18 生きて帰らなければ 最高警戒対象ディッパーハンマーがヨナギを追っている。ヨナギは仲間たちと逆方向へ全力で走る。いつのまにかディッパーハンマーとヨナギはかなり距離が出来ていた。 それからすぐに、城壁のような遊園地の端へ辿り着いたヨナギ。 「よし…」 ヨナギはロケット花火を用意し、打ち上げの準備をする。もともと着火に使おうとしていたファイヤスタッフはナルカラが持って行ってしまった。銃で着火できるだろうか。 ディッパーハンマーはヨナギが走って行った方向、つまりこの場所に向かって走ってきているらしい。姿はアトラクションの影に隠されて見えないが、間違いなく音がする。 (お願い…着いて!) ヨナギはロケット花火の導火線部分からすこしズレた場所に照準を合わせる。 (お願い!) ヨナギは引き金を引いた。パァン!強い衝撃と共に、弾丸が導火線をわずかに擦り、シュッという音がして小さな火種がついた。 「わ!!ほんとに着い…」 同時にディッパーハンマーの巨体がわずかに覗いた。もう直ぐに到達するだろう。 (行くしかない!) ヨナギはロケット花火を力いっぱいディッパーハンマーの横あたりにめがけて投げつけた。そして自分は仲間たちのいるはずの方向へ走り始める。 ドパアアン!! 走り続けるヨナギの耳に大きな音が聞こえた。花火は無事に爆発したらしい。ヨナギは後ろも振り返らず、そこから100メートルほど走った地点ですこし足を止めた。背後の空には大きな赤い花火の残火が美しく煌めいている。そして、ディッパーハンマーはもう追ってきていなかった。 「た…たすかったぁ……。」 ヨナギは思わずその場に膝をついた。緊張が一気に解けた思いだった。おそらくディッパーハンマーは花火の残火に引きつけられている最中だろう。作戦は全て成功した。 (いや…まだ出来てないことがある…!) 生きて帰らなければ。 ヨナギは力を振り絞って立ち上がり、仲間がいる探索ルートへ向かってゆっくり、しかし着実に歩いて行く…。まさか本当にここまで上手くいくとは思わなかった。仲間たちはきっと今頃は西ゲートに近い場所にいるだろう。そう思って、少し西寄りの方角に向かって歩き始めた。 足が重い。体が重い。全身に力を入れなければすぐに気を失ってしまいそうだ。短時間とはいえ、あれだけの速度で走ったことはなかったし、あれだけの恐怖を感じたこともなかった。あまりにも色々なことを経験しすぎた。 その時、人間の話し声が聞こえた。仲間か、あるいはあのスカベンジャーか? 「…は…に…ナギ…無事…火…。」 途切れ途切れにしか聞こえない。まだ距離があるのか、意識が遠のいているのかのどちらかだろう。 もう少しだけ歩いて、ようやく声の主の姿が目に入った。 赤い棒を持った長髪の気弱そうな少女。ナルカラちゃん…!ヨナギは出せるだけの声量で仲間たちに向かって言った。 「ヨナギ…生還しましたぁ…!」