Side 鶸 笠城 ___ マジックは綺麗だ。だから俺はマジシャンになった。 綺麗を演じるのが僕の存在意義だと、あの日、あの腐った村で感じたから。 そういえば、あの子はどうしたのだろうか。 …急にあの子が来なくなった。 脈路もなく居なくなった。 綺麗な髪の子だった。 あわよくばもう一回会いたい。 会って、お礼を言いたい。 いや、今は関係ないや。 ……姉が毒に侵され_あー…死亡届上では病死か。 とにかく23年前、姉が死んだ。 姉が死んだ日から数年、俺は原因を全力で突き止めようとした。 原因は割とすぐに出た。 それが毒殺だった。 ちょっと前の技術も中々捨てたものじゃないよな。皮肉だが。 さて、その毒は何処が出したのだろうか。 ……答えは__。 案の定、憧英製薬だった。 ____ 「ほら、カードを2枚引いて?」 俺は54枚のカードを眼の前の少女に突きつけた。 …やっと見つけた。 後は眼の前にいる緑髪の女を殺せば俺は随分と生きやすくなる。 「うーん…じゃあこれと…これにしますね。」 そんな上辺を口にしながら引いたのは♧の8と… 「…♢の2か。…うん、幸先良いかな。」 そうやって呟くと眼の前の少女は驚いたように目を見開いた。 「…え、それ言って大丈夫なんですか!?」 その瞬間、俺は上着から先程♧の効果で生えてきた拳銃を取り出し、迷わず彼女の心臓あたりに放った。 …やっぱ幸先悪かったかもだわ。 _______ Side 憧英 狂流 ______ ほぉ〜ん、そういう事ですか。 …ふと思い出した。 『狂流、お前本当に白髪のマジシャンだけは気をつけろよ。…会ったら俺の管轄まで逃げてくれ。』 前に仁慈がそんな事を言っていた…気がする。 …心臓に一発入ったけど…。 「此の位なら隠せば良い。」 心臓の傷が、弾丸が無くなる感覚がする。 …まだまだキャパまでは余裕がある。 まだ逃げなくても問題ない、多分。 「随分と頑丈だね、お嬢ちゃん。」 白髪のマジシャンの方を見ると、深緑の目を細めてポッケを弄っていた。 瞬きをした。 瞬間、目の前が大量のトランプでいっぱいになって、 意識が遠の…… いや、隠せばいいか。 首の傷が埋まる感覚がする。 そして、マジシャンは私の背後に間違いなく居る。 「さっきは素敵なマジックありがとうね!!!」 ナイフを袖口から取り出し、そのまま勘で横に振る。 苦しげなうめき声と、血潮の温度が腕に伝わる。 …腹、行ったっぽいな。 「Bingo♪…というか私に向かって拳銃は悪手なのでは?」 後ろを振り向いて笑う。 そこには見事に腹に手を当てて血を滴らせ、苦しそうで今にも倒れそうな老いぼれがいた。 「…本当そうだよなぁ…お嬢ちゃん。…クソ痛てぇし…。」 眉を下げてヘラリと笑う姿を見て、謎の感情が湧いてきた。 あぁ…”懐かしい”な。 ……待って…私は初対面のはずだ。なのに何故? 何故既視感が? 記憶力は良いほうだ。 初対面というのは多分間違いがない。 そもそもこんな男見たら忘れない。 懐かしいというのは要するに既視感。 既視感があるということはどこかで見たことがある。 だが、思い出せない。 どうして? 思い出せ。思い出せ。考えるんだ。 考えろ。頭を回せ。 頭を…。 あれ…頭が痛くなってき……。 _____ Side 鶸 _____ あー…クソ色々とトチった。 腹から血が大量に出るしこのまま放置したら死ぬ。 …が、無理に動こうものなら間違いなくどこかのタイミングで内蔵が溢れる。こっちの場合は即死だ。 …拳銃の弾数は残り5発。 流石に殺すのは無理だな。 どうするもこうするもない。 なんとかしてアタッシュケースを開いてナイフを取り出さなければ。 ………。 「…お嬢ちゃんさぁ、…なんで俺が執着しているか分かるかい?」 作り笑いを正面に向けると、そこにはいやに苦しそうな緑髪の少女が居た。 俺の言葉なんて耳に届いていないだろう。 それがどうした。 俺には何一つとして関係ない話だ。 「…アンタの家の薬…つーか毒が俺の姉ちゃんを殺した。」 あぁ、言葉にするだけで腹立たしい。 多分、少女は関係ない。 というか確実に関係ないだろう。 姉が死んだのは23年前。少女は大体19〜21くらい。 __だからなんだ? あの一族は根絶やしにしないと。 あの一族のせいだ。 全部、全部。 姉が死んだのも、姉の夫が死んだのも、直汰くんの人生が狂ったのも。 ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな。 「お嬢ちゃんは関係ねぇからさ、せめて楽には死なせてやるよ。」 少女は苦痛に顔を歪めこちらを見る。 …嗚呼、その表情は今は全く惹かれない。 とはいえこちらを見たのは好都合。 