【小説版】 片目の勇者 #5 1つの出会い 「その必要は…ありません。」 そして、彼女は瞬きひとつの間に姿を消した。 「っき、消えた…?!」 逃げたのか…?あの怪我で?いや、有り得ない。そんなことできるはずがない。なら、最初から最後まで、全部俺の幻覚…? 「どこに行った…」 瞬風が、鋭く髪を揺らすのを感じた。 「っ、上…っ?!」 「…ごめんなさい」 固く歯が食いしばられた、小さな口元。手元の小刀。全部、見えた。 「死んでもらいます。」 その薄桃から除く瞳に、俺はどう写っただろう。 迫り来る死への恐怖、本能的に頭に鳴り響く警鐘。 身体中、どこも動かせはしない。 …いや、違う。 ただ目が。目だけが、怯むことなくそれを見つめていた。 そうだ、よく見ろ 俺にはできる …ああ、この感覚だ。『懐かしい』。 体がしなるように、後ろに反った。振り下ろされた小刀が肉を捉えることはなく、髪を数本切り裂いただけに留まった。 「なっ…うそ」 着地した彼女の手は震えている 「わ、私の攻撃が…避けられた…?こんな素人に」 俺にも分からない。ただ、今が好機だということは明々白々。 …っ、今だ! 「…っ、か、は」 相手がこちらを見ていない隙に、一瞬で駆け寄り、出来うる限りの重さを一発。万全の状態では無い彼女には、意識を失うにはそれで十分だったみたいだ。 「…おっ、と」 小刀が落ちる金属音と同時に、腕の中に彼女の体が倒れ込んだ。どれほど殴られたのだろうか。全身は汚れていて、痛ましい打撲痕が至る所にあった。 「…仕方ないとはいえ、俺がこんな状態の人を殴るなんて…」 無我夢中でやったことなので、これでよかったのかもわからない。 そっと体を地面に横たわらせると、小さくだが息をする音が聞こえた。とりあえずは大丈夫…なのか? 顔にかかった髪を耳にかける。 …同じ年頃の女の子だ。顔にまで傷がある。治らなかったら、この子は悲しむのかな。 …一体何者なんだろう。この子は元々あの2人に襲われていて、それを助けた俺を殺そうと… もしかして、仲間割れか?その現場を目撃されたらまずかった…? 思考は巡るが、どう考えても答えが出るはずはない。 …とりあえず、話がしたい。きっと、話せばわかるはずだ。 「…連れて帰ろう」 慎重に体を持ち上げ背負う。耳にかかる息が時折苦しそうで、胸が傷んだ。 そうだ、こんな少女が悪人なわけがない。きっと誰か、悪い大人に使われているだけだ。 「今から手当できる場所に連れていくから、暴れないでね」 念の為そう呟くと、路地を引き返す道へと歩き出した。 『君は僕が助けるから』
懐かしい、懐かしい 【小説版公式スタジオ】 https://scratch.mit.edu/studios/51114310/ 前回https://scratch.mit.edu/projects/1253057467/ 次回 お楽しみに 【アニメ5話】 https://scratch.mit.edu/projects/605630620/ アニメでは表現しきれなかった情景、表情、心情、詳しい設定などが垣間見えるのが文字の良さだと思っています! 2月の受験まで、お付き合いくださいね #all #story