……どうしてこうなったんだろう。 暗い部屋の中みるあは考える。 うん、カジノでルーレットをしてたらボロ負けして……トンヅラしようとしたら殺意のエグい二人組に捕まって……。 そしてその二人組は、目の前でみるあを睨んでいた。 あー、終わった。 みるあは死を覚悟する。 なんせその二人組の片方は高身長で拷問道具をちらつかせているし、片方の少女の方もみるあを手早く拘束して包丁の付いたスタンガンをこれ見よがしに振り回している。 こんなの勝てるわけが無い。 思えば短い人生だったな……と感傷に浸る間もなく少女は言った。 「じゃあちょっとお話聞いてくよ〜?正直に話してくれたら死ぬのは免れる……かもね」 そう言って彼女__ごやは包丁をみるあに向けた。 「みるあさん大丈夫かなぁ」 硫黄は仕事を終え、同好会のアジトへと戻っていた。 「うん?みるあちゃんがどうしたん」 「あ、のこさん。こっちに居たんだ」 「用事があってな」 のこ__狂鳳組の若頭で同好会の中心人物である。 彼女もなぜかみるあと交流があるらしく、本人曰く「お気に入り」らしい。 「いや〜、さっき裏路地で見つけて……なんかちょっと心配で」 「裏路地っていうと」 「雀荘の近くの、〇〇とかのある通りの裏ですね」 「……ほう?」 「潜入調査、とか言ってたので雀荘に行ったんじゃないかなって不安で……」 それを聞いてのこは苦虫を噛み潰したような顔をする。 理由は、業務チャットでささにいが伝えてきた事にある。 『雀荘に不審者……なんか雀荘を偵察しに来てるような奴がいたから拷問ツインズ呼んどいた。経費で落としといてくれー』 これは、完全にみるあではないか? そして、拷問ツインズを呼んだ言うことは……。 「……硫黄」 「どうしたんですかのこさん、青い顔して」 「……これを見てくれ」 ささにいのチャットを見せると、硫黄の顔もすっと青くなる。 「や、やばくない?みるあさんが拷問されちゃう!」 「うちらで止めに行くで、場所は多分あの倉庫 や」 「わ、了解!車出す?」 「うちが運転するわ、硫黄は取り敢えずささにいに連絡頼む」 「うん!」 大切な友人であるみるあを拷問されるわけにはいけない……硫黄は汗を拭いながら車庫へと急ぐ。 「なんとかなるかなぁ」 「最悪、うちのポケットマネーでどうにかするわ」 こうしてのこと硫黄はみるあ救出に急いだ。 「ね〜、吐いてくれないかないい加減。そしたら解放したりできるかもだからさ〜!……多分」 「ごやさん、こいつはどうせ下っ端だしもう殺しちまったほうが良くない?」 「んー、けどねこわかさんからそこまで痛めつけなくていいって言われてるからねえ」 「……ちっ、まぁなら仕方ない、金がかかってるからな。ほら早く」 麺はみるあの腹を思いっきり蹴る。 「ま、そんな訳で早く吐いてね〜」 早く吐いてね〜、と言われても……。 みるあは朦朧とする意識の中突っ込む。 もはや喋るだけの気力がない。 拘束され…スタンガンで電流流されるわ腹何回も蹴られるわタバコを押し付けられるわ……幸い体が欠損してないことだけが救いだ。 というか喋っても始末されそうだしなぁ……。 もはや半分諦めムードなみるあをよそに拷問ツインズは殺意をむき出しに笑っている。 どうしよう……。 脳を素早く回転させても空回り、まさに絶体絶命なその時、ドアが勢いよく開かれる音がした。 「麺さんごやさん!ちょっとストップ!」 そこに居たのは、息切れをしているねこわかとささにい、そして__。 「なになに、なんかあった?」 「詳しい理由は外で話すから……ちょっと来てくれないかな」 「良いところだったんだがね……」 麺ごやは、渋々と言った表情で部屋を出る。 「……何だ…?」 わけも分からず、今閉められたドアをじっと見つめる。 まあ、今が好機だ。どうにか抜け出せないか……。 しかし、縄はどう足掻いても取れなかったし、そもそもこの部屋には窓がない、出入り口も一つだけ。 「……」 みるあは壁に寄りかかり、目を閉じた。 「__つまり、知り合いだから拷問は辞めてほしいと」 「そういうことです……料金はちゃんと払うんで……」 「えーっと、これ経費で落ちる?」 「どうにかして落としたいもんやな」 部屋の外では、硫黄とのこ、そしてねこわかからの説明が行われていた。 「同好会に仇なす者なら、排除しておいた方が合理的だと思うがね」 「そうも行きませんよ……みるあさんとの方が付き合い長いし」 「ま、みるあ1人じゃ仇にもならんよ」 「……まあ、キャンセル代を払ってくれるんなら文句は言わない。ほら早く金よこせ」 「あーはいはい……うちのポケットマネーで払っとくよ」 麺ごやは、金さえくれれば基本的には何でも従う。のこは粗雑に紙幣を握らせた。 「んじゃ、適当に解放しとくね〜」 「ああ、頼んだ」 「なんかごめんね、無駄骨になっちゃって」 「楽しかったからだいじょーぶ」 こうして、同好会側の交渉は終わった。 あとは麺ごやが短い仕事を終えるのみだ。 「……ん〜〜」 みるあが目を覚ますと、そこは見慣れた繁華街だった。 「……あれ?ここ繁華街じゃん」 しばし思考が固まる。 「いつの間に、解放されてたのかな…?」 何故だかは分からないが、どうやら命は助かったらしい。 ……しかし、次の瞬間体は悲鳴をあげた。 「いったぁ!やっぱ拷問されてたよね…?」 謎は深まるばかりだが、取り敢えず体を起こす。 みるあが居たのはゴミ捨て場だった。 「うわ〜、いろいろボロボロになってる……けど荷物がちゃんとある」 これは硫黄の気遣いであり、ねこわかに頼み込み荷物を引き取って置いたのだ。まあみるあがそれを知る由はないが。 「う〜ん…謎だ」 まあいいや、とみるあは体に纏わりつくゴミを払った。 __今回は失敗しちゃったなぁ、やっぱり理想とは程遠い……。 しかし、ここでへこたれていてはこの街では生きていけない。 いつか、この街をもっと良い街にしてみせる。 そして私が伝説の存在になれたらな〜、なんて。 ふふふ、とみるあは笑う。 「よ〜し頑張るぞ!なんか気晴らしに食べようかな」 そう呟きながら、みるあは繁華街を駆けていった。 警察署に戻ることも、今無一文なことも忘れたまま。
後編です みるあさんごめんなさいpart2