17 単・花火作戦始動 「最高警戒対象がこっちに向かってきている…!」 絶望的な言葉。もし見つかってしまったら追いかけてくるだろう。そうなればもはや探索どころの話ではない。 「よぉし、ぶっ飛ばしてやるか!」 「無理ですよぉ…!」 軽いパニック状態に陥るナルカラ。しかし、ヨナギは冷静だった。 「じゃあみんな探索ルートに行って。」 ヨナギの言葉に全員が呆然とした。 「私が残って花火で気を引くから。その間に探索終えちゃって。」 「な…何を言ってるんだ…!自分を犠牲にすると!?」 「いや犠牲とは言ってないですよ。花火打ったらあいつから隠れながらそっちに合流しますんで。」 「死ぬ可能性は極めて高いぞ…?」 「ですね。」 フルガがヨナギの目の前まで接近する。その目には深い心配と不安が刻まれていた。 「…花火で誘導してちゃっちゃと逃げる。私たちの計画とやってることは同じでしょ?」 「…。」 ナルカラがまるで裏切られたかのような表情でじっと見てくる。そんな目で見ないでよ、悪いことしてるみたいじゃん。 「必ず生きて帰るから安心してよ。」 フルガはじっと目を閉じて考え込む。その間も足音が少しずつ大きくなっている。 「…わかった。必ず戻って来い。」 「そのつもりです。」 フルガは深く息を吐く。 「それでは、私たちは先に探索ルートへ向かおう。」 ヨナギの全員が探索ルートへと走っていった。ナルカラは今にも泣きそうな表情をしている。 「すぐ嬉し泣きに変えてあげる…。」 最高警戒対象を引き付け、花火を囮に離脱し他の仲間の元へ向かう。 「…きっと上手くいく。」 瞬間、ヨナギの目の前のアトラクションが薙ぎ払われて砕け散った。爆音が響き、大量の破片が散らばる。そしてその奥から最高警戒対象の姿が浮かび上がった。 二本の太い足で直立している。その腕は地面に着くほど長い。腕の先が膨らみ、ハサミのようになっている。さらに頭部は無く、胸部のような箇所は黄色い結晶のように光っている。体長は5メートルほどある。いかにも豪快かつ破壊的なエネルギーに満ちている。 怖い、と思った。こんなにメアノイドに恐怖を感じたのは初めてだ。 最高警戒対象は紛れもなくヨナギを認識している。その太い腕がぐわっと振り上げられた。 ヨナギは全力で横へ飛び、振り下ろされた腕を避けた。地面に散らばった瓦礫が跳ね上げられ、ヨナギの肌に切り傷を作った。 (予想以上に速い…この動きだともっと引き付けないと割とすぐに東組の方に行けちゃいそう…) つまり、想定より長く時間稼ぎをしなければならない。 ヨナギは銃と花火の束をしっかりと握り、決意を固めた。仲間に手出しさせるわけには絶対に行かない…! 最高警戒対象『ディッパーハンマー』。 ディッパーハンマーはヨナギに向かって足を踏み出して接近を始める。歩くだけで踏み潰されるリスクがある。ヨナギは銃を構え、パァンと一発撃ち出した。 (少しでもこいつを消耗させるんだ…!のちに討伐にくる味方へ貢献するんだ!!) 弾丸はディッパーハンマーの腕へ命中したが、相手は全く動きを止めない。それどころかディッパーハンマーはドスドスとヨナギに向かって走り始める。巨大なハンマーがごとき腕が振り上げられ、ヨナギに向かって一直線に走ってくる。 ヨナギは銃を再度構え、相手の足へ照準を合わせて発射する。再び命中するも、敵はやはり動きを止めない。 「まじ!?」 腕が力任せに振り下ろされ、ヨナギは間一髪で回避するが大きく吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。 「ゔっ…!」 ディッパーハンマーは容赦なく距離を詰め、左腕を大きく振りかぶった。ヨナギはその場で横に転がって叩きつけをかわす。大量の跳ね飛ばされた瓦礫が全身に打ち付けられた。ヨナギは立ち上がり、銃を構え、相手の胸部の結晶を狙う。 バキィン! 大きな音が響き、ディッパーハンマーはよろめいた。 「よし!」 ヨナギは体勢を整えると、走り出した。仲間たちとは逆方向に向かって一直線にだ。 ディッパーハンマーが走って追いかけてくる音が聞こえる。 「絶対生還して…ナルカラちゃんに…サキサに…会うんだ…!!」 ヨナギは心に深く誓い、出せる全力の速さで走り続けた。