「くっ!俺は死なん!"絶対"など…俺の前では無意味だ!」 爆発が収まった時、俺たちの目に入ったものは、そう叫びながらも無傷のヴァルゴだった。 「仕方ない…使うとするか」 ヴァルゴは、独り言をそう呟き、力を溜め始めた。その力は、まるであらゆるものに降りかかる厄災…終焉そのもののようだった。 「"エンド"」 奴がその力の名を呟いた瞬間、俺たちに強烈な何かが襲いかかった。クライが咄嗟にバリアを展開し、何とか防げたが…あれを食らったらマジで終わりだ。 「やはり、クライの力は危険だ…まぁ、俺と同じ世界の出身のだけはあるな」 ヴァルゴが少しニヤつきながら言った。 EPISODE 35:クライとヴァルゴ 「何?クライとお前が…同じ世界の出身?」 俺は思わず呟いた。 「そう、クライは俺と同じ世界の出身だ」 ヴァルゴを初めて見た時に俺が感じたクライとの類似性…あれは間違いじゃなかったってか… 「もしかして、知らなかったか?」 ヴァルゴが俺を煽るように言う。 「クライ、どう言うことだ…?」 「ヴァルゴと俺が…同じ世界出身?そんな事…知らない!そんな記憶はない!」 だが、クライも俺と同じように混乱していた。 「クライ…まさか記憶喪失か?」 ヴァルゴがまた、煽るように言う。 「まぁいい。俺が思い出せるように教えてやろう」 そしてヴァルゴはクライの過去を語り始めた。 「クライ、お前は俺の、いや、俺たちの世界で大"罪"を犯した。生活に必要な感情エネルギーを奪った。だが、その代償として人ならざる姿へと変貌した。神でも人でも、悪魔でもない。ただの化け物だ」 その時、ヴァルゴの頭にはクライが変貌した瞬間の出来事が浮かんでいた。 「そして、お前は他の世界まで到達し、世界ごと"喰らい"始めた。その世界の感情も喰らい、さらにはその世界の力まで奪い始めた。お前は力を獲得し続け、遂に表世界の全ての世界…つまりは全ての物語世界、現実から生まれた全ての創作物の世界を喰らってしまった。全ての世界はお前の"細胞"となり、今も動いている。だが、そんなお前を倒す者がいた。表世界の裏側…裏世界のお前だ。裏世界のお前がお前を撃ち倒し、お前は落ちて来た。力と記憶を失い、この世界に。そして、そこに居るユウトと出会った。だが、お前は全ての力を失ったわけではなかった。神秘、剛力、神速、魔法、超越、光、物語…この力は残っていた。そして、打ち倒された異形のお前の亡骸は、まだ表世界のベールとして残っている。そのせいで…」 ヴァルゴがまだ何か続けようとしたが、 「いや、言う必要はないな」 とヴァルゴは言うのをやめた。 「ユウトとやら、これでもクライを信じれるのか?相棒とはいえ…お前が大切にしてる"笑顔"を、俺たちから、他の世界から奪ったんだぞ?」 「それは…!」 俺は言い返そうとするが、言葉が続かなかった。 「今日のところはここまでだ…」 ヴァルゴはそう言うと、どこかへ消えた… 「クライ…本当に覚えて…無かったのか?」 「あぁ…そんな大切な事を覚えていなかったなんて…ごめん!」 クライは、心の底から俺たちに謝っていた。覚えていなかったことにも、他の世界の笑顔を世界ごと奪っていたことにも。 「君たちの仲間でいる資格は…ないよね」 クライはそう言うと、ヴァルゴと同じように、ワープしてどこかへ消えた。 「俺がクライの居場所を探ろうか?」 ラネンが俺に提案してくる。 「いや…大丈夫。俺に探させてくれ」 俺はクライが行っただろうところに向かった…
