水菜譚 幕間:師弟と女-序- ||||||||||||||||||||||||||||||| お師匠さんは酷い人だ。 訓練とか言いながら全力で殺しに来る。 僕を安静にさせるべき状態でも僕をボコボコにする。 料理が上手いくせして、僕に料理を作らせる。 部屋の掃除...ていうか全部の家事を 僕にやらせて酒を飲む。 でも何故か嫌いになれない。 なんというか不思議な愛嬌のある人なのだ。 逆に言うとお師匠さんの虐待のおかげで、 僕は大量の技能を習得できた。 3年。お師匠さんについていってから3年。 その間の最も衝撃的だった出来事を 少し振り返ってみようと思う。 |||||||||||||||||||||||||||||||| 2031年11月21日。初仕事の翌日。 「お師匠さん一発殴らせてください。」 家の...お師匠さんと出会ってから、 住まわせてもらってるお師匠さんの家で 目覚めた僕は一言目にそう言った。 「君に殴られたら私は死んでしまうよ。」 相変わらずの気持ち悪い笑顔で苦笑の 真似顔をしてお師匠さんが言い返す。 僕程度のパンチでこの怪物が死ぬ訳ない。 なんか腹立つがそれはスルー。 「お師匠さん。飯。飯頂戴。」 ショットマンとやらに撃たれて痛いし、 腹も減ってるのでとりあえず飯。 「くはっ!やはり君は大物だな。」 もうツッコむ気も沸かない笑い方。 そう言いながら珍しく料理を作りに行くお師匠さん。 「珍しいですね。いつもは僕に丸投げ して酒飲んでるくせに。」 嫌味ったらしくそう言ってやる。 この狂翁の行動理念など聞かないと 理解することなどできないのだ。 聞いても理解できる可能性はほぼゼロだが。 「いやいや。初仕事の大台を乗り越えた 弟子にご褒美でもと思ってね。」 この人にそんな考え浮かぶことあったんだ。 「ついに人間のフリまで始めたんですね。 お師匠さんにしては上手ですよ。」 絶対また[くはっ!]って笑うぞ。くるぞ。 「くはっ!やはり君は面白い。心底愉快だ。 それにこれは本心だよ。人の真似事じゃない。」 まるで本当に自分が人間じゃない みたいな言い方をするお師匠さん。 実は人間じゃありませんでした~ とかつまらない展開にはならないよね? 「それに私は人間だよ。それ以上でも 以下でもないんだ。怪物呼びは傷つくな。」 マジで傷ついてそうだな。 この人何が嫌いで何が好きなのか 分かりにくいんだよな~。 「そうですか。すみません。」 思ってないけど。ついでに思ってた事を聞いておく。 「何でわざわざあの人と殺し合いさせたんですか?」 聞きたかったのはこれだ。僕はあの人より弱かった。 悪運で勝っただけ。ショットマンには悪いが、 視野を狭めたのが駄目だった。 強いのに、わざわざ負けに行ったのだ。 自分より弱い相手に警戒をして、 本当に警戒するべき凶器への警戒を怠った。 僕が勝ったというより、 ショットマンがわざわざ負けたと 言った方が正確かもしれない。 「君の可能性に賭けたかった。 それだけだよ。」 は!?それだけ!?説明責任を果たせよ! 「曖昧に答えないでくださいよ...。 どういう意図なのか正確に言ってください。」 そこだけは凄く気になったのだ。 勝てない相手に挑ませても無駄死にさせるだけで、 育てた意味が全くない。 「ショットマンは裏社会でも多少有名でね。 君の殺し屋としての華々しい活躍の 足がかりになると思ったんだよ。 確かに彼は君より数段強い人間だった。 でもそれも重要だったんだよ。 君が彼に勝てなければそこまでの人間。 彼を勝つことができれば更に高みに行ける。 今の君に最も適した相手。それが彼だった。 それだけだよ。」 半沢〇樹の大和田常務かよ。 滅茶苦茶過ぎる自論に呆れる。 そうだった。そういう人だった。 意外と優しいのか?とも思ったが、 全くもって逆だった。 人を道具くらいにしか思ってない。 