「さて、実験を始めようか…」 薄暗い研究室の扉を開き、狂気的で不気味な男が呟いた。 「どこまで耐えられるかなぁ…」 部屋の中心にある台の上に、人間のようなモノが置かれていた。 男は心臓部を切り開き、不気味な機械を埋め込んだ。機械はソレの心臓と一体化し、鼓動する。だが、ソレは不意に叫んだ。まるで、底知れぬ"恐怖"を味わったかのように。断末魔のような叫び声を上げながら、鼓動はスピードを落とす。 「あれぇ?もう終わりか…」 ソレの断末魔が終わり、心臓が完全に止まった後、男は呟いた。 「"異世界人"とやら…もう少し頑丈だと思ったんだけどなぁ…」 そして、何かを思い出したかのように、喜びが溢れる声で、男はこう言った。 「あ、そうだ。"あの世界"なら…!」 「ユウト、どうしたんだい?」 クライが俺に問いかけた。 「あぁ、昔のこと思い出してた」 そう、昔のあの地獄のことだ。俺はユウト。この世界の最高権力者、ファルドの護衛だ。 「殺し屋時代に実験対象だったって話?」 クライがまた質問する。 「あぁ、キツかったよ」 「どんな事されてたんだっけ?」 思い出したくもないな… 「それは言わない。お前、心読めるから別に良いだろ?」 俺とクライの間に沈黙が生まれた。よく耳を澄ますと、子供たちの幸せそうな声が聞こえる。見回すと、幸せそうな"笑顔"も見える。だが… 「ユウト、歪みが出現した。行こう!」 クライが"歪み"の出現を知らせる。 「わかった!」 俺とクライは走り、歪みまで急行した。 「誰だあいつ…」 すると、怪しい男が歪みの近くに佇んでいた。 「おいあんた!ここは危険だ!逃げろ!」 俺は男に忠告する。 「逃げる?私がなぜそんな事をしなければならない?」 だが、不審者はそう言うと、歪みに向かって走った。 「え?おい!待てよ!」 俺は止めようとするが、男は歪みの中に入ってしまう。 「仕方ない、クライ、行くぞ!」 俺は歪みの中に入った。歪みからの出口は入った者の思考にある所、もしくは行きたい世界。この戦争では歪みを使って他の世界に戦力を送り込む。俺は男が思い浮かべた世界を思い浮かべた。以外と歪みの判定はガバい。 「一体どこの世界か…少し楽しみだ」 クライがなんか言ってるよ。そして、俺たちは歪みの中の不思議な領域を超え、他の世界に移動した。 「な…なんだこれ!?」 出た先は、やけにきれいな空や雲、俺の世界のリアルさを遥かに超えるリアルさを持つ世界だった。 「な、空中だとぉ!?」 しかも、放り出された場所は上空… 「まさか!ここは…あの"現実世界"か…?」 クライが呟いた。だが、俺はそんなことを聞き取る暇もなく、落下する。俺は…意識を失ってしまった… 「大丈夫かな…?」 俺の頭を誰かがツンツンと棒のような物で触っている。 「ん…?何だ……」 目を少しずつ開くと、そこは公園のような場所で、クライと見知らぬ少年が立っていた。 「君は…誰だ?」 俺は立ち上がってから聞いた。 「知らない人に名前は言いません」 「そうか。じゃあ少年君だな」 大体小学6年生ぐらいかな… 「あ、そういえば!クライ、あの男は?」 クライが首を横に振る。 「そうか…」 早く男を探さないとな… 俺は神野翔真!ファルちゃんの最強護衛だ! 「ユウト…どこに行ってしまったんでしょうか…?」 ファルちゃんが不安そうに言った。 「ユウトのことだ!きっと大丈夫!」 実は…ユウトが居なくなってしまったんだ!もう居なくなってから2日も経った。一応…ラネンにも聞いてみるか! 