呪爆霊単空王記 #44『アノ事故(前編)』 前回 https://scratch.mit.edu/projects/1219249501 次回 https://scratch.mit.edu/projects/1258162286/ はろーはわゆー(は?)miyatti3です。 ウィンドーズ10終わったんで新しいPC買いました。親が。 処理能力がめちゃ上がってるので呪空の投稿頻度も・・・上がらないね、うん。受験勉強があまりに忙しい。 てか今呪空が正しく変換できんかった。こういう弊害もあります。 赤幕専用のカフェの店員は、コップを白い布巾で拭きながら、10年前のことを思い出していた。 今日は幽霊塔に多くの隊員が向かっており、こういう時に限って敵襲もあるので、赤幕関係の施設の監視も手厚く、今日カフェを訪れるものはほぼいない。それでも閉店にできないのは、彼自身がこのカフェの警護の役割を担っているからである。 元赤幕幹部、一ノ瀬純太。 彼の名と功績は歴史に確かに刻まれている。 青導師関連のことももちろんだが、最大の功績は、幽霊塔の攻略、そして、完璧な撤退。 「あれから、もう10年も経つのですね。」 一ノ瀬純太はチェルルを取り出し、幽霊塔にそれを巻きつけた。チェルルを掴む手を離せば、もちろんその場に真っ逆さまである。しかし、一ノ瀬はそんなミスはしない。幽霊塔の移動も、聞いていたほど恐ろしいものではなさそうだ。これくらいのスピードなら、指をもう二本話しても余裕である。幽霊塔の着地と同時に、一ノ瀬はチェルルを縮めた。 「お、純ちゃんか。チェルルの使用感はどうだ?」 話しかけてきたのは同期入隊のゼディガだ。一ノ瀬とは仲が良く、一緒に釣りに行ったりする。ゼディガは怖そうな見た目に反し、釣りが好きなのである。 「なかなか便利ですね。他にも色々応用できそうです。」 にしても周りにいるメンバーがすごい。幹部総会議でも無いのに、赤幕の重要人物たちがいくらでもいる。 左を見れば幹部ノ穀雨、痤牙城錬一と、幹部ノ立秋、墓。右を見れば幹部候補生のシャーラ、幹部ノ雨水の鳳凰神事、そして四天王ノ夜の破壊の猫がセットである。ゼディガの隣にいるのは誰だろうか。見たことのない人物である。 「それで、状況はどのような感じですか?」 一ノ瀬の問いに、答えたのは墓だった。 「上々だ。幹部ノ大雪、深山宗平と、幹部の立春、時乃川白花(しらばな)、新人の2人が頑張ってくれてる。今は4階を攻略中だ。」 モニターを確認すれば、ライフはひとつも減っていない。なるほど、確かに順調である。 「じゃあ、この辺で人数調整の申請をするか。変更を頼む。」 「はい、4人から11人への変更ですね。承知しました。」 少女のような声が、天井から響いて聞こえた。 「ナレディ、5階に挑戦してみるか?」 ゼディガは自分の隣にいる、これまた禍々しいオーラの誰かに話し掛けた。 その誰かは何も言わず、小さく頷いただけだった。 幽霊塔5階の攻略も、無事に行われた。どうやら例の「誰か」はナレディという名であるらしい。17期生なので、入ってからまだ数ヶ月である。一ノ瀬が知らないのも無理はない、新人中の新人だ。痤牙城に言わせれば、「入隊試験は隊員全員結果を確認しろ」らしいのだが。 幽霊塔6階に先陣を切って入ったのは、深山の連れていた新人である。新人といってもこっちは16期生なので、一ノ瀬も顔をチラッと見たことくらいはある。とはいえ16期生といえば、幹部候補生の彩岳空竜(くうりゅう)の印象が強く、他が薄れてしまってはいるが。ふと、一ノ瀬は胸騒ぎを覚えた。これは何の根拠もないものではない。一ノ瀬自身の「能力」の一つである。 言葉というのは時に、とても重い。