【小説版】 片目の勇者 #4 夜の街で 「とか言ってここまで来ちゃったけど…もう10時だったとは!!」 時計は確かに10時を指している。なのに、まるで昼間みたいだ。ネオンライトが瞬き、どの建物の中からも光が溢れている。 いつも隣にあったはずの街が、こんなに煌びやかだとは知る由もなかった。全てが目新しい。だから、いつになく気分が高まっていった 見渡す限り様々な系統の店が立ち並び、陽気な音楽が流れ、人々はその間を楽しげに泳いでいく。流れにまかせて進んでいくと、小さな屋台が串焼きを売っているのを見つけた。 「…す、すいません。1本ください」 「はいよ」 無口そうな親父が焼いてある中から食べ頃を1本選んだ。 「まいど」 「ありがとうございます」 小銭を渡して、串焼きを受け取る。歩きながら頬張ると、スパイスの匂いと肉汁がいっぱいに広がった。安いからだろう、少し硬い肉だったが、それすらも美味しく感じる。 この街は、決して治安が良いとは言えないらしい。が、それ故に面白い店が何軒もあるし、色んな見た目の人がいるし、見ていて楽しい。 食べ終わったゴミを捨てるためにゴミ箱を探していると、細い路地にひとつを見つけた。 全ては、その時だった 「や、やめてください……っ」 「うるせぇんだよ!!!」 鈍い音。 誰かがこの先にいる。気付いた時には、走り出していた。 路地を走り、抜けると何もない空間が広がっていた。 「!!あ、あれは…っ、?」 暗い赤髪の2人組が、地面にうずくまる女の人を棍棒のようなもので殴っている。 もう抵抗する気力もないのだろうか。傷だらけの彼女は、薄桃色の髪を汚してされるがままになっている。殴られる度に体が跳ね、先程聞こえた鈍い音が響いて、思わず逃げ出したくなるのを必死にこらえる。 そうだ、俺が 俺が彼女を助けないと 「…なっ、なにを…しているんだ!!!」 勇気をふりしぼり、震える足で1歩前に進んだ 「…あぁ?」 2人が同時に振り向く。顔も体格も瓜二つだ。俺まで、やられてしまうかもしれない…? でも…この人を助けなきゃ 「ひっ、人を傷つけたらダメだ…!!」 「はあ?お前誰だよ」 「この俺たちに指図するつもりか?」 まずい 髪色が薄い方が、こちらに詰め寄ってくる。足先からつむじまで、舐め回すように見られて鳥肌が立った。 だが、相手はすぐに顔色を変えた。 「おっ、お前、ゾリーの店の…」 「は、まじかよ」 なんだ?なんでこいつ達は俺のことを… 「今回は見逃してやるよ…おい、行くぞ」 「この女は?」 「バカ、置いてくに決まってんだろ、生意気なガキなんて」 そう言って、振り返りもせずに走り去っていった。 「…な、なんだったんだ…?」 安堵が広がり、どっと疲労感を感じる。 あれ、そういえば… 少し前。ゾリーさんが、緑の癖毛を弄りながら話してくれた。 「ここら辺にはちょいと厄介な不良の2人組がいてだな…そいつらに気をつけることだな。」 「そいつらが目を付けたやつは、気が済むまで殴られちまうんだ。俺がちょくちょく説教してはいるんだが…やめなくてな、なかなか」 「まあ、お前は俺の家に住んでるわけだから、狙われないとは思うんだが」 「…きっとあいつらの事だな」 危なかった。逃げて顔を見せなかったら、何をされていたか。 「というか、あの子は…!?」 すぐにまだ倒れている彼女に駆け寄る。古くて薄い服の間から覗く肌は、打撲痕だらけだった。 「き、きみ、大丈夫…?」 腕で隠されていて、あまり顔は分からない。 「ゲホッ、は、はい…大丈夫です、ありがとうございます」 意外に流暢に話すので、少し戸惑った。 「いや、どう見ても大丈夫じゃなさそうだけど…」 思ったほどの怪我ではないのかもしれない。 「良かったら家まで送っていこうか?」 下心はない。絶対に。 すると、傷だらけの足でゆっくりと立ち上がった。 「えっ、まだ立たない方が…」 「その必要は…」 俯いている顔から、にやりと笑った口元が見えた気がした。 「ありません」 「?!」 そして、彼女は瞬きひとつの間に姿を消した。
ロンダは、「まだ」世間を知らないただの子供です 【小説版公式スタジオ】 https://scratch.mit.edu/studios/51114310/ 前回 https://scratch.mit.edu/projects/1253019881/ 次回 お楽しみに 【アニメ4話】 アニメでは表現しきれなかった情景、表情、心情、詳しい設定などが垣間見えるのが文字の良さだと思っています! 2月の受験まで、お付き合いくださいね