「なぁクライ…ここってどんな世界なんだ?」 俺はクライに聞いてみた。 「知らない方が良いよ」 だが、クライは答えようとしない。 「まぁそういうこともあるか」 だけど、クライが言わないようにするってことは、相当やばいことなんだろう… 「お兄さんたち、スマホとか持ってないの?」 スマホ…? 「なんだそれ?」 「え、本当に知らないんだ…」 「君は持ってるのか?」 俺がそう聞くと、少年はポケットから何かを取り出した。 「これだよ、これ」 それは、縦長の長方形の左上に黒い丸が何個か付いている変な物だった。 「それが、スマホか…どうやって使うんだ?」 「電話とか、ネットで色々調べたりとか」 もしかして……そう思い、俺は携帯電話を取り出す。 「これ知ってるか?」 少年は俺の携帯を見て、言った。 「"昔"の携帯電話でしょ?」 「昔…だと…?な、なぁ、今って何年だ?」 「何年って…令和7年だよ」 マジかよ…平成じゃない… 「それって西暦何年だ?」 「2025年」 それって…俺の世界の25年後ってことか…! 「そんな年月があったならこうなるのは当たり前か…」 俺は時代遅れか… 俺はラネン・ブライト。ゼノ社のエージェントで、今はファルド護衛の任務に力を入れている。今日は任務も何もない日。久々にゆっくりしたいな。俺は今日、ゼノ社社員寮の俺の部屋に居た。自分の部屋で、好きな事をする。 「おいおい…良い加減にしてくれよ…」 だが、誰かがドアをノックした。 「誰だぁ…?」 すぐにドアを開ける。そこに居たのは…神野翔真。ファルドの護衛だ。 「何でお前が居るんだよ…」 俺はドアを閉じようとするが、翔真がパワーでそれを防いだ。 「だるいから帰れ」 「断る!なぜなら、ユウトが行方不明になったからだ!ラネン、お前にも一応聞きに来た!」 「何?ユウトが行方不明だと?クライの奴はどうした?」 「ユウトと一緒だ」 ユウトとクライが行方不明か。これは俺も動かなきゃな… よく見ると、俺もクライも、この世界に合わせてリアルさが増している。 「なぁ、君?地図とか持ってるか?」 「スマホで見れるよ」 少年はスマホを取り出し、地図のようなモノを俺に見せた。 「この形…東京だよな?」 「そうだよ」 「え…!天神街がない…?」 「ユウト、ここは俺たちの世界とは違う。時代だけが変わったと思ったが…世界ごと違う」 クライが言った。 「クライなら分かるんだろ?」 「知ってしまったら…」 クライが何か言いかけた。だが、何者かが背後から俺たちに呟いた。 「君たち…追ってきたのか…」 この声は…!俺は咄嗟に振り返り、そいつの姿を確認する。 「お前…!なんでここに!」 俺は思わず驚いてしまった。 「やぁ、久しぶりだね。ユウト君」 「黙れ!」 「あ、自己紹介してなかったね。私はテラー。ただの研究者さ」 「目的はなんだ!」 「落ち着け、ユウト」 クライの忠告も聞かずに、俺はテラーに向かって走り、テラーの胸ぐらを掴んだ。 「おっ、やけに暴力的だね〜」 テラーに軽い口調で俺を煽る。 「どうしたのか?ユウト君」 次の瞬間、軽い口調だが重い力を持つ言葉をテラーは放つ。そして、俺は奴の前で膝をついてしまった。 「私はね、この世界の人間で実験をしようとしてるんだよ。私の世界も異世界人も、弱すぎるからね。でもねぇ…異世界戦争ってのが実験の邪魔なんだよね」 テラーは言葉を続ける。 「だからさぁ、この世界の赤子1人だけ残して、この世界には消えてもらう事にしたんだ」 奴が衝撃的な言葉を告げた。 