水菜譚 兎章:裏-序- ||||||||||||||||||||||||||||| 微かに母の懇願が聞こえる。 無駄な事だ。ここに来たということは 父と兄は既に死んだんだろう。 何をしても聞いてもらえるはずがない。 肉と骨が断ち切られる音がした。 母も死んだのだろう。 次は自分。特に死に対して恐怖はない。 もちろん死にたくないわけではないが。 布框戸が開かれる。 そこに現れたのは──────。 目に孤独と生物への愛を宿した、 自分より少し年上の少年だった。 |||||||||||||||||||||||||||||||||||| 少年が煙草に火を点け、 引いてあった布団に座った。 何だ。何だ。何だ?分からない。 「受動喫煙ですよ。」 「この状況でそんなこと言えるんだ?」 「あがいても殺されるだけです。 余計な事する必要がないので。」 これは何だ。自分の中の感情を理解できない。 これを知りたい。そう思い引き出しを開ける。 「しないとは、言いませんが。」 この感情を理解したい。少年に銃を向ける。 「いいね。好きだよ?そういう子。」 この状況でも軽口を叩いている。 「そうですか。手を上げて後ろを向いてください。」 「やだ。」 「撃てないと思われてますか?撃ちますよ。」 少年が布団から立ち上がる。 そして自分に近づいてきた。 まずは、威嚇射撃。 「動かないで欲しいんですが。」 「やだって言ってるじゃん。やだよ。」 まず、この感情は憎悪、殺意、嫉妬等の 負の感情ではない。 そう理解し、銃を下す。 「下ろすんだ?」 「銃が脅しになるならSPの方々が 制圧していないわけがないので。 意味がない、と判断しました。」 この状況に適当な言い訳をする。 負の感情でないならばなんだ。 「うん。正解。賢明な判断だよ。」 「父と兄はどうなりましたか?」 「僕がぶっ殺したよ?」 「そうですか。煙草、臭いのでやめてくれませんか。」 「あー。いいよ。ごめんね?」 素直に話を聞いてくれた。 何故か凄く喜びを覚えた。 「ありがとうございます。」 互いに無言の間が生まれる。 「殺すならどうぞ。」 分かってきたかもしれない。この感情が。 「なんでそんなにあっさりしてんの? 死にたくないとかないの?」 「死にたくはないです。」 この感情は恋だ。感じたことのない感情。 この人の声を聞いて、目を見て。 自分の中のこれを理解できた。 一目惚れ、というやつなのだろう。 今まで一度見ただけで好きになるなど 有り得る訳がないと思っていた。 一目惚れとはこういう物だったのか。 この人を知りたい。もっと話したい。 でも、これから殺されるのだ。 理解したところで意味はなかった。 この人に殺されるなら本望だ。 僕を殺す人がこの人でよかった。 また間が生まれた。 「一個、提案があるんだけど。」 「何ですか?」 「君、僕のところに来てみない?」 ────────────────。 それは本心なのか?信用してもいいのか? 本当に?この人と一緒に居れるのか? いや、この人に依頼をした人が 僕を直々に殺したいのかもしれない。 まだ、淡い期待だ。 「誘拐ですか?」 「うん百人殺してるから誘拐とか今更よ。 いや、別に来ないなら来ないで殺すけど。」 「...あなたに何のメリットがあるんですか?」 「全くもってないね。でも...」 「でも?」 「君、可愛いから連れて行きたくなっちゃった。」 ..................................................................。 まだ、淡い期待だ...。でも、それでも。 この人と一秒でも長く居られる可能性が あるのなら。 「...分かりました。行きます。」 信じてみたい。この人の事を。 「あぁ、そう。じゃ、来て」 もし、誰もに産まれた理由があるのなら。 生きるための糧があるとするならば。 この人が僕にとってのそれだ。 自分の人生に、意味がやっとできた。 「あの。」 一つ思い出したことがある。 父から貰ったあれを持っていきたい。 父から貰ったから、とかではないが。 もしかしたらこの人の役に立つかもしれない。 「どした?」 「父の居たビルに取りに行きたい物が あるんですが...。」 「いいよ~。先にそっちに行こうか。」 この人のその言葉に胸が高鳴る。 普通なら憎むべきはずなのに。 両親と兄を殺した張本人を、 何故自分は愛そうとしてしまったのか。 そんなものはどうでもいい。 もう、好きで好きで堪らないのだから。 ||||||||||||||||||||||||||||||| 「未成年なんですよね?」 誰も乗っていない車を見てそう言う。 この人が運転するのだろう。 「そうだけど免許あるから大丈夫だよ。 僕のお師匠さんが色々してくれてね。」 「そうですか。今更でした。すみません。」 今更過ぎた質問をしたことを詫び、 なるべく近くにいたいので助手席に乗る。 「助手席に乗るんだね?」 「嫌でした?」 「いや別に。こういう時って、助手席に乗るの 嫌じゃないのかな~って思って。」 安心した。嫌がられているのかと思った。 なるべく自分に好印象を持ってほしい。 