「…もうちょっとだけこっちを見ていてね〜お嬢ちゃん」 残ったトランプをばら撒き、一気に動く。 「…痛”ってぇ”…」 腹から一瞬中身が出てくる感覚がしたが急いで押し留める。 …時間が無い。 はやく、はやく止めを刺して、傷を治せる人……直汰くんに連絡を… いやあの子はダメだ。間違いなくトラウマが蘇ってしまう。 そんな事を考えつつアタッシュケースの中身を回収する。 …これでもう少し戦えるだろう。 ついでに腹を縫おう。 ……少女は多分あと数十秒は動けない。 急げ。死ぬぞ。目的を果たせぬまま死ぬぞ。 ………… …………… ……………… よし。縫えた。 少女は随分と落ち着いてきたらしい。 …目はずっと俺の顔を見ている。 ……皮肉なもんだ。 …そりゃ俺に意識を向けたくなるよな。知ってる。 それが自分の首を絞めているだなんて思いもしない。 嗚呼、皮肉だ。 能力だ。俺の能力だそれは。 俺に意識を向けすぎだ。 「…待ってたの?」 静かに口を開いたのは少女だった。 「…んな訳ねぇだろ…わざわざ待って何になるんだ?」 拳銃を自身の顔の近くに構える。 「…ッハ、なんだ?それとも時間稼ぎか?」 拳銃を少女に向けて撃つ。 撃つ。撃つ。撃つ。 「流石だな、嬢ちゃん。」 まぁ普通に想定内。 顔の近くに構えた、つまりは意識が向いている場所。 そりゃ避ける。 「…千鳥足だな、嬢ちゃん」 _無理は良くないぜ?…だなんて良くもまぁ白々しいことが言えたもんだ。 _____ 気がつけばあたりは鈍い血の色で満たされていた。 あれからどのくらい戦っていた? 俺の手のひらはずっと温かいまま。 良かった、手はある。 視界も残っているから目も見えている。 手を叩く。 音が分からない。 鼓膜が逝ったか耳が逝ったな。 歓声が聞こえなくなるのか。悲しいな。 お嬢ちゃんの方を見た。 …中々に酷かった。 片腕が飛んでいた。 片目もなくなっていた。 ああ、痛々しいな。 俺がこんなにしたんだっけ。 多分そうだ。 少女は、地に横たわっていた。 血液がじわじわと広がる。 あちこちに肉片が飛んでいた。 料理を思い出す。 遠く昔に食べた、コース料理を。 あの料理もこんな感じの飾り付けされてたっけ。 中央にメインがあり、メインの下にソースが。 皿の淵に星をあしらった何かがあちこちに散りばめられていて、 それで、それで。 中央を切ったら___なんだっけ。 「…あぁそうだ思い出した。」 中央を切ったら新鮮な色のソースがどくどくと流れ出て、 少し動かしたら内側から何かが出てきて、 ちょっとだけ怖かった…気がした。 マジックをした痕跡がない。恐らく種も仕掛けもせずにそのまま突っ込んだのだろう。 …目の前の少女は、死にかけていた。 いや、死んでいたのかも。 腹が両断されていて…というかしたのか。俺が。なんとなく手に感覚が残っている。 上半身と下半身が泣き別れにした感覚が。 …………。 「…やっと終わったよ、姉ちゃん。」 ふと少女をもう一度みた。 かすかに口が動いていた。 かすかに笑いを浮かべていた。 聞こえないし興味がない。 だが、口の動きが見え___は? ____ Side狂流 ____ いしきがぐらぐらする。 いたいも、さむいも、あついも。 なにもない。 しかいがあやふやで、ほわほわしていて。 ぜんしんのかんかくもない。 ばかみたいだなぁ、ほんとう。 ぜんぶがばかみたいだ。 いきていたいとはおもえない。 しんそこおもえない。 でも、ここではしにたくはない! …べーる。 ああそうだ、かくせばいいんだ。 みえなくすればわからない。 まだいける。 それでにげよう。 さっきのたたかいでじつはにげていたんだ。 じんじのかんかつまで。 あとどのくらいだろう。 ・・・むずかしいな。 むりだとはおもわない。 でもむずかしい。 とりあえずかくそう。 かくそう。 おしこめ。 げんかいまで。 きゃぱにはよゆうがない。 じつははじめからなかったのかも。 でもおしこめ。 おしこめ。 おしこめ。 おしこめよ。 もどるなよ。 まって。 まって。 まって。 まって。 まって!!!!。 やめて。 きおくが。 もどらないで。 ほんとうはかくしてたの。 ひゅっ。 のどおくがそんなおとをならす。 ・・・やめて。 もうやめて。 むかしのおもいでなんていらない。 いたいおもいでも。 つらいおもいでも。 さみしいおもいでも。 いらない。 むらでのきおくが。 いけにえとしてのせいかつが。 すくわれるとおもったあのときのきおくが。 けんきゅうじょにつれさられたきおくが。 じっけんのきおくが。 きおくが。きおくが。きおくが。 ながれださないで。 やめて。 おねがい。 ああ、げんかいをむししたつけか。 ・・・つらいな。 もうやだよ。 