名前 古夜 草木 年齢 14 性別 男 能力 <自然共鳴> 風の流れ動物の位置・森の状態を把握できる。古代に絶滅した植物を夜の闇から呼び出す。昼間は弱体化するが、夜は植物が半ば意思を持つように動く 古代植物には毒・幻覚・治癒など多様な性質がある <特徴> ・カカポ教信者 「森語り(もりがたり)」と呼ばれる、カカポ教の中でも特に自然と対話できる。 ・カカポ教のシンボル《共鳴樹紋》を刻んだ木製のペンダントを身に着けている。「夜森樹」という暗い色の木でできている。
<過去> 彼は“夜森(やもり)”と呼ばれる薄暗い森で生まれた。 夜森は、昼でも薄暗い。 光苔の淡い緑だけが、木々の影をかすかに縁取っていた。 彼がまだ幼かった頃、彼はよく森の奥でひとり座り込み、 耳を澄ませていた。 他の子どもたちには聞こえない“森の声”が、 彼にははっきりと聞こえていたからだ。 木の根が軋む音。 岩の奥で低く唸るような響き。 風が止まる前の、わずかな空気の震え。 それらは彼にとって、 森が語りかけてくる言葉のようだった。 だが、家族も仲間も、その感覚を理解できなかった。 「また聞こえたのかい、草木」 「気のせいだよ。森はそんなこと言わないさ」 そう言われるたびに、 彼は胸の奥が冷たくなるのを感じた。 それでも、あの日の“声”だけは、どうしても無視できなかった。 夜森の奥で、岩の内部が低く震えていた。 まるで、深い深い場所で誰かが泣いているような音だった。 「崩れる……」 彼はそう感じた。 理由は説明できなかったが、確信だけはあった。 必死に家族に伝えた。 声を張り上げ、何度も何度も。 だが、誰も動かなかった。 そして夜、森は突然、悲鳴を上げた。 岩が裂け、木々が倒れ、地面が揺れた。 彼の家族は崩れた岩の下に閉じ込められ、その場に魂も閉じ込められた。 幸い彼のみ命は助かったが、 彼はその場で膝をつき、声を失った。 「もっと強く言えば……」 「もっと信じてもらえる声だったら……」 その夜、彼は初めて、 自分の声が世界に届かない恐怖を知った。 それからしばらく、古夜は森の奥で暮らした。 誰とも話さず、ただ森の声だけを聞いていた。 ある日、旅の途中のカカポ教の神官が、 彼の“声なき祈り”を耳にした。 胸の奥で響く、静かな共鳴。 声を出さずとも、周囲の空気を整える不思議な波。 「君の声は、森が授けたものだ」 神官はそう言った。 「届かなかったのではない。 届くべき場所に、まだ出会っていなかっただけだ。」 その言葉は、古夜の胸に静かに沈み、 やがて温かく広がった。 彼は教会へ向かった。 森の声を学び、反響を読み、 静寂の歌を磨き上げた。 だが、夜森の崩落の記憶は、今も彼の中に残っている。 完全な静寂に包まれると、 あの夜の“無音の前触れ”を思い出し、 胸が締め付けられる。 狭い場所に入ると、 岩の下に閉じ込められた家族の姿がよぎる。 大きな騒音に包まれると、 森の声がかき消されてしまうようで、 呼吸が浅くなる。 それでも彼は歩き続ける。 森語りとして、 誰かの声が届かなくなる悲しみを、 二度と繰り返さないために。 夜森の奥は、いつもより静かだった。 風の音さえ止まり、森が息を潜めているように感じられた。 古夜草木は、胸の奥がざわつくのを感じながら、 かつて家族が暮らしていた岩棚へと足を踏み入れた。 そこは、崩落の夜からずっと変わらない。 倒れた木々、割れた岩、そして―― 家族の魂が閉じ込められた場所。 古夜は岩に手を触れた。 冷たい石の奥から、微かな震えが伝わってくる。 「……まだ、ここにいるのか」 彼は静かに目を閉じた。 胸の奥で、静寂の歌が小さく共鳴する。 声を出さず、ただ心の底で響かせる祈り。 すると、岩の奥から、かすかな声が返ってきた。 ――草木…… ――ここは暗い…… ――出られない…… それは、家族の声だった。 生きていた頃と同じ響きなのに、どこか遠く、冷たく、震えていた。 古夜は震える手で、胸元のペンダントを握りしめた。 《共鳴樹紋》が刻まれた木のペンダント。 森と声をつなぐ、彼の唯一の拠り所。 「……行こう。 ここから、出してあげる」 彼は祈りを強めた。 静寂の歌が岩を震わせ、光苔が淡く揺れた。 だがその瞬間―― 岩の奥から、強い反響が返ってきた。 まるで、何かが“飛び出そうとしている”ような衝撃。 「……っ!」 古夜は思わず後ずさった。 岩の表面に、光の裂け目が走る。 そこから、家族の魂が霧のように溢れ出した。 ――草木…… ――ありがとう…… ――でも…… ――行く場所が……ない…… 魂たちは、行き場を失った風のように揺れ、 古夜の胸元へと吸い寄せられていく。 「待って……! そこは……!」 だが、止める間もなく、 魂たちはペンダントの中へと吸い込まれた。 木のペンダントが、淡く光る。 まるで、家族がそこに“根を下ろした”かのように。 古夜は震える手でペンダントを握りしめた。 「……ごめん。 本当は、自由にしてあげたかったのに」 しかし、ペンダントの奥から、 優しい声が返ってきた。 ――ここは……暖かい…… ――草木の声が……聞こえる…… ――しばらく……ここにいさせて…… 古夜は涙をこぼした。 悲しみではなく、安堵の涙だった。 「……わかった。 いつか必ず、行くべき場所へ導くよ。 それまで……一緒にいよう」 夜森の風が、そっと吹いた。 光苔が揺れ、ペンダントが微かに震えた。 古夜は、静かに歩き出した。 胸元には、家族の魂が宿る温もり。