===太田順也はzunさんの本名です。 ~~~ZUNさん幻想入り物語 第十七話~~~ 「……満足したわ。あなたのその『箱』、私の運命をこれほど鮮やかに描き出すなんてね」 レミリアは翼をたたみ、優雅に手すりへと降り立ちました。その瞳は、勝利でも敗北でもなく、新しい「玩具」を見つけた子供のような無邪気な光を宿しています。 「でも、ZUN。この館には、私よりもずっと純粋で、ずっと『壊れた』旋律を求めている子がいるの」 レミリアの言葉と共に、足元の床から微かな、しかし背筋が凍るような振動が伝わってきました。それは物理的な揺れではなく、世界の**「定義(プログラム)」**そのものが根底から激しく揺さぶられているような、不気味なノイズ。 「地下に、妹がいるのよ。フランドールという名。彼女は495年もの間、あそこで『破壊』だけを遊び相手にしてきたわ」 「495年……」 順也は、PC-9821の画面に流れるシステムログを見つめました。 先ほどまでのレミリアの「運命操作」が整然としたロジックだったのに対し、地下から伝わってくる気配は、まるで**メモリが完全にクラッシュした際に出現する、意味をなさない文字列(ガーベジデータ)**のようでした。 「彼女、あなたの鳴らした『音』を聴いて、とても喜んでいるみたい。……普段は何もかも壊してしまうあの子が、あなたの旋律だけは『もっと聴きたい』って。……どうする? 会いに行ってみるかしら」 「……行きます」 順也は迷わずに答えました。 クリエイターとしての直感が、彼を突き動かしていました。 整った美しさ(レミリア)の対極にある、圧倒的な混沌と破壊。それこそが、この物語を完成させるために必要な「最後のピース」だと感じたのです。 「咲夜、案内してあげて。……ただし、あの子の機嫌が悪くなったら、あなたの『時間』でも守りきれないかもしれないわよ」 レミリアの警告を背に、順也は再び咲夜の後に続きました。 華やかな廊下を抜け、隠された重い石扉を開け、地下へと続く深い階段を下りていきます。 一段下りるごとに、気温が下がり、代わりに魔力の「圧力」が増していく。 順也はPC-98の設定を、最大輝度に変更しました。256色のパレットが、地下の澱んだ闇を青白く照らし出します。 (……この感覚。プログラムが予期せぬエラーで終了する直前の、あの『世界の裂け目』に似ている) 辿り着いた最深部の扉の前。 そこには、七色のクリスタルが光る、歪な形の翼を持った少女が立っていました。 悪魔の妹、フランドール・スカーレット。 「……ねえ。お姉さまと遊んでいたのは、あなた?」 フランドールが顔を上げました。その瞳に映っているのは、好奇心と、そしてすべてを塵に変えてしまいそうな「無垢な狂気」。 順也は無言でPC-98を床に置き、キーボードに手をかけました。 これまでのどんな曲とも違う、不協和音をあえて取り入れ、壊れた玩具のような音色を紡ぎ出すFM音源。 ――『U.N.オーエンは彼女なのか?』 狂気と遊び心が交差する旋律が、地下の静寂を切り裂きました。