本文↓ 「秩序の世界……?」 わかばさんは首を傾げた。 俺も何が何やらさっぱりだ。 未来……ケルビンは一体何を見たんだ。 「あ、ナナシさん!」 わかばさんが指差した先にはロビーがあった。 「普段のロビーと中の構造が違うみたいです」 「さっきの魚たちが出てきたのはロビーからだったな……」 中になにがあるのか。 遠くから警戒しながら確認をする。 「エレベーターのようなものが見えます……」 「気配はないし、入ってみよう」 音が、なかった。 正確には、聞こえているはずなのに、耳に届かない。足音も、呼吸も、空気の流れすら、すべてが薄い膜を一枚挟んだ向こう側にあるようだった。 「……静かすぎませんか」 わかばさんがそう言うと、声は不自然なほど綺麗に、まっすぐ前へ伸びて消えた。 反響しない。 吸い込まれるように、空間に溶けていく。 床は白く、壁も白く、天井も白い。 影だけが存在を主張していて、それすら計算された配置のように見えた。 間違っていない。 壊れていない。 それなのに、どこか決定的に『怖い』。 「……ここ、変だよな」 俺は呟くように言った。 その声だけ、やけに違和感がなかった。 「変、というか……正しくなりすぎてる、というか」 わかばは言葉を探す。 今まで潜ってきたどんな異空間とも違う。敵意も悪意も感じないのに、ここに長く居てはいけないと、本能が警鐘を鳴らしている。 「全部、揃ってますよね」 「揃ってる?」 「高さも、幅も、距離も。ずっと同じで……」 わかばさんが言い終わる前に、俺は足を止めた。 白い床に、黒い何かが浮かんでいる。 外で見た魚…いや、鱗はなく、目もない。 ただやはり骨が透け、輪郭は曖昧に揺れている。 「ナナシさん……」 わかばが呼びかけた瞬間、それはふっと俺たちの方へ近づいた。 反応が遅れ、俺はそれにわずかに触れた。 ——瞬間、視界が反転する。 白が、消えた。 代わりに現れたのは、雑然とした部屋だった。 積み上げられた資料、光るモニター、散らばったメモ。空気は重く、誰かの声が響いている。 『……だから、完璧にしちゃだめなのよ』 女の声。 『不完全だから、選べる。失敗できる。それを削ったら——』 『——生き物じゃなくなる』 男の声が続く。 俺は、言葉を失った。 知っている。 声の主を。 名前も、顔も、思い出せないのに、胸の奥が痛む。 「……研究室だ」 無意識に、口からこぼれた。 わかばさんはっとして、俺の方を見る。 「え……?」 「多分……いや、確実に」 視界が揺らぐ。 黒い魚が、いくつも現れた。 俺たちは、飛び下がって距離を取る。 『未来を一つに固定するなんて、狂ってる』 『でも、止めなきゃいけない』 『私たちが始めたんだから』 俺は頭を押さえた。 胸が苦しい。 息が、うまく吸えない。 …知ってる。 ここを。 わかばさんは、反射的に俺の腕を掴んだ。 「大丈夫です、離れません」 迷いのない声だった。 俺は、わかばさんの手を振り払わなかった。 *** ナナシさんの肩は、小さく震えていました。 外で襲撃を受けた時、気絶しているわたしを見て、迷いなく、前に立ってくれました。 でも今は―― ナナシさんは、立っているだけで、必死でした。 「……座りましょう」 わたしは、そう言って彼の腕を引きました。 ナナシさんは白い床に腰を下ろしました。 ……距離が近い。 触れれば、体温が分かるくらい。 怖い。 でも、それ以上に—— (……一緒に、怖がってる) その事実が、胸に刺さりました。 守られているんじゃない。 支え合っている。 わたしはそれが、嬉しいと感じてしまいました。 ――理解してしまう。 (あ……) 心臓が、強く跳ねる。 (……好き、なんだ) 思った途端、息が詰まりました。 クアッドさんがいる。 あの人を、想っているはずなのに。 