リミックス禁止、自作発言禁止 第30話「アーベルの手紙」 最深部には静寂が流れていた。 アルグレア・コアはただの水晶となり、まるで役目は終わったと言わんばかりに沈黙している。 ガルドはしばらくうつむいていた。 ケイ「なぁ...俺は正しかったのか...?」 トールはゆっくりと首を横に振る。 トール「正しいかどうかなど、わしにはわからん。だが...アーベルは自分で選んだ。わしはあいつの師匠である限り、あいつの選択を否定はできん。」 テバは歯を食いしばり、震える声で言った。 テバ「あいつ、ずるいですよ...全部背負って...」 ケイは黙ったまま、拳を開いたり閉じたりしていた。 拳にはまだ、扉の宝石に触れた時の感覚が残っている。 ケイ「...行こう。ここにいても、アーベルは戻ってこない。」 ガルドは一瞬だけ迷ったが、ゆっくりと立ち上がった。 遺跡を出ると空はすでに夕暮れに染まっていた。 赤く傾いた太陽が、遺跡の影を長く伸ばしている。 テバ「師匠...これから、どうするんですか?」 トールは空を見上げ、ゆっくりと答えた。 トール「まずは基地に戻ろう。勇者たちに話さなければならんことがある。」 ケイはその言葉に静かにうなずいた。 夜が近づいたころ、四人は基地へと戻ってきた。 見慣れた建物だが妙に重く、そして懐かしく見える。 扉を開けた瞬間、中にいた者たちが一斉にこちらを振り向いた。 KK「お、ケイ!おかえり!」 ケイ「あぁ...」 最初はみんなの帰還にはしゃいでいたが、ケイの気持ちが明らかに落ち込んでいることを察し、静かになった。 すぐに、みんなは気が付いた。 そこに、アーベルがいないことに。 夢「アーベルは...?」 ケイは視線を落としたまま、答えた。 ケイ「いない...代償として、消えた...」 基地の中は、沈黙に包まれていた。 KK「やっぱり、消えたのか...」 みんながの視線がゆっくりと、KKに集まる。 KK「実はさ、アーベルの部屋を掃除しているとき、こんな手紙を見つけたんだ...」 KKは一通の手紙を取り出した。 その手紙の表紙にははっきりと『みんなへ』と書かれていた。 ガルドは無言で、KKから手紙を受け取る。 指先が、わずかに震えていた。 ガルド「読むぞ...」 ________________________ 「~親愛なる友、ガルドとテバへ~」 その声は、いつもの豪快さとは程遠く、低く、かすれていた。 「これを読んでいるころには、たぶん僕はいない」 そこで、ガルドの声が一瞬詰まる。 夢「最初から、分かってたんだ…」 ガルドは続ける。 「女神の加護をもつ人間に出会えたこと」 「アルグレア・コアのこと」 「願いには、代償が必要だということ」 一語一語が、胸に突き刺さる。 「もし、誰かの命が必要なら」 「僕は、迷わず僕の命を差し出す」 その瞬間。 テバ「…っ!」 顔を伏せ、歯を食いしばった。 テバ「ふざけるなよ…なんで…なんで一人で決めるんだよ…!」 ガルドは、震える声で読み進める。 「ガルド、君は一番の相棒だった」 「力任せだけど、優しくて、信頼できる奴だった」 ガルドの拳が、ぎゅっと握りしめられる。 ガルド「…っ、く…」 「テバ、君は一番丁寧で、冷静で」 「何度も助けられた」 テバは、もう顔を上げられなかった。 「勇者ケイへ」 「君に出会えたことが、僕の覚悟を完成させた」 ケイは、はっと息を呑む。 ケイ「俺…?」 ガルドの声は、ほとんど囁きだった。 「君たちが、この世界を救うことを願っている」 「短い間だったけど、ありがとう」 ________________________ 最後の一文を読み終えた瞬間、ガルドの手から、手紙が滑り落ちた。 床に落ちる、かすかな音。 ガルド「あいつ…最初から…帰るつもりなかったんだ…」 トールは、静かに目を閉じる。 トール「覚悟を、固めるための手紙か…立派じゃ…あやつは、最後まで…」 ケイは、拳を強く握りしめた。 ケイ「アーベル、お前の願い…無駄にはしない」 基地の中に、重く、深い沈黙が落ちる。 だがそれは、絶望だけの沈黙ではなかった。 アーベルの想いは、確かにここに残っていた。 ーーーーーーーーー第30話終わりーーーーーー
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