水菜譚 兎章:裏-終- 自由気ままに生きたかった。 普通の人間で終わりたくなかった。 何にも残らない、ただの人間。 普通に生きて、普通に楽しく。 誰だって幸せに生きたいと願う。 その幸せを守るために汚い手口だって平気で使う。 幸せって何なんだろうか。 幸せの基準は人によって異なる。 だからこそ自分の可笑しさを理解する。 男だったら誰でも憧れるだろう、最強。 そんなつまらない物に憧れて、 でも大人になるにつれて結局は誰もが諦める。 それだ。 自分はそれになってみたかったんだ。 自由気ままに生きて、誰もが憧れる人間。 そんなつまらない幻想に焦がれて、 自分は死んでいく。 そして今までの自分は全て過ちだったと、 龍王伟に刻み込まれる。 ああ、だとしたら自分は、俺は、僕は。 「あの時、殺さないでやりたかったなぁ。」 普通に生きたかった男、龍王伟。 その妻と子供を殺した、自分。 あの時自分を貫くことができれば。 龍王伟という男を守れたのかもしれない。 自分を殺した男へのとめどない称賛。 同時に起こる、過去への後悔と疑問。 神野敬三を生かそうとし、 三鷹誠を生かしたのは何故か。 あの時と同じ思いを、 三鷹裕司と龍王伟の家族に抱きながら、 それでも殺したのは何故か。 そんなものはもう、どうでもいい。 龍王伟が正しくて、自分が間違い。 それはこの殺し合いで、確定したのだ。 徐々に徐々に、鎌の先が首に近付く。 色んな思いを抱きながら、 もう一つの後悔が生まれる。 「せめて、謝罪くらいはしてあげたかった。」 水霧結依として生まれ水菜抹茶として生きた 男の運命は─────────── その一瞬で決めるべきではないと、 一発の銃声に定められた。 |||||||||| 「...........は?」 「がっ...あぁ...!!水...菜ぁ...!!」 自分は死んだ。死ぬはずだった。 龍王伟という男の憎悪に、 この身を焼き焦がされるはずだった。 だが立っているのは自分で、倒れているのは龍王伟。 その左肩からは血が流れている。 自分の右手も少し抉れている。 「水菜...さん...。」 その声で気付く。自分はこの子に、 三鷹誠に生かされたのだと。 三鷹誠の右手には銃が握られている。 「水菜ぁぁ...!!」 その声に反応し、三鷹誠が銃を構える。 「待って。止まって。」 ここで龍を撃たせるわけにはいかない。 「何でですか!今がこの人を殺す好機です! ここで殺さないと...!!」 「駄目だ。やめろ。やめてくれ。」 懇願。主導権を握っているのは三鷹誠だ。 この状況をどうにかしなければ。 「......分かり、ました。 ただ、足は使えなくさせてもらいます。」 「がぁっ...!!くっ!!」 三鷹誠が龍の足を撃ち、銃を下す。助かる。 一先ず龍の死は免れた。 「ありがとう。後でなんでも言う事聞いてあげる。」 「...!!!!!!!!!!!!!」 凄い嬉しそう。子供らしい反応。 「あ。あと耳、塞いでて。」 「分かりました。」 従順と言うかなんというか。ちょろいなこの子。 駄目女に騙されるタイプ。 「何でだ...。何故、殺さない...!!」 「龍王伟。僕の負けだ。殺したきゃ殺せ。」 「お前は...何を言っている...!?」 これは掛け値なしの本心。 今ここで、僕を殺したいなら殺していい。 「ただ、あんたに言っときたいことがある。」 これは、答え合わせだ。 |||||||||||| そう語り掛けられ、蹴りを入れられる。 「がっ...!?はぁ...はぁ...。」 「どう?呼吸、しやすくなった?」 空気を目一杯吸うことができる。 肺の機能が戻ってきている。 多少、難儀はするが。 「ぜぇ...はぁ...。すぅー...ふぅー...。」 「うん。大丈夫そう。じゃ、話すね。 僕は2年前、とある依頼を受けた。 内容は殺し屋である龍王伟の 妻と子供を殺せ、だった。」 目の前の男が語り始める。 答え合わせ、とは何だ? 「依頼を出したのは僕の師匠... 狂翁って男だ。表では紫山俊之って 名乗ってる。」 紫山俊之。その名は知っている。 今日、ここでこの男と出会ったのも、 紫山俊之という老人の差し金だ。 ......。利用、されたという事か? 