「この世界が消えれば…」 奴はまだ何かを語ろうするが、クライがそれを止めた。 「それ以上言うな!」 テラーはそれに反応し、語るのをやめた。 「分かった分かった〜」 「ユウト、こいつの言葉は信じるな」 「クライ、分かってる…こいつのヤバさは俺が1番知ってる」 「2人とも、そんな事言わないでよ。悲しいじゃん?ほら、少年君も不安そうだよ?」 「お前のせいだろぉ!」 俺は感情を制御できず、怒りを露わにしてしまった。 「じゃあ、そゆことだから〜じゃあね〜」 そう言うと、テラーは姿を消した… 神野翔真と俺は、ファルドの居るワールドコアに移動した。 「おい、神野翔真」 俺は神野翔真に話しかける。 「なんだ!ラネン」 「お前はどうするつもりだ?」 それが気になっていた。ユウトとクライが行方不明になったが、どうしてそうなったかが分からない。 「どうするって……2人を助ける!」 「どうやって助けるんだよ…?」 「そりゃあなぁ…」 神野翔真はまだそこまで考えてないようだ。 「クライは心に直接語りかける事ができます」 すると、ファルドがクライの能力について言った。そして、2人を助けるための助言をした。 「それを使って、交信ができれば…」 「そうか…!他の世界に居たとしても、クライの言葉が届けば!」 俺はその提案に受け入れた。 「だが…これはほぼ運だぞ…」 「そうですね…クライがこれに気付いて交信を始めてくれたら良いのですが…」 ユウトでもクライでも良い。気付いてくれ… 「さてとぉ…赤子残すって言ったけど…どの子がいいかな〜」 テラーの目の前には、赤子が数人居た。 「できれば創作物に関する記憶がないと良いんだけどな〜」 テラーが独り言を続ける。 「だってぇ…現実の人間の記憶がフィクション世界を維持してるんだからさぁ〜」 テラーが不意に、重い言葉を放つ。 「記憶、覗いてみよっかな」 テラーは数人の赤子の記憶を一気に覗く。 「あ〜あ、フィクションに関する記憶がないの、1人しかいないじゃん」 そして…テラーは1人を除いた他の赤子に1人ずつ触れていった。テラーに触れられた赤子は跡形も残らずに消えた、完全に、まるで存在そのものを侵食されたように… 「ねぇ…お兄さんたち、誰なの?」 テラーの恐怖が収まった少年が俺たちに問う。 「誰って…俺はユウトで、こいつがクライだ」 「そうじゃなくて…この世界の人間じゃないよね?」 「え…」 「もしかして…」 少年が言葉を続けようとするが、クライがそれを止める。 「そうだ。俺たちはこの世界の住人ではない」 「やっぱり…」 「少年君、テラーは危険だ。これから先は来ちゃダメだ」 俺は少年を帰らせようとする。 「………」 すると、少年は黙って頷いた。 「あ、雨だ」 突然、大雨が降ってきた。 「じゃあこれ、プレゼントだ」 俺は持っていた折り畳み傘を少年に渡した。 「ありがとう」 少年は笑顔になった。俺は笑顔が好きだ。あの時からな。 クライと始めて出会った時、あいつが俺の世界の色んなものに興味を持って見せた純粋な笑顔。俺は全ての笑顔を守りたい。 「気をつけて帰れよ〜」 少年は傘を使い、走って帰って行った… 「まだか…」 俺も、神野翔真も、ファルドも、もう待ち疲れた。もう、3日も待った。 「頼む…ユウト、クライ。早く交信してくれ」 翔真が願う。ファルドもそう願ってる。 「ファルド、聞こえる?」 そして、ついにその時が来た。クライが俺たちに交信した。 「はい、聞こえます!」 「俺たちは歪みを通って、別の世界に来てしまった。そして、その世界で敵を発見した。ユウト曰く、その敵はテラーといい、強敵らしい。翔真とラネンをこっちに向かわせてくれ」 「分かりました」 「ラネン!行くぞ!俺たちもメッチャ・ドォーンと活躍だ!」 「そうだな…」 「2人とも、歪みに!」 俺と神野翔真は、歪みの中に飛び込み、ユウトたちが居る世界に向かった…
