右矢印かスペースキーで次、左矢印キーで前のページへ モバイルも対応にしました。 場面右の方を触ると次、左の方を触ると前に戻ります。 まとまってるのは↓ ※手間がかかるため、ふりがなは振れていません。 分からない漢字は、調べるか、誰かに聞くか、コメン トで聞いて下さい。言ってくれれば、意味もいいます から。 まだ未完成の部分が多いですが… ↓ 【砂の優しさ】 サンドは葉の隙間から入ってくる黄金色の温かい光の中で目を覚ました。 サンドの周りの寝床は、もう猫がいなくて冷えていた。きっと、兄弟たちと母さんは、先に起きたのだろう。特に兄弟は、興奮していて早く起きたはずだ。サンドが遅くまで眠れていたのが不思議なほどだろう。 そう、サンドは今日、生後6ヶ月になった。子猫たちは生後6ヶ月になると信者になるための訓練を開始する。自分の導者となる猫を選び、狩りや戦いなどの生きてゆくうえで必要なことを教えてもらう。特に、仲間を信じ合うことについてだ。 信者はどんなときも自分や仲間を信じ、懸命に生きるのだ。信じ合うことで、大きな絆が生まれ、決して壊せないものになる。と、父が言っていた。 そして今日はサンドが3匹の兄弟たちと、その信者への1歩を踏み出す日なのだ。 けれど、サンドには大きな不安があった。サンドは獲物を殺せなかったのだ。もう死んでいるものなら食べられるが、自分で殺すことはできない。どうしても、自分が大切な生命を奪ってしまった気がしてならないのだ。 前に1度、アッシュに言われて殺してしまったことがあった。 「意気地なし」といわれ、かっとし、殺してしまったのだ。その時の、獲物のあげた悲鳴や、その後力が入らなくなって鼓動が消えていくときの音が、まだ耳に残っている。 生命の終わりを感じ、懸命に叫んだ獲物…。それでも逃れられず、ついには死んでしまった獲物…。 たかがからかわれたからという、少しの怒りなのに、それだけの理由で、生命を奪ってしまった。そのことは一生忘れない。もちろん、その後はきちんと余さずに食べてあげたが。 そうして食べることで、その殺されてしまった生命は、僕の生命を繋いでいってくれる。でも、だからといって、簡単にその動物の一生を終わらせてしまっていいのだろうか?1度殺してしまえば、1度殺されてしまえば、もう2度と、その一生を歩むことはできなくなるんだ。その獲物の終わりを、僕達が勝手に決めてしまっていいのだろうか。 狩りの訓練で獲物を仕留められるようになるか、それがいつも僕の心に重くのしかかってきた。 一向に獲物を捕まえられるようにならず、信者になれなかったらどうすればいいんだろう。 サンドの不安は、どんどんと底なしの沼にはまってゆく。 ブレイブに見下されるだろうな。アッシュにも。兄弟2匹ともに信者になれなかった僕を馬鹿にして笑うんだ。 「ちっぽけで役立たずな弟だな」って。 だがそこで、サンドはあることに気がついたのだ。部屋の出入り口から、心地よい春の風が吹いている!ほのかに暖かく、安心できる風だ。風が僕を励ましてくれているのでは? 「きっと大丈夫、いつかはしっかりと狩りができるようになるよ。あなたの導者が、あなたを正しい道へと導いてくれる」 と、言っているようにサンドには聞こえた。 でも、サンドの気持ちを沈ませていたのは、狩りのことだけではなかった。 そう、サンドの瞳は青みがかった紫色だったのだ。母によれば、他の兄弟は青っぽいグレーから他の色に変わっていったが、僕は目を開けたその時から、この色だったそうだ。 それでも母は、「あなたの瞳の色は、世界一美しいわ。」といってくれた。 更にこんな奇妙な伝説も聞かせてくれた。 あるところに、何色かはわからなくなってしまったが、とても美しい色の瞳をした、2匹の猫がいたそうだ。その2匹の猫は、共に群れを作り、多くの群れに“信じる”ことの大切さを伝えたらしい。 そして母は言っていた。僕はその猫の生まれ変わりで、もう1人の猫と、もう一度“信じる”ことの大切さを伝える運命にあるのだ、と。 僕はロックに、信者の名前は絶対に数にしなさいとも言われていた。