「そして僕はお師匠さんに聞いた。 なぜ、龍王伟でなくその家族かを。」 信用に値する相手ではない。 なのに、この男の言葉を信じかけている。 この男の言葉に、揺らがされている。 「その問い事態に返答はなかった。 ただ、一つ気になってることがある。 二年前に君が僕に言った、 凄惨な死体の話。 僕は心当たりないんだよ。」 ...。この男は何を言っている? 「今、更...!!白を切るつもりか!!」 「違う。確かに君の家族の首は切った。 でも、首をテーブルに並べてはいない。 僕は殺した後すぐに帰ったんだよ。 君の家族の血を浴びたままなのは その...良心が少し、痛んだから。」 そう語る男の目は、本心を語っている ようにしか見えなかった。 騙されているのかも...しれないが。 「つまり、僕が君の家を出た後に 工作をして帰った奴がいる。 まぁ、誰かは簡単に分かるけど。」 この男の言葉が真実を語っているなら、 私の家族を殺させ、その死体さえも 弄んだのは────── 「僕のお師匠さんだね。多分。 目的は...何だろう。あの人を 理解できないから分からない。」 「お前の言葉が...真実だという保証は...」 「あるわきゃないよ。だから言ってるんだよ。 ここで僕を殺してもいい、って。」 男が───水菜抹茶がクナイを取り出す。 先ほど自分が投げた内の一つだろう。 「右手は無事...だね。それなら殺せるでしょ。 生殺与奪は君に託す。好きにしてよ。」 目の前にいる水菜に、選択を迫られる。 ここで水菜抹茶を殺すか、生かすかを。 ||||||||||| 龍に真実を話し、苦無を渡す。 死にたくはない。だが、託したい。 正直、お師匠さんの目的は理解できない。 だが、分かる。 工作をしたのはお師匠さんだ。 「──────水菜...。」 「何?」 「お前は...人間なのか...?」 「当たり前じゃん。」 「...............今は、生かしておく...。」 「...ありがとう。じゃ、もう行くね。 足は...龍なら大丈夫でしょ。多分。」 ああ、気持ち悪い。吐きそうだ。 善人なんて大っ嫌いだ。 結局、自分が一番小物だったんだな。 「もう一つ言っとくんだった。」 これだけは言わなければいけない。 「何だ...。」 「あんたの奥さん、最後にこう言ってたよ。」 「...!?」 だが、この言葉を龍に聞かせるのは、 最低の行為でしかないと分かっている。 それでも、 「────────────」 これだけは伝えておきたかったのだ。 「そ、うか...。 私はお前を...見誤っていたかもしれない。」 その言葉は水菜抹茶の心に深く、 抜けない杭を打ち込む。 「僕が殺したのには変わりないんだよ。 それだけは...覚えておいて。」 「分かっている。お前への恨みは消えない。 だが──────」 その先を聞きたくない。嫌だ。 「妻がお前にその言葉を残したのなら、 お前はただの怪物ではない。すまなかった。」 自分の娘を、息子を、妻を殺した相手に。 龍王伟はそんな温情(のろい)をかけたのだった。 |||||||| 「ねぇ聞こえてる~?水菜だけど。」 「仕事が終わったのだろうか? 報酬は用意している。 我が社のエントランスにて、 秘書から受け取りたまえ。」 「あ、いや。違う違う。報酬はいらない。 ただ、交渉決裂だよ。」 「...!?何を言っている...!?」 「三鷹裕司、その嫁、長男は殺した。 ただし、三鷹誠の身柄は僕が受け取る。」 「貴様...!!ふざけるな! そんなものが通用するとでも...」 「五月蠅い。異論は認めない。 気に入らないなら殺し屋でも何でも 送ってくればいい。ただ、あんたは殺すけど。 じゃねばいっ。」 電話を切り、一息つく。 「あの、水菜さん...。」 「大丈夫。多分守れる。」 「そうじゃないんです。 あの、このビルの地下に行きたいんです。」 「あ、うん──────」 「水菜さんっ...!?」 「うあ?あぁ、ちょっと...毒かも。水欲しい...。」 「今、持ってきます!!」 「あ。駄目。一人になるの危にゃい。」 「じゃあどうすれば...。」 「歩けるから水飲めるとこまで連れてって...。」 「はいっ!