口に出すまでは、予言は予感でしかない。それでもその予感は、確かにそれを告げていた。 「6階は、一筋縄では行かない。」 深山宗平は、幽霊塔6階で命を散らした。 見事に敗北した新人2人の「仇をとってくる」と言った深山だが、それが彼の遺言になった。その時の幽霊塔の制度は、ライフがなくなった時はライフを減らした全員がタヒぬことになっていたため、新人2人の命日もまた、同じ日である。赤幕歴17年の古参、深山宗平でも勝てないゲーム。7階に温存するはずだったエース、痤牙城を動員する羽目になった。 6階のガーデストの名は「二奈木 百合」。ゲーム内容はババ抜き。これだけの情報が、新人から伝えられたことである。 幸いにも痤牙城が勝利を納め、7階へと無事に進むことはできた。しかし、このままではまずい。 「今回の幽霊塔は想像以上に手強いです。雨黎さんを呼びましょう。」 一ノ瀬がこの言葉を言い終わる前に、破壊の猫が何も言わずに電話を取り出した。 十人ほどの小学生が、少しい大きな交差点の横断歩道を渡っていた。遠足の帰りらしく、そこは普段小学生の通る場所ではない。車の排気音が飛び交う道路だが、黄色い帽子によって少しばかり彩りが増されている。 同刻、自動車に乗って家族がドライブしていた。父親と母親、そして4歳程度の子供である。今日は園を休み、子供の持病の診察のために遠くの病院まで出かけていたのだ。しっかり対策すれば重い症状が出ることはない病気だが、なにぶん医療も今ほど発達していない10年前に、しかも発病者数の極めて少ない病気でもある。今回の検査でも、病状の悪化こそ見られなかったが、両親は子供がいつタヒぬかわからないと怯えていた。 しかし、死というのは突発的なものである。 デパートから出てきたのは老人と高校生だった。今日は月曜だが、学園祭シーズンなので、高校生にとってその振替休日である。側から見れば完全に祖父と孫であるが、実はそうではない。高校生は捨て子であった。それを助けたのがこの老人である。その老人の誕生日が近くなったため、2人でプレゼントを選びにきたのである。 その笑顔を見れば、2人が今、幸せであることには、疑いの余地はなかった。しかし、幸せは、一瞬で崩れる。 赤幕四天王の朝、雨黎流禍瞿は、トラックを運転していた。 これだけだと何か勘違いされそうだが、この「四天王」というのは、闇組織赤幕の称号である。多彩な偽造によって自分の正体を絶対に掴ませないと言うスタイルを戦闘中であっても持ち続け、相手に姿を見られないことで、赤幕内では逆に有名である。その偽造の一端として、普段は甘板海勲という偽名で過ごしている。これはアナグラムで「赤幕隊員」になるという遊び心である。そのトラック運転手の耳にある変わった形のイヤホンが警察に調べられでもしない限りは、それは決してばれることではない。そのイヤホンは、他の赤幕隊員と連絡を取ることを可能にしていた。受け取る一方ではあるが。 今回受け取った一報は、「幽霊塔に来てくれ」とのこと。赤幕との関連性回避のために、今日は一日中トラックを走らせることにしていたのだが、どうやら幽霊塔はあまりうまく行っていないらしい。こういう時は、少々危険だが、能力を使って仕事をさっさと終わらせて、任務に行く責任があると、雨黎は自認していた。 幽霊塔7階は6階とは打って変わって思ったより簡単に成功した。最も、ゼディガが深山宗平の仇と言って獅子奮迅の活躍を見せて、のことである。8階からは対人戦となる。本来のプランでは8階はシャーラで繋ぎ、9階で一ノ瀬、10階でゼディガ、ここまで何かあれば深山が出て、11階と12階でエースの痤牙城と鳳凰を、場合に応じて入れ替えて起用、ここで万が一のことが起これば時乃川、13階で破壊の猫が出るはずだったのだが、深山と雨黎の交代、そして今回の幽霊塔の脅威はプランを大きく弄ることを必要とする。