「どうも、エンバースター、フレーム族の皆さん。ようこそ、僕達クラウド族のキャンプへ。」 クラウド族の族長、ジェイスターからの挨拶にエンバースターが返した。 「どうも、ジェイスター。急で申し訳ないが、緊急の会談を開きたくて訪問させてもらった。」 途端にジェイスターの顔が曇った。 「何かあったのか?体中傷だらけなのを見ると大体予想はつくが…」 「ああ、君の思っている通りだよ、またナイト族と戦って縄張りを取られた。」 「なんだと?」 ジェイスターが背中の毛を怒りで逆立てた。 エンバースターが続ける。 「それだけではない。我が部族の戦士、ヘザーファーとミノウポーが殺された。ナイト族との戦いで命を奪われた猫はこれで4匹目だ。」 そこまで聞くともう十分だった。 ジェイスターが尻尾をさっと振ってフレーム族の猫達を招いた。 「来い、僕の部屋で話をしよう。」 途端に口調が変わったジェイスターに少しぞっとしながらも、レモンシャインはエンバースター達に続いてジェイスターの部屋に入っていった。 部屋の中は薄暗くなっていて、入り口から入ってくる日光だけが照明になっている。ふかふかの苔が敷き詰められていて、足の踏み心地は最高だ。 ジェイスターが部屋の1番奥の場所に座り、口を開いた。 「さて」 「どういう事かもっと詳しく教えてくれ。」 エンバースターが話し出す。 「先日、ナイト族から我々のキャンプがある森の外れの所有権を頂くと宣戦布告があった。今朝その戦いに赴いたのだが、悔しい事に俺達が負けてしまった。この戦いでその領地を取られただけでなく、さっきも言った様に我が部族のヘザーファーとミノウポーが殺されてしまったんだ。」 それを聞いたジェイスターは怒り狂った。 「またか、ナイト族の有象無象どもめ!フレーム族の縄張りを奪い取っただけではなく、戦士まで殺しただと!?どれだけ戦士の掟を侮辱する行動をとれば気が済むんだ!!?」 「落ち着いてくれ、ジェイスター。」 エンバースターが静かに言った。 「君の怒る気持ちもよく分かる。俺だって腹が立つ。自分の部族の戦士まで殺されたのだから。だが今無意味に憤慨しても意味がない。今日は君達と情報を共有して、ナイト族との対策を練りに来たんだ。」 「そうだった。すまない。」 ジェイスターは逆立てていた毛を無理やり寝かせた。 「僕達の方も3日前にパトロール中、向こうのパトロール隊から襲撃を受けたんだ。なんとか縄張りを守る事自体は成功したんだけど、あいつらはただ境界線のパトロールついでに僕達を襲ってきた感じなんだ。この戦いで大怪我を負ったものもいる。」 レモンシャインはその言葉に耳を疑った。 パトロールついで?そんな軽い気持ちで相手の部族の猫を襲ったのか?ナイト族は戦いを暇潰しの遊びと捉える程残忍な性格になってしまったのか? レモンシャインが考えていると、ジェイスターが一旦外に出て、誰かを呼んだ。 「ブラックテイル!僕の部屋に来てくれ!」 その言葉を聞いて、1匹の猫がやってきた。 茶色い毛をした雄猫で、尻尾が若干黒っぽくなっている。 だがどこか様子がおかしい。 足取りがなんだかおぼつかない。 よく見てみるとなぜかその猫は目を瞑っていた。 一体何をやっているんだ?と思って更によく見てみるとある事に気付いた。 目が見えないのだ。 その雄猫は両目に引っ掻かれた様な傷跡が残っており、片目は瞼を開いているものの、瞳は恐ろしい位にどんよりしていて変な方向を向いている。 その猫が近くにやってくると、ジェイスターが紹介した。 「彼はブラックテイル。年長の戦士で、さっき言った戦いに参加した猫だ。あの時、敵に両目を引っ掻かれて失明してしまった。」 雄猫はレモンシャイン達に会釈した。 「彼は他の猫よりも目が良かった為、失明した時は酷く落ち込んだんだ。逆に嗅覚などはあまり優れないから、キャンプ内等は、ほぼ以前の記憶を頼りに歩いているんだ。」 ブラックテイルが口を開いた。 「そこにいるのはフレーム族の方達だろ?どの部族の匂いかは分かるんだが、誰なのかまではわからないんだよ。申し訳ないねえ。あいつらに目を潰されてなければ分かるんだが…。」 レモンシャインは途端にこの雄猫が気の毒になった。 ブラックテイルははたから見ても、明らかに気落ちしている。 