「やっぱ…ここに居たな」 俺の予想は当たった。やっぱり、クライはあそこに…俺と出会った場所に居た。そこは何の会社かも知らない建物の屋上。だが、俺の身体能力なら登ることは簡単だった。 「ユウト…何で来たんだ?」 俺に気付いたクライが、気まずそうに言う。 「クライ!俺はお前を連れ帰りに来た!」 「やめてくれ…俺は無数の世界の笑顔と世界そのものを奪った奴だ」 クライは失っていた記憶の真実を知り、心の底からショックを受け、過去の自分に絶望し、罪悪感に心を浸食されていた。本人がそんなに思う分のことを、クライはやってしまっていた。だけど…! 「俺は!俺と出会ってからのお前を知ってる!お前は…!俺の殺し屋としての過去を受け入れてくれた!例え殺しをしていなかったとしても、この手で人をたくさん…傷付けたことは罪だ!でも、お前はそんな俺を受け入れてくれた!励ましてくれた!そして、俺の信念も、守りたいものも変えてくれた!"笑顔"の大切さを教えてくれた!だから…」 そう、クライは俺の罪を知ったにも関わらず、俺という存在を、相棒として…1人の人間として…認めてくれた! 「だから!今度は俺がお前の罪を許して、相棒として支えてやる番だ!俺の唯一の相棒…それはお前だ!」 俺はそう決意を叫びながら、クライに手を差し出す。 「ユウト…本当に…許してくれるのか?こんな罪を犯していた俺を…!!」 クライは、泣き崩れながら手を伸ばした。 「クライ…お前の名前通りになっちまってるぜ…?お前には笑顔が似合う。あの時みたいにな…!」 俺はいつもの軽口も混ぜながら、クライを何とか励ました…つもりだったが、多分、俺もちょっと泣いてた。 「ユウト…!本当にありがとう!」 「あぁ!これからも…2人で、みんなの笑顔を守ろうぜ!!」 俺はクライの手を思い切り握り、クライは立ち上がった。 「Nobody's Perfect…人間、こうやって支え合えって生きてるんだな…!」 俺は以前、クライが言っていたその言葉の重さと大切を実感した。もしかしたら…クライが他の世界を喰らって得た記憶の中で、失わずに覚えていた大切なことなのかもしれない。 「さぁ、行こう…!」 クライが俺の方を向いて言う。 「あぁ!今度こそ…ヴァルゴに勝つ!」 俺たちはクライが瞬時に捜索したヴァルゴの居場所に向かった。 俺はラネン・ブライト。ゼノ社のエージェントで、ファルドの父ヴァールドの依頼でファルドの護衛をしている。だが…護衛仲間のユウトの相棒、クライの真実が語られ、クライは自らが犯していた罪の重さにより、仲間でいる資格はないと、姿を消してしまった。 「ユウトたち…大丈夫だよな?」 そんなクライと連れ戻しに行ったユウトを心配した神野翔真が言う。 「恐らく…大丈夫だ。俺たちは俺たちに出来る事をしよう」 俺も、以前ユウトが神野翔真を信じていたように、ユウトを信じる事にした。 「ヴァルゴの居場所は分かってる。俺たちは先に向かおう」 「あぁ!この世界の終わりを食い止めることぐらいはできる!」 神野翔真も俺の提案に賛成し、俺たちはヴァルゴの元へ向かった。 「ほう…俺を止めに来たか?神野翔真、ラネン・ブライト」 ヴァルゴが、俺たちに気付き言う。 「俺たちの事…調べたか」 「俺は全知全能すら超えし者…終焉そのものだ。調べるも何もない。"エンド"」 奴は自らを終焉そのものだと称しながら、能力の名を宣言、俺たちに終焉そのものをぶつけて来る。 「だったら俺は絶対そのものだな…!」 だが、俺もこれに対応できないほど甘くない。俺の能力・アブソリュートで絶対無限を生成、終焉を絶対無限で相殺する。しかし、俺は少しダメージを受けた。 「今だ!神野翔真!」 そして、神野翔真に指示を出し、それを聞いたあいつが拳を振りかぶり、空高く舞い上がる。 「破ぁぁ!」 そして、神野翔真は必殺拳でヴァルゴに攻撃する。だが… 「無駄だ」 ヴァルゴに拳は届かず、攻撃そのものが終わった。 「良い加減思い知れ…!」 そして、ヴァルゴは虚空から大剣を取り出し、それを振りかぶる。 「ぐっ!」 ヴァルゴはそれを俺に向けて振り払い、俺を横一文字に切り裂こうとした。だが、俺は絶対不死…終焉が付与されていない物理攻撃では死なない。