俺はユウト。相棒のクライと共にこの世界の最高権力者・ファルドを守っている。自称、笑顔を守る戦士だ。 「ユウト、夜ふかしは良くない。そろそろ寝ないか?」 クライが俺に話しかけた。俺は時計を見る。今は11時ぐらいか。確かに…夜ふかしで明日に影響が出たらまずいしな。 「そうだな、おやすみ〜」 俺はベッドで横になる。 「痛っ!」 だが、痛みを感じる。今日、一つの世界を破壊したからだろう。 「オールマイティの時の俺たちは全ての世界と一つになっている…と言うより、今は亡骸の本来の俺と同じように、世界を細胞としているようなものだ。世界が一つ壊れれば痛い」 クライが言った。 「へぇ、なるほどね…じゃ、おやすみ」 俺は夢の世界に落ちていった… 「君は…誰だ?」 この声は…クライ? 「俺はユウトだ…」 俺が喋ったんだろう。だが、声に生気がない。クライと出会う前のみたいだ。あぁ、そうか。ここは夢の世界だ。夢の中なら過去の発言をちょっと変えてみたっていいだろ。 「お前こそ誰だよ…」 だが、俺の声に生気は戻らず、発言も過去の通り。あれ?明晰夢って奴を見ると自由自在に夢の内容を操れるんじゃなかったっけ?おかしいな。 「分からない…自分でも、自分自身の事が」 クライがそう言っていた。 「お前さ…記憶喪失?」 俺が冷たい声で言った。俺の意思とは違う…過去の通りの発言。 「そうかもしれない」 「俺が誰か分かってんのか?」 「君の事は一切知らない」 なんだ?実際の俺とクライの出会いとは違う。 「じゃ、知らないうちに死のうか…」 違う、俺はそんなことは言ってない! 「Good Bye…」 そして、クライの悲鳴が上がる。 「おーい、ユウト。大丈夫?」 クライの声だ。 「クライ!無事だったか!?」 俺がそう心配するが、クライは呆れたように 「悪夢でも見てたのかい?」 と言った。そうだ、そうだった。あれは夢だ。 「あぁ、でも大丈夫だ」 「じゃあ、ファルドのとこに行こう」 クライがそう言った。 「そうだな」 俺たちは歪みを生成できる装置がある場所に行き、そこから歪みを生成。ワールドコアに向かった。 「ユウト、少し遅刻してます」 ファルドがそう言いながら俺たちを出迎えた。 「なんだ、そんな寂しかったのか?」 俺はそうファルドに軽口で話しかける。 「はい…寂しかったです…あなたを喰らいたくなるほどに…!」 その時、ファルドの俺的には可愛い顔が異形の姿に変貌。それは無数の牙を持つ口のような顔だった。 「うわぁぁ!」 俺は思わず悲鳴を上げる! 「はっ!夢か!」 まぁ、それは夢だった。夢から覚めたと思ってたら、まだ夢の中だったってことだ。 「ユウト!どうした!もう目が覚めたのか?」 この声は…翔真だな。 「翔真…どうした?そんな少ししか寝てなかったか?」 そうだ、俺とクライの家に翔真が来て、俺は疲れたから寝てたんだ。 「あぁ!俺がドォーン!として完全に目覚ましてやるよ!」 だが、翔真が突然意味不明なことを言い出す。そして…拳を振りかぶり、俺に向かって拳を振り払う! 「ユウト、大丈夫か?」 ラネンの声で俺は目覚めた。今のも夢…一体どうなってる? 「あぁ、悪い夢を見た」 「そうか。じゃあ、この世界から消す。"絶対"に」 目覚めた後の世界のラネンすら、意味不明な発言をする。もしかしてこれも夢… 「あぁもう!どこまで夢なんだ!?」 俺は混乱しながら叫んだ… 「ユウト…大丈夫か?」 「クライ!ここは…夢じゃないよな?」 「何言ってるんだ?今は朝10時。