log1: dream ああ、まただ。一体何回これを見てきたのかもう覚えていない。これはいわゆる「AU」、本編から逸脱した世界線の物語。今回はどんな世界に変わるのだろうかと、少しの期待と不安を抱きながら眼下に迫る花畑を思い浮かべる。 しかし予想と反して、目を開けるとそこにはエンディングで訪れるはずの夕日が見渡せる場所だった。「いつもの」とは違い、バリアの光が薄くなっている気がしなくもない。恐る恐る手を伸ばすと何の抵抗もなく中に入ることができた。ニューホームに入ると、妙な寒気がした。静かすぎて逆に怖い。あちこちがボロボロになり腐り落ちている。壁は一部剥がれ、壁も穴が開いたりしている。暖炉や本棚も跡形もないほど崩れている。隣の部屋に行くと、ナイフやロケットはなく、代わりに一冊の本が置かれていた。「~~計画」タイトルはかすれていて読めない。中を見ると、様々な実験と研究の記録が載っていた。年は20XXと書かれている。よく読めないが、特殊な機械に関する研究の様だ。最後のページには殴り書きでこう記してあった。「False serenity」 ニューホームを出て、エレベーターがあった場所に向かう。あそこがあんな荒れようなので、もちろん起動しているわけもなく。荒れたてた回廊を進み、コアへとたどり着く。 コアもまた、見るも無残な姿となっていた。かろうじて光っている照明は明滅し、薄暗いエリアが点在する。ときおり赤いランプがあたりを照らし、物々しい雰囲気を醸し出す。しばらく歩くと、物音が聞こえた。今までモンスターはおろか、セーブポイントまで見つからなかったこの世界で初めて接触できる存在が現れたのかと思い、音がした方向に歩を進める。突如、壁に開いた裂け目から白い手が伸びて隙間の中に引き込まれる。 それはモンスターだった。見慣れた白い手、遠くを見つめるような目、少しやせているが見間違えるはずがない。トリエルだった。 「しばらく我慢してね、いとしい子よ」 彼女は静かにそういうと先ほどの通路を見つめる。赤いサーチライトを点灯したロボットが浮遊しながら通路を巡回しているようだ。しばらくしてロボットをやり過ごすと、隙間の奥に案内された。そこは壁の裂け目を利用した大きな部屋になっており、少しの食糧と大量の書籍、シーツとクッション、ベッドが置かれていた。 「突然引き込んでごめんなさい」 彼女はそう切り出した。 「あなたが元の世界のことを知ってるかどうかわからないけど、この世界は変わってしまったわ。さっきのロボットはサンズとアルフィーが差し向けた監視ロボット、コアの通路を記憶してそこを巡回しているの。幸い、崩れた後にできたこの部屋はデータに入ってなかったみたいね。」 その後、彼女からこの世界のことを聞いた。キャラが死んだところまでは元の物語と変わらない。その後、地上に出たアズリエルは人間によってダメージを負わされながらも、致命傷を負うことなく帰ってきた。その時から彼は負の感情に飲み込まれるようになり、危機を察知して自ら遺跡に閉じこもるようになった。それでもなお溢れ出す負のオーラはモンスターに影響を与え、一定数が負の感情に飲み込まれかけたことによりサンズとアルフィー率いる研究者チームが動き特殊な機械を作った。ニューホームにあった資料はその時のものだという。その機械の名前は「ドリームスケープ」。負のオーラによってコアが稼働を停止し、地下世界がもう長くないと知った彼らは、モンスターを眠らせ、仮想空間上で幸せに生きることを夢見る。そのプロジェクトの名は、「universe 20XX」。モンスターたちは次々とドリームスケープによって眠らされ、幸せな暮らしを送っているという。エネルギー源は稼働を停止したコアの残存エネルギーであり、コアが崩壊すると同時にエネルギー源も立たれ、同時に旅立てるといううたい文句の様だ。さすがにこれには得も言われぬ嫌悪感を抱いた。トリエルも同じことを感じたようで、その時唯一志願しなかったのがトリエルだという。 「長話に突き合わせてしまってごめんなさいね」 彼女はそう言い、奥からコップを取出し、お茶を出してくれた。 