どうもディエスケッドです。 贖罪の大鎌の気休めに短編小説を書いてみました。 これは物語性とか全部一巻で完結するようにしますのでこちらもよければ読んでみてください! 注意書き ・サムネはhttps://jp.pinterest.com/pin/284782376421947344/ からです
<牛> あぁ...もうやってられない。 最初はこんな簡単な感情だった。 せっかく上京したというのに帰ってきたら周りはどう思うだろうか... 俺の故郷はまぁ...ド田舎だ。大きい山を挟んだ海沿いの小さい村だ。 そこで再会したのは幼馴染の岡村晴。こいつは昔から体が大きく、無口で、何を言われても静かに微笑んでいるような男だった。俺はその従順さを馬鹿にして「牛」と呼んでいた。 そんな帰省したある日のことだった。「一緒に農業をやらないか?」という牛の誘いにやってみることにした。 しかし、そう長くは続かなかった。 俺は都会で「頑張る」ということを置いてきてしまった。 「お前は牛なんだから、これくらい平気だろ」「俺は頭を使うから、お前は体を動かせ」 言い訳を並べては、日差しの中、泥にまみれて働く牛を横目に、俺は縁側で酒を飲み、昼寝を繰り返す。牛は文句ひとつ言わず、黙々と重い鍬を振り下ろしていた。 ある日、俺がいつものように「おい、飯はまだか」「明日の種まきやっとけよ」と牛に背を向けて言い放つ。 しかし、その晩、いつも聞こえる牛の重い足音や、深い呼吸音が聞こえない。 翌朝、牛の姿はどこにもなかった。書き置きも、理由も、恨み言さえない。ただ、彼が使っていた手入れの行き届いた道具だけが、静かに置かれていた。 俺は何とも思わなかった。だが、金がなくなるのでどうにかして牛を取り戻さなければ、と思った。 俺は村のみんなに聞いてみた。しかし帰ってくる答えは「晴くんなら、もうこないよ。」「晴?そういえばいそいそと駅に向かっていったねぇ」 ...本当に牛という名前にぴったりだな。 仕事も放棄して。俺を置いていくなんて。 「勝手にしろ、一人でやってやる」と俺は決意した。 しかし、いざ田んぼに立つと、水の引き方も、土の作り方も、何も知らないことに気づく。牛がどれだけの重労働を、どれほどの緻密さでこなしていたのか、その「巨大な不在」を突きつけられる。 作物は枯れ、雑草は伸び放題。家の中は荒れ果て、食べるものさえ底をつく。 空腹と絶望の中、かつて牛が耕していた美しい畑の跡を眺める。 そこでようやく気づく。俺を「人間」として繋ぎ止めてくれていたのは、都会のプライドではなく、自分を無条件に受け入れ、支えてくれていた「牛」の存在そのものだったのだと。 「……牛、戻ってきてくれよ」 そう呟いても、聞こえるのは虚しい風の音と波の音だけ。 本当に大切なものは、失うまでその重さに気づけない。 かつて俺が「牛」と呼び、家畜のように扱っていた彼こそが、俺にとっての「神様」だったのだと。 俺は荒れ果てた土地で一人、後悔した。