「クライ…テラーと戦う前に、お前に言わなきゃいけないことがあるんだ」 俺は、クライにまだ言えてない過去を打ち明ける覚悟ができた。 「ずっと、気になってた。俺でも心を読めないようにしてる事があるって」 クライの言う通りだ。俺はクライにすら隠していた。 「俺が殺し屋だったっていうことはお前はもう知ってる。だけど、言ってないこともある。俺は…テラーの実験対象だったんだ。けど、1人だけ実験から生き延びた。謎の装置を埋め込まれたけど、実験は失敗。取り外された。それをされた中で唯一の生存者だったんだ、俺は」 「そうか…だからテラーに対してあんなに…」 「しかも…俺は元殺し屋で、1人だけ生き延びて!みんなの笑顔を守っても…俺自身が幸せで、笑顔で居られる権利はないんだ…」 「いや、違うよ。もう俺は知ってる。ユウトは誰も殺してない。つまり、強いだけの殺し屋(笑)って事」 「そこまで知ってたか…さすがクライ。そうだ、俺は離脱しようとした殺し屋を連れ戻す役割だった。強すぎて見合う依頼が無かったんだよな」 「さぁ、ユウト!テラーを倒して…笑顔を取り戻そう」 「あぁ、そうだな!クライ、行こう!」 さっきまでの大雨が、ほんの少しだけ、止んだ気がした… 「ユウト君たち…止めに来るかな〜?」 テラーが現実世界に新しく作った拠点で、軽い口調の独り言を呟く。 「お、噂をしたら早速来ましたよ〜」 その時、拠点の大きな扉が勢い良く開いた。 「さっきぶりだね、ユウト君」 そう、テラーの拠点に乗り込んだのは…俺だ。いや、俺1人じゃない、クライと、翔真、ラネンも居る。俺は1人じゃないんだ。 「集団で来る〜?」 「俺はお前とは違う。1人じゃない!」 「随分とやる気だけど…君は世界の真実を知っているのかい?」 テラーが楽しそうに、俺を煽るように言った。 「この世界は…」 「やめろ!」 テラーの言葉をクライがまた止めようとする。だが、テラーはそれを無視し、続ける。 「俗に言う現実世界って奴なんだよ」 「つまり、私たちの世界はこの現実世界の人間の記憶で維持されてる…フィクション。創作物であり、架空だよ」 テラーはさらに続ける。 「現実の観測者により観測され、存在する。全部、虚構なんだよ〜」 俺たちの全てが…人生全てが…虚構で、架空で、創作。 「俺の全てが…嘘」 「そう、その通り〜」 「ハッ…!笑わせるな。これぐらいで…俺は絶望しない!相棒が…居るからな!」 「へぇ…つまんないな」 「クライ!行くぞ!」 「OK!」 俺は銃を取り出し、構える。そして、クライの神秘の力が銃に宿る。 「翔真!ラネン!」 「あぁ!ユウト!ドォーンと暴れよう!」 「ミッション…開始だ」 決戦だ…! 俺はテラーに向かって銃を放った。弾丸は複数に増え、それぞれが別の軌道でテラーに迫る。 「ユウト君、無駄なのは分かるでしょ〜?」 だが、弾丸はテラーに近づいた瞬間に存在ごと崩壊した。 「平伏せ」 ラネンが言葉の圧力で潰そうとするが、テラーにその言葉の圧力は届かなかった。まるで、テラーの周りの空間が侵食され、言葉が音が届かないかのように。 「テラーをドォーン!」 翔真が、テラーの背後から殴りかかる。