まだ見ぬ誰かへ こんにちは。こちらの世界は大雨です。明後日まではお天道様を拝めないくらいの歴史的な雨だそうで、なんだか町全体が落ち込んでいるようです。海も大きく荒れています。そちらのお天気はいかがでしょうか。海を越えたとなると、やはり違う天気でしょう。 そうだ、説明をすっかり忘れていた。自分が当たり前のように知っていることは、わざわざ説明するのを忘れてしまいますね。はじめに「こちらの世界」と書いた理由の説明です。 僕の住む地域に、「海はあらゆる世界とつながっている。故に、時に波は奇妙なものを運んでくる」……そういう伝承があるのです。だから、それが本当なら異世界の誰かに手紙を届けられるんじゃないかと思い立ち、こうして筆を執りました。 でも異世界の人に何を話せばいいんだろう。僕ってば思い立ったらすぐ動いちゃうから、よくこんな風に困ったことになってしまいます。とりあえず、僕の世界の話をします。こちらはとっても平和です。明日の食い扶持に困らないくらいには皆裕福です。それから……戦争も、何十年と前に集結したっきりです。 そちらはどうでしょうか。もしも今そちらの世界が大変だったとしても、きっといつか平和になる日が来ます。だから、どうか諦めないで、生き抜いてほしいです。 もしもそちらの世界も平和なら、どうかお返事をください。海はつながっているから、いつか僕のもとにあなたの返事が返ってくるはずです。 何はともあれ、僕の言葉が通じる世界へ流れ着きますように。 あなたにとっての異世界人、エイルズより 親愛なるエイルズへ 手紙を受け取りました。こんにちは、こちらは世情に似合わぬ快晴です。 結論から話しましょう。こちらの世界は戦争の真っ只中です。今私がいるフォールガイア村はもうすぐ陥落するでしょう。相対しているダリア帝国とは海を挟んだだけの地形ですから、場所が悪かったと言わざるを得ません。これ以上のこちらの話は、私の世界の誰かに渡るリスクを考えてやめておきます。 そして__励ましの言葉をありがとう。もう駄目だろうとばかり思っていたが、最期に足搔いてみるのも悪くない。そう思えました。生き抜けるかは分かりませんが、諦めずにやってみます。 無事に生きて戦いを終え、君の返事を読める日を楽しみにしています。 p.s.返事が短くて申し訳ありません。何分こちらは紙が希少なのです。それと、私の世界の人間の手に渡っても大丈夫なように、私の名前は書かないでおきます。 君にとっての異世界人より