レモンシャイン達一行はクラウド族のキャンプに繋がる道を歩いていた。 道の両端は背の高い草に覆われていて、外敵から見つかりにくい様になっている。 クラウド族はフレーム族と同盟を結んだ時、キャンプを訪問してくる際はこの道を通る様助言してくれた。向かっている途中でナイト族の連中に襲われない様、少しでも身を隠せる様に配慮してくれたのだ。 エンバースターを先頭に道を抜け終わると、開けた場所に出た。ここを通ればキャンプはすぐそこだ。 一行が進もうとすると、突然目の前に猫が現れた。真っ白い毛皮をした雄猫だ。 雄猫はこちらに気付くや否やギョッと表情を変えてこちらに駆け寄ってきた。 「フレーム族か!」 雄猫はエンバースターの目の前で急停止すると、全員をしげしげと眺めた。 「俺達に何か様ですか?」 エンバースターが答えた。 「ごきげんようヘアペルト。ジェイスターに話があるんだ。緊急の用事なんだ。」 ヘアペルトが返す。 「わかりましたエンバースター。どうぞ通ってください。」 ヘアペルトは道を譲り、最後尾のレモンシャインの元へ駆け寄った。 「なぁ、何かあったのか?君達全員傷だらけじゃないか。」 レモンシャインが言った。 「今朝ナイト族と戦ったんだ。結果は見ての通りだよ。」 ヘアペルトが驚いた様子を見せた。 「またかい?大変だったんだなぁ。大丈夫か?」 「いや、ヘザーファーとミノウポーが亡くなった。」 レモンシャインがボソッと告げると、ヘアペルトは顔をくもらせた。 「気の毒に。まだ二匹とも若かったのに…」 「ああ、残念だ。」 思い出しただけで悔しい。 戦いの最中、微かに聞こえたヘザーファーの悲鳴。まだ未来があったのに、無惨にもナイト族にそれを断たれてしまったミノウポーの絶望した顔。 僕は目の前の敵に対処するので精一杯で二匹を助けられなかった。本当ならアントウィスカーに合わせる顔も無かったのだ。自分の隣で、一番近くで戦っていたのに、救えなかった。二匹は僕の力不足で死んだようなものだ。悔やんでも悔やみきれない。 考えにふけっていると、ヘアペルトが口を開いた。 「俺達もナイト族に攻撃されたんだ。三日前に。幸い向こうはパトロール隊だけだったから、撃退する事はできたんだけど…あれから俺達は寝る間も惜しんでパトロールに時間を費やしている状態なんだ。」 ああ、そうだ。被害を受けているのはフレーム族だけではない。 クラウド族もナイト族から縄張りを侵されているのだ。 クラウド族の前任の族長はそのナイト族との戦いの中で命を落とした。 今のクラウド族族長は個々の部族でナイト族に立ち向かうのは無理と判断し、フレーム族と同盟を組んだ。 あれからは休戦協定が結ばれているはずの大集会でさえ、一触即発の雰囲気になってしまった。 フレーム族、クラウド族、どちらの部族も神経を擦り減らしながら今を生きている。いつナイト族から新たに襲撃を受けるか分からないからだ。 「どうした、ボーッとして。ほら、俺達のキャンプに着いたぞ。」 レモンシャインはハッとした。 考え事をしながら歩いていたせいで、クラウド族のキャンプに着いた事に気付かなかった。 レモンシャインは入り口を見張っていたクラウド族の雌猫に会釈をし、ハリエニシダを複雑に絡め合わせたトンネルを潜った。 トンネルの先はすり鉢上に窪んだ土地になっていて、中が空洞の岩が何個かある。周りはハリエニシダに更にイバラをかけた壁になっていて、より頑丈なものとして、外敵からキャンプを守っている。 ヘアペルトはキャンプの奥、1番大きな岩の中に入っていった。あそこが族長の部屋なのだ。 程なくして白黒の猫が後ろにヘアペルトを連れて出てきた。雄猫がエンバースターの前まで来て会釈をした。 エンバースター達が会釈を返すと、雄猫は穏やかな口調で言った。 「どうも、エンバースター、フレーム族の皆さん。ようこそ、僕達クラウド族のキャンプへ。」
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