前歴2025年 デイライトによる「リセット」が行われてから数ヶ月後 「……あいつらか?」 俺は瓦礫に隠れて、様子を窺っていた。爆撃で更地になっているから遠くでもある程度は見える。人数は5人。全員高校生くらいに見える。それ以外は…ゾンビが一体。 5人に向かって歩み寄っている。 「遊夢、SWMと思わしき5人を見つけた」 『よくやった、アレン。捕獲して連れて帰るんだ』 「なぁ、あいつらを連れて帰って何になる?政府直属の組織なんだろ?今ゾンビに追われてるし、そのまま見殺しにした方が…」 『私の知り合いなんだ。それに、彼らには特別な能力がある』 「特別な能力?」 『あぁ…そのうちわかるさ。しばらく放置してみろ』 ?生け取りにしろって言ったのに。何がしたいんだ? 「…やめてよ…殺したくないんだ…」 声が聞こえてくる。鉄パイプを持った、銀髪の少年だ。あいつの名前は確か……『廻嶺』だったはずだ。 「お願いだ、これ以上来ないでくれ…!」 廻嶺と思わしき少年がゾンビに向かって言っている。知り合いだったのだろうか。 「殺すんだ、廻嶺!」 黒髪の少年が叫んだ。 「で、でも…」 「諦めろ!そいつはもう……お前の知ってる清仁じゃない!」 廻嶺の意識が黒髪の少年に言っていたその時だった。ゾンビが思いきり、廻嶺の脇腹に噛み付いた。 「マズい、噛まれた。今すぐに…」 『まぁ、見てろって』 廻嶺が噛まれているのにも関わらず、遊夢は待機指示を出した。 「ああぁ、クソッ!」 脇腹を噛んだゾンビを、廻嶺が思いっきり蹴り飛ばした。そこで、何かが切れたんだろう。ゾンビの頭を、鉄パイプで思いっきり殴りつけた。嫌な音と共に、1発でゾンビの頭が潰れる。それでもなお、廻嶺が鉄パイプを振り続けた。 「廻嶺、落ち着いて!廻嶺!!」 長髪の少女が廻嶺を落ち着かせる。すると、廻嶺は鉄パイプを手から落とし、その場に座り込んでしまった。 『もうそろそろ噛まれたか?』 「あ、あぁ…」 『ならいい、スキャンしてみろ』 言われた通り、ウイルススキャンで治療を受けている廻嶺をスキャンしてみる。すると……。 「…おい、どう言う事だ?」 廻嶺の体内からは、ウイルスが全く検知されなかった。運よく感染しなかったのか?いや、俺達が撒いたウイルスは体内に入れば100%感染する。……まさか、体内に入った瞬間に、ウイルスが死滅したのか? 『どうだ?面白い結果が出ただろ?』 「あ、あぁ…アイツ、ウイルスに耐えたぞ」 『事前検証は済んだ。向かってくれ』 「…わかった」 ガスマスクをつけて、5人の元へ駆け寄る。俺は政府の職員として、彼らと接触する事になっている。一度油断させた方がいいだろう。 「おーい、君達ー!」 俺の声を聞くと、廻嶺が一瞬だけ、こちらに殺意を向けてきた。 「お、落ち着いてくれ。こういう者だ」 偽造した職員証を見せると、廻嶺は気が抜けたように下を向いた。 「あなたが、私達の回収担当の……」 長髪の少女が言った。情報によれば、彼女の名前は『霧時 希空』だ。 「あぁ、そうだ。無事でよかった」 「無事…?」 廻嶺が俺の肩を掴んだ。 「これのどこが無事なんだ⁉︎」 そう言う彼の目には、涙が浮かんでいる。 「何が世界の管理者だ……友達1人すら守れなかった…」 先程の出来事が頭をよぎったのか、廻嶺はまた座り込んでしまった。 「俺には……世界は重すぎるよ………」 泣きながら、そう言っている。 「すみません、ちょっと、色々あって…」 希空がそう言って、廻嶺を慰め始めた。……やるなら今がチャンスか。 「ほら廻嶺、もう行くよ…え?」 油断していた希空に麻酔銃を突きつけ、引き金を引く。象も眠らす威力だ、問題なく倒れ込んだ。 