ファルドの護衛任務の一時間前だ」 クライの声で俺は目覚めた。今度こそ本当に。 「そうだな…さぁ、そろそろご飯食べるか!」 俺は昨日近くの店で買っていたお弁当を取り、テーブルに置いた。 「いただきま〜す」 俺とクライはそれを一瞬で平らげ、ファルドの居るワールドコアに向かった。 「ユウト、大丈夫ですか?顔色が悪いですよ」 ワールドコアに着くと、ファルドがそうで迎えてくれた。 「お、ユウト、クライ!待ってたぞ!」 翔真もそう言った。 「ユウト、大丈夫か?」 そこに居たラネンもそう心配してくれる。 「いや、大丈夫だ。悪夢を幾つか見たけど…」 そうだ、悪夢に比べて…現実は素晴らしい! 「ユウト、悪夢はどんな物でしたか?」 ファルドが俺に問う。俺が答えようとするが、ファルドはその前に言葉を続ける。 「もしかして…こんな風なのですか?」 ファルドがそう言うと、ファルドの顔があの悪夢の時と同じ異形に変貌した。 「まだ夢の中か…だけど、同じ悪夢が通用すると思うな」 俺は冷静に銃を取り出し、異形の怪物に向かって銃撃する。弾丸は怪物の腹に突き刺さる。 「ユウト…なぜ…私を…?」 だが、弾丸が直撃したのは"ファルド本人"。 「ユウト!なぜファルドを撃った!」 クライが俺を責め立てる。 「ユウト!なんで…なんでファルちゃんを!」 翔真も。 「ユウト…何してるんだ…!?」 ラネンも。 「違う、俺はファルドを撃ってない…怪物に撃ったはずだ…!」 俺は混乱し、そう呟く。 「怪物なんていない!ユウトはファルちゃんに撃った!」 翔真がそう言う。まさか…怪物は俺の幻覚?ここは夢じゃなくて…現実? 「違う違う違う!ここは夢だ!悪夢なんだ!」 俺は自分でも何を言ってるか分からないまま叫んだ。 「ここが夢の世界?何バカな事言ってんだ。目ぇ覚ませ」 ラネンが冷たく言い放つ。 「ユウト、自分がした事が分かっているのか…?」 クライが悲しそうに言った。ファルドが倒れるのが見える。 「ごめん!ファルド!クライ、翔真、ラネン!」 俺は無我夢中で謝った。いや、俺自身の意思ではない気がする。まるで、そう決まっているかのように、自然だが不自然に、朧で不明瞭に。 「「「ユウト、お前が存在しなきゃ良かったんだ」」」 クライと翔真とラネンが同時に、言い放った。確かに、その言葉に間違いはない。ド正論だ。守るべき人を、大切な人を殺め、相棒や仲間にも見捨てられる。こんな人間なんて生まれてこない方が良かった…かもな。 『存在の否定を受け入れるのか?』 謎の声が響く。だが、俺以外には聞こえていないようだ。いや、声ではなく、情報と意思そのものの波のようだ。 「受け入れるとか、意思の問題じゃない。今俺がしたことは取り返しのつかないことだ」 俺が答える。気付くと俺はワールドコアでも天神街でもない、それどころかこの世界でも表世界の他の世界でもない領域に移動していた。 『自分の存在を自分自身でも否定するのか?』 存在はさらに問いかける。 「そうだな…でも、俺の意思とは関係なく否定の意思が蠢いている感じがする」 『その通りだ。お前の一連の悪夢は操作されたもの』 「やっぱりな…てことは、さっきのも夢か…」 俺はその事実のおかげで冷静になりながら、答えた。 『お前は真実を知らない。いや、知らない方が幸せだ』 「真実って言われたら…気になるだろうが」 俺は情報の波からの問いに返答し、真実を知ることを選んだ。 『なぜ知りたがる?お前は知らないという選択もできる。知らない方が良いこともある』 謎の存在はそう言う。