「自分で獲物を捕まえられる年齢の者はこのロックヒルの下に集まれ!一族の集会を始めるぞ!!」 その言葉を皮切りに次々と仲間が大きな岩の下に集まってきた。全員どこかしらに傷を負っていて、痛々しい見た目をしている。レモンシャインはロックヒルの真下に行き、上を見上げた。そこには濃い生姜色の毛皮をした雄猫がシャンとした姿勢で座っていた。朝日に照らされオレンジ色に輝く毛皮の下ではたくましい筋肉が呼吸に合わせて上下している。しかし、やはりその雄猫にも肩の辺りに傷を負っていて、痛みを和らげる為の湿布が貼られていた。生姜色の雄猫が口を開いた。 「つい先程、我々はナイト族と縄張りの所有権を巡って争い、ヘザーファーとミノウポーを失くしてしまった。まずは最期まで一族に尽くしてくれた二匹に感謝しよう。」 レモンシャインのすぐ近くには、戦場に行くまでは元気に動いていた二匹の亡骸があった。目は既に光を失っていて、ほんの少し死臭も感じた。一族の猫からどっと悲しむ声が上がった。誰よりも嘆き悲しんでいたのはアントウィスカーだった。ファーンペルトも肩をどうしようもない怒りと深い悲しみによって、激しく震わせていた。ロックヒルの上にいる猫、エンバースターは少しざわめきが収まってから再び話し出した。 「この戦いで、我々フレーム族は森の外れの縄張りをナイト族に奪われてしまった。これから二匹の死を無駄にしない為にも、戦いでの反省点を話し合おうと思う。」 「反省点だって?」 フレーム族長老のレインテイルがかすれた声で言った。 「反省点だなんて言いようがないよ。どうやったって今回の戦いも私達は勝てなかったよ。向こうはこっちの倍以上もある数で挑んできた。私達は貴重な戦力を二匹も失った上に狩場まで新たに失った。もう森の半分はナイト族のものだよ。フレーム族の辿る道はもうはっきりわかっている。今更何を話そうってんだい。」 周囲の猫がギョッとした表情で雌の長老を見たが、反論しようとはしなかった。一部の猫はもう自分達がこの先どうなってしまうか悟っている様だった。エンバースターが穏やかに言った。 「気持ちは分かりますよ、レインテイル。確かに今はフレーム族史上過去に類を見ない程の大災厄に見舞われています。だが、決して諦めてはいけない。」 エンバースターはキッパリとした口調で言った。 「フレーム族に伝わる神話で、とある族長が数多の困難から全ての部族を救い、長きにわたる戦争を終わらせ、安泰の世を築き上げた、という話がある。今度は我等がそうなるんだ。決して希望を捨てる事なく戦士の掟と共に生き続けるんだ。何があろうとフレーム族は永遠に不滅だ!」 その力強い言葉に呼応するかの様に何匹かが勇ましい声を上げた。レインテイルもこれには黙っていた。 「俺はこれから同盟相手のクラウド族を訪ねようと思う。今回の戦いの事を向こうにも共有しておかなければならない。マロンファー、レパードアイ、レモンシャイン、一緒に来てくれ。」 エンバースターは比較的怪我の軽い者の名前を呼んだ。レモンシャインは名前を呼ばれてワクワクした。クラウド族のキャンプへ向かえる!しかし、どうしても気になる事がある。レモンシャインはその後集会が終わった後、真っ直ぐに看護部屋へ向かった。看護猫に用があったのだ。看護部屋の入り口の岩の割れ目を潜って中に入ったが、そこには重症でぐったりしている猫たちしかいなかった。集会の後どこかに向かったのかな、と思っていると、あら、と後ろから声がした。 「どうされましたか、お兄様?」
※このプロジェクト内の音源の使用は厳禁です。 サムネ、及びタイトルロゴ制作…@mumeinoninngenn 音源… https://www.youtube.com/watch?v=shBML8HGkRg ⚪︎キャラクター補足 •レインテイル 灰と白の雌猫。 •レパードアイ 茶色い雌猫。 ⚪︎ストーリー補足 フレーム族には古代から語り継がれていた神話があり、戦士の掟の次に大事にされている。神話の内容はとある飼い猫が部族猫になり、数々の困難を乗り越え、族長として一族を引っ張っていくという物語である。エンバースターはこの神話を誰よりも尊重しており、事あるごとにこの神話の話をする。又フレーム族とクラウド族はナイト族の脅威に対抗する為、同盟関係を結んでいる。