午後4時45分。放課後の喧騒がわずかに遠のき始める時間帯。校舎の屋上、空調設備の裏に身を潜める二つの影があった。 「清仁、ターゲット見つけたよ」 オリバー・J・マクミランはM24スナイパーライフルの照準から目を離さず、気だるげな声で報告した。 「場所は?オリバー」 サバゲー部部長、永野清仁は、低い声で応じた。愛用のHK416を携え、双眼鏡で校庭を一瞥する。彼一人で大抵どうにかなるという噂は伊達ではない。彼の無駄のない動きには、確かに“部活”の枠を超えた冷徹さが宿っていた。 「...オリー、ターゲットの場所は?」 オリバーから返答がない。横を見ると、狙撃体制に入ったまま、チークパットによだれを垂らして爆睡していた。 「起きろ!!」 「だぁっふ!?」 「オリー、ターゲットの場所は?」 「あ、あぁ...昇降口の自販機前。ピアス野郎が2人、うち1人はゲーム機持ってる。あと、スマホいじってる女子1人。計3人。今日は大漁じゃん。移動速度は遅い、警戒心ゼロ。完全にナメてるね。いつものルートでいけるでしょ」 オリバーはそう言うと、持っていたペットボトルを一気に飲み干した。待機中は本当に気が抜けている。清仁は内心で「相棒としては最高だが、いつか戦場で居眠りして背中撃たれるんじゃないか」と思いつつ、無線機に切り替えた。 「キャシー、春香。ターゲット確認。昇降口自販機前。挟み撃ちでいく。A地点から俺とオリーで圧をかける。B地点、お前らが逃げ道を塞げ」 『了解でーす!清仁先輩!』 キャサリン・アーベントの弾むような声が響く。彼女はP90を背負い、ニコニコと笑顔だ。 「先輩のためなら、このP90、火を吹きますよ!...あ、火は吹かないか。BB弾か。BB弾で校則違反者をビビらせてやります!」 体験入部の時に清仁に一目惚れして以来、彼女はサバゲー部のアイドル兼衛生兵として活躍している。着込んだ装備の下にある制服は、ばっちり校則通り。 『は、はい!りょ、りょ、了解です、部長!わ、わ、わたし、ちゃんと、え、援護しますから…っ』 春香の声は、いつものように震えていた。須藤春香、高校2年生、身長180cm。装備一式を身に着けた姿はさながらロシア軍の重装歩兵だが、その中身は常に怯えているハムスターだ。清仁は少しため息をつく。 (あの心持ちでよくうちに来ようと思ったな...優秀だから構わんが) 突入 清仁は屋上から校舎伝いに静かに移動し、目標地点の死角である非常階段の踊り場に陣取った。校則違反者(ターゲット)たちが、まだ自販機の前で笑っているのが見える。 「オリー、いつでもいいぞ」清仁が合図を送る。 「了解。まずは挨拶代わりね」 パンッ! 乾いた破裂音が、校舎の壁に響き渡った。オリーの放ったM24からの精密な一撃は、ゲーム機を手にしていたターゲットの1人に見事に命中、ゲーム機を弾き飛ばした。 「うわっ!何!?」 「やべえ!サバゲー部だ!」 一斉にパニックになる違反者たち。彼らにとってサバゲー部は、生徒会に雇われた「校内警察」であり、恐るべき「ハンター」だ。 「逃げろ!」 3人のうち、ピアスをつけた男子生徒2人が慌てて階段を駆け上がろうとした。その瞬間、 ダダダダダダッ! HK416が火を噴き、階段の壁に着弾痕の雨を降らせる。清仁の制圧射撃だ。 「止まれ。動いたら撃つぞ」 冷酷な声と、エアガンとは思えないほどの制圧感。2人は思わず立ち止まる。 「くそっ、裏口だ!」 彼らは方向転換し、反対側の裏口へ向けて走り出した。しかし、そこには待ち構えていた重量級の壁があった。 「ス、ストーップ!と、止まってください!」 春香が、PKM軽機関銃を構えて立ちはだかる。彼女の背後には、清仁の指示通り、キャサリンがP90を構えて援護についている。威圧感は抜群。