「希空…?」 理解が追いつかないのか、廻嶺が呆然としている。 「おい!何してるんだ!」 黒髪の少年が飛びかかってきた。素早く受け流し、彼にも麻酔銃を撃ち込む。その流れで目に入った二人にも撃ち込んだ。 (あとは廻嶺だけか) 直後、後頭部に鈍痛が走った。振り返ると、廻嶺が鉄パイプを構えている。 「…何が目的だ……?」 俺が答えないでいると、廻嶺は鉄パイプを振りおろした。 「悪いな」 その鉄パイプを掴み、廻嶺の頭に銃口を向ける。 「大いなる目的の為だ」 「…俺達は、お前の偽善の為に生まれてきたわけじゃない!」 そう言って、廻嶺は拳を振りかぶった。あぁ、まずい。今度こそくたばりそうだ。そうおもって、目を瞑った。 (………?) おかしい、いつまで経っても痛みが襲ってこない。目を開けると、ヴィクターは廻嶺の腕を掴んでいた。 「廻嶺、コイツをなぶり殺しにしてやりたい気持ちはわかる。だが、今は尋問の最中だ。この世界がかかってる」 「……」 廻嶺はヴィクターの腕を振り払うと、部屋の隅に座った。 「…何処から聞いてたんだ」 「最初っから」 「…廻嶺、“俺達を使った”ってのは」 マイクが恐る恐る尋ねた。 「…言葉のまま。瓦礫とゾンビにまみれた世界の中で彷徨ってたところを捕まって、つい100年前まで利用されてた」 俺を睨みつけながら言う。 「昔っから特殊体質だったからね。色々いじられて、勝手に死ねない身体にされてから大変だったよ。しかもそれを自分達にも利用しやがった。要するに、モルモットにされたってこと」 「…………」 「何黙ってるんですか?」 菁薇が鋭い口調で言う。 「さっさと、事実のみを」 「…わかった」 遊夢との決別を決めてから、色々と準備してた。ちょっとした情報漏洩をしたりして、デイライトを足元から崩していった。そして5年前の今日、遂に俺は、日本合衆国政府に対して、当時のデイライト本部の情報を匿名で漏らした。結果、政府軍の特殊部隊…お前らS.O.E.T.とA.T.T.I.S.が突入してきた。そう、『operation GENOSIDE』だ。そのどさくさに紛れて逃げ出そうと思っていたんだが……世の中そう上手くもいかなくてな。 「遊夢!この緊急事態になんの様だ!?」 突然、俺は遊夢に呼び出された。 「合衆国の特殊部隊がもう目の前まで来てるんだ!今すぐにでも逃げなきゃまずいぞ」 「あぁ、わかってるさ。その前に、やらなきゃいけないことがある」 遊夢が不意に指を鳴らした。直後、何処からか兵士が現れ、俺の両腕を掴んだ。 「…なんのつもりだ」 「とぼけなくていい、アレン。私には全てわかっている。お前が何をしたのか」 遊無が笑いながら近づいてくる。 「お前と私は、同じ理想を目指していたと思っていたんだが」 「…理想?笑わせる。お前の身勝手なエゴの間違いだろ?」 「なんとでも言えばいいさ」 その時、遊夢がホルスターからハンドガンを取り出した。 「友よ、盟友よ、私を裏切った男よ。私を止めようと思ったんだろうが、そうはさせない。私の目指す理想郷を理解できないのなら」 腹に銃口が当たる。 「犠牲の一部になれ」 激痛とともに目が覚めた。確認すると、腹に風穴が空いている。 「……クソめ…」 弾は身体の中で止まる事なく貫通した様だ。これでホローポイント弾なんて使われてたら、内臓をズタズタにやられていただろう。 「全員目ぇ瞑れ!」 どこからか、男の声が聞こえてきた。腹を押さえ、必死に立ち上がり、声の方向に向かう。 「アイツらは…国防軍の…」 向かった先では、国防軍特殊部隊のS.O.E.T.と、デイライトのクローン兵が戦闘を繰り広げていた。 「…嘘だろ」 そこには、俺がかつて捕えた子供もいた…4人。