#1です _________________________ 昨夜の曇りの面影すらない、雲一つない晴空の日の、夜明け前。 薄紫色の空に、空は太陽が登る方角は金が混じったような美しい色をしている。 まだ空気は冷たい。 アズール族は、朝から賑やか…いや、騒がしかった。 この騒音の原因は多分、兄であるフレイムキットの声だ。 フレイムキットの声は、ネズミの鳴き声のように甲高く、静寂なんて知らない、とでも言うようにアズール族のキャンプに響き渡る。 あとで長老に怒られても僕は知らないもんね。 「イリデセントキット!起きろ!今日は僕らが見習いになれる日なんだぞ!!」 兄が起こしに来た。 「朝からうるさいよ、フレイムキット……まだ夜明け前じゃん…」 僕はうるさい兄の声ですっかり目が覚めてしまった。 僕は仕方なく、苔でできたふわふわで心地の良いベッドから起き上がり、ぐーっと伸びをした。 他の猫を起こさないよう、足音を抑えながら育児部屋から出る。 といっても、寝ているのはあと先日生まれたばかりのベリーキットだけだが。 けれども、フレイムキットはそんなこともお構いなしに、足音を立てながら走ってゆく。 部屋の外には、気持ちのいい、爽やかな風が吹いていた。 それと共に、つーんとした、朝の森の匂いが僕の鼻をくすぐった。 もう、太陽は登り始め、空を金に染め上げている。 「イリデセントキットの毛、すっごい虹色に光ってる!不思議だなぁ」 「いつものことでしょ……」 そう、僕の毛皮は、光にあたると虹色に輝くのだ。 けど、フレイムキットも見慣れているはずなのでこんなに言うのは珍しい。 そんなことを思いながら、僕は毛づくろいを始めた。 フレイムキットは、僕の毛皮をじーっと見ていた。 しばらくしてから、 「いつもよりキラキラしてんの!なんでだろ?」 とフレイムキットが言った。 「そんなわけないじゃん、いつもの通りだよ」 そんなことを言っているうちに、太陽は完全に山から顔を出していた。 森で囲まれたキャンプを、太陽の光が黄金に染め上げている。 それと、夜明け前のパトロールへ行っていた部隊が戻ってきた、足音がする。 族長の、シルヴァースターの名の通りの銀の、太陽光で輝く毛が、ちらっと見えた。 「族長ってカッコいいよな。毛色が鋭いって言うか!」 「どゆこと……」 フレイムキットは、他の猫には理解しづらい感想を言うのが得意だ。 しばらく、太陽の昇ってきた方の空を眺めていた。 「獲物を自分で取れる年齢ほものは全員、メテオロックに集合!集会を始める!」 夜明けのパトロールから帰ってきた、族長の凛とした声が、集会の合図をする。 すると、一斉にキャンプ中の猫たちが、族長の座っているメテオロックの近くに集まってくる。 すると、黄金色の毛皮の凛々しい猫が何か合図しているのに気がついた。 父さんだ。 父さんが、メテオロックに来るように、と目で合図する。 それに気づいた僕は、フレイムキットを呼んでから父さんの元へ行く。 父であるトワイライトブレイズは、この部族の副長なんだ! 父さんが、小声で「がんばれ」って言ってくれた。 「今日、ありがたいことに、見習いとなる子猫が2匹いる!イリデセントキット、フレイムキット、前へ」 族長に言われた通りに、前へ進み出る。 フレイムキットが緊張しているのが息遣いでわかる。 「今日、見習いとなる子猫たちに、見習いの名を付ける! イリデセントキット、君は戦士になるまでの間、イリデセントポーという名前となる。 フレイムキット、君は、戦士になるまでの間、フレイムポーという名前となる。 2人とも、勇敢な戦士となることを期待する!」 「イリデセントポー!」「フレイムポー!」 みんなが僕たちの新しい名前を呼んでくれている。 「おめでと、イリデセントポー!」 「ラットポー!ありがとう!」 1日だけ早く見習いになった、ラットポー、フロストポー、タイガーポーが見習いへ仲間入りしたことを歓迎してくれた。 「僕も昨日一緒に見習いになりたかったのにー」 フレイムポーがぶつぶつと文句を言っている。 「しょうがないじゃん、昨日は族長さんたち忙しかったんだし……」 そう、昨日、僕らも見習いになるはずだったのだが、もうすぐ枯葉の季節のため獲物を獲るのに忙しかったのと、ロック族から追放された、クローバーハートを捕虜にしたのと、大集会があったため、3匹分しか儀式ができなかったのだ。 クローバーハートは、確か、元浮浪猫の、ロック族の看護猫だったはずだ。 なぜ追放されたかはまだ言っていないらしい。 「少し静まれ!新たな見習いたちの指導者を指名する!イリデセントポーの指導者は、シャドウルックとする!その優雅で華麗な戦いの技を弟子に伝えてやってくれ。フレイムポーの指導者は、ホークアイとする!その観察力と狩りの腕前を弟子に伝えてやってくれ!」 僕は、自分の指導者がどこにいるのかを探すように周りを見渡した。 そして、僕の元へ歩いてくるシャドウルックが見えた。 シャドウルックは欠伸をしながら僕の鼻先に冷たい鼻を押し当てると、 「厳しく教えるから覚悟して」 とだけ言って、ふらふらとした足取りで、戦士たちの寝床へ行ってしまった。 シャドウルックは、昨日の大集会に行って来たらしいので、どうやらこれから眠るようだ。 部屋に入っていくシャドウルックを眺めていると、ホークアイが話しかけてきた。 「あー……シャドウルック、大集会行ってたんかー、んじゃ、イリデセントキット…じゃなくて、イリデセントポーか!イリデセントポーは今日はラットポーとクリアスカイの手伝いしてこい、そのあとは長老の世話でもしとけ」 イリデセントキット、って言ったのは絶対わざとだ。 しかもフレイムポーが、フロストポーとタイガーポーと狩りの訓練をするっていうのに、雑用を任された。 まぁ、見習いの仕事なんて勉強と雑用だから別に構わないのだけれども。 「えー、看護猫の手伝いに長老の世話?」 「文句言ってないで早くやろ、ラットポー……」 そんなことを言いながら、看護部屋へ向かおうとして……僕は足を止めた。 ……あれ、看護部屋ってどこだっけ。 今まで育児部屋の周りから出ることを厳しく禁じられていたため、僕は、この森の木々の入り組んだキャンプの全てを把握していない。 シダの茂みが重なり合って、あちこちに影を作っている。 「イリデセントポー、何してんの? こっちだよ」 「へ?あ、ごめん、看護部屋の場所知らなかった」 「早くやろ、とか言ってたのに知らなかったんだ……」 そんなことを言いつつも、早歩きしているラットポーについて行った。
プロローグ https://scratch.mit.edu/projects/1228704942 次回 登場猫 ・イリデセントポー ・フレイムポー ・シルヴァースター(族長) ・トワイライトブレイズ(副長) ・シャドウルック ・ホークアイ ・ラットポー(@ayane2012) ・フロストポー(@ayane2012) ・タイガーポー(@ayane2012)