天は目覚めたら近所の病院の病室にいた。 辺りを見回そうと顔を動かしたが、さっきまでなかった痛みが急に体に襲いかかる。 「お、気がついたか」 隣から声がした。懐かしい顔をした男性がいた。髭を生やしていて、少しイケメン。40代位の人だろうか。 「あなたは…誰ですか…?」 「おいおい、忘れたのか?まぁ、もう13年ぶりだからか…」 その人はどんどん喋るが、天はなんのことかがわからない。 「もう少し思い出す時間をあげよう。顔でわかるんじゃないかな」 天は頑張って思い出そうとする。だが、この人の言うことが本当であれば、初めて出会ったのは13年前。天が1歳の時だ。そうなると思い出せるはずがない。だが、顔は亡くなったお父さんに少し似ている気がした。 「俺だよ、宏(こう)。お前のお父さんの兄さ。お前のおじだよ」 おじさん————いや、宏さんの一言で、頭から消えていた記憶が一気に蘇る。 ————————ときは遡り、13年前。 「宏!久しぶりだなぁ!」 「おお、光琉、久しぶり!」 天のお父さん———光琉は、宏さんの家に来ていた。 光琉の後ろには、赤ちゃんを抱いた美人なお姉さんがいた。 「後ろの人は…」 宏が訪ねると、光琉は少し慌てて体を左に寄せた。 「紹介するよ。妻の美咲と、息子の天だ」 「はじめまして、美咲と申します。」 美咲は、丁寧に挨拶をした。腕の中には赤子の天が入る。まだ1歳になったばっかりだ。 穏やかなかわいい目で、宏を見つめている。 「宏さん……!」 「思い出してくれたみたいだな」 宏さんが少し微笑んでいった。 だが、すぐに少し悲しげな表情になった。 二人はしばらく黙り込んだ。 すると、天が自分の右側を見る。 そこには傷だらけの途絵がいた。 「大丈夫だ、まだ生きている。だが、意識不明の重体で生きていられるのかがあやふやなくらいヤバそうだ。」 宏さんが気を使ってくれた声でいった。 天の目が涙で溢れた。 「途絵…………」 「今は点滴でギリギリ生きていられる状態だ。出血量もかなり多いらしい。」 天の口からはもう一文字すら出なかった。 涙が頬から垂れ下がってくる。 「とにかく今は休め。お前は奇跡的に軽傷だったから明日には退院できると医者が言ってた。」 宏さんは天を励まそうとしていった。 「…大丈夫だ、途絵は必ず助かる。」 宏さんが椅子から立ち上がりながら言った。 「俺は今日は帰る。明日迎えに来るからな。」 宏さんはそう言い残して部屋を出た。 部屋は沈黙に包まれた。 天はハッとしたかのように、あの機械が光ったあとの爆発はどうなったのかを聞いていないと思い出した。 だが、もう宏さんは帰ってしまった。 天は、「わからない事は明日聞こう」と自分に言い聞かせ、暗い表情のまま、途絵を見つめて、 「お前の笑顔がまたみたいな」 といい、目を閉じて寝た。 〜次回に続く〜