だけどな… 「もしその真実が誰かの笑顔を無くすものだったとしたら…俺がぶっ壊す。そのためだ!」 『その覚悟…真実を知る資格がある。真実を知ると良い』 存在は俺に真実を知る覚悟と資格があることを認め、真実を展開した… 真実が広がると、俺はさっきとはまた別の領域に居た。 『ここは表世界、裏世界、アウノ世界、新世界全てを俯瞰する事ができる領域だ』 情報は相変わらず朧だが、さっきよりはハッキリしてきた。まるでここが本来の居場所のように、だ。 「ここが何だって言うんだ?」 俺が問うと、存在は真実を俺に教え始めた。 『表世界、裏世界、アウノ世界、新世界…その全ては私の夢により維持されている』 存在はそう、衝撃の一言を告げた。 『かつてグレートゴッドが四つの世界をこの領域の内に創造した。その四つの世界を夢見る事により維持している者こそ…この私だ』 「つまりはさぁ…俺たちも、俺たちをフィクションとして見てるあの"現実世界"も、全部あんたの夢ってことだろ?」 『その通りだ』 「ハハッ…笑えるよ」 『何が可笑しい?』 「みんな…夢で決められた運命じゃなくて、自分で未来を決めて生きるんだ。その笑顔の未来を奪わせないために…俺はあんたの夢から四つの世界を解放する!」
『まさか、この真実を知って絶望しない者がいるとはな』 「する訳ないだろ?俺は笑顔を守るために戦ってる…俺も笑ってなきゃ意味ない!」 『そうか…だがお前は私を倒す事などできん。なぜなら、ここは私の夢の中、つまりは私の精神世界のようなものだ。お前らは私の精神世界の中に造られた矮小な存在に過ぎない!』 さて、どうするか…そうだ!この銃には…既にクライの力が宿っている! 「それはどうかな…?俺の覚悟、喰らってみやがれ!」 そして!クライが俺の覚悟に呼応するように新しい力を覚醒させる! 「ユウト…本当にやるのかい?」 「あぁ、自由を奪う夢なんかぶっ壊してやる」 新たな力の名は…アザトース! 「ユウト、この力…オールマイティの力をベースにして、さらに別の何者かの力も混ざっている!」 クライがそう言った。 『EX GOD様…なぜ…!あの者たちに力を貸すのですか!?』 存在が混乱した様子でそう叫ぶ。 「その何者かは、EX GODと言うみたいだ」 クライが存在の言葉を聞いてそう言った。 「よっしゃぁ!行くぜ〜!!」 俺はそう叫び、力を思い切り解放した… 「お〜い、ユウト!遅れるよ」 クライがそう言っている。あぁ…そうか、今のは夢か。俺は目覚めた。今度こそ、今度こそ本当の本当だ。 「あぁ〜!凄い夢見たわ」 俺がそう言うと、クライは 「どんなものか、教えてくれるよね?」 と聞いた。 「はいはい、OKOK〜」 俺はクライに夢の出来事を語りながら、ファルドの居るワールドコアに向かった… 表世界…裏世界…アウノ世界…新世界…その全てを内包する領域。そこの何処かで俺は佇む。いや、夢を見る。明晰夢ではない…夢の中の存在が自由に笑う夢だ。 "あの出来事は夢じゃない" 俺は"ユウト"があの出来事を夢だと思っている事に対して思いを馳せる。なぜ、俺があの出来事を知っていて、夢じゃないと分かるのか?俺はあの"存在"なのか?または、EX GODか? 全て不正解だ。俺の名はAzathoth。あの"存在"に代わり夢見る事で四世界を維持する者。だが、何故Azathothの名を冠しているにも関わらず、知性を持ち、自我を持ち、言語と思考を使うのか?その答えは、この一言だけで分かるだろう?俺が人であった時の名は…ユウト。笑顔を守る戦士だった男だ。