その猫のオス側の方の名前の数で群れを作ったからだ。実際に、僕の前世だと言われる猫は、“8匹の勇者”という名前だったそうだ。その後、新しい群れのパートナーになり“八芒星”という名前に変わったのだが。 まだ僕の名前となる数は決められない。サンドは7という数が好きで、できればセブン、“7匹の信者”という名が良かった。 でも、それはできない。名前はその群れの拠点となるものを見て、選ぶからだ。 一応、最低のギリギリで4、できれば5から12くらいにしろと言われた。群れの数だから、多すぎても少なすぎてもだめなのだ。 ま、そんなことから、僕は、兄弟から特別視され、いつの間にかブレイブとアッシュには、避けられ、からかわれるようになったのだ。まあ、クラウドは別だったが…。 そんな理由付きの、青みがかった紫の瞳を眠そうに開けて、サンドは部屋を出た。からっと晴れた、いい天気だった。 群れの空き地の中で、皆がそれぞれらしく、過ごしている。中には獲物を食べたり、気持ちよさそうにお昼寝をしていたり。 父、ロバストは足の長いフットと、鳥を分け合って食べていた。きっと、子供のことでも話しているのだろう。 フットとリングは連れ合いで、子供が2匹いた。からだに斑のある2匹、スポットとペタルは、数ヶ月前、無事信者となり、群れを出ていった。 そういえば、2匹とも、僕によくしてくれたなぁ。特に、クラウドをかわいがっていて、小さな頃からよく遊んでくれた。少し戦いの技を教わったりもした。 信者への試練のあと、普通はそのまま森へと出発するが、2匹はわざわざここまで戻ってきてくれたのだ。お別れをしに。 その時の2匹は、本当の自分の名を手に入れ、輝いていた。 あとは、日当たりの良い芝生で、ペールとリングがグルーミングをしている。近くには妹のクラウドもいて、3匹のメスは、仲良く日向ぼっこをしている最中だった。 更に、奥の方ではスクラッチとクローが何やら言い合いをしている。耳を澄ますと、クローの声が聞こえた。 「いいか?あいつらのメンター(導者)になるのは俺だ!」 スクラッチの鼻を鳴らす音が聞こえる。そうか。2匹は僕らの導者になりたいんだ。それで、喧嘩をしているのか。 サンドは、首を巡らせて、空き地の向こう側をもっとよく見ようとした。 「お前なんかより、俺のほうがずっといいメンターになれる!だいたい、お前は名前からして怖がられるだろ」クローが耳を寝かせて言うのが見えた。 「は?どうせ「はい!分かりました、メンター!」って呼ばれるんだろうからカンケーねえだろ!」 更にクローは言う。「それに“獲物を切り裂く丈夫な爪”、お前だって丈夫な爪だぞ?怖がられるのはどっちだ!?」 肩に大きな傷のある信者は言った。 「フン。ま、どっちにしろ俺の導き方のほうがうまいだろうけどね」クローも引く気はない。 ふと、右から誰かにぶつかられた。ぶつかられた衝撃で、サンドは腹を上にしてひっくり返った。遠くに意識を集中していたサンドは、近くの音を察知できなかったのだ。 長過ぎたので続きはメモとクレジットへ↓
とりあえず1章完成! どんどん章を増やしてって、その都度題名は変えるよ。 参考:小説、WARRIORS・サバイバーズを書いたエリン・ハンターさんに感謝します。 ↓ 「おはよう、寝坊助さん」 姉の、いつも通り僕を下に見るような、高い声が聞こえた。 アッシュがサンドの顔を覗き込んで言う。「やっと起きたね。それとも、まだ眠ってる?あたしの足音も聞こえてなかったみたいじゃない。」 サンドは起き上がって草のクズを払った。 飛んできた草を避けるように1歩後ろに下がったブレイブが言う。 「緊張しすぎて、夜も眠れなかったのか?信者はどんなことも恐れないんだぞ」 サンドはむっとして耳を寝かせた。兄たちにああこう言われる筋合いはない。 ブレイブは更に煽ってくる。「それに、お前は“運命の者”なんだろ?それじゃあ、よりびびってはいられないはずなんだけどねえ」 ついに我慢できなくなったサンドは言い返した。 「緊張なんてしてないよ!ただ、あまりにも心地よかったから眠ってただけだ!」 本当に?