水菜譚 幕間:師弟と女-中- |||||||||||||||||||||||||||||| 2032元日 亜嶋が警備を撃ち、 抹茶が取り残しの首を飛ばす。 認めたくはないがいい相性だ。 「ほらほら~。私達の首を取るんでしょ~? 頑張って組長さんにいいとこ見せないと~!」 「ノリノリなのはいいけど、うるさい!集中して!」 「いいじゃない。若いうちに楽しまないと損よ?」 「殺しを楽しむ趣味はいまのところないの! 頼むから黙って!!」 「も~。分かったわよ。私は二階から二十階、 君は二十一階より上を頼むね~?」 「...急な真面目にびっくりしてる。了解。」 階段を駆け上る亜嶋。 二十一階ってEVから行けるかな? ていうかこの建物高すぎなんだよ。 「待てやぁ!舐めた真似してくれたなぁ!!」 げ。増援来たし。ヤクザ屋さん怖い。 チャカ持ってる。意味ないけど。 「あいつに何人も兄弟弾かれとんじゃ!! あいつの狙いは組長(オヤジ)じゃ!! 極道の意地見したれやぁ!!」 この時代でこんだけやれるってことは やっぱり表の情報は信用ならない。 だが悲しいかな。どれだけ人を集めても、実力が 伴っていなければ対抗打にならない。 鉛玉の雨が飛んでくる。 その全てをお師匠さんから貰った刀で流す。 しかもこの雨、全てが抹茶に当たる訳ではない。 何発かは逸れている。 恐らくここで初めて撃つ者もいたのだろう。 可哀想だが全員死刑だ。 一人一人首を刎ねていく。 「クソ──────」 喋っているとか関係ない。 待ってやる必要など皆無だ。 こういう容赦ない姿勢が大事...と勝手に思っている。 「この刀すぐ汚れるんだよな...」 刀に付いた血を刎ねた相手の服で拭う。 戦国時代も手拭いを使うか、 切った相手の服で拭うかだったらしい。 それを真似たわけじゃないが。 この刀、手入れが大変。 他の刀だとあんまりなのだが、 この刀は血が拭い取りにくい。 マジで妖刀かもしれない。 そんな事を考えながら組事務所のある ビルの扉を片っ端から開けていく。 依頼者が「明後日(元日)はがら空きだよ~」 とか言ってたから今日来たのに、 もう60は首切ったぞ。元々の数どんだけいたんだよ。 ───。こんだけいる理由はなんとなく予想できるが。 ていうかこの高いビル全部ヤクザの 根城なんだよな...。 やっぱ怖いっスねヤクザ空手は。 鯱山出てきちゃった。 まあ、相手が弱ければ弱いほど 楽な仕事ってわけじゃない。用心はしておこう。 ||||||||||||||||||||||||| 「おいしょ。」 階段を駆け上る。二十階に着いた。 「おい!おったぞ!あいつじゃ!」 「あちゃ。見つかっちゃった。」 建物に侵入しようとした際、 私のせいで警備の奴にバレた。 そのせいで苦労させてるのだが...。 「せめて華を持たせてあげないとね。」 馬鹿は高い所が好き。 だから組長は最上階だろう。 拳銃を持っているが全員構えが悪い。 持ち方も下手過ぎる。 「持ち方が駄目。姿勢も悪いわよ?」 一応アドバイスしておく。 もう脳天をぶち抜いたので 返事も行動もすることはできないが。 父親から貰った銃。 後にも先にもこれ以外を貰ったことはなかった。 父親には感謝している。だが、嫌い。 腹違いの兄弟を何人も殺す羽目になったのだから。 「意外と下にいたりするかしら?」 まさかないとは思うが。 「こいつや!兄貴を殺した奴や!! あいつの命とったれ!」 それにしても───── 「パターン少ないわね。銃に頼って。 ドス持った強いヤクザとかいないの?」 「黙れ!クソアマが!殺───」 うるさいなぁ。ささっと全員殺して あの子......抹茶君のところに行かないと。 「あの子の目に惚れちゃったのよね。 年甲斐もなく一目惚れしちゃった。」 弾を装填しながら考え事をする。 あの目は私を見ていなかった。 他人を見ようとしていない。 私を介して自分を見ていた。 それが何故か愛おしかったのだ。 「歳の差カップル...あの子的にはありなのかしら?」 無しだろうな。歳の差カップルがじゃなく、私が。 「なんかむしゃくしゃするわね。 ストレス発散しないと。」 人の血が好きだ。 自分と同じものを見ると落ち着くのだ。 私以外の人間にも私と同じものがあると、 自分も人間だと、そう思うことができた。 どうやってもあの時の言葉を引きずってしまうのだ。 「さて、ターゲットはあの子に任せて、 私は楽しんでおこうっと♪」 |||||||||||||||||||||||||||||| 「お前さんどこの組の鉄砲玉じゃ。」 最上階。意外にも苦労することなく来れた。 いかにも偉い人が座る場所に座っている男がいる。 写真通りの顔。組長だろう。質問への答えは沈黙。 「...返事はせんか。ここまでよう来た。 茶の一つくらいは飲んでいけ。 儂を殺すのはそれからでええじゃろ。」 無視して殺そうかとも思ったが、 気が変わった。面白そうだ。ひょっとこの面を取る。 「それがお前さんの顔か。いい目じゃ。」 「よく言われます。気持ちの悪い目とか 怖い目とか。」 「そうか。儂は好きだがな。ほれ、茶じゃ。 安心せい。薬も毒も入っとらん。」 「ありがとうございます。」 影武者の可能性も考えたが、違う。 人間としてのオーラ、所作、目の動き、 歩き方、声色、全て常人ではない。僕の主観だが。 「ようここまで来た。お前さん、11かそこらじゃろ。