8階は一ノ瀬、9階で鳳凰あるいは痤牙城、10階で雨黎、ここまでで何かあれば時乃川、11階でゼディガ、場合によっては破壊の猫、12階でまた鳳凰か痤牙城、場合によっては雨黎、13階は破壊の猫か雨黎というのが、新しいプランである。雨黎は確かに強いが、一度腕鳴らしをしないと本領が発揮できないのだ。一ノ瀬の負担は軽くなったが、ゼディガは大きく負担が増えた。そんなことを考えていたということは、この時は当たり前に11階まで行けると信じていたのだろう。 8階は問題なかった。一ノ瀬にとって、あまりに弱い相手である。ここに強敵を置く可能性を危惧してシャーラと交代したが、これならシャーラでも問題なかったであろう。 9階も赤幕が勝利した。戦闘面でも強力な痤牙城は、一ノ瀬と比べても余裕を残していた。その割に時間がかかっているのは、痤牙城の戦術である。一つは雨黎が来るまでの時間稼ぎ、もう一つはあえて長期戦に持ち込むことで、相手の癖や言動などから次の敵の情報を探っているのだ。一ノ瀬には、いや、他のほとんどの誰であっても、とてもではないが、こんなことはできやしない。 そして、10階。 ここは、雨黎の到着を待つべき場所であった。 しかし、雨黎が幽霊塔に足を踏み入れることはなかった。 時を戻して、9階挑戦中。 緑の髪の男が、道路の歩道に立っていた。彼の名は、月読トウマ。月読トウマは、「veriynui」の活動を行なっていた。veriynuiは、Nahのような能力についての仕事を行う機関である。今日の任務は、殺し屋「Joshua」の逮捕である。逮捕とは言っても対象を56すことも認められているので、月読はそっちのプランを考えていた。 Joshuaが今日、仕事を受けていることは知っていた。情報源はJoshuaの依頼人と思われる人物の携帯のハッキングである。 ・・・やってることが赤幕と変わらない が、これでも一応Nahにも認められた政府公認の組織なのである。 月読は周りを見渡す。パッと見た感じでは、脅威になりそうな人物の気配はしない。ということは、まだJoshuaは来ていないのだろうか。 しかし、その瞬間、月読は悪寒を覚えた。月読はすぐさま前言を撤回し、脅威になるかもしれない人物の存在を頭に刻み込んだ。 月読が警戒したその人物は、後にveriynuiを追い詰めることとなる。 雨黎は能力を使うために、まずは目立たない場所に行く必要があった。能力とは、「荷物の転送」そのものであるが、人に見られていると少しばかり都合が悪い。記憶力の高さを自負する雨黎の頭には、この辺りの地図は完全に頭に入っている。雨黎は近くの人気のない公園の前へと車の目的地を変えた。 月読は気配の主を探るが、気配のする先には多くの人がいて、誰からの気配なのか、月読はさらに感覚を研ぎ澄ませる必要があった。気配の主は、どうやら子供のようだった。とてもじゃないが、自分の正体に気づいているとは思えない。そう思い月読は視線の向きを変えたが、その瞬間、背中に再び悪寒が走る。月読は思わず、手に持ったスマホを落としてしまった。 「あ・・・」 丁度そこには、遠足の帰りと思われる小学生たちが通った。しかし気にするまでもないだろう。まさかこれだけで、今回の計画に支障があるわけではないだろう。 そして、その交差点には4人の人間が集結した。 雨黎流禍瞿、霊森四郎、霊王励磁、そして、ヤミオチ。 この4人の人生は、次の瞬間、Joshuaによって、狂い出す。 次回第四十五話「アノ事故(中編)」 「トウマさん、でしたっけ?」