昨日は夜遅くまで起きていたじゃないか。でも気持ちよかったのは間違いない。嘘にはならないはずだ。 「そういうブレイブこそ、緊張して早く起きたんじゃないのか?」 そう言ってサンドはブレイブの反応を待った。 ・・・。 反応はない。 2匹とも、もう聞いていなかったのだ。サンドのことなんか知らんぷりして、遊んでいる。まるで、出来損ないの弟とは、話していても意味がない、とでも言いたげだ。 「ほら、捕まえてごらんなさいよ」サンドのことなんか気にせずに、走りながらアッシュはブレイブに言った。 「もしかして、サンドよりも鈍くなっちゃった?」と言って走り出す。 アッシュはブレイブにただの煽りとして言っただけだろう。青い目がいたずらっぽく輝いていたから。けれど、その一言でサンドの心は重く、沈んでしまった。僕はそんなにできないやつだと思われていたんだ。 ブレイブはすぐに妹を追いかけだした。 「僕が鈍いだって?逃げ切ってから言え!」 ブレイブはらくらくとアッシュに追いつき、飛びかかって倒した。 「お前、脚遅くなった?」 兄弟の中でも特に頑丈な前脚で、がっしりとアッシュを押さえつける。 「バカね、お兄ちゃんが早くなったのよ」 アッシュは降参するようにブレイブを見上げる。 「どっちにしろ、早く放してくれない?お兄ちゃん、重くもなったのよ?」 ブレイブはすぐにアッシュの上からどいた。 「なんか獲物がないか、見てこようぜ。腹減った」 ブレイブは言うが早いが、走り出した。すぐにアッシュが後を追い、2匹はサンドから遠ざかっていった。 ブレイブとアッシュはいつも僕をいじめてくる。「小さすぎて見えなかったよ」とか「そんな獲物も殺せないのか?」とか「気持ち悪い色の目で、こっち見てくんなよ」と。 兄さんも、姉さんも、いつも僕が何もできないと思っているんだ。そして、弟なんて、どうでもいいと。 今日だってそうだ。寝坊助とからかった上に、僕抜きで遊んだ。長く寝て、何が悪いんだ。睡眠は活動のもとになる、大切なことなのに。 少し離れたところで、仲良く獲物を分け合って食べている2匹をみて、サンドはより強く孤独を感じた。 寝床を出た頃には煌々と輝いていた太陽が、いつの間にか雲に隠れている。 サンドは1人で獲物置き場へ歩いて行き、小さな鳥をとった。きれいな羽の鳥はもう息絶えており、その小さな目には光が宿っていない。 鳥を引きずって近くの木の下に移動する。ちょうどよく光の当たる場所を見つけて、サンドは座った。 サンドは、鳥を食べる前に、紫の瞳でまじまじと見つめた。その鳥は、この群れの誰かの信者に、首を折られて死んでいた。 こいつにも、兄弟がいたのかな。こいつは、幸せな一生を送れたのかな。やりたいことができたのだろうか。何かを我慢したまま終わってしまっていないだろうか。 サンドは鳥をかじりながら考えた。獲物の生命が、僕の喉を通って、僕のものになっていく。僕も後悔しないうちに誰かに話そう。この不安を。我慢して獲物を殺すなんて、したくない。 誰なら相談に乗ってくれるだろうか。母はだめだ。余計な心配をさせてしまう。「本当に大丈夫?狩りは無理しなくてもいいわよ」と言ってくるのが目に浮かぶ。僕は下手なことを考えずに、狩りができるようになりたいんだ。狩りをしたくないのではない。 じゃあ、誰なら、僕の話を聞いてくれるんだ。僕は一人ぼっちなのか?、、、いや、待てよ。クラウドがいるじゃないか!大切な妹を忘れるなんて! クラウドはいつでも僕に優しくしてくれたじゃないか。兄さん達にいじめられても、クラウドは僕を「お兄ちゃんは小さい分、すばしっこいじゃない」「それだけ優しくて、相手を思いやってるのよ」と言ってくれた。クラウドは僕の心の支えだ。クラウドに相談しよう。 クラウドは母と一緒にいた。2匹は草の上に寝転んでいた。ペールの腹が気持ちよさそうに上下している。 クラウドは起きていた。優しい青い目を開けて、サンドを見上げている。「お兄ちゃん!どうしたの?ご飯はもう食べた?」クラウドは子猫特有の高い声で言った。 「ご飯はもう食べたよ。ただ、・・・」サンドは言いにくくて言葉に詰まった。