…だが、春香の顔は青ざめていた。 (こわいこわいこわいこわいこわい!!) 春香は完全に極度の緊張状態に陥っていた。 「邪魔だ!このデカ女!」 2人が怒号を発したその時、彼女の「ビビり度」が限界を超えた。理性というストッパーが音を立て崩れる。 「邪魔?…ふふふ。邪魔、邪魔、邪魔!」 完全に取り乱した春香は、雄叫びを上げながらトリガーを握り込んだ。 ガガガガガガガガガガガガ!! BB弾の豪雨が、踊り場を文字通り席巻した。それは援護ではなく、弾薬の無差別投下だ。2人は悲鳴を上げる間もなく、その足元と周囲の地面をBB弾で耕され、恐怖で気絶した。 「あ〜あ、言わんこっちゃない。だから春香は後衛に回せって言ったのに。完全にトリガーハッピーモードじゃん」 音で全てを察したオリバーがため息をつく。 「春香!オーバーキルだ!目標の意識が飛んでるぞ!」 「っはぁ、はぁ、はぁ…!い、いけない…!また、やっちゃった…!わ、わ、わ、わた、わたしを許してぇええ…っ!」 「はぁ、はぁっ...!」 残るスマホ使用の女子生徒は、ピアスの2人が追いかけられているどさくさに紛れて逃げ出し、唯一開いている校門へと向かって、さらに加速した。 「あと、少しで...!」 その時。昇降口で、わずかな反射光が走った。 「うぎゃあ!」 背中の、ほぼ中央に、白いBB弾が正確無比に着弾した。逃げていた女子生徒は派手に転倒し、持っていたスマホが地面に転がる。 「あの2人に気を取られて忘れていた、とでも思っていたか?安心しろ、お前の事もちゃんと覚えている」 気付けば、女子生徒の前には睨みを効かせた清仁が立っていた。 「お前は校則違反をした。よって拘束する」 「キャサリン、春香、よくやった。あとは任せる」 違反者達を一列に並べてから、清仁は無線機でオリバーに通信する。 「オリー、お前もよくやったな。戻って来い」 「......zzZ...」 「オリバァ!!」 「だらぁっ!?」 「事はすんだ、早く帰投しろ!あと待機中に寝るな!」 「はいはい...ふわぁ〜あ」 「ごめんねー、痛かったでしょ!」 拘束された違反者達のもとに、キャサリンが笑顔で駆け寄る。 「ちょっと見てみるね...あ、太もも真っ赤!可哀想!」 そう明るく言いながら、容赦なく生徒を押し倒し、そのの太ももに躊躇なく消毒液を大量に吹き付けた。 「いってぇぇえええ!!?」 違反者の悲鳴が、静かな放課後の校舎に響き渡る。 「校則違反は痛くなくても心の傷になるんだから、身体にもちゃんと痛みを刻まないとね!ほら、これで心の反省ゲージが満タン!」 キャサリンはそう言って、彼らの傷口に冷却スプレーを容赦なく吹き付け、彼らを担いで立ち上がらせた。 「春香先輩!あとヨロシク〜」 「は、はひ!」 春香は、まるで罪人でも運ぶかのように、ターゲットの生徒たちを肩を借りさせて、生徒会室へと連行していく。その巨大な体躯とPKMの威圧感に、生徒たちは完全に戦意を喪失した。 「キャサリン、治療が荒すぎる。あとで生徒会に怒られるぞ」 「え!さっき私のこと見ててくれたんですか!!」 キャサリンの明るい声を聞きながら、清仁はいつもの無愛想な表情を崩さずにいたが、内心では少しだけ、その変わった後輩のことが気になっていた。 「…次、いつ“狩り”があるか生徒会に確認してくる」 清仁は生徒会室へ向かうため、廊下を歩き出す。部活創設の目的はサバゲーのはずだったが、生徒会の“狩り”も、彼らにとっては立派な「戦場」になっていた。
ストーリー制作...Gemini あまりにも夜寝付けなくて描いてもらったら意外と面白いの作ってくれたので投稿します。気が向いたら続き描いてもらいます。 一応メモリアル学園の話、という事になってますが、現状他の小説との繋がりはない、完全パラレルです。