午前十一時二十分。 無情にも、芽衣先生との癒やしの時間は 終わりを告げた。 伊織先生「はーい! 休み時間は終わりよ。次は全員、体育館に集合!」 伊織先生の鋭い声が教室に響き渡る。 私はレゴブロックを片付けながら、重い溜息をついた。 私(……もう、移動するのさえキツいよ。足が笑ってるんだもん……) すっかり筋肉痛の予兆を感じている体に鞭を打ち、私たちは冷たい床の体育館へと移動した。 [体育館] 「まずは柔軟から始めるわよ! 二人一組になって、交互に背中を押して!」 伊織先生の指示で、体育館のあちこちから 「……ッ!?」という絶句したような声が漏れ始めた。 ――ゴキゴキッ。 ――ボリボリ。 それは、人間が出してはいけないような不穏な音だった。 「ぎゃああああああああ! 痛い! 痛いってば!!」 どこからか悲鳴が聞こえてくる。まるで修行場だ。 幸いなことに、私は体だけは柔らかかった。 それでも、容赦なく押される痛みには勝てず、 半泣きになりながらなんとか耐え忍ぶ。 伊織先生「おぉ……。やっぱり一香さんは素晴らしいわね。完璧よ」 伊織先生が感嘆の声を漏らした。 ふと見ると、憧れの一香ちゃんが、長座体前屈で 床にペッちゃんこと体を折りたたんでいた。 まるで二つ折りの紙みたいだ。 伊織先生「みなさーん、一香さんを見習って! ほら、もっと深く曲げて!」 私(……いやいやいやいや!! 無理だって! 一香ちゃんが凄すぎるだけで、普通あんなに曲がらないから!!) 必死の抵抗も虚しく、柔軟タイムは阿鼻叫喚のうちに終了した。けれど、地獄はまだ終わらない。 伊織先生「さあ、体がほぐれたところで、次はサッカーをやりましょう!」 私(……絶対、伊織先生がサッカー好きだからやりたいだけでしょ!!!) 私は心の中で激しくツッコミを入れた。 私は、走るのも苦手だけど、球技はもっと絶望的なのだ。ボールを蹴ろうとすれば空振りして派手にすっ転び、ゴールキーパーを任されれば、飛んできたボールに手を伸ばしても、指先をかすめてゴールに吸い込まれていく。 私(サッカーなんて、この世で一番最悪な競技だよ……) その後も、バスケットボールにバドミントン、バレーボールと、伊織先生の球技フルコースが続いた。
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