東征を始めてから早くも六年が経った。天の神の御稜威(みいつ)のおかげで凶賊どもは平定された。辺境にはまだ騒ぎが残っているが、中つ国(日本の中心部)にはもはや戦乱の風塵はない。ここで皇都を拡張し、立派な都を建設すべき時である。いま民の心は純朴で、まだ巣や穴に住むような原始的な暮らしをしている。しかし、偉大な統治者は時代に合わせて制度を整えるものだ。民の利益になることならば、どうして宮殿を造ることを躊躇(ちゅうちょ)する必要があろうか。山林を切り拓いて宮殿を造り、天皇の位に即いて万民を鎮めよう。上には天神が国を授けてくださった恩に報い、下には歴代の皇孫が正しさを養う心を受け継いでいくためである。そうして、天下をひとつにまとめ、世界の果てまでを一つの家のような国にすることができただろうか。畝傍山の東南にある橿原(かしはら)の地こそ、この国の最も優れた土地である。さっそく宮殿の造営に取り掛かろう。