クラウドは確かに相談に乗ってくれるだろう。けれど、まさか自分の妹に相談するなんて。ブレイブに見られたらきっと笑われる。 「ちょっと来てくれないか?人目につかない所が良いんだ」サンドは気まずくて下を向きながら頼んだ。クラウドは笑うことはしなかった。ただ、「いいよ」とだけ言ってついてきてくれた。 どこかいい場所はないだろうか。ブレイブに見つかっては困る。弱虫と言われて終わりだ。 サンドの目に良さそうな場所が映った。保育部屋!あそこならもう誰も使わないーーそう、信者への訓練を始めたものは、弟子部屋の中で寝るようになる。それに、当分は誰も子猫を生みそうにない。 サンドはクラウドを連れて保育部屋に行った。ここなら安心して話せる。 サンドは部屋へ入ると、自分の寝床に座った。緊張して、前脚をもぞもぞと動かす。 「どうしたの?こんなところに呼んで。」 妹の優しい声が、保育部屋の中に広がる。 話さなければと分かっていても、なかなか声が出ない。 はあ、僕は妹に相談するほどの猫なのか。ブレイブたちの言っていることは、正しいのかも。 しばらくの沈黙の後、サンドはついに、勇気を持って打ち明けた。 「クラウドなら知ってるかもだけど、僕は獲物を殺せないんだ。」 想像以上に甲高い声が出てしまい、一度つばを飲み込む。 クラウドは、耳をピンと立てた。どうやら、途端に興味が出たみたいだ。 「どうしても、獲物を憐れんじゃって。」 よかった。今度はもっとまともな声が出た。妹の前で緊張してしまうなんて、恥ずかしい。 「いつも、その獲物の一生について考えちゃうんだ。幸せだったのかなって。だって、その獲物だって生きているんだぞ?」 それは、そのとおりなはずだった。そこら辺のネズミや、鳥、リスにだって家族がいる。親子で共に過ごすことのない動物ではあるかもしれないが、それでも誰かのおかげでこの世に生まれてこれたんだ。 「もし、狩りの訓練に合格できなかったらどうしよう。信者になれないのかな?僕だって狩りをしたくないわけじゃないんだ。ただ、その、、うまくいえないけど、獲物について気にしなくなる方法ってあるかな」 クラウドは胸の下に前足を入れて、真剣に話を聞いてくれている。 サンドは頼むようにクラウドを見上げた。妹の青い目をじっと見つめる。瞳の奥には、見た目や喋り方では判断できないような賢さが、詰まっているように思えた。 「お願いだ、クラウド。良い方法を見つけてくれ。このままじゃだめな気がするんだ」 クラウドは優しいブルーの目で見つめてきた。からかうような表情はない。 しばらくかんがえてから、クラウドは言う。 「うーん、お兄ちゃんの獲物を思う気持ちは、捨てないでいいと思うよ。“優しさの証”だもん。」 「そっか。“優しさの証”か。でも、それでも、なんか…」 サンドは語尾を濁した。妹を批判したいんじゃないのに。やっぱり、まだ納得できない。このままじゃ一生狩りができないままだ。 「お兄ちゃんと、お姉ちゃんは、きっと嫉妬しているんだよ。」クラウドは続ける。「特に、ブレイブの方。お兄ちゃん、あたしが好きなの。それで、あたしがサンドとばっかり一緒にいるから、気に食わないんだよ。」 サンドは考える。確かに、ブレイブが僕を嫌うようになったのは、僕がクラウドと遊ぶようになってからだ。 「たしかにそうだったかも。ありがと。あ、でも、僕が獲物を殺せないのは、ブレイブのせいじゃないんだよ。僕はもともと獲物を思いやっちゃう。」サンドは言った。 「あ、そっか。じゃあ…」、 クラウドが何かを言おうとしたその時、ロックの声がした。 「〈岩の群れ〉のみんな、集まれ。これから〈岩の集い〉を行うぞ」ロックの堂々とした声がキャンプ中に響き渡る。 「あ、ロックが呼んでるよ!続きはまた後で話そう」サンドはクラウドと目を合わせていった。 クラウドはさっと頷きながら、やや早口で言う。早く群れのもとへ行きたいようだ。 「そうね。行きましょう。多分まだ狩りはしないと思うし!」 サンドはクラウドと共に保育部屋を出た。清々しい気持ちで。太陽はまた雲から顔を出している。 さあ、訓練が始まるぞ!