使われなくなったどこかの 埃をかぶった壊れたピアノ それでも私は調律を拒みました 壊れた音が欲しかったんです 何度も弾いたのかな。軋む鍵盤。 手入れは綺麗に行き届いていた跡がある 傷ひとつない、けど埃が舞っている ピアノは弦楽器です なので、いつかは音程がずれてしまいます 劣化していくと 弦はいつか切れてしまいます 弾いてるときにいきなりバチンっ、と だから私はお手入れを欠かしません 音程は合っているに越したことはない、のですが 私はそのピアノを調律したくなかった。 崩れた建物に染みつく思い出の音が聞こえ ぎこちないピアノと合っていない歌が 段々と揃い美しくこだましている気さえしました 思わず手を伸ばしてしまいました 当然のようにそのピアノは酷い音でした 本当に酷い音でした。 どのピアノよりも不気味で不安定で でも今までで一番輝いていて 目を瞑り 弦を叩き続けました 轟く和音は青空に 遍く彼方に花束を 輝かせました 思い出より大切な音楽はありません きっとピアノも思い出を大切に仕舞ってくれます そんな音がした