「気にしないでください。」 「あーい。余計だったね。」 そうは言いつつも何か思案している。 何か裏があると思われのか。 だとしたらちょっと悲しい。 十数分経った。会話はしていない。 こちらから話すのは恥ずかしいので 話しかけられなかった。 すると、あちらから話しかけてくれる。 「親からの愛情とか受けてた?」 「はい。甘やかし過ぎず、厳しすぎずだったと 思います。」 「お兄ちゃんはどうだった?」 「兄からは嫌われてましたね。」 「何があったの?」 「自慢みたいですが、僕が優秀過ぎました。 兄も優秀だったんですが、兄ができることを 僕は1,2年早くできてしまって。 それで行き場がなく感じたんだと思います。 兄がああなったのは僕のせいとも言えます。」 昔の兄は憧れでもあった。 憧れを追い越そうと努力したのが空回り。 兄はあんなザマになってしまった。 「僕からも質問していいですか?」 気になることがいくつかあるのでこちらから も質問をする。 「うん。別にいいよ~。ついでに煙草取って。 火も点けてくれたら嬉しいな。」 吸い過ぎている。肺は限界だろう。 「分かりました。質問なんですけど...」 ライターを手渡されたので、 咥えている煙草に火を点けた。 「煙草って一日に何本吸ってますか?」 「う~ん...。40~50くらい?」 「吸い過ぎです。せめて20にしてください。」 「うん...。」 思った倍以上の量を言われて驚愕する。 徐々にでも減らしてほしい。 「それと、お酒も飲んでますか?」 この人なら酒の風呂にでも入っていそう。 「お酒はそんなにかな。焼酎を日に1瓶くらい。」 「それも半分に抑えてください。 できれば三日に1瓶くらいにしてほしいです。」 「気が向いたらね~。」 ...。その反応に満足はできない。 それでもどういう人かは理解できた。 究極的な自己中心的思考の持ち主。 それはいいとして、最後の質問。 「最後に一つ。僕のことどう思ってますか?」 「急に!?...まだ定まってないかなぁ。」 「そうですか...............。」 当たり前ではあるのだが、ちょっと寂しい。 また何かを考えている様子だし、 なんなら嫌われたかもしれない。 「そろそろ着きますよ。」 「うい~。安全運転で頑張りま~す。」 それを不安を表に出さないように 目的地に近付いている事を報告する。 |||||||||||||||||||||||||||||||||||| 「わ~お。これはめちゃくちゃはちゃめちゃ想定外。」 ビル前に男がいる。誰かは分からない。 「僕は何もしてないです。」 一応、そう弁明しておく。 どうやらこの人には心当たりがあるようだ。 「分かってる。」 声色が変わる。格好いい。 「久しぶりだな。水菜...!!」 「どこのどなたか知りませんが──────」 「白々しい芝居はやめろ...!! 俺の顔を忘れたとは言わせないぞ...!!」 「まあ、バレるよね~。こっわ。」 目の前にいる男は常軌を逸した強さを 持っている。自分でもそれだけは分かった。 「できればあんたとは会いたくなかったな~。 勝てないと思った人物の一人だもん。 前より怖くなってるし。」 「そんなものはどうでもいい。 私が望むのはお前の死、それだけだ。」 男への恐怖がまた膨れ上がる。 だが、それは目の前のこの人────。 水菜と呼ばれた少年に対してもだった。 どんなに格闘を知らない素人でも 即座に理解できる。 この二人の間合いに入ることは死と同義だと。 超越者達が互いに近付いていく。 人間の最高峰とも言える怪物達の 殺し合いが始まる。 続く。 matya_machaの一言 ドウモ!!マッチャデス!! 三鷹誠君がどういう子か。 それを兎章-終-の誠君視点で書きました。 ちなみに現在、主人公交代も考えてます。 抹茶君防衛戦はまだ待って。 キャラクターのデザインが定まらないんだ。 お話を広げるたびに、構成が難しくなるんだ。 助けてほしいレベルなんだ。 てかここまで見てる人いないか。 まあ、この小説おもんないもんな。 コメント、☆,♡、拡散、宣伝等励みになります! 是非してください...。
兎章-終-(前回) https://scratch.mit.edu/projects/1287297569/ 兎章-序- https://scratch.mit.edu/projects/1283712450/ 幕間:師弟と女-序- https://scratch.mit.edu/projects/1279166950/ 己章-序-(一話的な) https://scratch.mit.edu/projects/1277548111/ 小話 龍は中国人で、とある組織の人間でした。 そこから逃げた先で貴美ちゃんと恋をしました。 ちなみに龍と話してたのは狂翁さん。 林檎パフェ頼むなんて可愛いね。 小話2 過去の水菜君では過去の龍に勝てませんが、 今の水菜君なら過去の龍に勝てます。 ただし、龍も強くなってるので悲しいことに 実力では劣っています。 なので、「お師匠さん以外に僕には勝てない。」 って言葉は通用しなくなっちゃいました。 悲しいね。