「この世界にモンスターがいないのはそれのせいなの」 彼女は少し暗い目でそう言った。奥に案内され、ついていくとセーブポイントがあった。世界が崩壊する影響でセーブポイントの数も減っているらしい。 「もしあなたがこの世界を救いたいと思うなら、想像もできない苦痛を強いられることになる」 彼女はそう切り出した。 「もう長くはないけど、私とここに残るというのも一つの選択よ。もちろん、あなたがここにとどまっていられるような子じゃないのはわかっているけれど...」 トリエルは葛藤するような表情で続ける。 「あなたがそれでも行くというなら私は止めないわ。ただ、全てが終わったらまたここに戻ってきてほしい。それだけは約束してほしい。私はここから出るわけにもいかないから」 しばらくして、私はコアの外へ旅立つことにした。ロボットの監視をかいくぐり、メタトンと戦った場所までたどり着く。するとそこには見慣れないものがあった。巨大な機械にたくさんのモンスターがつながっている。彼らはみんな寝ているようだ。おそらくこれがドリームスケープだろう。寝ているモンスターの種類を見る限り、コアに生息していたモンスターたちだろうと予想がつく。ほかのエリアにも同じようにこの機械が設置されている可能性が高い。 唯一、メタトンだけは機械のそばに放置されていた。こちらに気づいたようでうっすらと目を開け話始める。 「うぅ...君は...」 あちこちが破損して動けないようだ。かろうじてしゃべることはできていても、もう時間の問題だろう。 「これはなんだ?君はなぜ機械につながれていない?」 私が問うと、メタトンはこう答えた。 「ボクは...ドリームスケープを使っても効果がないんだ...何でかはわからないけどね...」 「だから...ここで哀れにのたれ死ぬしかないのさ...」 それだけ言い残すと、目の光が消えた。それと同時に、ステージのライトが赤く光った。 「ドリームスケープシステムへの干渉を確認。対象を排除します」 室内アナウンスでそう流れると、ロボットたちが一斉にこちらへ向かってくる音が聞こえた。壁の裂け目に潜り込み何とかやり過ごしていると、後ろから声をかけられた。 「よう。アンタか?システムに干渉しようってのは。」 その言葉を聞き終わらないうちに、私のソウルは砕かれた。 今回はかなり大変な道のりになりそうだ。 log2: relief 目を開けると、そこはトリエルの部屋だった。 「もしあなたがこの世界を救いたいと思うなら、想像もできない苦痛を強いられることになる」 彼女は先ほどのセリフを繰り返す。 コアを出る前に、トリエルにこう尋ねた。 「機械につながれたモンスターを救うにはどうすればいい?」 すると以外にも彼女は真剣に考え始めた。 「あなたは、モンスターがどうなれば、救いだと思う?」 予想外の返答だった。だが、よく考えてみればそうなるのも無理はない。機械につなげられて眠ったままならば、幸せな虚構の中でそれが偽物だと気づかずに消えることができる。かといって機械から解放すると、本当の感情を取り戻すことができるが、逃げられない悲惨な現実を突きつけられる。本当の救いはどちらかと聞かれると、明確にどちらとは言えないのも理解できる。 「もし、あなたが解放を望むなら」 そういってトリエルは奥の引き出しからメモを取り出す。 「ウォーターフェルのここにある機械を持ってきてほしい。機械とは言っても手で持てる重さだから心配しないで。」 地図を受け取り、再びセーブをして部屋を出る。 例の場所にたどり着くと、相変わらず巨大な機械が鎮座していた。今回は足音を立てないようにそっとメタトンの前を通り過ぎる。目的地はウォーターフェル。そのためには少なくともホットランドを抜けなければならない。ホテルの1階につくと、やはり壁紙がところどころ剥がれていた。モンスターは誰一人としていなかったが、保存食系統の食べ物が少し残っていたので頂いた。ホテルを出て、ホットランドに向かう。もしかしたらと思い船がある場所に行くと船頭の姿はなかったが、船がそのまま残っていた。それを使いウォーターフェルへ向かう。 