呪爆霊単空王記 #46『アノ事故』 前回 https://scratch.mit.edu/projects/1258162286/ 次回 https://scratch.mit.edu/projects/1245317329/ はろーはわゆー(は?)miyatti3です。 恒星祭遅延という大失態を犯しました(やばすぎますよね、ほんと。) 次は一応、@NATUKITI0623様ですので、 「次回」の枠にリンク貼っときました!(これ真面目に次の話みたい人にとって遅延行為でかしないけどそんな人いないと思うから安心してこーゆーことができるんです←悲しい) 一ノ瀬は無限落下から抜け出し、すぐさま周りを確認した。無限落下は、たまにだが変な場所に一ノ瀬を届けることがある。しかし、今回は無事、幽霊塔の外の森に辿り着けたようだ。 「純ちゃん!生きてたのか!」 声をかけたのはゼディガだった。 「ええ、なんとか閉じ込めました。あの能力者程度では脱出は不可能でしょう。」 「さすが『敗北妨害装置』だけあるな!」 これは一ノ瀬の二つ名である。相手への妨害に長けており、こちらの敗北すらも妨害することからついた名である。 「それより、さっさとここを抜けましょう。また新手の敵が来るかもしれません。」 「そうだな。」 言うが早いかゼディガは一瞬で視界から消えた。 彼に似合う二つ名は「神速の悪魔」のようなものであるだろうか、と場違いにも思った。 月読トウマは落下を繰り返していた。 あまりに長い落下距離に月読はもう着地は諦めたが、まだ希望は捨てていなかった。この空間自体を破壊することは、きっと不可能ではない。そのためにはまずは絶止崩壊の仕組みを確認するべきだと思い、技を闇雲に出してみる。しかし、なんとも使いにくい技たちだ。これを使いこなすのは簡単ではなさそうだ。 「おいおい・・・何そんなに自棄になってんだ?」 どこかから男の声が聞こえる。刹那、何もないはずの空間にヒビが入り、その触手が月読の体を掴んだ。職種は月読を空間の外に引き摺り出し、円形の一室に月読を置いた。 「お前の能力、じっくり見させてもらった。まだ使いこなせてねぇが、なかなかじゃねぇか。しばらくここで修行してみねぇか?」 月読が警戒を解いていないのを見て、男は笑って付け足した。 「俺はグルウェル・エンティーク。幽霊塔の12階のガーデストだ。」 幽霊塔。月読はその単語を聞いて、体を震わせた。だが、今目の前にいる人物に逆らうのは危険だと本能が告げ、とりあえず話を聞くことにした。 「今、ガーデストの欠員が多く出てしまっていてな・・・まだ戦闘階を任せられはしないが、ゲーム階くらいなら任せてもいいぞ。そして修行して、立派な戦闘員に・・・って、気が早いか。だが、俺は長話は嫌いだ。そうするか、しないか、どっちだ?」 グルウェルのそれは、選択を許してもらえる問題ではなかった。ここでしないと答えたら、自分の命は天国、いや、多分地獄に旅立つ羽目になるだろう。 「そうします。仕事場はどこですか?」 「話が早くて助かるな。詳しくは6階に行って、になっちゃんに聞いてくれ。」 「わかりました。」 月読は自分の判断の重さに気づいていなかった。 「こんにちは。グルウェルさんから連絡は受けています。月読トウマさんですね。」 「になっちゃん」こと二奈木百合は、若い女性だった。実年齢はわからないが、もしかしたら未成年かもしれない。 「5階のスイハさんが8階に繰り上がったので、貴方には5階を担当しています。まあ、端的に言えば、ゲームを行えばいいですね。こちらの勝率が8割以上になる運のゲームでなければなんでもOKです。何か質問はありますか?」 「必要な物資はどこから出すんですか?」 「必要物を言ってくれれば、なんでも用意することができます。他に何か、質問は存在しますか?」 月読はハッと息を呑んだ。「質問は存在しますか?」は秘密主義のveriynui隊員がお互いを見分けるためのコードの一つである。つまり、百合は自分と同じveriynuiの人間であるということだ。こういう時は、こちらもコードを言う必要がある。 「ここでは、どういう能力が必要となりますか?」 これは「ここで何をしている?」を表すコードだ。 百合はコードの意味を読み取り、こう返した。 「ここを守れるものなら、なんでもいいです。」 「守る」はveriynuiのコードでは「潰す」の意味だ。 「了解しました。」 これには深い意味はない。そのままの意味だ。 失敗に終わった幽霊塔の挑戦から数ヶ月、この数ヶ月の間、幽霊塔に挑戦した皆は批判の的にされた。