それなのに。 (最低だ……) わたしは、唇を噛みました。 感情を押し殺すように、ぎゅっと。無意識のうちに。 *** わかばさんは苦しむ俺を見て、その場に座らせてくれた。 そして近づいてくる魚の前に立ち、俺を守るようにしてわかばさんはブキを構えた。 「流石に二度も魯鈍は使えません……ので、少しだけ休んでいてください」 視界が、完全には戻らなかった。 わかばさんの声も、はっきりと聞き取れない。 白い空間の中に、研究室の輪郭が重なっている。 床を踏む感触と、金属音が同時に存在する。 現実と記憶の境界が、曖昧になっていた。 「ナナシさん……?」 わかばさんの声が、少しだけ遠い。 「……長居するとまずい」 そう言いながら、理由は説明できなかった。ただ、これ以上思い出せば、何かが壊れる気がした。 立ちあがろうとした、その瞬間。 空間が、ひび割れた。 白い壁に、黒い線が走る。線は枝分かれし、次々と広がっていく。そこから、さっきよりも大きな黒い魚が、這い出してきた。 触れたわけじゃない。 見ただけで、頭の奥が引き裂かれる。 わかばさんは必死で、魚の進行を止めている。 『……これで本当に、よかったんだろうか』 『もう、止められない。戻れない』 『それでも——』 声が、悲鳴に変わる。 『——間違いのある未来なんて、許せない。価値なんかない』 研究室の風景が、急激に変質した。 整然と並べられていた機材は撤去され、代わりに無機質な装置が設置されていく。 巨大な、核のような構造体。 それは、世界そのものを測り、揃え、削るための装置だった。 「……未来を、その無数に広がる選択肢を、閉じる装置だ」 俺は、掠れた声で言った。 誰に教えられたわけでもない。 なのに、理解してしまった。 ここは—— 可能性を失敗として排除する場所だ。 わかばさん一人では進行を抑えきれず、黒い魚が集まってくる。 退路は完全にたたれてしまった。 『完成すれば、未来は一つに定まる』 『予測不能な要素は排除される』 『戦争も、失敗も、偶然も——なくなる』 淡々とした声。 人の声なのに、感情がない。 その奥で、両親の姿が見えた。 『違う……これは、私たちの研究じゃない』 『止めなきゃ』 『……もう、戻れないところまで来てる』 未来の映像が、流れ込んでくる。 動かない街。 笑わない人々。 選ばれる前に、選択肢が消えていく世界。 ——そして。 両親に殺される自分。 俺は、息を呑んだ。 「……俺は」 声が、震える。 「俺たちが……未来を知るアビリティを持つと知って……」 アビリティは、兄弟間では必ず関係性を持つ。 ケルビンのアビリティが『予知』だと知って…… 理解した瞬間、すべてが繋がった。 予知。 未来を見る力。 もし、ケルビンがこの光景を見ていたとしたら。 ——選択肢は、ひとつしかない。 両親が生きている限り、研究は続く。 研究が続く限り、世界は固定される。 そして、未来は変えられない。 「……だから、か」 俺は、静かに呟いた。 「止めるために……未来を殺したんだ」 家族を。 可能性を。 自分自身が、そうなる未来を、壊すために。 胸が、痛い。 それでも、理解してしまった。 それは、悪じゃない。 選択だ。 最も残酷で、最も人間的な。 白い空間の奥に、扉が見えた。 他と違う。 そこだけ、完全な無音だった。 「……あれが、多分」 俺は、最後まで言わなかった。 言葉にすれば、何かが壊れてしまいそうだった。 名前が、喉まで上がってくる。 でも、呼べない。 まだ。 「ナナシさん!!」 突然、耳元で叫ばれたかのような大きな声が聞こえた。 我に返った瞬間、俺はすぐに状況を理解した。 すぐ真横、頭上、正面に小型の魚が数匹。 俺はブキを持ち直し、スライドで包囲を抜けながら魚を倒した。 