ウォーターフェルにつくと、荒廃した景色とは真逆の、ケーブルが地面の2割ほどを占めていた。おそらくエネルギーや電気を通しているのだろうが、ここだけ露出している割合が高い。地面が凸凹しているのを見ると、地盤が固くて手を出せなかったか、あるいは時間がなかったかとある程度の予想がつく。そのケーブルに吸い寄せられるように道なりに進むと、ウォーターフェルのドリームスケープを発見した。ここは確かカタツムリレースが開催されていた場所だ。だが目的地はここではないので引き返す。すると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。 「アンタ、こんなところで何してんだ?」 とっさに振り向くと、サンズだった。しかし、本編とは打って変わって、顔には小さなひびが入り、大きめの服をパーカの上から肩にかけて羽織っていた。青紫色の石のネックレスがひときわ目を引いたがそれどころではない。 「アンタみたいなのが来ていいところじゃないぜ。消えな。」 その言葉を聞いた瞬間私は後ろに飛びのいたが、すでにそこには回り込んだサンズが手を伸ばして待っていた。 「あばよ、ガキンチョ。」 再び、私のソウルは砕け散った。 まさか、ドリームスケープの部屋にサンズがいたとは。もっとよく確認しておくべきだったかと後悔しながら、トリエルの部屋で目を覚ます。念のため、トリエルにこう聞いた。 「研究チームはドリームスケープを壊されたくないよね?だったら何か対策はしてあるの?」 すると彼女は微妙な顔をして言った。 「そこが一番の問題よ。やつらは機械を壊されたくないがために様々なトラップと警備システムを使っているわ。中には、倫理的にあり得ないものまで...」 最後のは、おそらくメタトンのことだろう。まさか彼の死がトリガーになっているなんて誰が思うだろうか。 「警備システムって、例えばあのロボットとか?」 と聞くと、 「そうね、あと、私が知る限りでは監視カメラ、研究者本人による巡回なんかもあるわね。ただ、巡回に関して言えば、ドリームスケープが完成した時点でサンズとアルフィー以外の研究者たちも全員機械につながれたから実質これはないに等しいわ。」 ここにきて、とんでもなく有益な情報を得られた。監視カメラ、完全に盲点だった。あと何より厄介なのは研究者本人による巡回である。彼女はサンズのチートじみた移動性能を知らないがために軽視しているが、これが最も脅威となりうる。もしかしたら2度目の死はこれによるものなのかもしれない。解決できていない疑問もいくつかあるが、なんにせよ、この身を削って実験してみないことには何もわからないだろう。 私は覚悟を決めて、再びウォーターフェルを目指すべく足を踏み出した。
log:3 notice ホットランドにつながる道の途中で、柱の上に設置されたカメラに気が付いた。だが、すでにカメラの描画範囲に入っていることに気づいた。仕方なく、気になっていたことを実行することにした。 この世界のサンズは、ロード前の記憶を引き継げないのではないか。 これが私が立てた仮説だ。本来のサンズなら、2回目の時に 「またアンタか。」 というような発言をしていてもおかしくはないはずだ。もちろんあくまで仮説なので今から検証、もとい死に戻りしに行くというわけだ。前回と同じく船を使いウォーターフェルへ向かう。今回はすぐにドリームスケープには向かわず、船を降りて10分ほど待機してみた。 サンズが来ない。つまりサンズはドリームスケープに害をなそうとするもの(またはその可能性があるもの)を徹底的に排除するようだ。おそらくそれと同じ理由で、ドリームスケープに危機が訪れた際は全力で守ろうとするだろう。(私はここで記憶について検証することを完全に忘れていた。)←あほ そしてそのままトリエルが言っていた場所まで向かう。ウォーターフェルの滝の中の隠し部屋、そこにモンスターを開放するためのカギとなる何かがあるという。滝の隠し部屋に入ろうとしたそのとき、やはり後ろから気配を感じた。だが、今回は少し違った。サンズではなく、アルフィーがそこに立っていた。彼女は少し困ったような顔でこう言った。