しかし、一ノ瀬の功績だけはしっかりと伝わっており、逆に英雄扱いされた。一ノ瀬がいなかったら、今頃赤幕は「アノ事件」以来の惨状になっていただろう。あの時幽霊塔に挑戦した仲間の中に、それを疎ましく思うものがいないと言うことは、身に染みて分かっていた。それよりも、今大事なのは赤幕のこれからである。新しい四天王には鳳凰がなった。これにも大反発があったが、生前の雨黎の意向によるものなのだからと、最終的には認められた。そして、18期生の入隊試験を行う時期が来た。一ノ瀬は、今回は痤牙城の意見に従い、入隊試験の様子を見る事にした。 実戦試験を見る感じでは、今回は逸材が多そうである。この年に入ってきた隊員には刃砲殉残花、蜘蛛怨念、ビレンディア・ルーティクス、如月時雨、重急と、後の幹部・幹部候補生の名が並んでいる。しかし、一ノ瀬が最も可能性を感じたのは、顔に仮面を付けた少年だった。パワーもスピードも一級品なのに加え、能力も戦いにおいて便利なものが揃っている。妨害の専門家から見ても、これは戦闘で大きく役に立つ妨害だと思った。しかも、その身体はそれに加えてさらに秘めている能力があることを思わせた。その少年が、今実任務試験を終え、初任務を行うために自らの隣にいる。 「入隊試験、お見事でした。貴方の名前は?」 「はい、僕の名前は・・・」 彼は一瞬考え込んだようだが、こう答えた。 「ヤミオチ、っていいます。」 月読は自分のゲームシステムを完成させ、そのテストをしていた。幽霊塔のガーデストの欠員はなくなり、正常な状態に戻っていた。月読は迷いに迷い、veriynuiの任務として幽霊塔を壊滅させるチャンスを伺う事にした。今、veriynuiにメールを送ったところだ。その相手は同じくveriynuiにいる自分の父親なので、さしものグルウェルでも親へのメールとしか思えないだろう。メールの傍受の危険も考え、メールにはこれだけ書いた。これで恐らく、veriynuiには全てが伝わるだろう。 「二奈木と同じ場所、同じ目的。」 「トウマは幽霊塔に行ったようだな。全く、自由奔放な息子で・・・」 「それくらいの方がいいんじゃないですか?幽霊塔は脅威となる組織ですし。二奈木さんもいるなら、まあ、なんとかなるでしょう。」 「でも、一体何年かかることやら・・・Joshuaも逃してしまったし・・・」 「そのことですが、Joshuaは『red veil thor』の隊員のようです。しかも、かなり上の立場の。」 「ああ、『赤幕』ですか!なるほど、あの組織は、幽霊塔以上に規模も大きく、強い能力者も多いですからね。目多杉、痤牙城、一ノ瀬、深山、時乃川・・・キリがないです。」 「その『深山』と『時乃川』は、幽霊塔でやられたと言う情報が入りました。」 「なるほど、幽霊塔も侮れない。そういえば、あの『グルウェル』って奴はどうなったんですか?」 「ああ、彼はやはり幽霊塔を本拠地としているらしいです。赤幕の隊員として活動しているのは彼の『分身体』みたいです。」 「なるほど。あれを調査していたのは、そちらの部署ですよね。」 「はい。私の所属する7-8班です。私はもともと、特殊潜入任務部隊にいたのですが。」 「ほお、それは初耳ですね。特殊潜入任務部隊といえば、私の妹が所属しているところです。」 「そうなんですか。月読さんの妹って、結婚して苗字が変わってましたね。どんな名前でしたっけ。」 月読は記憶を探るように天を仰ぎ、しばらくすると思い出したようで、その名を言った。 「『東 夏江』です。」 そして、「アノ事故」から10年。赤幕はずいぶん大きな変容を遂げた。 あの頃幹部になったばかりだったゼディガは、幹部候補生だったシャーラと共に、経験豊富なエース級の人物になり、新人だったナレディやヤミオチも、今や幹部となっている。一方で痤牙城は幽霊塔で亡くなり、グルウェルは幽霊等のガーデストであることがバレる前に赤幕から姿を消した。 そして、一之瀬は赤幕を引退し、今はカフェを営んでいる。 そして、今日は、いよいよあの日の「復讐」の日だ。 幽霊塔も「アキマ」も、今日で終わりだ。 「まあ、赤幕の底力をとくとご覧あれ、ですね。」 一之瀬は窓外の枯れ木を見つめていた。そこに止まる一羽の小鳥の名前を、一之瀬が判断する前に、新しい一報が入っていた。 「計画第一パート最終段階。幽霊塔も好調。霧乃宮晴翔、貴方からの情報により、彩岳に変わり幹部ノ雨水足止め中」 次回第四十七話「ありがとうの代わり」 「ありがとうの代わりと言っては何だが・・・一つ、お願いを聞いてもらってもいいかい?」