「悪いが、今は止まっていられないんだ」 わかばさんに襲いかかっていた魚とその周りにいる魚含め、全て一掃した。 わかばさんは驚いた様子で立ち尽くしている。 「今の、動きは……」 「わかばさん、俺はいつか、ここに来たことがあるみたいなんだ」 わかばさんはまだ呆然としている。 「赤ん坊の頃の記憶とかかな……わからないけど、ずっと昔」 「そう…なんですね」 わかばさんはなにかを察したように視線を落とした。 俺たちは扉へと向き直った。 「ここで行われてきたのは、研究だ」 「研究…?」 「世界は今、一つの道筋に固定されている。世界中の人間、全員が定められた通りの動きしかできていない」 わかばさんは少し考えたが、すぐ前を向いた。 「扉の先に待っているものを、壊せばいいってことですね!」 「……えっと、わかばさんがそこまで脳筋だとは思ってなかったかも…」 俺は苦笑し、扉を開けた。 選ばれなかった未来の残骸が、背後で静かに揺れていた。 それでも、進むしかなかった。 ——未来を、そして今も、ここで終わらせないために。
10話 https://scratch.mit.edu/projects/1198091144 12話 https://scratch.mit.edu/projects/1276913038/ 本文下にあるよ ジャンル 二次創作 ラブコメ ファンタジー(?) よければ感想どうぞ そんなたいそうなこと書いてないけど設定、キャラ詳細、著作権に関してはこちら↓ https://scratch.mit.edu/projects/1186934416/ 考察、裏話はこちら↓ https://scratch.mit.edu/projects/1186934574/ 扉の先にあった部屋。 装置の低い駆動音が、その空間を満たしていた。 無機質な床。天井を這う無数のケーブル。 その中心に浮かぶのは、未来を一つに固定する装置。 「……来ましたか」 感情の起伏をほとんど感じさせない声が響く。 装置のそばに立つデンタルは、俺とわかばさんを静かに見つめていた。 「あなたがここに辿り着く確率は高かった」 淡々とした分析。 そして、わかばさんに一瞬だけ視線を向ける。 「その隣に『因果と確率を根本から捻じ曲げる者』がいることも」 「……そうか、お前が」 俺は無意識のうちに声を低くした。 「この研究に関わってたんだな」 「ええ」 否定も誇張もない。 「私は理論を完成させ、彼にはデータを提供してもらいました」 「そ、俺が現場担当ってわけ」 軽い声で割り込んだのは、壁にもたれていたホットだった。 「大会の結果も、ランキングも、全部この装置通り。いやー、きれいに決まってたね」 「……人の人生を、実験みたいに」 わかばが言う。 「実験だよ」 ホットは笑う。 「これから迎える『正しい未来』を証明するための、な」 デンタルは静かに言った。 「あなたの予知が一本しか見えなかった理由を説明します」 視線が合った瞬間、俺の視界が歪んだ。 ——わかばが倒れる。 ——仲間が動かなくなる。 ——自分が、装置の前に立ち尽くす。 「……っ」 俺は一歩下がってデンタルのアビリティ射程外へ逃れた。 「予知……って、ナナシさんのアビリティが…?」 「これは予知ではありません」 デンタルの声は変わらない。 「『そう選んだと思わせる記憶』を、先に埋め込んでいるだけです」 デンタルは笑みを浮かべた。 「人は記憶に従って行動する。ならば、記憶を制御すれば——未来も制御できる」 俺は歯を食いしばった。 今まで見てきた未来。 それが本当に、自分の意思だったのか分からなくなる。 「さて」 ホットが一歩前に出る。 「難しい話はここまでにしようか。俺の役目は——お前らを寝かせること」 白い閃光。 「……っ!」 