若いのによくやる。儂の息子達を幾人殺した?」 「60~70の間くらいですね。 細かい数は覚えてませんが。 まあ、怖くはありましたよ。迫力は。 実力が欠片も伴ってませんが。」 試金石としてそう言ってみる。 どうくる? 「そうか。すまんなお前たち...儂のせいじゃな...。」 後半は小声だった。僕の刀を見て言っているあたり、 得物に切った人間の魂が宿るとか考えてるタイプだ。 僕は良い考え方だと思う。 「ところで、お前さんの他にもう一人いる と聞いた。そ奴はどこ行った。」 逆上して襲い掛かってこないあたり、 既に自分の死を覚悟している。 殺されてもいいと思っているのだろう。 「恐らく20階より下で殺しまわってると 思います。止めるように言っておきましょうか?」 勿論そんなことは微塵も思ってない。 残った奴に復讐とかされても困るし。 「いや、いい。儂が死ねば、息子達は 身内での抗争か食い逸れるかだ。 ...できれば楽に、逝かせてやってくれ。」 変なの。普通は止めさせるでしょ。 止めるつもりなかったけど。 ついでにもう一つ質問しとこうか。 「今日、組員達は普段より少なかったでしたか?」 ずっと気になっていた。手薄だとは言えない。 圧倒的に兵隊が多かった。 もしやと思い、それを聞いてみたのだ。 「いや、ずっとお前さんを待ち構えていた。 お前さんが来るという情報があったからな。 最強の鉄砲玉をぶつける、と言う情報じゃ。」 なるほど。目的が分かった。 依頼者も返答次第で死刑だ。 「そうですか。ありがとうございます。 ─────そろそろいいでしょうか。」 「ああ、構わん。儂の首を持っていけ。」 面白い男だ。───そう考えるとムカつく。 「萎えた。」 「どういう意味じゃ?」 「僕は、一昨日依頼を受けました。 そして依頼者に[明後日は手薄だ]と 言われたんですよ。」 そう、依頼者にムカついたのだ。 金は後払いだ。それも何かムカついた。 「つまり、儂に報告をしたのはその、 [依頼者]と言いたいのか。」 話が速くて助かる。 「そうです。目的はこの組の壊滅。 しかもわざわざ組員全員を殺させようと 絵図を描いた。ムカつきません? 殺したのは確かに僕らです。でも、主犯は依頼者。 今の僕はあなたの首に価値を感じない。」 そうはっきり言ってやる。 正直悪いのは殺した僕らなのだが。 腹が立つ方は切る、気にいった方は残す。 そんな──自分勝手な生き方をしてみたい。 「僕はあなたが気に入りました。 あなたを殺したくはない、って程じゃないですが。」 どちらかというと依頼者への怒りだ。 依頼者が変な気を起こさなければ、 僕はこの人を殺していた。だが、依頼者は騙した。 絵図の通りに事を運ばせるのは気に入らない。 「わはは!はっははは!儂の首に価値を感じんか! そうか、そうか!!面白い!乗った!」 依頼者のせいで殺す気が萎えた。 許可を得ず勝手に絵図を描いたのだ。 ぐしゃぐしゃにされても文句は言えない。 「じゃあ、僕は相方に報告に 行きます。そちらは自由にしていただければ。」 そう言い残し立ち去る。 一言「壊滅させろ」とさえ言われれば、 僕だって文句は言わない。だが、僕を欺こうとした。 それが気に入らない。 ||||||||||||||||||||||||||||||| 「愉快な男だな。あやつはいつか世界を 動かす───いや、大それた期待か。」 拳銃を手に持ち覚悟を決める。 「お前さんに生かされようとも、儂は許せん。 すまんな。名も知らぬ鉄砲玉よ。」 先ほどまで茶を飲んでいた男...童を思い浮かべる。 その男の目を思い出し、銃口を顎下から上に向け、 引き金に指をかける。 「儂もいい息子達に恵まれたな。」 最後の最後まで自分の為に死んだ 息子達を思い浮かべる。 血は繋がっていない、大切な息子達。 自分が死んだ後、事務所を出ていた 息子達はどうなるだろうか。 食い逸れるかもしれない。 一瞬、愛しい息子達の事を思い浮かべる。 多くの息子を持っただけの、ただの強面で、 他より強かっただけの、 他の何物にもなれなかっただけの男は。 引き金を引いたのだった。 続く。 matya_machaの一言 ドウモ!!マッチャデス!! どうも!蜘蛛ですが、何か?のゲームに ハマり過ぎて書くのを忘れてた抹茶です! 書きながら、「これ幕間か?いや違うな。 序、中、下で分けてるもんな。違うわ。」 ってなってましたが、幕間です。(固い意志) 亜嶋ちゃんはヒロインじゃないんだ。 悔しいだろうが仕方ないんだ。 後々にもでてくる腐れ縁キャラ。いるよね。 それが亜嶋ちゃんです。 これを見なくてもストーリーというか、 水菜譚を楽しめると思います。 でもここまで見てる人もいないか。 まあ、この小説おもんないもんな。 コメント、☆,♡、拡散等、励みになります!
幕間:師弟と女-序- https://scratch.mit.edu/projects/1279166950/ 幕間:師弟と女-終- https://scratch.mit.edu/projects/1279866482/ 小話。 組長はヤクザの中でも穏健派。 息子達(組員)を死なせるのが嫌なので、 抗争を仕掛けるとかはしない。 強さは、ショットマンよりちょっと強いくらい。 ちなみにショットマンは本当に強い人物でした。 水菜譚でも20位くらいに入る。 水菜抹茶君が戦闘IQ高すぎたのが敗因。