雲ひとつない夜空に満月が浮かび、その周りには数多の星、スター族の魂が漂っている。 レモンシャイン達フレーム族の面々は大集会の場、グレートアースのもとにいた。クラウド族はフレーム族とほぼ同じタイミングでグレートアースに着き、フレーム族の猫達との会話に花を咲かせていた。 月明かりに照らされた猫達の毛皮は銀色に輝き、光を纏っているかのような風貌だ。 ただ、今までの大集会との決定的な違いは、猫達の固まり具合だ。 本来、大集会は休戦協定のもと、他の部族の猫と近況を話し合ったり、交流を深めたりする為の機会だ。しかし、今は最早そんな状態ではなくなってしまっている。 フレーム族とクラウド族はひとかたまりでいて、決して遅れてやってきた他の2部族の猫達に話しかけに行こうとしない。 一方のナイト族とシー族は、ひそひそと何かを話しながら時折レモンシャイン達を蔑んだ様な目で睨みつけてくる。 どうせ僕達の事を馬鹿にする話でもしてるんだろうと、レモンシャインは思った。 今の大集会は最早休戦協定等名ばかりの状態であり、フレーム族、クラウド族の同盟部族とナイト族、シー族の非合法型統合部族との間には、一触即発の険悪な空気が漂っていた。大集会としての内容も酷いもので、殆どはナイト族が新たに奪った土地の事を語ったり、新しく土地を得る為の、事前の宣戦布告をしてくるというのが基本だ。エンバースター達は戦士の掟に則って大集会に参加しているだけであり、本来なら態々ナイト族のマウント話に付き合う気等毛頭ないのだ。 レモンシャインがクラウド族の猫と話していると、頭上から大集会の開会の声が聞こえてきた。上を見ると、積み重なった倒木の上に月明かりを浴びて毛皮を神々しく輝かせる族長達の姿があった。 クラウド族族長、ジェイスター シー族族長、グレースター ナイト族族長、デュークスター そしてフレーム族族長、エンバースター 倒木の麓には副長達が座っていて、特にナイト族の副長、フローズンリーフが強い存在感を出している。 最初に演説を始めたのは、ジェイスターだった。 「今年の枯葉の季節は普段より厳しく、食料も乏しい。しかし、僕達の部族は決して弱ってはいない。獲物をしっかりと穫り、体力を付け、戦いのために常に腕を磨いている。敵を迎え撃つ準備はいつでもできているぞ。」 自分達が脆弱な部族であるとは思わせない為に強気に言ったんだろうとレモンシャインは思った。あの温厚なジェイスターが自ら戦いを誘発しようとは考え難い。 その後ジェイスターは語気を少しだけ緩め、他の話題にはしった。 「今月、クラウド族では2匹の猫が見習いになった。ストーンポーとワンポーだ。」 クラウド族とフレーム族から新しい見習い2匹を祝福する声が上がった。当のワンポーとストーンポーは照れているかの様に顔を俯かせ、前足をもじもじと動かしていた。ナイト族達から歓迎の言葉が出ることは無論無かった。 その後のジェイスターの演説では、ナイト族の領地侵攻については深く言わなかった。これまでは大集会の度に口煩く抗議していたが、最早言論で解決できるとは思わなくなったのだろうか? ジェイスターはひと通り話した後、グレースターにどうぞと場所を譲った。グレースターが前に出てきて演説を始めた。 「シー族では縄張り内の川の一部が凍り、獲物がとれなくなりました。しかし、デュークスター様達ナイト族の方々のお陰で、一族は飢えずに暮らすことができています。」 グレースターが後ろで演説を聞いていたデュークスターに顔を向けた。 「ナイト族の救済の手が無ければ今頃シー族は飢えで滅びていました。本当にありがとうございます。あなた方は真の英雄です。」 レモンシャインやクラウド族の猫数匹がふんと鼻を鳴らした。この猫はデュークスターを担ぎ上げることしかできなくなったのか? グレースターは元々独立心が強く、シー族を若い頃から引っ張ってきたエンバースターの同期だ。しかし、ナイト族との戦争に完全敗北した後、デュークスターの元に下り、自らの存在感を残す為に汲々とする駄目猫に成り下がってしまった。自分のやってる事が恥ずかしくないのかとレモンシャインは思った。 そうしてナイト族をたっぷりと褒め散らかした後、グレースターはデュークスターに場所を譲り、後ろに下がった。 デュークスターは堂々とした振る舞いで前に進み出てくると、倒木の下から見上げる猫達を見回して話し出した。 