陸奥へまかり下りたる兵、いと怪しき業をなす翁を見つけたり。いかなる事ならむと思ひて、歩み寄りて、 「そこに何をかしたまふ」と問ひければ、翁、「かむいに祈りたり」と言へり。 兵、「かむいはいかなるものぞ」と問ふに、翁、「蝦夷にては、神となむ言ふ」と答へたり。 兵、「神はいかにおほせらるるぞ」と問ひければ、翁、「蝦夷にこそ、命は宿れ、とおほせらる」と答ふ。 兵、いといみじく腹立ちて、その猛き御太刀を引き抜きて、「帝を貶し聞こえさするは、いかなる事ぞ」と言ひけり。 翁、「いかなる御心得ぞ。わが神、君の御位に勝り給ふとは、片時も申さざりき。」と答ふ。兵、太刀を納めて、その所を去りにけり。
・なぜか蝦夷(えみし、7~9世紀において、朝廷に服従しなかった勢力、主に東北に定住。)の人がアイヌ語を使っているのですよね。