読むだけです。 海に漂っていたクラゲが地上を望んだ話。
少し前、海の浅いところに出かけた。 砂浜の方に何かがあった。いや、たぶんそれは生きていたから、「いた」のほうが近いかもしれない。でもそれはほとんど動かず、じっとしていた。 ときおり海にやってくるあれに近い形だった。たしか、「人間」という生物だったはず。にしては小さい。まだ子供なのかもしれない。 それはしばらくこちらを見ていた。でも私を見ていたわけじゃない気がする。たしかに目線の方向は私に向いていた。だけどずっと遠くを見ていた。 少し記憶を読んでみた。ただの子供だった。でもその人間の日常は面白かった。絵を描いたり、誰かと話したり、何もしなかったりしていた。そんな日常を過ごしてみるのも面白そうだ。 しばらくして、その人間は立ち上がって、隣にあった小さいスコップを持ってどこかへ歩いていった。おそらく家に帰ったんだと思う。 それ以来その人間を見たことはない。あの人間が何を思ったのかはよく分からない。数分間お互いを見つめ合っていただけだったし、別になにかその人間を特別に思ったわけでもない。 だけど、その特別でも何でもない日常を、知りたいと思った。