないから、関係は別に大丈夫だよ」 「それも考えている。だがそれとは別に、ケルビンの一件からそろそろ15年なんだよな」 「……確か、予知で15年後の未来を見て両親を殺害したんだって?信用できるの?」 「信用はしてない。だけど警戒しておくに越したことはないだろ」 クアッドは席を立った。 「明日、ついていくべきか……」 「ついていくなら私もいた方がいいよね。見失うことなくなるし!」 「まあ……」 「やったー!これでハイカラスクエアのお店まわれるー!」 クアッドはため息をついた。 そこへわかばが戻ってきた。 「何の話をしてたんです?」 「なんでもないよ」 二人には思い切り楽しんでもらいたい。 ついていくことが知られて気を遣われたらまずい。 「……?あ、明日は朝7:00に家を出ますので、5:30には起きたいですね……」 「……起きれるの?」 「起きれないです」 クアッドは頭を抱えた。 「だめだ……まともなのが俺しかいない……」 翌日。 案の定6:00になっても寝ているわかばを起こし、クアッドは朝食を作っていた。 わかばは慣れない時間で眠気がおさまらないのかあくびを繰り返している。 クアッドはできたベーコンエッグトーストをわかばとデュアルの席に置き、2階へ上がっていった。 「デュアル、起きろ。ハイカラスクエアいかないのか」 「やっぱ眠いからいい〜」 「まじでなんなんだ……」 クアッドは戻ってデュアルの分の朝食をを自分の席に置き、座った。 「ごめん、デュアルは見送れなさそう……」 「全然大丈夫ですよ。クアッドさんも見送るために起きてくれてありがとうございます」 (起こすために起きたんだが) 料理を食べているとわかばが口を開いた。 「あの、今度の週末わたしともみじ、誕生日で……」 「うん、知ってる」 「あ、あ、えっと、その日暇なんですよね…」 「それも知ってるよ」 わかばは下を向いて縮こまっている。 (ちょっと遊びすぎたか) 「どこか行きたい場所は?」 わかばは顔を上げて明るい表情になった。 「え、映画とか行きたいです!」 「映画か……あんま流行りとかは知らないから調べないと」 「見たい映画があるので大丈夫ですよ!」 わかばは満面の笑みで気分良さげだ。 「あ、じゃあちょっと支度してきますね」 食べ終わったようで部屋へ走っていった。 「……さて、俺も出る準備するか」 支度を終えるともうすっかり7:00だった。 「30分起きるの遅れたから……遅刻しちゃう…!」 わかばは急いで玄関へ向かった。 「急ぎすぎて事故なんかに遭わないようにな」 「はい!あ、帰ってきたら……映画のこと詳しく教えますね!」 「楽しみにしてるよ」 クアッドは笑みを浮かべた。 「今日は、その、もみじと遊びに行きますけど……なんていうか……」 「わかってるよ。帰ってきたら、一緒にご飯でも食べながら話そう」 「はい!は、離れる分、たくさん……」 「いいよ。じゃ、今夜はずっと一緒だな」 「ず、ずっと!?え、ずっとって……」 わかばは顔を赤くした。 「ず、ずっと一緒かあ……えへへ…」 「それより7:00だいぶ過ぎたけど大丈夫?」 わかばはハッとして時計を見て、急いで家の扉を開けた。 「えっ?あ!!い、いってきます!!」 「ああ。いってらっしゃい――」 …思えばあの時だろう。 どうして俺は見送ってしまったのだろうか。 そうだ。 俺はケルビンが両親を殺害した日を間違えていた。 全部――この結末も俺のせいか。 この日こそが、ケルビンが両親を殺害したちょうど15年後だったと言うのに。 「守れなくてごめん……」 真っ白な世界の中。 一人の少年は、血で赤く染まった一人の少女を抱えていた。 二人は、そう。ずっと…一緒だ。