「ここだな」 狂鳳組御一行と同好会の数人は、組織のアジトの目前に立ち並んでいた。 「まずは俺が取引をする、お前らは散ってまずあなごの回収。あなごには発信器が付いてるからな」 「あーあのプライバシー侵害」 「こういう時だけ役に立つんだね…もうとっくに捨てたわ」 「……そして、回収したら徹底的に潰す。いいな?」 「勿論」 「それじゃ、決行だ」 クルッポウの合図とともに、皆は散る。 「……さて、やるか」 「来たなァ」 「っ!」 アジトの裏口から突入したのは、部屋住みのメルとその友人の荒木、そして死神だ。 そしてそれを迎えるのは、4人の見張り役。 (見張りがいるのは想定内、大丈夫!) 「さ〜てどうやって相手して」 ざしゅりという音でその声は止まる。 「……あ?」 見張り役達は、しばし呆然とする。 死神が刃物で一人の男の腕を斬ったからだ。 そしてその間を見過ごすほど、3人は甘くない。 「隙がありまくりだな!」 「大人しく倒されてください!」 荒木が拳銃を放ち、メルは背中に蹴りを入れる。 そして死神は、愛用の鎌を懐から出し、次々と見張り役を斬っていく。 「本当は殺したかったけどな、クルッポウの奴に止められたから……このあとたっぷり痛めつけてやるよ」 死神は普段は雑用係長としてこき使われているが、本来の特技は特注の鎌を使った暗殺。 その姿から、死神というあだ名をつけられたのである。 「ひっ」 「ほらよっ」 荒木は怖気づいた見張り役にすかさずスタンガンを当てる。 「取り敢えずそこで寝ててくださいね!」 こうして見張り役は全員その場に倒れ込んだ。 「これで大丈夫そうですね」 「は〜、じゃあ行くかだるいけど」 死神は気だるげに言う。 「お前は彼女馬鹿なんだかそうじゃないんだか」 荒木は呆れたように呟く。 「さあ?」 死神はそう吐くと、アジトの中へと急いだ。 「……さてと」 時刻を同じくして、クルッポウは応接間に居た。 「どうもどうも、今回はよく来ていただきました」 目の前にいるのはこの組の長である、いかにも胡散臭い、細身の男だった。 「……早速本題に入りましょう。いやぁ、この前はよくもやってくれましたね?」 「何のことだか。元はと言えばあんたらのとこの下っ端がうちのシマで狼藉したからでしょう」 「はは、そうでしたかな……。それでです」 貼り付けた笑顔から真顔に戻り、男は言う。 「五億円、払っていただけますね?」 「ああ、組員には代えられないからな」 「随分と組員思いですね、代わりはいくらでもいるでしょうに」 「はは、こちらは少数精鋭なんでね。おたくと違って」 「ほう、言ってくれますね、それで五億円は……」 その時、男のスマートフォンが鳴る。 すぐさま操作し、男は耳に当てる。 「なんだ?」 『狂鳳組がアジトを……荒してます!何人も重傷のヤツが出て……うっ』 「やっぱり、ですか」 通話を止めると男は懐をいじりながらクルッポウを見据える。 「わかりきっていたことだろう?」 「ええ、だからこうしてますよ」 男は、銃を構える。 そして応接間のドアが開かれ、ぞろぞろと組員が入ってくる。 「舐められたもんだな」 「そうですか……さっさと死ね」 男は引き金を引いた。 「えーっと、発信器によればこの辺にあなごさんがいるんだよね?」 「多分」 「多分って」 「まあ虱潰しよりはマシやろ」 あなごを探しているのは、硫黄とわそわそ、そしてのこだ。 3人は皆が襲撃している隙にこっそりとアジトを探索していたのだ。 勿論、見つかったりもしたが、そこはのこがすぐに片付けているため問題無い。 「みるあさんに見つからないといいなぁ」 「まあそん時は上手く対応するしかないわ」 「……そこの部屋っぽいぞ、あなごがいるの」 スマホを見ていたわそわそが口を開く。 指さした先は見張りのついたいかにも怪しい角の部屋。 「あそこやな、絶対」 「そうだね」 「ほな、うちが片付けてくる。そこで待っとき」 そう言うや否や、のこは懐から銃を出す。 「来たな狂鳳組っ……痛ぁ!」 「悪いけどさっさと失せてくれん?」 慣れた手つきで弾丸を撃ち込むと、すぐに護衛役はへばる。 「ほな、行くで」 「うん!」 部屋に入ると、そこにはさるぐつわをされたあなごが目を閉じていた。 