クローン兵を相手に、必死に戦っている。俺があの時、遊夢に賛同しなければ、彼らは………。 (……終わらせなければ) 力の入らない腕をホルスターに伸ばし、ハンドガンを引き抜き、狙いを定める。その時、1人の隊員にクローン兵が飛びかかった。 (今しかない…!) 震える指で引き金を引いた。弾はクローン兵の腰に着弾し…、直後、強烈な閃光が俺の意識を奪った。 「…その後、くたばってたところを“後片付け”にきたA.T.T.I.S.の別働隊に確保された」 ひと通り語り終えると、零が口を開いた。 「確保?その場で銃殺されときゃよかったんだが」 「国も俺を欲しがった」 「…?」 「デイライトがお前ら4人を利用したのと同じだ。腹をぶち抜かれ、常人なら死んでいる様な状況でも生きていた俺を、政府は5年間とことん調べ上げた。自分が5000年間やってきた事をそっくりそのまま返された、って感じだ」 「…因果応報だ」 「あぁ、その通りだ。そして最後に俺を待っていたのが、S.O.E.T.への配属だった…人格を書き換えられた上でな」 「………」 「お前らが思ってる通り、政府も根っからの善人じゃない。目的のためなら手段を選ばない事もある。政府軍で優秀な成績を残し、デイライトを激しく憎む兵士として“生まれ変わった”俺こそが、デイライトに対する最終兵器とされたわけだ。最も、お粗末な洗脳だったから、ドバイの事件の時に解けちまったがな」 その時、廻嶺に胸倉を掴まれた。 「ならなんでわざわざ俺達の元に残った⁉︎あの場で裏切ってりゃ…邪魔されずに殺せたのに‼︎」 「…さっき言った通りだ。俺はデイライトを潰すと決めた。その為なら、腹をぶち抜かれようが、記憶を消されようが、何をされたって構わない。…罪を償う為ならな」 廻嶺の腕を掴み、顔を寄せる。 「命乞いはしない……だがせめて、最後までやらせてくれないか。かつて俺がした事への“贖罪”を」 「………わかった」 そう言うと、廻嶺は俺は突き放した。 「もちろん許したわけじゃない。変な行動を見せたらすぐに殺してやる。そこの胡散臭いCEOよりももっと酷いやり方で」 「…感謝する、アレン。これで奴らが何をしたいのかわかった」 ヴィクターが複雑な表情で言った。 「2日前、世界中で同時多発したEN粒子加工施設の爆破事件、あれは前座にすぎない。ついさっき、お前らが持ち帰ったデータの解析が終わった。そのデータには、3日後にある島から発射されるミサイルの情報があった。現状、世界中で未加工のEN粒子が舞っているが…ミサイルの爆発は、その未加工の粒子が誘爆する素材で作られている。つまり、ミサイルの打ち上げを阻止できなけりゃ、世界中が大爆発する阿鼻叫喚の地獄絵図となるわけだ。俺たちはなんとしてでも、これを阻止しなきゃならん。いまから諸々の準備を始める。5時間後に再集合だ」 そう言って、ヴィクターは部屋を出て行った。 「…行くぞ、お前ら」 マクミランが口を開く。 「ケリを付けるぞ、この戦いに」 To Be Contenued…
投稿不定期化のお詫び 投稿が遅れてしまったことを、ここでお詫び申し上げます。次回投稿がいつになるかは未定ですが、完結までは絶対に漕ぎ着けますので、長い目で見ていただけますと幸いです。また、あくまで予定ですが、近くに新シリーズの投稿を予定しています。そちらもご愛読いただければ幸いです。 __________________ 第十三章前半 https://scratch.mit.edu/projects/1166973782 第十四章 https://scratch.mit.edu/projects/1286306461