「全ての部族のみんな!いよいよこの四部族としての生活に終止符が打たれる。革命が起きる時が来たぞ!」 自身に満ちた声に、ナイト族とシー族の猫達は次々と声を上げた。一方フレーム族とクラウド族の猫達は話の意図がすぐに分からず困惑した顔でお互いを見合った。 デュークスターが続ける。 「これまで、俺達は四部族同士啀(いが)み合い、協力が必要な状況でも手を取り合おうとはしなかった。それにより病気や獲物不足で余計な犠牲が数多く出てしまったりもした。」 グレースターが大きく頷く。 「俺はもうこんな事を終わりにさせたい。全ての猫を平等に救う為には、既存の四部属体制を撤廃させ、全ての部族を統一しなければならないと思う。無駄な隔たりを取り除き、全ての猫が手を取り合える関係にするべきだ。俺達は『ユートピア族』として、一つの部族になるべきだ!」 ナイト族とシー族から先程とは比べ物にならない位の大歓声が起こった。レモンシャイン達フレーム族とクラウド族はギョッとした顔で思わず後ろに一歩下がった。無理も無い。今まで散々自分達を痛めつけてきた部族の族長が部族の平和のためという、行動と矛盾しきった名目で、部族の統合を宣言したのだから。 騒ぎが収まるとすぐにエンバースターが口を開いた。 「それは良い考えとはいえないなデュークスター。俺達は神話の風習と戦士の掟に則り、四部族であり続けなければならないんだ。」 ジェイスターも加勢する。 「まったくだ。これまで僕達がどれ程お前達のせいで傷ついてきたと思っている?己の権力欲を満たす行為だと分かりきっているそんな提案、一体誰がのむというんだ?」 デュークスターが反論しようと口を開いた。 が、発言しようとする前にグレースターがかっと目を見開き、エンバースター達に詰め寄った。 「分かってないわね。デュークスター様は私達の事を考えてこのような提案をされていらっしゃるのよ。これまで四部族はいつも自分の事しか考えず、共存の道を歩もうとしなかった。そのせいでどれだけの命が失われたと思う?全部族を統合し、デュークスター様をただ一つの拠り所とすれば、私達はもう争う事なく、誰もが救われるのよ!」 エンバースターは面食らった顔をした。自分の同期であり、誰よりも我を持っている存在だと思っていたのに、今やこんなにもデュークスターに心酔しているグレースターに驚いているようだ。 するとエンバースターの隣で話を聞いていたジェイスターがフレーム族の猫達の気持ちを代弁した。 「頭にアザミの花でも詰まっちまったのか?この間抜け野郎。そいつは大勢の猫を苦しめ、支配しようとしているんだ。こんなやつに身勝手な独裁体制を築かれてたまるか。」 ジェイスターが歯を剥き出し、唸りながら言った。 「少なくとも、僕はお前達と自分の部族を統合させるつもりは無い。貴様等の目論みなんぞ、力づくでも止めてくれるわ。」 その目は氷の様に冷たく、しかし確かな正義感と怒りで燃え上がっていた。
※このプロジェクト内からの音源の流用は厳禁です。 音源… https://www.youtube.com/watch?v=nCO9j_L894U •今回、投稿が一ヶ月程止まってしまい申し訳ございませんでした。その割には無駄なキャラの掘り下げで尺が長くなり、内容も支離滅裂です。中途半端に終わっているのは、流石に内容を詰め込み過ぎたと思ったからです。散々待たせた挙句のこの低クオ、本当にすみません。次回はもう少ししっかりとした文作りをします。 ⚪︎ストーリー補足(というか実質簡易的な過去編) グレースターはかつてフレーム族に属していて、エンバースターと同期の仲間であった。しかし、大集会で知り合ったシー族の猫と恋に落ち、フレーム族の元を去る。その後はシー族の猫として一族に馴染み、部族内からも徐々に信用を得て、最終的にエンバースターよりも早くに族長に就任する。彼女の性格はエンバースター曰く「幼い頃から独立心と野心が強く、尚且つ他者を統率できるカリスマ性があった」との事。それから暫くしてデュークスターの縄張り侵攻を受けて全面戦争になるも敗退。一族はナイトに統合され、事実上の統率権の剥奪を受ける。結果として実力のみで上がってきた野心家は、『four clovers』のメンバーより低い立場に成り下がってしまった。