「あなごっ!」 そう声を掛けると、あなごはゆっくりと目を開く。 「…………うっ、あっのこさん!助けに来てくれたんだ!」 「当たり前やろ」 「うん、ありがとう」 あなごがそう言うのを聞きながら、3人はさるぐつわを解く。 「……ほんじゃ、このクソみたいな組織ぶっ潰すで」 「うん!」 「了解」 そしてのこ達は、多くの組員が入り乱れる一階へと急いだ。 「……ここか」 みるあはアジトを目の前から望む。 「なんか騒がしいな…抗争でも起こってるのかな、なら突入しないと!」 みるあはそう呟いてアジトの門をくぐる。 そこで起こっていたのは、まさしく大乱闘。 「造作もないな」 と、クルッポウが呟く先には人の山。 「流石組長、これ全部一人で?」 「まあな、それよりまろも戦え」 「はーい」 そして鎌を振り回す死神に、倒れた構成員を運ぶもヴェ、恨みを晴らすように銃を乱射するあなご……。 「う、うわあ。どうしようこれ」 追ってきた組織は蹂躙されている、しかも手練らしい奴らに。 (流石にこの人数じゃ勝てないしな……あとでしょっぴければいいけど) という訳でみるあは一旦静観の姿勢だ。 すると、遠くからなにか聞き馴染みのある声がした気がした。 その声の方向をなんとなく見やるとそこに居たのは……。 「これ片付けるの大変そうだなぁ…」 「い、硫黄さん!?」 不意にそんな大声を出してしまったので、相手もこちらに気づいたらしく、驚いた顔をする。 「み、みるあさん」 「どうしてここに……」 「え、えーっとね」 どう説明したものか、と硫黄は急いで頭を回していて、みるあもまた混乱しており、二人は近づく人影にすぐには気づけなかった。 「あいつら……散々荒らしやがって……」 構成員は、硫黄とみるあをロックオンすると、がちゃり、と薬莢を入れた。 その音ではっ、と硫黄は彼の存在に気づく。 「みるあさん避けてっ!」 「えっ、あっ」 やばい、このままだと銃弾に当たる。 ぎゅっと目を瞑り最悪の自体を想定しながら地面へ伏せる。 「ちっ、避けたか」 「みるあさん、説明は後で……今はあいつをたお、どうにかしないと!」 「う、うん!」 ここは私が動かないと、とみるあの体が強張る。 昔から硫黄はそこまで戦闘向きでは無かった。今も非戦闘要員だがしかし、訓練は受けている。 「みるあさん警棒持ってる?それでどうにかしよう」 「りょうかい……硫黄さんは大丈夫?」 「大丈夫、多少は動けるよ!」 「おしゃべりしてる場合なのか?」 構成員はすぐさま距離を詰め、発砲の姿勢。 「させるかっ」 みるあもすかさず警棒で腕を薙ぎ払い、硫黄は後ろに回る。 構成員はその俊敏な連携プレーに一瞬動揺した。その一瞬を二人は見逃さない。 みるあは銃を奪い、投げ捨て、硫黄は首に手刀を入れる。 流れるような、一瞬の動きであった。 「がっ」 構成員は、その場に倒れ落ちた。 「ふ、ふう……どうにかなった……」 硫黄はそう言って地面にへたり込む。 「うん、協力感謝するよ」 みるあもその場にしゃがみこみ、言葉を続ける。 「それで硫黄さんは、どうしてここに?と言うか戦闘も上手くなってる気がするけど……」 「あ〜〜えっとね……」 硫黄は言い訳を急いで練り上げるのだった。 「……さて、この惨状、実に無様だな」 クルッポウは、あざだらけになった組長を見下ろす。 「因みにもう時期警察も来るだろうな、何、俺達は賄賂でも贈るが……お前達はどうかな?」 「ふざけるな、そんな、そんなっ」 「それがまかり通るのがこの世界、だろ?それにお前らが某政党の下部組織だって事はタレこんでんだ、まあ確定だな」 組長の手は震えている。 「まぁ、覚えておけ」 一拍おいて低く低く、吐く。 「これが俺らのやり方だ、ってな」 こうして、抗争は収束していった。 件の組は解体され、一部の更生の見込みのある構成員は同好会東北支部へと送られ、マグロ漁に勤しんでいる。 また、その組に政党が絡んでいたことから、シャバではその政党の話題で持ちきりとなった。 しかし、狂鳳組には何も関係ない話だ。 そしてまた狂鳳組は平和_彼らにとっては_な日常に戻って行くのだった。
後編です よくわからない感じになってしまった 結末とか雑ですが、大目に見てください(