第三話:ナニカと素顔 胸をざわつかせるのは、得体の知れない恐怖。 能力を使って誰かを消去すれば、 この異変を止められるだろうか。 けれど、ふぇりの能力の代償は周囲から 自分を忘れられること。 もし、今ここで力を使えば。 大好きなアステも、スペースも。 イチゴ飴をくれたことも、 名前を呼んでくれたことも、 全部忘れてしまうのだろうか。 スペース「アステ、ふぇりを……連れて行け。 早く......!」 スペースの叫びと共に、建物の影から反転した色を持つ怪物が、ニタリと笑って這い出してきた。 ???「…………」 スペースの影から這り出した???は、 一切の言葉を発しなかった。 ただ、常にその場に笑いの気配だけを 撒き散らしている。 滅赤色の霧が、スペースの体を内側から 食い破るように激しく噴き出した。 ふぇり「スペース先輩……ッ!!」 スペース「ふぇり、来るな!アステ……! こいつを連れて行け!!」 スペースの絶叫。 アステは、震える大きな手でふぇりの肩を掴んだ。 アステ「……行くぞ、ふぇり。ここは、もう……」 ふぇり「嫌だ! スペース先輩を置いていけないよ!」 ふぇりが巨大なハサミを背中から引き抜こうとした、 その時だった。 空気を切り裂く音が響き、 ???が放った鋭利なナイフが、 アステの顔面へと突き刺さる。金属が砕ける高い音。 ずっとアステの素顔を隠し続けていた電子機器の モニターが、真っ二つに割れて地面に転がった。 ふぇり「ぁ…………」 ふぇりは息を呑んだ。 露わになったアステの素顔は、驚くほど整っていた。 長い睫毛に縁取られた瞳。けれど、 その瞳からは、堰を切ったように涙が溢れ出していた。 それは、恐怖による涙ではない。 大切な半身を失い、守るべき少女を連れて 逃げなければならない、 置いていかれる子供のような、 寂しくてたまらない泣き顔だった。
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