俺の体は、意識は、力を失って崩れ落ちる。 「短時間の気絶」 ホットは肩をすくめた。 「でも今は、それで十分だろ?」 「……ナナシさん……!」 わかばは叫んだが気絶している俺には届かない。 「十秒しか持たないが……それで十分」 言い終わらないうちにホットはわかばさんの目の前まで近づいていた。 だが聖域を発動していたわかばさんは飛び下がりかろうじて攻撃を回避した。 転がりながらも体勢を立て直す。 「ホット、畳みかけなさい」 「言われなくても!」 ホットは俺が起きる前にとわかばさんを追いかける。 「天翔!」 わかばさんは飛び上がって再びかわした。 ホットは舌打ちをする。 「デンタル、時間切れだ。お前のアビリティで――」 「……触るな」 低い声。 俺はゆっくりと立ち上がる。 空気が変わった。 「その子に、指一本でも触れたら——」 「……あー、なるほど」 苦笑する。 「そりゃ強いわけだ」 俺はホットに蹴りをいれ、装置の方へ吹き飛ばした。 衝撃で装置には亀裂が走る。 デンタルは震えた声で言った。 「ホット!!装置が壊れたらどうするのです!」 「あーもううるせえな……お前も戦ったらどうだよ」 「私はこの装置を守るという崇高な使命が…!」 言い争っている中、わかばさんは地面に降り俺の方へ寄ってきた。 「ありがとうございます!体は大丈夫ですか…?」 「大丈夫。それよりあいつらに何かされてない?」 「いえ……ありがとうござ……」 わかばさんはほんの少し頬を赤らめた。 と、同時に、何かを思い出したかのように拳を強く握った。 「あの……私には、恋人がいるんです」 わかばさんは俯き、話し始めた。 「不器用で、人との距離感もわからないのに、誰にでも優しくて。仲間のために本気で怒れる人で」 わかばさんは続けた。 「わたしはそんなあの人が好きなんです。でも……」 わかばさんは顔を上げた。 その目は涙で滲んでいた。 「わたしは……ナナシさんのことも、好きになってしまったみたいで…」 俺はハッとした。 心の奥、深いところで、抱えていた不安。 世界一位という肩書き。わかばさんが好きなのは俺じゃなくて―― 「わたしは……」 「わかばさん」 わかばさんは涙を拭って俺の方を見た。 俺は視線を逸らした。 「俺の名前はクアッド、知っての通りあの――」 俺は帽子を取った。 「世界一位のクアッドだと思ってくれたらいいよ」 それは、名乗りであり、自分自身への再認識だった。 「俺は、守るために戦ってきた」 わかばさんを見る。 唖然として、まだ状況が掴めていない顔だ。 「それを否定する未来なんて——選ばないよ」 「感情は判断を鈍らせます」 デンタルが俺たちに一歩近づいて言う。 「だから私は、排除する」 「……違う」 俺は装置を見据えた。 「感情があるから、選べる」 ブキを構え、引き金を引く。 インクは装置に命中し、亀裂から内部へと染み込む。 ——崩壊。 その瞬間、世界が、分岐した。 無数の未来が流れ込む。 勝利。敗北。喪失。再生。 「……見える……!」 多すぎる情報に、気を失いそうになる。 よろめく俺の手を、わかばさんはしっかり握った。 「クアッドさん、あなたはわたしの光です」 わかばさんはまっすぐに俺を見た。 「だからわたしも、あなたを照らす光になりたい」 情報の流れは止み、俺はわかばさんに向き直った。 「……ありがとう」 「予知が変質しましたね」 デンタルが呟く。 「未来は、もう一本じゃない」 俺は前に出た。 「それが、世界だ」 デンタルは不吉な笑みを浮かべた。 記憶操作が襲う。 だが、迷わない。 「封緘」 「……厄介な」 一歩。 「俺はもう、選んでる」 最短の未来。 最適な一撃。 デンタルはブキを構えた。 居合の構えだ。反撃を狙うつもりだろう。 ホットが背後に回る。 