[吸野遊真外伝]紅い血 前編「人ノ子」 中編(次回): 未公開 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー こんちゃ〜。俺は吸野遊真。17歳。 え、知ってる?そっか。 では、隠し事は無しですね。 貴方が知っている通り、私は実年齢481歳の名前のない吸血鬼です。 ほう、「吸野遊真」になるまでの私の過去が知りたい、と。私は貴方と初対面の筈ですが….いいでしょう。暇潰しに話してあげますよ。 1544年に、私は生まれた。 母方の祖父は人間だった。既にこの世にはいない。 母方の祖母は人間と交際した記憶がないらしい。まだ若い顔のまま生きている。人間の血を得てしまった母は同胞から蔑まれていて、命を守るために隠れて生活した。私と母だけである。私達を助ける者はいなかった。昔からJ教やC教によって、吸血鬼たちは次々と討伐されていった。人間は赤子のようなものだが、彼らは天敵だったので、吸血鬼は隠れて暮らすしかなかった。私の父はC教徒により殺されている。 母は私を産んだ時が多分128歳。彼女より美しい人外も人間も、私は見たことがない。白い髪の長髪で、綺麗な肌に澄んだ目。性格や雰囲気はまるで聖人のようだった。恐らく、人間の血が混ざったことで吸血鬼としての醜さが消えて、若さだけが残ったのだろうというのが私の推察だ。自慢になるが、私も彼女の息子であるから、よく通学中の女子達が「イケメン」と囁いているのも人並み以上の聴力を持つ耳によく聞こえる。まあ、自分の顔なんてどうでもいい。 本題に戻ろう。 昔は年月なんて数えていなかったが、日本で織田信長が死んだ前後の年だろう。居場所が同胞にバレた。刺客は10人だった。 「見つけたぞ!不純物め」 1人が、ゆっくりと母に近づいた。 「御母様、えっと…彼らは誰ですか?」 「…!あなたは下がってなさい。いつも話してるでしょう。“同胞たち”よ。」 言われるがまま、隠れ家の奥の部屋に逃げ込んだ。しかし、気になったので遠くから彼らを眺めた。 「…ガキが逃げたか。」 「まあいいだろ。ここは裏口がなさそうだし。」 「とにかくこの女を…」 「…おかしいわね。」 しばらく黙っていた母が口を開いた。 「たった10人しかいないわね。もしかして、舐められてる?」 「さあな。人間の血を持つお前が____」 「さっきから五月蝿いわよ。人間の血人間の血、って。」 次の瞬間、母の姿が人間の女性から、10人の刺客のような吸血鬼の姿に変化した。 蒼く光る黒髪。全身黒の衣装が彼女のスタイルの良さを際立たせている。背中から蝙蝠の羽が生えた。美しさを保ったまま、獲物を狙う鋭い目を光らせた。 「いちおう私は吸血鬼として生きてるのよ。」 母は強かった。9人殺害した後、奥から見ていた私に「もう大丈夫よ」と言った。 え、もう1人残ってるって?そのもう1人は、母の眷属になった。眷属は色々と便利に使えるが、10人全員にやると隠れる人数が多すぎる。 そして、新しい隠れ家で生活していたのだが、すぐに次の刺客が来た。 その男を見るや否や、母は戦闘態勢に入った。 「あら、今度は1人なのね。帰ってくれないかしら?」 「そうはいきませんよ。」 次の瞬間、何が起こったのか、男の右腕は母の心臓を貫通した。すぐに男は左腕で母を壁に叩きつけて首を絞める。 いや、首を絞めているのではない。長い爪で深く刺している。 「速…」 これはマズイと思った。裏口がない場所に住むのは、通気口を通って逃げるという作戦があり、当時の自分は吸血鬼としては未熟ながら蝙蝠に変身して狭い通気口を通ることはできた。 しかし、いざ母親があんなことになっているのを目の前で見たのだ。 何よりも愛していたものを目の前で失うショックで、恐怖で、私は動けなかった。 そして、刺されている母親に異変を見た。 苦しんでいた顔が、やがて安らぎの表情に変わる。人間らしい赤い血が、蒼くなってゆく。 やがて、刺客は母から手を離した。 母は私の方にゆっくりと歩き始めた。 「驚かせてごめんねぇ…。ねえ、今すぐにでも、故郷に帰りましょう…..“主様”のもとへ。」 「御母様、まさか眷ぞ_____」 その後のことはよく覚えていない。気づけばずっと拠点にしていたトランシルヴァニア公国から、ロシア・ツァーリ国のアストラハンにまで移動していた。 動き続けなければ、母の言っていた“主様”____吸血鬼の王に追われると考えた。あの刺客は多分王直属の奴だ。 私は東に進むことにした。西にはC教徒が多いし、私のような赤髪の者はいない。母と私は髪の色で人間に不気味がられた。 それと、私は吸血鬼より人間の感覚を重んじるようになった。これは奴らへの対抗意識のためだ。 そして、私はオイラトに入った。
オリキャラ全員設定が重すぎるので、未回収の奴らも全部過去譚書きます。第一弾が人外イケメンの吸野遊真君です。音間の次に好きです。