===太田順也はzunさんの本名です。 ~~~ZUNさん幻想入り物語 第十九話~~~ 「……喧しいわね。地下で何が起きているのかしら」 埃っぽくも甘い、古い紙の匂いと共に、その少女は現れました。 パチュリー・ノーレッジ。紅魔館の図書館に引きこもり、世界の真理を魔法という名の数式で解き明かす魔女。 彼女は、喘息の発作を抑えながら、地下室の惨状を鋭い眼光で射抜きました。 暴れ回るフランドール。そして、その中心で奇妙な鉄の箱(PC-9821)を叩き続ける順也。 「フラン、いい加減に……。……っ? なによ、あのデータ量は」 パチュリーの足が止まりました。彼女の「魔眼」が見たのは、順也のPC-98から溢れ出し、空間を埋め尽くしている膨大な**「エラーログの奔流」**でした。 魔法とバイナリの共鳴 順也がフランドールの破壊を逸らすために生成し続けた数万個のダミーアドレス。 破壊され、断片化し、虚空へと消えていくバイナリの残骸。 それが、パチュリーの目には、この世のどの魔導書にも記されていない**「存在の崩壊と再構築の数式」**に見えていたのです。 「……信じられない。あの男、魔法を一切使わずに、フランの破壊権能を『論理の身代わり』でいなしているというの?」 パチュリーはフラフラと順也の背後に歩み寄り、PC-98の液晶画面を覗き込みました。 Windows 95の青白い画面上で、目にも止まらぬ速さでスクロールする16進数の文字列(ヘキサダンプ)。 「この……『0x00...』から始まる羅列。これがあなたの世界の言葉なの? 属性も、詠唱も、触媒もない。ただ、絶対的な『0』と『1』の積み重ねだけで、フランの混沌を記述している……」 「……パチュリーさん。これは言葉じゃない。**『意志の設計図』**です」 順也はキーボードから手を離さず、短く答えました。 「フランさんの破壊は、この世界の法則を無視している。だから、僕が新しい法則をこの箱の中に作り、彼女にそれを壊させているんです。……今のこの瞬間、彼女の破壊衝動は、僕のプログラムの中で『正常な処理』として消化されています」 「あはは! パチェも遊ぶ? このおじさんの箱、壊しても壊しても、新しい『おもちゃ』が中から湧いてくるのよ!」 フランドールが満面の笑みで叫びました。 パチュリーは、その言葉を聞いて愕然としました。 495年間、誰も、どんな魔法も成し得なかった「フランドールの機嫌を損ねずにその力を発散させる」という難題を、外の世界の「旧式計算機」が解いてしまったのです。 「……面白いわね。あなたのその『箱』、もう少し詳しく解析させてもらうわよ。紅魔館の知識と、あなたの論理……どちらがより深く世界を記述できるかしら」 パチュリーの瞳に、知的な好奇心の火が灯りました。