しかも相手が一番弟子でも対応は変えない。 「もう二度とお師匠さんに期待 しないようにしときます。」 呆れながらそう言った。 それを見てお師匠さんがまた、 「くはっ!」とキザな笑い方をしたのだった。 ||||||||||||||||||||||||||||||| 2032年元日。 ハッピーニューイヤー。 他の人達がそうやって祝い合ってる中、 僕は勝手に決められた相方と ヤクザを殺し回っていた。 警備の奴らに見つかったせいで、 全員殺らないといけなくなった。 それもこれも相方のこいつのせいで...。 「何回も謝ったじゃない?そろそろ許してよ?」 プリン食べられたんじゃないんだぞ。 「ほしいのは謝罪じゃなくて結果だからな? 口じゃなく手を動かして。」 基本年上には敬語だが、 こいつには絶対敬語使わない。 お師匠さんの言っていたような人物じゃなかった。 思った十倍、足手纏い。 殺すのは上手いが、隠密すれば そもそもこんなことになってない。 |||||||||||||||||||||||||||||| 2031年12月30日 「君にお客さんだ。」 お師匠さんに呼ばれた。 「急になんですか?要件くらいは 言ってくれていいじゃないですか。」 「君への直接依頼がきたんだよ。 応接室で対応しているから君にも言ってもらいたい。」 その言葉に違和感を抱く。お師匠さんはここにいる。 なのに応対しているとはどういうことだ。 「お師匠さ──」 「それに、君に会わせたい子がいてね。」 その疑問を口に出す前に答えを言われる。 その人が応対を任されてる、という ことで間違いないだろう。多分。 「私の知り合いの娘だ。歳は21。 君と同じで殺し屋だ。実力は信用できるし、 敵を欺くのも上手い子だよ。」 意外と殺し屋ってたくさんいたんだ。 それはどうでもいいとして、早く行かなければ。 依頼人を待たせている。 気合を入れて仕事に臨もうと─── 「勿論、惚れたらアプローチでも なんでもするといい。 あの子は今のところフリーだからね。」 思ったがお師匠さんの余計な一言で、 少しやる気を削がれた。 ||||||||||||||||||||||||||||||||| 「あら。こんにちは。君が私のパートナー?」 扉を開いて顔を合わせた瞬間、そう言われる。 開口一番がそれとは。絶対モテるなこの人。 見た目は青髪で髪は少し長め。 背もそこそこ高め。160,165くらいか? 胸は恐らくcくらい。──────。 自分も男だと自覚する。そこを見ちゃうか。 優しそうな目つきで第一印象は、お姉さん。 美人だし優しそうだが、絶対腹黒い。 所作で分かる。あざとい。 相手のハートをキャッチしようとしてる。 ハートキャッチプリキュアしてる。は? 「こんにちは。水菜 抹茶と申します。 お師匠さんがお世話になっております。 ご用件はなんでしょうか。」 一応女の方もお客さん。 嫌いなタイプだが、丁寧に対応。 「そんなにかしこまらなくても大丈夫よ? これから一緒に依頼をこなすんだし。 確かそうよね?依頼主さん。」 「は?僕この人と仕事しないとなの? 嫌なんだけど?お師匠さん? 説明責任は?会わせたいとしか言われて ないんだけど?ねえお師匠さん?」 そうでしたか。了解しました。 敬語は少しの間抜けないとは思います。 そこはご了承していただけると助かります。 「あ、やべ。」 思考と発言が逆転した。やべ。 小説でよくみるやつやっちゃった。 どうしよ。 「ふっ!ふふふ!あははは!」 女が大爆笑する。 「正直ね。ふふっ...ふふふ...あははは! いいわね。好きよ。そういうの。」 呵々大笑と言った様子だ。 何故か琴線に触れたらしい。 理解できない。 「あなたのお師匠さんの言った通りね。 凄く面白い。そういえば私の自己紹介 を忘れてた。私は亜嶋 結依。 亜人とかの亜に、鹿嶋の嶋、 結ぶに衣で亜嶋 結依よ。よろしくね?」 