絶対にな。 「どうした?その程度で全知全能すら超えた終焉そのものか?」 俺はあえて、ヴァルゴを煽る。 「フッ、笑わせるな。ならばお前も…絶対など終焉の前では無意味だと言う事を知れ」 そして、ヴァルゴは俺と神野翔真の2人共々切り裂こうとする。 「おい!神野翔真ぁ!避けろ!」 「あ、あぁ!!」 神野翔真はギリギリで避け、真っ二つになる事を回避した。 「ラネン、良い加減神野翔真はやめろよ。翔真で良い!」 そうだな…こいつも成長して、冷静になった。距離を取るのはやめにしよう。 「そうだな、意地を張ってる場合じゃない。行くぞ、"翔真"!」 「あぁ!」 俺はヴァルゴの背後に周り、注意を引こうとする。だが、ヴァルゴは俺を気に留めず、翔真だけに集中する。 「破ぁぁぁぁ!!!!」 翔真は思い切り拳を振り払い、ヴァルゴに攻撃する。 「な…俺の圧の防御を突破するとはな…!」 その拳は、ヴァルゴの圧力による攻撃を妨げる壁を突破した。 「だが…!隙がある!」 しかし、ヴァルゴは翔真の攻撃後の大きすぎる隙を見逃さない。奴は翔真に大剣を振り下ろし、切り裂こうとする。 「"アブソリュート"」 だけどな、俺も居る。俺はアブソリュートの力で、翔真に絶対回避を付与、翔真は攻撃を回避する事に成功した。 「"エンド"」 だが、俺のアブソリュートの力は奴の能力・エンドにより封じられてしまった。 「しまった!」 「ハッハッハッ!これでお前らも…終わりだぁ!!」 ヴァルゴは高笑いしながら、俺たちを消し去ろうと大剣を振り上げる。 ーバン!!ー だが、銃声が響き、強固な弾丸が奴の大剣を止めた。そう、そこに来たのは…! 俺と…相棒、クライだ!俺はユウト。クライを連れ戻すことに成功し、仲間のピンチに駆けつけた…笑顔を守る戦士だ! 「ユウト…!クライを連れ戻せたんだな!」 翔真が嬉しそうに言う。 「お前…クライの罪を許すのか!?」 ヴァルゴが怒りを露わにしながら、俺に問う。 「何当たり前のこと聞いてんだ。俺も、クライも、過去の罪を背負いながら、今を生きてんだ!」 俺はヴァルゴに俺の、いや、俺たちの決意を伝える。 「ユウト…!行こう!」 それを聞いたクライが喜びを隠しきれないように言う。 「あぁ!ここから逆転だ!」 俺はさっきクライが神秘の力を宿した銃を握る手により一層力を込め、覚悟を込める。そして…戦闘の始まりを告げるように、銃声が響く!俺は銃弾に気を取られているヴァルゴに蹴りを浴びせる。 「サンキュー、翔真!お前があの圧力バリアを壊してくれたから、攻撃が通りやすくなった」 そして、蹴りが無かったかのように振る舞うヴァルゴに対し、クライが力を剛力に切り替える。俺も武器をナイフに切り替え、ストロングファングの攻撃でヴァルゴにダメージを与える。今の総力を全部!ヴァルゴにぶつける! 「無駄無駄ぁ!」 ヴァルゴが俺に対して大剣を振るうが、クライが神速の力を宿した剣を持つ俺はそれを容易く避ける。そして、棒を取り出し、瞬時にクライが魔法の力を宿す。それはウィザードロッドとなり、俺はウィザードロッドで物理法則を改変する。 「この力は…今の俺の守りたいもの…ファルドが!俺のために願ってくれて目覚めた…大切な力だ!」 そしてクライは、以前ファルドの願いにより目覚めた超越の力、ビヨンドを俺が懐にしまった銃に宿す。俺はビヨンドマグナムの引き金を引き、超越の弾丸をヴァルゴに放つ! 「こんな弾丸…!斬る必要もない!」 だが、ヴァルゴは弾丸を容易く避けた。 「まだだ!」 俺はまだ諦めていない。奴に超越の力が乗った強烈なパンチを放つ。しかし、奴はそれすら避けた。 「狙い通りだ…!」 だけどな…その体勢じゃあ避けられない。超越の弾丸は、真っ直ぐではなく、ヴァルゴの背後で180度曲がっていた。 「なっ!」 弾丸はヴァルゴの脇腹に食い込み、ダメージ。与える。