「見えてる」 生物は映らない。だが無数の未来を見たことで得たものがあった。 未来の中で、感じた。音の反響、空気の流れ。 予知を、『予測』の材料に使う。 俺はホットの攻撃を回避し、反撃を叩き込んだ。 ホットは壁に叩きつけられ、今度は起き上がらなかった。 「間違いのある世界に、何の意味があるというのです!全てが正しく在る、これほどまでに平和で秩序の守られた世界があると言えるのですか!」 「平和である必要なんかない。秩序で縛られる意味も、ない」 俺はデンタルの方へ歩いた。 「例え何が起きようとも、俺がいる限り大切なものは奪わせない」 真正面。 正々堂々とぶつかる。 デンタルがブキを鞘から取り出したその瞬間。 ――デンタルは、静かに倒れた。 「俺の上には、何人たりとも立つことはできない」 俺は――世界一位だから。 「すみません、お客さん、終点ですよ」 駅員さんの声に起こされ、俺は目を覚ました。 隣ではわかばさん、もみじさん、デュアルが眠りについている。 「……すみません、疲れてしまっていたみたいで、今電車から下ろしますね」 俺は3人を優しく抱えて電車の外へ出た。 そこはちょうどバンカラ街だった。 「夢……じゃないよな」 腕の傷がその問いの解となる。 俺は予知を使った。 映し出されたのは、一つの未来だけではない。 「ひと段落……なのか」 その瞬間、疲れが一気に俺を襲った。 大変だったけど、デンタルの言う『間違いのない未来』を歩み続けることだけは回避できたんじゃないか。 「にしても起きないな3人とも……」 俺は3人を抱えたまま家へ帰った。 玄関のドアを開けると、静かな夜の空気が流れ込んできた。 部屋の灯りを点け、ソファに一人ずつ寝かせる。 「……ほんと、無茶しすぎだよな」 誰に向けた言葉でもなかった。 しばらくして、最初に目を覚ましたのはわかばさんだった。 まばたきを数回して、天井を見つめる。 「あ……ここ……」 「俺の家。無事、戻ってきたよ」 わかばさんはゆっくり起き上がり、俺の顔を見て、ほっと息を吐いた。 「……よかった」 「それは俺の台詞」 次いでもみじさん、少し遅れてデュアルも目を覚ます。 全員が揃ったことを確認して、ようやく胸の奥に溜まっていたものが抜けていった。 俺は二人に、今まであった出来事を共有した。 「世界は……」 「続いてる。少なくとも、一本じゃない未来でな」 もみじさんは少し考えたあと、小さく笑った。 「……失敗できる世界、か」 「嫌いじゃないだろ」 「そうですね」 そのやり取りを聞いて、わかばさんがくすっと笑う。 「なんだか、全部終わった感じがしませんね」 「終わってないよ」 俺は正直に言った。 「ただ、戻ってきただけだ」 沈黙。 でも、重くはない。 「クアッドさん」 わかばさんが、まっすぐこちらを見る。 「未来、もう一本じゃないんですよね」 「ああ」 「じゃあ……迷ってもいいんですよね」 「むしろ、迷わない方が怖い」 わかばさんは安心したように、肩の力を抜いた。 「……よかった、ほんとに」 「何が?」 「一人で決めちゃう人じゃなくて」 俺は返事をしなかった。 ただ、その言葉を否定しなかった。 「やっぱりお兄ちゃんは不器用ってことだよね〜」 「余計なことは言わなくていいぞデュアル」 やりとりを聞いてわかばさんはまた小さく笑った。 窓の外、バンカラ街のネオンが瞬いている。 騒がしくて、不完全で、どうしようもない街。 でも。 「明日、どうします?」 わかばさんが聞く。 「どうしたい?」 「……試合、したいです。普通の」 「あ!今度こそもみじとわかばとちゃんと戦ってもらいますよ!」 「それ普通の試合じゃないよな」 笑いが起きる。 正しい未来は、見えない。 でも、好きな未来は選べる。 それで十分だった。