あしま ゆい...。ゆいの部分が嫌だ。 僕の本名と字まで同じだ。 やっぱ女っぽい名前だったんだな。 「すみません。本心が溢れ出るくらい 嫌だったもので。」 事実なのでそう言っておく。 「ふふっ。そう。でも、これから一緒に 仕事することになる相手なのよ?そこまで 毛嫌いしなくてもいいんじゃないかしら?」 傷ついたような演技でこちらに接する結依。 「気持ち悪いので惚れさせようとするのやめて もらえませんか?」 率直にそう言っておく。 「あら~。振られちゃったぁ...。 そんなに寂しいこと言わないでほしいわ。 私は結構あなたのこと好きなのよ? 惚れさせたのだから責任はとるべき だと思うのだけれど~?」 「すみません依頼者さん。 この人のせいで話を進められなくて。 ところで、依頼とは何でしょうか。」 女が拗ねたように頬を膨らませる。 無視されてしかるべきの態度だったのが悪い。 「おや。私も会話に入って良いのかな?」 お師匠さんみたいな喋り方。 少し白髪がある、恐らく70前後の老人。 少し白髪があるのが逆に雰囲気を醸し出している。 「本当にすみません。 わざわざ掛け合い漫才を見せてしまって。」 依頼者の人には申し訳ないことをした。 「いやいや。とても愉快だったからね。 一切の不満はないよ。」 少し愉快気な表情だ。嘘ではないだろう。 「それじゃあ本題に入ってもいいかな?」 「はい。お願いします。」 「結依君も問題ないかな?」 「はいはい。私も聞いてるわ。」 結依君って言われて返答しそうになった。 時間経ってるのにまだ過去の感覚が抜けない。 「依頼は単純だよ。反社会的勢力、ヤクザと 呼ばれる組織の組長の命を取ってもらいたい。」 「え~?嫌だわ。報復とかされたくないもの。 私はあんまりヤクザ屋さんとか嫌いだし~?」 「了解しました。僕とこの人で何とかします。」 「私は嫌って言ったのだけれど?」 「僕とこの人で何とかします。」 「強情ね~。嫌いじゃないわ。」 「そうですか。僕は普通に嫌いです。」 「つれない事言わないでよ~。 お姉さん寂しくなっちゃう。」 「そうですか。じゃあ行きましょう。」 「残念だが今すぐは危険だよ。 明後日は組長事務所から人が減る。 その時が一番の好機だからね。 そのタイミングで行くことを私はオススメするよ。」 「情報提供ありがとうございます。 では、その日に行くようにしておきます。」 いや大丈夫ですとか言うと好感度が下がる。 好感度が高いとチップをくれることもあるので、 従っておく。 「では頼むよ。」 そう言って依頼主が出ていく。 明後日は元日だが、休めなさそうだ。 「お姉さんは嫌って言ったけれど 無視されちゃったからね~。お姉さんご立腹よ?」 「僕はもう寝ます。おやすみなさい。」 勿論嘘。戻ってテレビでも見る。 それに言い返すのは面倒くさい。 黙ってたらモテるだろうに。 「はい。おやすみ~。おやすみのキスしておく?」 「遠慮...嫌なのでやめときます。」 「あははっ!また振られちゃった。」 何かこの人とは腐れ縁になりそうだな。 そんな予感を抱きながら寝床に向かった。 続く。 matya_machaの一言 ドウモ!!マッチャデス!! 次は兎章と言ったな?あれは嘘だ。 ていうか、兎章が3年後のお話なので、 その三年間の重要シーンを幕間として書いとこ~ ってなりました。 これを見なくてもストーリーというか、 水菜譚を楽しめると思います。 でもここまで見てる人もいないか。 まあ、この小説おもんないもんな。 コメント、☆,♡、拡散等、励みになります!
師弟と女って書いてるけど、 お師匠さん要素薄いよ~ 己章-序- https://scratch.mit.edu/projects/1277548111/ 幕間:師弟と女-中- https://scratch.mit.edu/projects/1279566093/