だが、テラーは視認すらせずに躱した。 「俺は"絶対"だ…」 ラネンが絶対必中の蹴りを放つ。それをテラーは躱さずに、ガードした。 「クライ…ストーリーだ!」 「了解」 俺は物語の力が宿る銃・ストーリーマグナムを放つ。 「舐めないでほしいかも」 テラーは勿論避ける。だけどな… 「本命はこっちだ」 俺は、全ての世界の物語の力をフル充電したチャージ弾丸を放つ。そして、ラネンが弾丸に絶対必中を付与した。 「く…」 あまりの威力にテラーの拠点が大破する。周りの現実世界は物語の中の再生の力で無事だ。爆発の熱と煙が辺りに充満する。 「やったな…!」 翔真が喜ぶ。 「いや…!まだだ!」 だが、煙が収まった時、俺たちは無傷で立っているテラーを見た。 「ユウト君は消したくなかったのにな〜」 どんだけ強いんだよ… 「ユウト君…君も我が装置で完璧な存在になろうよ〜?」 テラーが俺を引き込もうとする。だけど… 「断る!俺は完璧なんて求めてない!」 俺は完璧じゃなく… 「人間はみんな不完全だ!だけど…!進み続けてる!不完全だからこそ成長できるんだ!」 テラーの誘いを、俺は完全に断った。 「そっか…残念だよ」 そう言うと、テラーは指を鳴らした。すると、屍のように兵士が大量に現れた。 「これはねぇ…私の実験で失敗した異世界人たちを再利用した兵士だよ」 少なくとも、五百人は居る。 「お前…!こんなにも多くの人間を犠牲に!」 「行っちゃって〜」 兵士たちは翔真とラネンに襲いかかった。 「ユウト!こいつらは俺たちに任せろ!」 ラネンが言った。 「あぁ!任せた!」 「ユウト君、これで2人きりだね〜」 テラーが俺を挑発する。 「決着をつけてやる…!」 「私の能力はね、破壊と侵食だよ」 テラーが空間ごと俺を侵食しようとしながら言った。俺はバックステップで距離を取ろうとするが… 「あと、装置の力で創造の能力もあるよ」 テラーは俺の背後に巨大な壁を生成し、回避を妨害する。 「クライ、エクシードセイバーだ」 俺は剣を取り出し、クライが神速を宿す。そして、俺は神速で侵食を回避し、テラーの背後に移動する。 「速いねぇ!」 そこから、神速戦闘に突入。あまりの速さに空間が歪み、建物の窓が割れる。 「テラー!お前との因縁を終わらせる!」 「おい、神野翔真!お前のパワーでまとめて蹴散らせ!」 俺は神野翔真に指示を出し、あいつの武器に絶対の力を宿す。 「分かったぁ!」 すると、あいつは槍を思い切り振りかぶり、振り払う。敵の半数以上を、大体二百人ぐらいを倒した。 「あいつの実験も…これで終わりだ…!」 俺は敵たちの創造装置攻撃を全て躱しながら、パワーを溜める。 「…消えろ」 俺は蹴りを3回放つ。全弾が敵にクリティカルヒットし、当たった敵は爆散した。 「ギャアァァ!」 人ならざる断末魔の声をあげ、敵は全員、爆発に巻き込まれて倒された… 「頼むよ〜!ユウト君!君で実験できれば…我が研究はもっと高みに…」 テラーがしつこく俺を誘う。だけどな…! 「断る!俺はもう…!お前の犠牲者をこれ以上増やさせない!」 俺は決意を宣言しながらテラーに神速の斬撃を喰らわせる。 「効くわけないでしょうよ〜」 だが、テラーには全く効いていない。そう…こいつは俺が全ての物語の力を溜めた一撃でも無傷だった。神速じゃ効果があるはずがない。 「まだだ…!」 「はいはい、分かった分かった!」 テラーは俺を蹴りで弾き飛ばした。 