以前の大集会で彼を見た事があったのだが、その時は綺麗な琥珀色の目を輝かせて、フレーム族の猫達に気さくに話しかけてくれていた。だが、今はもうそんな様子では無くなってしまっている。 ジェイスターが言った。 「ナイト族はまず、相手の目などのすぐに狙える弱点を突こうとしてくるんだ。ブラックテイルもその攻撃に遭ってしまったんだ。君達も戦っていてそうは思わなかったか?」 レパードアイがはっとした表情になった。 「あのう、発言してもよろしいでしょうか?」 エンバースターが答えた。 「構わないよ。自由に言ってくれ。」 レパードアイが話し出した。 「実はあたしも同じ様に感じました。今朝の戦いで…敵が飛びかかってきた時、足を払おうとしてくる以外にも、時々目に向かって前足を振ってきた奴もいました。狙いも矢鱈正確で、何度も目に当たりそうになってしまいました。」 それを聞いて、レモンシャインもはっとした。 自分も目を狙われそうになった事がある!亡くなった2匹も… ミノウポーは戦いの最後あたりは目から血を流していて敵のいない方向に前足を振り回していた記憶がある。 エンバースターが口を開いた。 「成る程。敵はすぐにこちらを無力化した後、今朝の戦いから見るに、何匹も寄ってたかって嬲り殺しにしてくる戦法を取る者もいるんだろう。帰ったら他の仲間にも話を聞いてみよう。同じ戦法に遭った者がいるかもしれない。」 「あいつら…俺達の命を弄んでやがる…」 マロンファーが歯ぎしりしながらぼやいた。 ジェイスターが言った。 「なあ、一体どうしたらその攻撃を回避しやすくなると思う?戦いの中で視力を奪われる事なんて致命的な問題だぞ?」 レモンシャインが提案してみた。 「相手が前足を振りかざしてきた時に後ろに下がるか、頭を下げて避けるのはどうでしょうか?」 その言葉に返したのはブラックテイルだった。 「それだけでは難しいと思う。敵もその程度の事くらい把握してかなり素早く攻めてくるだろう。俺も襲われた時に咄嗟に後ろに下がったが、向こうが素早く距離を詰めてきて、2発目でやられた。」 その光景を想像してレモンシャインは思わずぞっとした。 次にレパードアイが提案した。 「フェイントをかけてみてはどうでしょうか?後ろに下がると見せかけてかがんで…」 レパードアイは実際に体を動かして表現している。 「敵がこちらに突っ込んできたら、一気に体を起こして相手を振り払うんです。」 ジェイスターが感心した顔をした。 「成る程。それは通用するかもしれない。今度訓練でも試してみるよ。」 エンバースターが言った。 「これからは敵の動きも意識して対策を講じてから戦った方が良さそうだ。」 ジェイスターが頷く。 「他にも何か敵の戦法などが分かったら、情報を共有し合おう。」 それから暫く、今後の会談の予定を立てた後エンバースターが言った。 「そろそろおいとましよう。明日に向けてしっかりと体を整えておこう。」 ジェイスターが警戒した表情をした。 「明日は大集会だ。だがナイト族が休戦協定を守るとはもう信用できない。常に警戒体制をとっておこう。」 「では、明日の大集会で。」 エンバースターはジェイスターに会釈をすると仲間を連れて出ようとした。 「待て。」 ジェイスターが引き留めた。 「境界線まで護衛をつけようか?」 エンバースターは優しく断った。 「心配してくれて有り難う。だが心配いらないよ。道中も気をつけて帰るから。」 「くれぐれも、気を付けてな。」 ジェイスターはキャンプの出入り口までエンバースター一行を見送った。 明日は大集会。一体どうゆう事が起こるんだろう。ナイト族はちゃんと休戦協定を守り、参加するのか? 不安な気持ちを心に抱えながらレモンシャインはクラウド族のキャンプを後にした。
※このプロジェクト内の音源の使用は厳禁です。 音源…https://www.youtube.com/watch?v=vOyl7a9zAG0 ※今回のサブタイトルの呼び方は"ついえるまなこ"です。 •完全に趣旨が迷子です。ごめんなさい。 •正月イラスト描けないので短期間で1話完成させま した。どうかこれで許して下さい(泣) 「みんな〜2026年明けましておめでとう〜!!」 byレモンシャイン ⚪︎キャラクター補足 •ブラックテイル 茶色い雄猫。ナイト族との戦いで失明した。