さけびたい。 さけびたい。 このやりばのないきもちを! おもいを! どうすればよかったんだ!!! つらいよ。 たのしかったきおくがふうじられていたきおくのなかにはない。 それがよけいにつらい。 やだ。 やだ。 なんで。 つらい。 たすけ__いやむだか。 たのしかったきおくをさがせばさがすほどつらいきおくがでてくる。 ないよ。 なんで。 どこにもないの? ねぇどうして? ないよ。 ないよ。 どこにもないよ。 どうして。 ねぇ。 わたしのじんせいは、そんなにろくでもないんだな。 はは。 あはは。 ・・・。 あ。 あった。 あったよいっこだけ。 むかしむかし。 わたしのなまえがくるるじゃなかったころ。 こがらしあやひだったころ。 じっけんじょにはいるまえ。 いけにえになるまえ。 まだ、むらにいたころのおはなし。 ______
使い方を全部見よう♡ あるひ、むらにやさぐれたまじしゃんがきた。 くろかみで、しろいふくで、あたっしゅけーすをもった。 そんなまじしゃん。 そのひとはなまえをはりと、っていった。 つぎつぎときれいなまじっくをみせてくれた。 むらのひとはきみわるがってにどとくるなとどなった。 わたしは、それをみてなんでだろうなっておもった。 だからきいた。 「なんではりとにいさんはこのむらにきちゃだめなの?」 にいさんは、いまいましげにこたえてくれた。 「…理解できないから…じゃねぇの?」 「・・・りかいできないのってそんなにわるいの?」 はりとおにいさんはめをみひらいてほほえんでくれた。 「…悪いことじゃねぇさ。…むしろ面白いことだよ。」 つづけてわたしのあたまをなでてくれた。 「えへへ〜・・・ありがとうねかささぎのおにいさん!!」 そうやっていうとはりとおにいさんはこおりついた。 「鵲…あぁ、白と黒だからか…いいセンスしてるじゃねぇかお嬢ちゃん」 __お嬢ちゃん、名前は? __こがらしあやひ!! __彩陽ちゃんか…いい名前してるな。 __ありがと!!!! たのしかった。ほんとうに。 あのひのあと、まいにちかささぎのおにいさんがきてくれた。 むらのひとにひどいこといわれても。 いたいことされても。 まっこうからいいかえしていて、かっこよかった。 だけど、おにいちゃんにあえなくなった。 ・・・わたしがいけにえになったから。 そしていずれ、おにいちゃんのこともわすれてしまった。 でも、あえた。 ・・・さいあくなかたちで。 そう、めのまえにいたんだ。 はりとおにいさんは。 わたしは、どうばなのにんげんじゃない。 だから、ころされるりゆうなんてない。 ・・・かなしいかんちがいだなぁ・・・。 ・・・ごめんね。 のこしてごめんね。 じんじ、ごめんね。 なおたくん、ごめんね。 こわいな。こわいな。 でもよかった。 さいごにあえて。 うらんでないっていったらうそになる。 でも・・・でも。 たのしかったおもいでに、ひたれるのならば。 ・・ありがとうね。 「か…ささぎ…の…おにい…さ…ん…」 ______ Side鶸 _____ 「まって。」 あのこ、なんていった。 耳が聞こえないのが煩わしい。 俺の目に見間違えがなければ、あの子は__。 「かささぎの、おにいさんって。」 その、名前を知っているのは。 あの子しか居ない。 今の俺が居る理由そのものの。あの子。 彩陽ちゃん。 全身が冷たくなる。 ひゅっ、て喉が詰まる。 息ができない。 俺が殺した子は、彩陽ちゃんだ。 きっと、憧英家とは全く関係がないのだろう。 恐らく被害者。 頭が異様に切れる。 一族の人間なら根絶やしにするが、関係ないならば…。 「殺す必要…なかったじゃん。」 しかも全然楽に殺せていない。 なんで? なんであのこ、あの苗字を使って。 おれのせいで、あのこが。 だいすきな、あのこが。 いまのおれのぜんぶは あのこなんだ。 なんで。 ねぇなんで。 なんで。 「…なんで、もっと…もっとはやく…気がつけなかったの…?」 …背中がふと熱くなった。 「狂流!!!!!!」 オレンジ髪の青年が走って彩陽ちゃんの方へ走っていった。 「狂流…なぁ狂流…返事をしろって…くる…なぁ…おい…おいってば!!!」 いくら彼が必死に叫んでいるのが見える。 でも、何も聞こえない。 音のない映像を見ている気分になった。 彩陽ちゃんは、何も言えない。 言えなくしたのは、僕だ。 あぁ、そういえば。 彩りのある陽のもとに、鵲はとぶ__んだったっか。 じゃあもう僕は。 「飛べないな、一生。」 ______ ごめんね胸糞に出来なくて 時間がなかったわ♡ 後編?1/4に出します✨️ 多分後編はメンタルをゴリゴリに折れます。 まぁちょっとでも年明け前にメンタルに響けば嬉しいなって…。