確か彼女もサンズと同じく機械につながれていない研究者の一人だったか。 「キミ...えっと...なにしてるの?」 「何って...言われたものを取りに来ただけだ。そっちこそ、機械の様子を見に行かなくていいのか?」 少し煽ってみる。すると彼女は目つきが鋭くしてこう言った。 「なんでその場所を知ってるの?レジスタンスは全部処理したはず。」 レジスタンス...?おそらくトリエル達、機械反対派のことだろうか。でも、トリエルの話では志願しなかったのは彼女だけだったと聞いていたが、実際はもう少しいたのだろうか。今度聞いてみよう。 「...まあ、ここで処分すれば問題ないよね...」 思索にふけっていると、ゆがんだ笑みを見せたアルフィーがそうつぶやいていた。研究者とはいえ、アルフィーは戦闘向きではなかったはずだ。そこまで強くなっているとは考え難いが、この世界じゃどうなってるかわからない。警戒はしておこう。 「...█████」 アルフィーは何かを言った。聞き取れなかったが、彼女の後ろから何かが複数飛んでくる。それに目を取られている間に、そこから閃光が走り、私の体は灼かれた。彼女は何を言ったんだろうか。 目を覚ますと再びあの部屋にいた。結局、サンズの記憶の検証はできなかった。まあ、アルフィーについての情報が少し知れたから良しとしよう。 前回引っかかったカメラの前まで来た。よく見ると後ろには無防備にもコードがそのまま露出している。ハサミかカッターがあれば切れそうなものだが、あいにく手持ちにはない。トリエルの部屋に戻り聞いてみると、カッターがあった。多少さび付いてはいるが問題なく使えた。それを使いウォーターフェルまで監視カメラを数台切断しながら向かう。ウォーターフェルに着くと、サンズがそこに立っていた。やはり記憶が残っていたか。 「よくも監視カメラぶっ壊してくれたな。おかげでしちめんどくせえ仕事が増えちまった。」 今度は監視カメラを破壊したことに対して怒っているようだ。だがこれで確定した。この世界のサンズはおそらく前回のデータの記憶を引き継げない。そしてある一定のルールに従って動いている。念のため、私はこう言い放った。 「私のことは覚えているか?」 「さあな、オレは知らん」 直後、攻撃が飛んでくる。前回と同じだったので少しの間かわせたがやはり無理だった。 戻ってきた。前回は監視カメラを破壊したのに見つかった。何故だろうか。 一方そのころ、地下世界、研究所内。サンズとアルフィーは青や緑に光る画面を見ていた。 「今日も異常はねえな。こういうのは楽でいいぜ」 「ちょっとサンズ...ちゃんと見ときなよ...」 サンズは背もたれによりかかりながらコーヒーを飲む。 「そう言ってずっと見てるけどな、休憩は大事だぜ?」 二人が話していると、赤いランプが光り出した。 『カメラの破壊を確認』 画面にはそう書いてあった。 「あーあ、せっかくの休憩が...」 と愚痴を言いながら修理道具を持ち出すサンズ。 さらに2か所ほどランプが光り出す。 「これ...意図的に破壊されてる...?」 「へえ、そうか。じゃ、行ってくるぜ。」 「あちょ...」 そう言ってサンズは消えた。 『サンズ、カメラはそこの道を曲がったところからその先も壊されてるみたい』 誰かがやってんならその先に犯人がいるはず...か。そっちのほうが先決だな。 だが、その先には誰もいなかった。 「妙だな...アルフィー?」 『私もずっとその道のほうを見てるけど、何にも音沙汰ないよっ!』 「どういうことだ...?とりあえず修理だけして戻るか...」 そのころ、私はウォーターフェルに着いていた。監視カメラを別の道まで破壊してそっちに気が向いているすきに船に乗る。単純だが、なかなか思いつけなかった。そのまま隠し部屋まで行くと中には小型の電子機器が入っていた。確認したいところだが今はコアに戻らなければいけないのでそそくさと引き返す。 ここで私は気づいた。戻る手段を考えてなかった。今戻ればおそらくカメラ修理中のサンズあるいはアルフィー、もしくはその両方と鉢合わせて元も子もなくなってしまう。どうにかして引きはがすには...