「んじゃ、世界が崩壊してく様子を"生配信"しちゃいま〜す」 テラーはさっきの少年が持っていたのと同じようなスマホを取り出した。 「生配信、スタート!」 すると、世界中の画面にテラーの姿が映る。そして、テラーの足元から禍々しい何かが広がる。それは瞬く間に現実世界中に広がっていき、触れたものを侵食し、崩壊させていく。 「この世界の笑顔も…守ってみせる!」 「ユウト君…!綺麗事はやめてよ、ね?」 テラーが俺を挑発し続ける。 「もう無駄だよ。この世界は崩壊する」 俺とテラーが戦ってる間、少しずつ、だが確実に世界は崩壊し始めていた。 「あのお兄さん…さっきの傘をくれた別世界のお兄さんだ…!」 世界中のモニターから俺とテラーの戦いが流れる中、人々は逃げ惑っていた。 「誰か助けて!」 「死にたくない!」 そんな声が、モニターを通して俺も聞こえた。 「頑張って!お兄さん!」 俺と出会った少年が、応援の言葉を叫ぶ。逃げ惑う人々はその声に耳を傾け、立ち止まった。そして、少年に影響され俺を応援してくれた。 「そうだ…!頑張ってくれ!」 そんな声が幾つも聞こえる。 「ユウト君も人気者だねぇ!」 「違う!これは…この世界の人々の想いだ!」 「そんな想い…この私の前では無意味だ!ユウト君のその力もね!」 無意味なんかじゃない…! 「舐めんなよ!俺はユウト!笑顔を守る…戦士だぁ!」 俺は武器を銃に持ち替え、クライが神秘の力を宿す。俺は1人で戦ってるんじゃない! 「みんなの想いが…!俺を強くしてくれる!」 みんなの想いが、神秘の力を伝って力に変換される。そして、俺は強くなる! 「ずっと孤独なお前に…!俺が負けるかぁ!」 俺は思い切り力を込めた拳を、奴に叩き込む! 「ぐはぁ!」 初めて…テラーにダメージを与えた。 「やるじゃん?ユウト君」 人々の想いがさらに集まってくる。いや、それだけじゃない。この現実世界の…地球そのものの力も俺に力を貸してくれてる! 「ユウト…!これなら勝てる!!」 クライが嬉しそうに、俺の心で叫ぶ。 「あぁ!」 「ユウトぉ!調子に乗るなぁ!」 テラーが初めて、感情を露わにする。その様子は、裏から全てを操る者の余裕ではなく、死への純粋な恐怖だった。恐怖がテラーを侵食し、奴の体は動かなくなり避けることもできない。 「これで…!終わりだぁぁぁ!!」 俺は…地球の力も、想いの力も、全ての力を込めた拳をテラーに叩き込んだ! 「うわぁぁ!」 テラーは断末魔の声をあげ、完全に消滅した… 「テラーは倒した…だけど、この世界も崩壊寸前だ」 クライが呟いた。確かにそうだ。 「クライ、ウィザードロッドだ」 俺がそう言うと、クライが俺の取り出した棒に魔法の力を宿す。 「この世界を創り直す」 俺はウィザードロッドを掲げ、世界の法則、いや、世界そのものを書き換える。 「この世界にもお世話になった」 現実世界が光に包まれていく。 「翔真、ラネン。帰ろう」 翔真とラネンは頷く。 「じゃあな…!」 俺たちは近くにあった歪みに入った。 「二度と…誰もあの世界には干渉できない」 俺は、現実世界に繋がる歪みは全て無くなった世界にした。 「元の世界だ…」 考えている間に、俺たちは自らの世界に帰っていた。 「ユウト!無事ですか?」 歪みの出口では、ファルドが待っていた。 「あぁ」 「ユウト、テラーの言う事が本当なら…俺たちは虚構の存在なのか?」 ラネンが俺に問う。 「確かにあいつの言ってたことは本当だ。だけど……俺は、俺たちは虚構じゃないって思う。誰かの記憶の中に…確かに存在してる。そして今、生きてるから!」