さっき物理法則を変えたのはこのためだ。 「終焉の大剣…!光の剣でぶっ壊してやる!」 俺は剣を取り出し、クライがそこに光の力を宿す。その剣の名はグランドセイバー。浄化の力も持つ光の剣。 「はぁぁ!!」 俺は奴の大剣を切り裂き、粉々に破壊した。 「剣を壊したとて…無意味だ!」 だが、ヴァルゴはそれを意に介さず俺に突っ込んでくる。 「全部計算済みなんだよ…」 しかし、ヴァルゴは止まる。なぜなら…自身の剣の破片を踏んだからだ。しかも、クライは俺がグランドセイバーで触れたと同時に力をそちらに移行、剛力の力を付与していた。その破片は小さいながらも剛力の力でヴァルゴにダメージを与えた。 「くっ!全て…無意味だぁ!」 だが、ヴァルゴは自身の剣を修復し、再び構える。 「ここまでしても駄目か…!」 近くで見守っていたラネンが呟いた。 「いや!まだだ!俺たちはまだ諦めない!」 その時、俺の脳内には様々な記憶が浮かんでいた。 「天神街のみんなの…地球の全生物の…この宇宙の、この世界のみんなの笑顔を!いや、他の全ての世界の笑顔も!俺は守りたいんだ!それが俺の贖罪…そして、生きる意味だ!だから…俺たちは諦めない!未来の笑顔を掴み取る!」 俺が覚悟を叫ぶと…クライの身に変化が起き始めた。 「これは…!」 クライはまるで真の神のような覇気を放つ。 「ユウトの覚悟、そして俺の罪を許した神のような優しさが…全知全能を超えたものをさらに超えた、真の全知全能の神の力を引き出した…!そして…それをベースに神秘、剛力、神速、魔法、超越、光、物語の全てが、いや、それだけじゃない。失っていた俺の全ての力が…融合していく!」 クライは興奮を抑えきれない様子で言った。 「なっ、えっ?ちょっ、なんだこれ!?」 すると、俺の身にも異変が起きた。クライと引き合っているように思える。 「うわぁ!」 何が…起きた? 「ユウトとクライが…一つになった!?」 ラネンがそう言っている。え…俺とクライが一つに!? 『本当に…一つになったみたいだね』 俺の心に声が響く…いや、そうじゃない。俺だけど俺じゃない、もう一つの声が脳内で語った。その声は…クライの声だ! 『この力…オールマイティとでも名付けよう』 クライがまた語った。 「どうやら、一つになったのは俺とお前、お前の力全てだけじゃないみたいだぜ?」 俺は俺と一つになったクライに話しかける。 『そのようだね…今、俺とユウトは…』 「『全ての世界とも融合した!』」 俺とクライの声が揃った。そう、俺とクライは今、全ての世界と一体化している…! EPISODE 36:覚醒!絆のオールマイティ! 「何…!?お前らが…!?」 ヴァルゴがそう呟いた。 「さぁて、これまでのお返しをしなきゃな!」 俺はそう言いながら、凄まじい速さで動く。その速さは…神速をも超え、表現しようがない!その速さでヴァルゴの背後に周り、攻撃を受けたのすら気付けないほどの速さで蹴りを放つ。ヴァルゴは言葉も発せず、遠く、遠く吹き飛んだ。まず大気圏を突破し、無限に広がる宇宙を超え、分岐により無限に増える無数の宇宙を飛び越え、この世界の壁を超え、他の世界まで吹き飛んだ。そして、表世界のベールにぶつかり、一周して帰ってきた。俺は帰ってきたヴァルゴを再び全力で蹴り飛ばした。今度は一周と半分だから、自分で帰って来るだろう。 「痛っ」 ヴァルゴのぶっ飛びでこの世界や他の世界が少し刺激を受けた時、俺たちも少しだけ痛みを感じた。 『今、俺たちは全ての世界と運命共同体だからね。世界が傷付けば俺たちも痛い』 クライが俺に捕捉してくれた。 「くぅ!なんだこの強さは…!!」 自力で帰ってきたヴァルゴが言う。 「強さ、か…そんなものは、もうとっくに超えてるんじゃない?」 今ヴァルゴに言ったのはクライだ。俺の口を使ってな。さて、ここから圧倒勝利するとしようか…!