とある街のクリスマスの夜、街角で少女がマッチを売っていました。 少女はここ数日家に帰っておらず、またろくなものを食べていませんでした。 籠の中身をすべて売るまで、家には入れないと親に言われたのです。 身の丈に合わない大きな籠に、数えられないほどのマッチを詰め込んで少女はまばらな道ゆく人に声をかけ続けます。 夜も深まって、数人にマッチが売れて、埒が開かないと無料で配って。 それでもなお、籠の中身は減ったように見えません。 家々から漏れる灯りが、少女の惨めさをより強めます。 もう深夜で、通行人はいなくなってしまいました。 家に帰ればぶたれるし、ろくな食べ物も貰えないでしょう。 あまりの空腹と寒さに、マッチで暖をとるなんて発想もできないほど朦朧とした意識の中、少女はとうとう倒れてしまいました。 リンの目が覚めると、すっかり夜は明けており、身体も随分軽くなっていました。 ああ………だけど……… …………寒い……………………
幽霊は己の認識でその体を形成する。 寒いと思えば寒くなるし、眠いと思えば眠くなる。 減らないと思えば減らないし、帰れないと思えば帰れない。 自分はマッチでいっぱいの籠を持っていて、お腹が減っていて、すごく惨めだと思っていればそのとおりになる。 では、逆に考えていない箇所……たとえばマッチの質。 そこには無意識が現れる。 家に帰って暖まりたい お腹いっぱいになりたい… そういった幸せになりたいというリンの欲求がマッチの炎に取り憑いて、マッチを擦った者に酷い依存性をもたらすのだ。