分かりました...!!」 あ~。気持ち悪っ。これは毒の気持ち悪いだわ。 |||||||||| 「ふぅー。落ち着いた。頭痛い。」 「余裕の中に本心が漏れてますよ...。」 「あーごめん。あの、地下。地下行こう。」 「こっちです。」 「わーお...隠し扉。」 目の前の壁の一部、三か所を押すと 壁が開き、階段が出てくる。 その階段を降りてすぐ、扉があった。 「え...。32桁...?暗所番号長くない?」 「大丈夫です。覚えてます。」 「すご...。」 いつもだったらぶっ壊してたが、 今は気分が悪いので任せておく。 「開きました。入ってください。」 「!?何...これ...。」 目の前にあったのは、 神秘的な光を放つ水晶でできた、 大きな箱だった。 「中身は父から貰った物ですが、 水菜さんに渡します。」 「えっ。何で?」 「その...あ...。僕は...その...。」 なんか色々ありそうなので無かったことに しておこう。 「いや、いいよ。言わなくて。 中身は何が入ってるの?」 「刀です。護身用に、と貰った物です。」 「開き方は?」 「こうです。」 地面にその大きな水晶箱を叩きつける。 えー...パワーなんだぁ...。 「それでは、帰りましょう。 欲しかったのはこれだけです。」 「ん。ああ、ありがとう。」 そのまま車を運転して帰った。 何回か、事故りかけたが。 |||||||||| 「お帰りなさい!あ・な・た!」 「亜嶋、キモイからそれ止めてって いつも言ってるじゃん...。」 「ご飯にする?お風呂にする? それとも...ゆ・い・ちゃんっ?」 「結依ちゃんでマッサージして。」 「えっ...?はっ!?ちょっ...心の準備が.../// (自主規制)マッサージはちょっと...///」 「(自主規制)マッサージは頼んでない...。 右腕やばいからちょっと見て。」 「あの...この人は誰なんですか...!!」 後ろでわけわからん状況になってる 誠君が問いかける。 「抹茶くんの彼女よー。よろしくね?」 「は?」 誠君の声色がちょっと怖い。 僕にすら向けなかった殺意を 亜嶋に向けてる気がする。 やっぱ亜嶋ってウザいんだな。 「違う。ただの痴女。無視でいいよ。」 「私は抹茶くん以外愛さないもん!! 痴女じゃなくて乙女だも~ん!」 「気持ち悪い人ですね。この人...。」 「前に同じく。」 「前にnot同じく!!」 「五月蠅いな...ホント...」 「抹茶くん!?」 「水菜さん!!」 あったま痛い。眠いし。 「寝る。久しぶりに長く寝れるかも。 ここで寝かして。動かさないでね...。」 あ~。なんか肩の荷が下りた感じする。 やっぱり...善人って嫌い。 続く。 matya_machaの一言 ドウモ!!マッチャデス!! 前回のダメダメさを引きずってます。 今回もそこまで自信はない。 苦無の表記が違うのは思考者が違うからです。 ちなみに僕も眠いです。 次回からは賭章:全編に入ります。 龍王伟と水菜抹茶。 どこか違えば、仲良くなれたかもね。 ちなみに毒回ってなくても、 水菜君は負けてました。 唯一、誠君を助けたのは正解だったね。 ここまで見た人はアシマチャンカワイイヤッター!! ってコメントしてね。 てかここまで見てる人いないか。 まあ、この小説おもんないもんな。 コメント、☆,♡、拡散、宣伝等励みになります! 是非してください...。
兎章:裏-中-(前回) https://scratch.mit.edu/projects/1293687011/ 兎章:裏-序- https://scratch.mit.edu/projects/1289956841 兎章-序- https://scratch.mit.edu/projects/1283712450/ 幕間:師弟と女-序- https://scratch.mit.edu/projects/1279166950/ 己章-序-(一話的な) https://scratch.mit.edu/projects/1277548111/ 小話 ちなみに、水菜君が龍の肺機能直したときに ちょっとミスってたら、龍死んでました。 小話2 水菜君は龍に謝るの完全に忘れてます。